雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪思考の整理学≫

今回はビジネス路線から少し逸脱して外山滋比古氏の「思考の整理学」を要約してみようと思います。

中学生・高校生の時に評論問題を解くとかなりの確率で登場した外山氏の本です。

「読みの整理学」という本は大学時代に読んだことがありましたが、この本は初めてでした。東大・京大の大学生協に平積みの書物で大学1年生で登竜門的に読む本のようです。僕の大学には書店には置いていましたが、あまり身近に読んでいる人はいなかったように思えました、、

 

「思考の整理学」

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 ■ジャンル:思考系

■読破難易度:低(200ページ程度のエッセイ形式の構成なので楽しく読めます)

■対象者:「頭を使う」という行為に関心のある方・学問や思考に対する先駆者の姿勢を学びたい方

 

【要約】

自己啓発っぽい雰囲気のある本ですが、決してそんなことはないです。

外山先生ならではのあっさりした論調ながら、しっかり読み解こうとすると深みのある感じはとても懐かしく好きなものでした。

主題を簡単に要約すると「コンピューターの台頭と共に記憶するだけの人間では価値を見いだせない、かといってアウトプット・創造一辺倒もよくない、両立する人間にはどうすればなれるか?」を扱った本です。ここ10年くらいは毎日のように論調されるようになりましたが、1980年代にこの本を著して警笛を上げているあたり古いものを正しい姿勢で読み解けば大体のことは既に論じられているということが改めて浮き彫りになります。。

下記、気になった部分を抜粋して要約します。6部構成になっており、情報の処理・思考法等のパートに別れています。

 

■思考の余白を作るということ

果報は寝て待て・sleep overという成句があるように、夜に変にいろいろ考えるよりも朝の新鮮な状態の思考や思い付きを参考にするべき、それ故に朝型は百害あって一利なしとのこと

 

■読んで忘れるという行為の大切さ

二元論で物を考えるのはあまりにも傲慢、知に従事する者は常に謙虚でなくてはならない。変に知識を詰め込みすぎることが自分自身の頭で思考する余力を阻害する可能性がある、だから詰め込み忘れるというプロセスが大事。※古くはショーペンハウアーの「読書について」という本で記述があったように思えます。

 

■古典的な書物を読むという行為

真に美しいものを摂取する教養的な学びというのは自分の写し鏡になる、自分の中に問い等がない浅い状態では何も出てこない。だからこそ古典的な作品は読むフェーズを分けるとのこと。

 

■コンピューターと共存するための知識労働者の在り方

「頭の使い方(常に整理整頓された状態)」・「知識労働者としての成果への拘り」等が肝になると。

昔と違い情報過多の時代であるために、意図的に情報を遮断・忘却することをしないとすぐに機能不全になる

 

■闇雲にインプットや記録することは無意味で愚かな行為

アウトプットなしのインプットは自己満足、その意味で考えを書き出したり整理することは新しい知を生む副次効果もあり積極的に採用するべき行為といえる。

 

■異質なものとつながるということ

近しい関係の人とばかりつるんでいてはキズの舐めあいはあれども、衰退していくだけだということを示している。

人間は洗練・専門化すると鎖国の道をたどろうとする(心理的に安全だから)、だがそこに変化・成長はなく買ってでも異質なものとの接点を紡ぐことは自分の個人的な成長につながる。

 

■思考の拡散・収斂

思考体系には拡散と収束がある、収束が要約のようなものに近しく本来望ましいとされてきて、拡散は誤読だとか夢想だとか言われてきたが実際に創造的な営みをなすのは拡散だという。古典などはその解釈をめぐり議論・思考されてきた過程で今があるというのを忘れてはならない。だからこそ読書をする際の姿勢も頭から正確に読み解いていくことも大事だが、それと同じくらいその知見を内省・思考応用することも大事。

 

【所感】

以上となります。

僕の所属していた大学はぎりぎり大量の情報の詰め込み・活用でどうにかなる中で学んできたのでこうした視点はもっと早く、それこそ大学時代等に読んでいたら感銘を受けるポイントも多かったんだろうなと感じました。詰込み型から思考体系をシフトさせるのには3年程時間を有してしまったので、なんだか過去の自分に対して見せてあげたい内容だなと読んでいて思った所でした。

※元々僕は知識量でカバーしている傾向が強く、思考独立でいうと全然大した成果物を出せないということはあまり知られていませんが自認している所です。その意味で知識労働者としてはこうあるべきという模範的な姿勢を先駆者から早く学ぶことはもっと早い段階でしてもよかったなーと読みながら内省した次第でした。社会人2年目の後半くらい前に、今の姿勢でいると自分の限界が遅かれ早かれ来ると強く感じてからフォームを治すのに相当時間を有しています。(かなりマシになりましたが、まだまだだなーと)

ぼんやりとそんなことをGW中に感じながら読んだ本でした!原点に立ち返る意味で広くおすすめできる本です。