雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪マネジャーの実像≫後編

今回は前回に引き続き「マネジャーの実像」の後編をまとめていきたいと思います。

マネジメントを行う上での実務の葛藤・あるべき姿・どのように選定するのかなどを記述している項目を扱います。

↓尚、前編要約は下記。

ty25148248.hatenablog.com

 

「マネジャーの実像」

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 ≪マネジャーが抱えるジレンマ≫

●思考のジレンマ

上っ面症候群…目の前の仕事を片付けることへのプレッシャーと優先度から物事の理解が浅くなったり、しっかり考えて計画を立てることが出来なくなる

計画の落とし穴…長期的な視点に立ち計画を立てて物事をなしえないといけないとは自覚していても膨大な仕事の量を抱えてなんとか捌こうとこなすハメになる実務のジレンマ。

分析の迷宮…分析によって細かく細分化されたものを一つに統合するのがマネジメントの役割

 

●情報のジレンマ

現場とのかかわりの難題…物事を広く浅く知りすぎてしまうのがマネジャーが陥りがちな典型的な落とし穴、そんな中でマネジメントは行為の性質上。マネジメントの対象から乖離することは避けがたい。そういう状況でどうすれば現場の情報を途切れなく入手し続けられるのかというジレンマ

※新任マネジャーはマネジメントを行うと共に自分の専門性・経験が古びていくのを理解し、知らない状態への対処方法を覚えていくしかないという。それまでと同じように行動出来なくなる中で時間的制約条件は更に厳しくなる、その中では人の力を借りるのは勿論、不確実性の高い中で意思決定をしなくては行けなくて知らないということを受け入れなくてはいけない。

権限移譲の板挟みマネジャーの地位による調達経路の情報を基に意思決定せざるを得ない(文書化されない)業務をどのように権限移譲するかというジレンマ。

数値測定のミステリー定量化できないものをどのようにマネジメントするかという問題、しかしハードデータがソフトデータ全てを上回るとは限らない、定量化できえないことで物事は説明できることも多いし、マネジメントの特質上この「文書化」できない非公式な情報が意思決定の肝であることも多い。

 

●人間のジレンマ

秩序の謎…秩序を形成して組織の成果最大化・安定化を図ろうとするが外部との折衝をするマネジャー自身の行動というのは常に混沌としており秩序だっていないという矛盾を抱える。

自信のわな…マネジメントの仕事は特質上、常に不安がつきものであるし厳しい問題を「何とかしようとする」仕事である、その上ではスキルとして対外的に自信をもって仕事をしている様を示す必要がある場合が多く、これは適性に関わるのだという。

 

●行動のジレンマ

行動の曖昧さ…新任マネジャーはひっきりなしに問題やいざこざが起こるのにそれをきれいさっぱり解決できないことへのいらだちにさいなまれることが多いという。

変化の不思議…私たちは変化しているものにばかり目が奪われがちだが、身の回りにあるもののほとんどは変化していないという逆説に気づくべき。変化に対応する為には安定的に継続する部分を作り出す、その仕組みつくりが大事という逆説。

 

≪不幸せな組織を生む原因≫

■本人の資質が原因の失敗…本来その役職に就くべきでなかった人(資質…不承不承で仕事をしていた李個人プレーが好きであっったりものを考えようとしなかったり人間嫌いの人等)をその役職に添えることの失敗。

■職務内容が原因の失敗…マネジャー自身はマネジメントの適性はあるものの、そもそもの仕事の設定の仕方に無理があったり仕事の任せ方起点で機能不全になるということ等がここにあげられる。

■成功が原因で生まれる失敗…成功を収めてきたのはある程度の謙虚さがあり対外的変化や発想を受け入れて変化し続けてきたから、それなのに自分を重要人物と過信しすぎて本来のフォームを失うと簡単に崩壊しうる。

 

≪幸せな組織の条件≫

◎マネジメントの成功と失敗を考える枠組み

・個人的なエネルギーを投下物として、抽象的な振り返りと積極行動によりPDCAを回し、統合することでマネジメントの成功はもたらされるという。

■エネルギーの糸…マネジメントの仕事につきものの猛烈なペース・行動志向の強さ・断片的な仕事・多様性からも明らかなように優れたマネジャーは得てして極めてエネルギッシュに仕事をする。(現場とのかかわり、文書化されないあいまいな情報を好むマネジャーの仕事の資質にも関連している。)

■振り返りの糸…自分の経験から学び、振り返りをして様々な選択肢を効果検証することを基本行動に据えているマネジャーは極めて多かった。ある種の謙虚さがこれには欠かせなく、自分の無知を自覚して顧みることが出来ないとこの柔軟性は生まれない。人間は振り返りを定期的に設けないことには自分の経験の意味を理解できない、適切な振り返りのタイミング・質と新たな視点のインプットのバランスを定期的に取り続けることでしか人は成長できないのだということ

■分析の糸(サイエンス)…分析は体系化して物事に秩序を植え付けたり再現性の高い仕組みを作る面においては有効だが、分析偏重になってはいけない。多くの教育が分析偏重になっている為、ここは気を付けるべきと著者は主張する。

■協働の糸…マネジメントがうまく機能してる時というのはその人本来の力を引き出せている時。

■積極行動の糸…優れたマネジメントは振り返りと行動のサンドイッチ的な形で地に足のついた行動をとる必要がある。優れたマネジャーは受け身の犠牲者のようにはふるまわず、変化に翻弄されるのではなく自ら何とか変化を起こそうとするものだという。

■結合の糸…マネジメントとは組織の戦略を理解し統合する存在、非常に重要な役目が統合である。マネジメントの最大の目的は合成を目指して休むことなく奮闘し続けること、いつまでもゴールにたどり着かなくても足を止めてはいけない

 

◎マネジャーの選考

欠点が明らかな人を選ぶ…その欠点が今の組織環境において、仮にマネジャーにした際にどのような弊害が起きるかを見据えて選ぶべき。マネジャーを内部昇格させるときに、部下に発言権を持たせるということが出来れば組織の外にだけいい顔をする人をマネジャーに添えてミスになることは少なくなる。

※マネジャーの選定においては内部昇進・過去に関わりのある人を異動させての昇進等現状を把握しており短所が明確な人を据えるべきというのがミンツバーグの思想。

 

◎マネジャーの育成

・マネジメントは実践の行為なのでサイエンスや専門技術と同じように教えることはできない、基本的な法則・原理はあれども組織環境や担う役割により異なる為、体系化することは難しくあくまで実践の経験をもとに自分なりに学習・組み立てていくしかないという。

 

 

【所感】

・僕が現在になっている役割はマネジメントの一部分、いうなれば補助的な役割に過ぎない訳ですが著者の言わんとしていることは朧気には理解できたように思えました。常に絶え間なく変化・環境・情報を処理して上っ面症候群(器用貧乏に近い)にならないようにバランスを取りながら「なんとかし続ける」仕事であるということだと思見ます。

・普段から僕と話をする人からするとびっくりだと思いますが、実は僕はリーダーシップ偏重的な理論や絶対の答えがあると神格化するようなビジネス書の一部の潮流があまり好きではなく読むけどもしっくりこない、ということはよくあります。

そんな中でとにかく現実に即して、演繹的に結論を導き出している本書はがっつりした論文でありながら現実に即した活用に務めようという様がひしひしと伝わり心地よかったです。

(本書で断定調や分析至上主義であるドラッカーやポーターを切捨てているのは、僕が好きな学者の流派なので少しびっくりする所はありましたが、、)

・「なんでこんなにうまくいかないんだ・大変だ」と思うのはいうなれば所与の条件、その現状を如何に楽しみ・活かし・自分がなし得たい方向に「何とか進めていく」ということの積み重ねなんだろうなと思ったのがこの本を読み終えた率直な感想です。駆け出しの僕からすると非常に浅い感想なんだと思いますが、実践を数多くこなし時を経てからまた読み返してみたいなと思います。

※最近、この種の原典や論文を中心に読解試みているので読書ペース落ちています、訓練期間ですね。

 

以上となります!