雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪競争優位の戦略≫Ⅲ部企業戦略と競争優位

前回に引き続き、競争優位の戦略の第三部を要約していきます。

四部構成なので、競争優位の戦略要約シリーズは次でラストになります!

主に多角的に事業を運営する会社において「それぞれの事業をどのように扱うか」・「事業間の関係性はどのように形成されるか」・以上の事象を「どのように企業戦略に反映させていくか?」という観点で網羅的に記述がなされています。

※過去まとめは下記です※

ty25148248.hatenablog.com

 

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「競争優位の戦略」

楽天ブックス: 競争優位の戦略 - いかに高業績を持続させるか ...

■ジャンル:経営戦略系

■読破難易度:中~高(基礎的な経営学ロジカルシンキングがないとかなり読むのが退屈になると思います。5フォースの概念だけも理解した上で読むことをおすすめされます。管理職や経営企画、事業開発等の仕事している人にとっては無茶苦茶面白い本だと思います)

■対象者:企業理解・事業部理解の知見を深めたい方・製品やサービスの拡大に関して強い関心のある方・古典的な経営学を学びたい方

多角化した企業の事業部間連携などにも着目しており、投資などをする人も面白く読めるのかなーと思っていました。

≪選定理由≫

・個社深耕(主に上場企業・製造業)の幅を広げる為(会社理解を様々な側面から出来ないと筋の良い打ち手は広がらないと思っていて、もう少し裾野を広げたい、かつ自分自身が戦略に明るい人材でありたいという個人的関心です)

・会社全体における事業部の位置づけを自分なりに理解し、拡大の為に必要な打ち手を妄想出来るようになりたい(断片的には色々妄想出来るのですが、基礎的な理論の体得がないとさすがに限界が来るなという危機感から来ています)

 

【要約】

第三部は事業の相互関係・優先順位などを加味した企業戦略について記述されています。

■事業単位間の相互関係

・事業のシナジー効果を意図し水平戦略(多角化・新市場参入などの文脈)を採用する企業は増えており、それはなぜ重要か?という問いから始まります。主な理由としては

◆成長から業績向上へ重点が変わっている(単調増加経済ではないので、収益性観点を入れないとビジネスの可否を判断しづらくなったという外部要因があります。)

◆技術革新により相互関係の形成・転用が容易になった(水平戦略を取る為のコストが減ったので、採用できる企業の範囲が増えたということです。)

◆多面的競争が増えた(業界を跨いでの競合、「製品⇒サービス化」により顧客需要観点でこれまでは予想だにしないような競合が台頭してくるようになったという外部要因です。)

・相互関係の種類としては

◆有形(共通の買手・チャネル・技術など)

◆無形(人事施策・研究開発・ブランド名・マーケティングなど)

の二軸があります。要は企業を取り巻く要因を分析・把握するうえで留意する点は近年で莫大に増えたということを示しています。

 

■水平戦略の効用

・「水平戦略採用による成果」>「相互関係を形成するために取る調整コスト」の構図を作ることが水平戦略採用の前提条件です。また、水平戦略の可否自体は事業部マネジャークラスではどうしようもなく、経営企画部門やトップマネジメントにより判断されるという前提があります。

・水平戦略効用実現のための留意事項は下記です。

◆有形の相互関係の網羅的な把握・会社の枠を超えて追及する(例:自社が得意とする買手グループに対して親和性の高い製品を新規参入させるなど)

◆無形の相互関係を幅広く形成出来ないかあらゆる角度で検証ノウハウがKSFの業界の場合、構造的類似が見られれば全く表面的に異なる業界に転用して成功することが出来ます。)

これらは事業部単位に求めても視野・視界がないので実現は難しく、人為的に事業部超派の組織ないしは経営参謀機能(経営企画的な文脈)の設置をすることで実現を目指しに行くことが一般的です。

 

■相互関係と多角化戦略

・実際の企業戦略に落とし込む際の過程としては、有形の相互関係をテコにする場合マーケティングなら新市場戦略・生産ならコスト削減・技術なら新製品戦略に転用できます。

・落とし穴としては下記があります。

「事業単位の戦略的役割を間違える(例:4象限のどこに各事業部を据えるか・事業部単位での認識がずれて誤った行動を取るなど)」

「相互関係に拘るあまり共同化やノウハウ移転によるマイナス(例:思考が凝り固まるなど)」

 

■相互関係の成功を支える組織機構

・人為的にコントロールせずにシナジーを生むことは困難です、むしろ調整コストがかさむので組織は下記機構を設定することでシナジーを生み出そうとします。

◆ヨコ型機構事業単位のグループ化・価値活動の部分的集権化など横串を通す組織を生む行為を指します、プロダクトマネジャーや商品企画が複数事業部を管轄するなどが一般的です。)

◆ヨコ型管理システム水平戦略・管理部門の統合化などにより為されます。定期的な人事交流やジョブローテーションもこうした組織目的遂行の為に機能します。人という経営資源の成果最大化の為に行うということです。ここに個人の感情問題がつきまとうので人組織周りのマネジメントは難しいと言われますね。。)

 

■補完製品と競合優位

・主力製品を補う補完製品を自社販売するか外注するかは企業戦略の色が出ます。

・メリットは価値連鎖機能を共同化することによるシナジー効果です。具体的には

◆顧客の差別化認識に有利(ハードウェアとソフトウェアを抱き合わせで請け負う・販売する構図に近しいです。)

◆買い手の受け取る価値認識が向上

◆適切な価格設定顧客が価値を認識しやすくなる為、自社の収益性観点を加味した価格設定が市場に受け入れられやすくなります。

マーケティング・販売コストの低下

◆移動障壁を高くする(顧客依存度が高まります。)

 

■一括販売戦略

・所謂、一気通貫で提供という類の戦略の可否を記述しています。

・メリットは規模の経済や習熟曲線のメリットを享受しやすい点です。

・リスクは集中戦略に弱いこと・買い手は1社独占状態を嫌う(リスクがある為)点です。また、買い手ニーズの多様化・業界の進展(求められるサービス水準や買い手の属性が多様化)により導入メリットを生み出しにくくなるという外部要因もあります。

 

【所感】

 ・いわゆる大企業の事業間の関係性や働く論理を理解する手助けになるので、個社深耕をする上では大事な観点だなと読み進めていました。

・僕の所属する事業部は常に収益性担保という命題と戦っており、かつ他事業部との相互関係を意識せずには運営は出来ないので、このパートの言わんとしていることは実感を持って納得することが出来ました。

「事業部単位の論理を超越して、想像し全体最適になる行動を継続的に生んでいくこと」が今後の自分の成長の為に必要だろうなと思った次第です。とてもサラリーマンっぽいと思えるかもしれないですが、会社のメカニズムを理解して行動するスキルは体得しておいて損はないと思っています。(専門職や個人事業主になってもクライアントを取り巻く環境や論理に明るいと筋のよいアウトプットやプロセスを出せるでしょうからね。)

・あまりこのあたりに着目しない人が多い事業部にいるので、尚更価値は大きいと思い最近意識しているテーマに合致していて、一番面白く読めたパートでした。

 

以上です!

次回で競争優位の戦略要約はおしまいとなります。