雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪戦略策定概論≫

今回は波頭亮氏の「戦略策定概論」を要約していきたいと思います。

事業戦略・製品戦略を理解して自分の領域戦略に落とし込むという実務ウェイトが増えてきたので、実務のヒントになるのでは?という思いと

「事業観点で製品を導入・提案していくことで自分の営業としての引き出しを増やそう」と模索している中でそもそも顧客の事業や会社全体がどのように構成されているかを理解出来るようになることは相関があると思っていて2つの理由でこの本を読もうと思いました。

大前研一氏の「企業参謀」の戦略立案パートだけ切り出して実際の進め方までイメージが付くように記述されています。(企業参謀は少し思考に寄っていますね。)

 

「戦略策定概論」

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■ジャンル:経営戦略系

■読破難易度:中(本の構成自体はとても端的でわかりやすいですが、経営戦略分野の知識が少々必要です。競争戦略やマーケティングに明るいととても読みやすいかと。コンサル入社した知人が内定者時代の課題図書として読んだと言っていたので、その程度の難易度です。)

■対象者:・戦略を立案する仕事に従事する方全般・会社や事業の解像度を高めたい方・ロジカルシンキングの活用方法に興味関心のある方・企業戦略に興味関心のある方

 

【要約】

・戦略とは?という所から頻出事項である製品市場戦略・マーケティング戦略・機能別戦略について策定方法と留意点をとてもわかりやすくエッセンスと具体例を詰め込んだ内容になっています。

 

■戦略とは

・戦略とは「競合優位性を活用して定められた目的を継続的に達成しうる整合的な施策群のまとまり」と定義します。

■戦略策定のプロセス

「分析」・「発想」・「具体化」の3段階を経て構成されます。

事実の収集・現象の構造把握によるボトルネックの特定⇒あるべき姿とギャップを埋める+課題克服の解決策を洗い出す⇒解決策の選択肢を実現可能性や自社の資源(競争優位性やKSFとの親和性を鑑みて優先順位付け)⇒実務に落とし込むという流れを経ます。

■戦略策定に必要な思考要素

「統合力」「分析力」「想像力」「論理力」と定義されます。具体化・抽象化を行き来しながら全体の骨組みの特定と因果関係の規定をするので情報を一種の塊に「統合」することや与えられた情報を「分析」して仮説を生み出したり、何が起きているかの国語と算数の側面での「想像」、それらをつなぐ「論理」が必要ということでしょう。

 

■企業戦略の構造

・全体戦略と個別戦略で構成されます。全体戦略は全社に及ぶ話なので資源の配分を論じたPPM等のイメージで、個別戦略は事業部単位の戦略なので製品市場戦略などが代表的な具体例となります。大事なのは全体戦略は個別戦略に影響をおよぼすし、個別戦略は全体戦略の方針・意向を踏まえたものであるべきという階層構造を取るということです。

 

■代表的な戦略類型

ポートフォリオ戦略(PPM等)・成長マトリクス(アンゾフが提唱した「市場浸透」「市場開発」「新製品開発」「多角化」という既存/新規市場×既存/新規の4象限にプロットした製品別の戦略等)・ポーターの事業戦略(市場のどの面を抑えに行くか・何で競争優位を生むかという方針は「コストリーダーシップ」・「差別化」・「集中」という3分類にまとまるというもの)・コトラーの市場ポジショニング(マーケットリーダー・マーケットチャレンジャー・マーケットニッチャー・マーケットフォロワーという4分類で製品市場におけるどのようなポジションを取るか、紐づいた戦略や方針は決まるというもの)などをわかりやすくまとめています。

 

■製品市場戦略

「対峙する業界の成功相関要因(KSF)と自社の資源の親和性からどこにテコ入れをするか・何をターゲットとするか」ということを描いたものが製品市場戦略です。戦略は「効果の大きさ」「必要な経営資源」「有効性の期間」「ダウンサイドリスク」という4つの観点から効果検証されるべきで(基本的に事業部全体の意向や予算制約等があるため+実際に実行されない絵にかいた餅は全く意味をなさない為。)、実際の戦略を実現するアクションプランと効果測定する仕組み・モニタリング制度を設計までしないと戦略は意味をなさないと強く説かれています。

 

■機能別戦略

・営業や研究といったバリューチェーンで分解した時の単位別の戦略です。製品市場戦略と対比的な役割を担い横ぐしを刺すような形になります。何らかの競争優位・利益を生み出す仕組みを構築することが戦略の役割ですので、メインは生産戦略・販売戦略・技術戦略の3つで構成されます。

 

■生産戦略

「良い品を・安く・早く」が基本方針で品質管理・原価管理・工程管理などの生産管理や大量生産方式など日本が元来から追求してきた分野です。

多品種少量生産方式が市場ニーズに応えられるようになるにつれて、テーマは自動化・省力化やSCM(サプライチェーンマネジメント)・アウトソース(ファブレス企業の台頭などはわかりやすい例です)等に変化しているとのこと。

 

■技術戦略

「R&D」のような新製品開発・「技術ポートフォリオ等の技術の運用の濃淡を戦略実現観点で行う」の二軸で構成されるのが技術戦略です。R&Dにおけるテーマは「技術難易度」×ビジネス的な期待「期待成果」の掛け合わせという軸で判断されることがメインです。効果性を図る指標としてアイデア効率・テーマ効率・完結率・事業化率・事業収益率の5つがあるとされます。

※研究機関ではないので実際にビジネスを生み出す・貢献するものという絶対的な指標が入るということです。

 

■営業戦略

顧客セグメントの設定や付加価値をどのようにするかという「営業の在り方」+営業の質と管理を効果的に行う「仕組み」の2軸で構成されます。営業のトークスクリプトの策定や管理システムの整備・注力顧客セグメントの開発等が実務的なものであり、商材及び製品市場戦略の全体方針に大きく影響を受けます。(薄利多売でOKなのか・ブランドイメージ構築が重視・収益性重視なのか等により営業をする上でも取れる選択肢や価値の高い行動は変容するのでこのあたりは当たり前かと。)

 

【所感】

・所謂、経営戦略や理論をまとめたものを「実務にどのように落とし込んでいくか?」「気をつけるべき思考プロセスや観点はどこか?」ということにフォーカスしているので実務を内省していく観点で大変便利でした。本当に読みやすくきれいな構造化されている著者の構成には畏怖の念を感じました。

・この手の類の本は一定実践したり似たようなジャンルの本を読んでいくことで有機的に知識が結合して、実務で活用できるようになっていく実感があるので重ねて読むのが大事だなーと感じています。かれこれ1年半くらい試行錯誤してポーターやPPM等の考え方をまともに実務に落とし込んで考えられるようになった感覚があるので、戦略を策定して実行するところまでもれなくきれいに進めていこうとするとまだまだ場数と時間がかかりそうだなと読みながら内省して途方に暮れた次第です。

・とはいえ早くから着手したことで自分の営業としての引き出しや戦略策定・推進に関わったり、事業の解像度が上がった感覚はあるので食わず嫌いせず着手してみるのが大事だなーというのがこの2年くらいの実感です。

 

以上となります!

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