雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪君主論≫

今回はマキャベリの「君主論」を要約していこうと思います。

1年半程前に読んでみたのですが、当時は言わんとしていることを理解出来ず途中で投げ出してしまった本です。

マネジメントに関わる中で非常に示唆深い内容だなというのが改めて読んだ全体感です。古典的な書物の文意を何とか読み解こうと、試行錯誤しながら内省することが一番学習効率が良いと感じているので最近の個人的なトレンドにピッタリな本でした。

 

君主論

君主論 (岩波文庫) | ニッコロ マキアヴェッリ, Machiavelli, Nicoll`o ...

■ジャンル:政治学・マネジメント系

■読破難易度:中~高(世界史や政治学に明るい方なら非常に読みやすいと思います。歴史やマネジメントに関わる背景知識がないと読みづらいかも。)

■対象者:・国際政治に興味関心のある方・マネジメント理論に興味関心のある方・現実的な組織とのかかわり方について関心のある方

 

≪選定理由≫

・古典的な書物の文意を自分なりに汲み取ることで、経験の棚卸と理論の増強を図りたい為。

・過去、うまく文意を掴めなかった書物を遡り読むことで理解しようとしたい為。

・マネジメントに関する現実的な方針を知りたい為。

 

【要約】

世襲政治が重んじられた理由

地縁という基盤をベースに過去の信頼残高をそのまま持ち越して統治することが出来るので、統治者自身の能力にそこまで左右されず安定した組織運営ができる「システム」であるためとされています。

・大抵の臣民は現状に満足していることが多く、築かれてきた統治体制を覆すことは臣民の支持を得るという観点からも難しいとされます。(現状維持がベストと考える人が多く存在する為です。)

 

■成り行きで組織を統治することになった人の安定性

君主自身が発揮できる当事者意識やマネジメン可能な範囲はたかが知れていて、仕組みを整備しないことには永続的な統治システムは構築出来ないケースが多いとされます。

・人は過去の禍根をいつまでも持つものであり、「要職を禍根を与えたことのない人で固めることは基本的な定石」であるとされています。

 

■権威を掌握するマネジメント

・自分の手柄や名誉を直接確保することが難しくなると、権威ある誰かを祭り上げることで他者に対してマウントを取ることで自尊心を保つという振る舞いをする人は一定存在する。

・大衆から支持されないものは真価を評価してもらうことは出来ない。

この2つがマネジメントをする上でとても大事であるとマキャベリは形を変え、何度も説いています。

 

■外部の力を過剰に借りた組織の脆弱性

・傭兵と評されますが、要は「育て上げていない人員・体制で長期的に安定したパフォーマンスを発揮することは非常にリスクがある」と説いており、息のかかったメンバーを育成・管理していくことの重要性を説いています。

※投資や買収により大きくなった会社が組織設計を整備せず、人を垂れ流しにしたり人材育成のシステムが構築されないことで崩壊していくのと似たようなことを指し示していると感じました。

 

■実務的な君主としての振る舞い

・「他人の評価ではなく自分が是とするものに忠実であるべきだが、他人の憎悪は一度発生すると取り返しがつかないので慎重に取り扱う方が良い」と主張されています。

・君主たるもの真正面から理想論だけではうまく振舞えず、時には武力で強行突破する場面や勇気も必要であり、ライオンの側面やキツネの側面などを使いこなせるべきであるとされると訴えます。

・大事なのはすべて兼ね備えた潔白でまっとうな人「風」に見せることが大事だと説きます。

・すべてを兼ね備えることはほとんどの人は出来ないが、同時に君主の内面や実情に触れるまでに接点を持つ人も限られる。そうした接点を持たない大衆を動かし支持を得るのが仕事、そして逆怨みのリスクは極力撲滅すべき。

 

【所感】

・当時としては物凄く斬新な論調の書物だったのではないかというのが読んだ一番の感想です。

・理想論ではなく、現実的な人の心理を踏まえた振る舞い方を説いており示唆深い内容であるなと感じました。当時の僕が読んでうまく捉えることが出来なかったのは、この手の分野への経験値や思考体力の乏しさなのだろうと理解することが出来ました(笑)

・ビジョナリーカンパニーやマネジャーの実像といった書物に通じる内容であると感じました。即ち、「人の感情の動き・意味報酬を如何に取り扱い、自分の役割や成果と紐づけて大規模な範囲の物事を動かすことができるか?」という主題で政治寄りに説かれているものの組織のメカニズムとトップマネジメントの在り方について問われている点は現代にも通じる内容ばかりだなと感じました。

・「こんな素晴らしい内容が昔の書物に書かれていたのか!」と終始びっくりすると共に何度もうなずきながら読み進めた内容でした。

 

以上となります!

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