雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪MBA 定量分析と意思決定≫

今回は久々にグロービスMBAシリーズを要約します。

定量分析」に特化した内容になっていて、統計的なものの見方や具体では損益分岐点分析・KPIなどのテーマを取り扱っています。算数的なものの見方を養うという意味で、収益責任を伴う部署で仕事をする人にとっては少なからず関わりのあるテーマかと思います。

 

MBA 定量分析と意思決定」

MBA定量分析と意思決定 | グロービス・マネジメント ...

 

■ジャンル:統計学定量分析

■読破難易度:中(統計学的なものの見方を知らない方だと、大量に登場する数式にびっくりするかもしれません。数式自体にあまり意味はなくて、何を明らかにする概念なのかを理解するとすれば比較的読みやすいと思います。)

■対象者:定量的に物を見るという力に関心のある方・統計学をビジネスの実務に応用させたい方・事業を企画・開発などすることに関わる方全般

 

【要約】

※本書のウェイトの半数を占める具体的な損益分岐点分析・統計学・指標の解説は意味がないので割愛します。興味を持ったら実際に読んでみることをおすすめします。

 

定量分析の意義と価値

定量分析の意義は「意思決定のスピードや質を高める為に色んな角度からモノを検証することを可能にする」ということにあります。・感覚だけで意志決定をすることは共感を生まずリスクしか生まれないですし、共通の物差しを作る定量分析はコミュニケーションのバラエティを生むことになります。数字で説明しないと理解・説得が出来ないということは日常的ですね。

定量分析をして共通の物差し・判断軸を深い次元で置くことは人材の生産性を高め、優先順位を決めることで人材の適性活用に繋がるとみることも出来ます。その意味においてマネジメントは必ず持たないといけない概念ですし、レバレッジが効く仕組みを作るうえで最重要なツールです。

 

定量分析のステップ

「目的の確認」「仮説/切り口の考案」「情報収集」「前提の確認」「分析」「解釈」「シミュレーション」というステップを経て行われるとされます。分析をする際は目的を明らかにして、適切な問いや切り口を立てることに多くの工数を割くことが成果に繋がります。※いきなり部分の分析だけしても意味を持たないですし、この問いの立て方やセグメンテーションの切り方こそがセンスが問われます。定量的に物をみる経験やKSFを見に行く習慣から生まれるので常に試行錯誤し続けることが大事だといえます。

・ゼネラリストとしての定量分析で求められる要素は「分解し、構成要素の大きさ・力関係を見ること」「何かが変わった時の変化の度合いを見る」「分布や分散の様子を見る」の3つです。分析をすること自体には意味はなく、数字の羅列から何らかのインサイトを示すことで、周囲に影響を与えたりクリティカルなポイントを定めることで責任を負う領域の付加価値を上げることが大事です。

 

定量分析の留意点

・論だけで人は動きません。共感を持ってもらわないと組織は動かないので、定性面に訴えかける問いを立てることも同じくらい意味があるということがいえます。自分が本当にしたいことがあるのであればそのテーマ感をあらゆるステークホルダーに刺さるようにつなげるメッセージングも必要になるということが言えます。

 

定量分析の落とし穴

・データ収集や解釈をする際にはバイアスが入るもので国語と算数の読み解きを出来ないと正しいインサイトを示すことが出来ないです。だからこそ、顧客接点や業務プロセスをしっかり解像度もって理解し、ステークホルダーの動きをどこまで想像した上でインサイトを示すことが出来るか」ということは大事になります。

 

■ビジネスを見るうえで重要な代表指標

市場シェア…顧客数を増やすか既存顧客の取引高増加か顧客の購買頻度向上のいずれかにより実現されます。

顧客満足度…成熟市場においては顧客の離反を最低限に抑え、維持拡大していくことが大事であるため、重要指標になりやすいです。かといって顧客の声ばかり応えているとイノベーションのジレンマにも陥るので、顧客の声を俯瞰して洞察することも同じくらい重要です。

顧客内シェア…取引の内訳を可視化することで顧客のロイヤルティが明らかになります。

認知率…「顧客の純粋想起や利用にどれだけ寄与しているか」がわかり、実際の購買に繋がっていない場合、マーケティングマネジメントが最適化されていない恐れがあるということがわかります。

新製品比率…売上高においてどれだけ新製品が寄与しているかを示す指標であり、マーケティングと研究開発の秀逸さがわかる指標といえます。

 

 

 

【所感】

・あくまで分析ツールや指標は道具でしかないので、道具に踊らされても意味はありません。どのように考えるかやどんなものが大事なのかを理解して実践することが最も重要であると思います。個人的には定量的な分析と同じくらい大事なのが「その数字がどのような因果関係の基に形成されたか」という所謂「国語的な分析」でして、国語的な分析が実際のアクションを決める際にはとても重要性を帯びるなという印象です。両方の側面から分析できないと再現性のある打ち手は出来ないですし、かなりの訓練を有するので難しいなというのが実体験としてあります。

・一個人としての成果だけではないものを追求する際にはこのような分析はとても付加価値を生む行為であり、現状把握や指針を決めるうえでとても大事だと思います。なので組織全体にレバレッジを効かせる行動をする為には避けて通れないのが定量分析であるというのが個人的見解です。

・本気でこの分野に取り組み始めて1年弱ですが、ようやくまともにアウトプットに反映できるようになってきた実感覚があり、体得に時間がかかるものだと思っています。しかし、それ故に汎用性と希少性は高く学び甲斐のあるジャンルだなと思います。

 

以上となります!