雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪科学的管理法≫

 

今回はフレデリックW・テイラーの「科学的管理法」を要約していこうと思います。

19世紀に著された本で、この本については誤解があまりにも強い影響力を発揮しており「人を機械のように扱う」悪の理論だという見解が言われる本です。実際は現代経営・マネジメント理論の先駆けを作った素晴らしい著作であり、この本抜きにはマネジメントや人的管理論は語れないと思います。

 

 

 

 

「科学的管理法」

新訳|科学的管理法 | フレデリック W.テイラー, 有賀 裕子 |本 | 通販 ...

■ジャンル:マネジメント理論

■読破難易度:低(170ページ程の短い著作であり、具体例も豊富にあるのでとても読みやすいです。)

■対象者:マネジメントに興味関心のある方・標準化や仕事の効率化に興味関心のある方・経営学の発展の歴史に興味関心のある方

 

【要約】

「科学的管理法」と呼ばれる考え方を体系的にまとめた本です。

・問いの発端は資本主義経済の発展・知識労働者の増加による人材マネジメントの発展が社会的気運になった歴史的背景があります。即ち、「自然発生に頼ることなく体系的に仕事を分類・定義したり人材を育成することが経営課題であり、競争優位の源泉にさえなる」という危機意識から人と仕事の関係についてあらゆる考察がなされました。

 

■マネジメントの目的

・「雇用主に限りない繫栄をもたらし、働き手に物的・精神的豊かさをもたらすこと」とされ、最高の仕事ぶりを期待し、加えて仕事を通じて従業員が自己実現をしてもらうことを意図しています。

 

■怠業はなぜ起こるか

・仕事を科学し、生産性を向上させるためにはなぜ労働者は怠業をするのかという問いに応えなくてはなりません。本書では大きく3つの要因があるとされ、具体的には

「一人あたりの生産量が増えるといずれは大勢が職を失うことになるという誤解」

「既存のマネジメントの仕組みが優れておらず、働き手が怠業して権利を守らざるを得ない現状がある」

「非効率な経験則が横行しており、働き手の努力が水の泡になっている現状がある」

とされます。

・テイラーは「基本的にその人材の資質や適性により天井はあるものの、一定の人を用いて成果を上げる方法は存在する」という見地から科学的管理法を本書で体系的に説きます。

 

■科学的管理法のエッセンス

・旧来のマネジメントは「自主性とインセンティブを柱」にしたマネジメントでしたが、属人的でスケールしないしリスクが大きいということからテイラーは下記をハウの柱として科学的管理法を説きます。

「時間研究」

「部門別の職長制」

「標準化」

「企画部門の設立」

「差別的出来高制」

「工程管理」

即ち、仕事を要素分解・可視化することで科学的に検証できるようにし、実行する人と管理する人で権限と役割分担を明確にし、成果がでた人に相応の報酬体系を与えることで動機付けをするということを説いています。この考え方は今にも通じるマネジメントの基本的な考え方であるといえます。

 

■テイラーのマネジメント哲学

「一般的な人材は短期的な欲求充足に支配されるので、成果に対する報酬は短期的にわかりやすいものでないと効果をなさない」

「経験則の世界を逸脱して誰でもできるような仕事の体系化と動機付けこそがマネジメントの役割」

⇒個人的に印象に残ったフレーズ2つを抜粋しました。

 

 

 

【所感】

・もっと早く読んでおくべきだったと思えるくらい、自分の関心毎に刺さる名著だったと感じました。非常に人間味溢れる考察と、テイラー基礎理論をベースにバーナードやドラッカーが近代経営学を体系化していったことがわかる内容に心踊らされました。

「属人的な仕事の世界観から逸脱し、高い生産性を追求することこそが企業・労働者・社会の発展に繋がるのだ」という一貫した本書のテーマはとても温かみがあるというか熱い想いを感じる所が多かったです。

・組織行動学(OB)と経営戦略論は大学時代から好きであり、アルバイト・学生団体・仕事においても自分が常に重点的に取り組んできたテーマですが、こうした原著を読み解き内省する行為を通じて、定期的に見解を磨いていかないと卓越した成果は残せないなーと反省をするきっかけにもなりました。

・個人的な関心としての学問領域と自分が仕事としてメインで取り組む領域、どちらに据えるかどうかということは今後のキャリアを考える上でも大事なポイントだなーと気づかされました。

 

以上となります!

 

 

 

 

■要約≪ザ・プロフィット≫

今回はビジネスモデルを題材にした本を要約していきます。

23種類のビジネスモデルについて師匠と弟子の対話形式でまとめられた本で、似たような毛色の本としては「ザ・ゴール」や「クリティカルチェーン」などが挙げられます。

様々な顧客のビジネスモデルを見たり、自分が従事する事業の収益性という観点で「利益をどのように生むか」ということについてはずっと関心がありどこかで読もうと思っていた本でした。

 

 

「ザ・プロフィット」

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか | エイドリアン ...

■ジャンル:ビジネス

■読破難易度:低(造語多いので読みにくさはありますが、経済小説のような作りになっているので内容の理解はかなり簡単です。)

■対象者:ビジネスモデルについて詳しくなりたい方・事業開発に関わる方・利益の源泉について興味関心のある方

 

【要約】

・とある企業の経営企画にいる人主人公で、自分の企業が窮地に陥り、現状を打破する為に社内に向けてビジネスモデルや経営戦略の提案をする師匠に教えを乞いながら試行錯誤していくストーリー仕立てになっています。

・23個のビジネスモデルについて洗い出してまとめても味気ないので気になり処を抜粋してまとめます。

 

■ソリューションビジネスの重要性

・物売りから範囲を広げて顧客の課題に深く踏み入り、自社の製品群をソリューションとして提案することで商取引をあげていくというのが基本中の基本。(無形商材及びソリューション営業の重要性が増した80年代以降叫ばれるようになりました。)

「顧客関係性を向上させ、依存度のある商取引を生み発展させていくポテンシャル」があるので、ソリューションビジネスは鉄板であると何度も説かれます。

 

垂直統合の重要性

「同一製品群にて、価格帯を広げて顧客を網羅的に獲得すること」

・「製品ラインナップを広げて顧客のバリューチェーンの包括範囲を広げること」

この2つが利益創出の為の大事な原則であると説かれます。資金力のある大企業がニッチ中小よりも収益性を上げやすいのもこのような原理が働くからです。

 

■インストール・ベース利益モデル

・ハードウェアを投資としてソフトウェアで稼ぐモデルを指します。カメラやゲームがそのような典型例で、ソニー任天堂の商売を想像していただくとわかりやすいと思います。大量にマーケティング費用を投下して市場の認知形成及び購買促進が不可欠とされていて、初期費用はかかりますが一度確立すると売手が主導権を握ることの出来る貴重なビジネスモデルであると説かれます。

 

■ローカル・リーダーシップ利益モデル

狭域深耕を繰り返してスケールさせていくビジネスモデルを指します。ニッチ化して集中したものを多角化させ、範囲の経済を回していくないしはニッチ化したものを武器にスケールする展開を指し、得意パターンを横展開していくことで成長していく企業は軒並みこのモデルを採用しています。

 

■市場シェアが価値を持つ

・購買力は製造業において原料を安く仕入れる力の源泉となります。市場シェアが高いこと自体でブランド想起やマーケティングコストの低下などをもたらすということがあり、だからこそ売り上げやシェアを追求することが一定の経済合理にかなうということを示しています。

 

【所感】

・翻訳小説特有の読みにくさはありましたが、実例に照らして読むことが出来るので読みごたえがある本でした。「なぜ、そのような仕組みを持つのか」・「どんな価値を意図して設計されたものなのか」などの自身で抱えていた問いに答えるような内容のものもあり頭が整理された印象です。

・様々なビジネスモデルを眺めて、改めてリボン図・プラットフォームビジネスといった身近なビジネスモデルが秀逸であるということを思い知りました。

・自分が従事している事業が利益を出しやすいモデルであるからこそ、まだやりようによっては出来るという自信にもつながりました。また、顧客のビジネスが成功する為に何が肝になるか?ということの仮説検証の幅が広がった印象があるので今後活用出来るようにしたいと思います。

 

以上となります!

 

 

 

 

 

■要約≪企業戦略論(中)≫

 

今回は、ジェイB・バーニーの「企業戦略論」三部作の中編を要約していきます。

上巻はVRIOの概念(競争優位が成立する戦略の条件「価値」「希少性」「模倣困難性」「組織」の4要素)やケイパビリティに代表されるリソース・ベースト・ビューのような本書全体の思想をまとめた基本編になっており、中巻は「事業戦略」に関してフォーカスしたパートになります。

ポーターの「競争の戦略」を掘り下げた内容になっており、三部作全体の中で一番実務応用性が高いと思われるパートです。

 

上巻及びポーターの要約まとめは下記です。

「競争の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

「競争優位の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

 

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「企業戦略論(中)」

企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続 | ジェイ・B ...

■ジャンル:経営戦略

■読破難易度:中(一部数式が出てくるものの、基本的には平易な記述がなされており実務利用を意図して著されているのでとても読みやすいです。内容自体は他の本にも記述されているものも多く、恐らくこの本をうまく活用するように意図して初めて意味があるという風に構成されているのだと思います。)

■対象:競争原理について興味関心がある方・企業分析のスキルを体得したい方・事業や経営戦略に対して興味関心のある方

 

 

【要約】

垂直統合「コスト・リーダーシップ」「製品差別化」「柔軟性」「暗黙的談合」の代表的な事業戦略について掘り下げて妥当性をVRIOのモデルに即して検証していく形式となっております。ちなみに、下巻はこうした事業の相互関係に着目した全社戦略(戦略的提携・多角化戦略・合併買収・国際化)を説いています。

 

垂直統合

・ビジネスの流れ全体のある部分を自社で完結させることで、規模の経済・差別化の力学を働かせることで競争優位を志向しようとするのが垂直統合です。製販管の連携なども垂直統合の考え方です。バリューチェーンのどの範囲を自社でカバーするか」垂直統合の戦略志向性に繋がります。

垂直統合の価値は自社の競争優位の源泉になる情報を独占的に保有し、持続させることが可能になる点と本書では説かれます。その為、業界のKSFと親和性が高く、自社が他社に比べて強みを発揮できる機能において発揮するのが定石的です。

・「どの資源を自社で持ち、どの資源を外注するかといった所が企業の差異になる」ということを意味し、戦略を持続的に機能させるためには適切な組織体系も同時に検証しないといけないとされます。

・定石的にはCEOと各機能のCOOにより意見交換をして意思決定をする「U型組織」が最適とされており、現場推進・人材活用という観点はどの行動を評価するかといった制度設計・指標設計等の問題も重要になるとされます。

 

■コスト・リーダーシップ

規模の経済・経験曲線に代表される効果を発揮し、市場平均よりもコストを抑えることで競争優位を構築するという思想です。

※古来の製造業は規模の経済を追求して生産設備を増強したもので、化学や石油・製紙などのプロセス製造業界と呼ばれるような化合させる工程を踏む業界に親和性が高いとされて来ました。

・コスト・リーダーシップの成立条件としては「業界全体の生産量は市場流通価格を決めるファクターになりうるかどうか」という問いに応えられる業界かとされます。即ち、安いこと自体が競争力学に好意的に反応する性質をもつかということを指します。

・コスト・リーダーシップを支える組織設計としては専門化・分業制等が該当し機能別組織を追求していく形となります。言い古された話しではありますが、従事する人の仕事は非常に形式的で怠惰を生む源泉になりかねないので適切なマネジメントを行うことが難しいことは懸案事項になります。一方で、外部環境の変化が小さい時などに成立する条件なので、人に期待しないマネジメントやワークを是としない従業員が幸せを見出すという側面もあると説かれます。

 

■製品差別化

製品・サービス上の認知上の価値を増強することで購買行動をもたらしに行く戦略です。基本的に「顧客がどのように認知するか」がトリガーとなる為、顧客起点で物を考え、顧客の見え方をしっかり追求する動きが基盤となります。

※裏を返すと実際に凄さがあろうとも顧客がその価値を認識しないものは差別化戦略としては機能しないですし、錯覚を起こすことが出来ればそれは戦略として成り立ちます。

・上記側面から製品差別化は消費財などの場合において、消費者認識のブランディングマーケティングのスコープで物を考えることが急所になりやすいという特徴を持ちます。対照的に生産財の場合においては、営業がどのように顧客に付加価値を追求するのかという所で論証されます。

・製品差別化をなす根源の代表は7つです。

「製品の特徴」

「機能間のリンテージ」

「タイミング」

「地理的ロケーション」

「製品の品ぞろえ」

「他企業とのリンク」

「評判」

とされます。

・そして製品差別化はあくまで他社比較・顧客の認知形成に効果を依存するので、常に競合分析・相対分析を必要とされる戦略とされます。実行する上の組織設計において考慮すべき要素は「機能部門間コラボレーション」「制度的コントロール「過去とのつながり」「市場見通しへのコミットメント」の4つとされます。

 

■コスト・リーダーシップ戦略と製品差別化戦略の関係性

・2つの事業戦略は矛盾する要素を持つ為、二律背反になるとされます。製品や市場規模・顧客価値の定義・製品ライフサイクルによりどの戦略を取るのが望ましいかは異なり、組織風土により戦略志向性も変わる為です。大まかにいうと「高価格で差別化された製品で低シェアでも収益性を重視」するか、「低価格で面を取りに行くことで規模の経済やシェアを重視する」かの二択に分岐するとされます。

 

■柔軟性

・環境変化著しい業界においては、垂直統合や製品差別化に代表されるような「決め打ち」をせず、柔軟に環境変化出来る組織体系を構築していること自体が競争優位になるとみる見方も出来ます。柔軟性はこのような概念で競争優位を説いたものです。

※尚、柔軟性の章でメインで論じられるリアルオプション分析は要約しても数式の羅列になり何も意味をなさないので、割愛します。

 

■暗黙的談合

競争せず協力関係を見出し優位性を構築するという手段もあり暗黙的談合はこのカテゴリーです。協力戦略には大別して「談合戦略」「戦略的提携」の2つがあります。※アライアンスを組むみたいなのもこのカテゴリーに入ります。会社統合せず、パートナーシップ提携にとどまるのは戦略的柔軟性を確保する為です。

・成立するかどうかはゲーム理論に代表される構造が働きます。詳細は割愛します。

需要の天井が決まっている業界においては複数社で暗黙的談合をしたほうがコストは控えめになることは自明なので、暗黙的談合は起きやすいとされます。

・暗黙的談合が存在する前提条件としては「参入企業が少数であり、マーケットシグナルが働きうる業界構造であること」が条件になります。参入障壁があり、既存企業が影響力を相互に持つみたいな恵まれた環境じゃないと起こりえません。製造業や官公庁向け案件に多く、非常に安定性があるが仕事は非常に定型的というものが現実です。

・実行において重要なのは「組織効率の維持」と「組織の自己規律」の2つといわれます。競争圧力が減る為、内部の人材はひどく官僚的になり戦略遂行におけるクオリティも高く保つインセンティブが働きません。その為、人材に期待する前提のマネジメントが出来ず政治的な振る舞いや人材に求める水準の低下等、負の側面も大きいと言われます。

・暗黙的談合の最も難しい所は「その談合を守り続ける自己規律を関係各社が持ち続けないといけない所」にあるとされています。そうしないことには競争優位は持続せず、綻びがでると競争優位の前提に存在した非常に弱い組織のケイパビリティがどんどん負の側面として成果物に反映されていきます。

 

 

【所感】

・一つ一つの戦略の目新しさはないですが、どんな場面において有効か・適切な組織設計は何かを含めて論証されているので具体的な企業や業界に照らして思考することで、非常に面白く読めます。

・言うは易く行うは難しが事業戦略だと思っていて、実際は社内政治に代表される組織力学が働くのでそのまま当てはめるのは不可能とされます。ただ、論述されている要素のエッセンスをベストプラクティスとして自分の思考体系に入れて少しでも応用出来るようにしていくことには非常に意味があり、かつトップマネジメントが何を懸案して意思決定しているのかということを少しだけ知れるような内容なので非常に面白く読めました。

・如何に自分事として実務に応用出来るようにアウトプットしていくかを考えるのは読者に委ねるというタイプの本だと思います。マイケル・ポーターの競争の戦略を読んだ後に読むととても解像度があがり面白く読むのでおすすめです!

 

以上となります!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪下期総集編≫2020年度に読んで役にたった本8冊

 

今回は半期に1回のまとめシリーズです。

早いもので、2018年度から行い通算6回目のシリーズになっていました。

自分なりに取得したい知識分野や、自分に必要な本の類が体系化出来てきたので似たようなテーマ感のものを好んで読んだ印象です。

 

※過去のまとめはこちら。

ty25148248.hatenablog.com

ty25148248.hatenablog.com

 

≪目次≫

・競争優位の戦略

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント

・戦略策定概論/組織設計概論

・経営者の役割

・途上国の人々との話し方

・日本語の作文技術

MBAオペレーション戦略

君主論

 

 

「競争優位の戦略」

楽天ブックス: 競争優位の戦略 - いかに高業績を持続させるか ...

戦略論の第一人者ポーターの代表作です。

「競争の戦略」は企業の外部を取り巻く競争因子を考察したのに対し、「競争優位の戦略は」企業内部の機能バリューチェーンという有名なモデルにより分析を行い、どのように業界・市場内部で他社との優位性を形成・維持拡大していくかを説いた本です。

5フォース分析・3Cなど有名な企業分析のフレームワークはありますが、もう少し細かく企業の活動を分析し、それらのフレームワークでもたらされる概念がどのように結合するのかを説いている様は圧巻です。

かなり値が張りますが、企業分析や事業分析に何らかの形で関わる方は絶対読んで損のない内容だと思います。

※過去の要約はこちら。三部構成になっています。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 | Philip ...

マーケティング理論の第一人者コトラーの代表作です。

マーケティングの全体感・各論は勿論、マーケティングの視点を基に企業活動をどのように最適化するかというスコープで記述がなされており、この分野はこの1冊読み込めば恐らく十分なのではないかと思えるくらいの網羅性です。

4P・チャネル・セグメンテーション・CRM・国際競争など扱う分野は非常に多岐に渡り、自分の対峙するビジネスや顧客が展開する事業などに当てはまめて思考しながら読んだのでとても納得感のある内容でした。

非常に高価でページ数も多い為、持ち運びに不便な難点はありますがマーケティング分野の本数冊分の価値はあるので費用対効果はかなり高いと思います。

※過去の要約はこちら。八部構成の超大作です。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「戦略策定概論」「組織設計概論」

戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際 | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際 | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

ロジカルシンキング系の本と戦略論の著名な方の代表作です。

この本は実務応用を意識した戦略策定・組織設計について説いた本で、2冊が対をなす構造になっている本です。硬そうに見えますが、実務を意識して作られている為具体例も豊富で非常に読みやすいです。戦略策定概論はフレームワークの実用法なども記載されており、理論と実践の橋渡しとしてとても役立ちました。

組織設計概論は戦略を具現化するインフラとしての組織設計・2000年前後から一気に改革が起こり、現代のスタンダードになった人事制度や組織制度などの仕組みがわかるので、あらゆる分野の知識が結合されるような読後感のある本でした。

※過去の要約はこちら。

ty25148248.hatenablog.com

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「経営者の役割」

バーナード経営者の役割 (有斐閣新書 D 35) | 飯野 春樹 |本 | 通販 ...

チェスタ・ーバーナードの古典的な書物です。

大学で経営学を学んでいた人なら聞いたことがあるかもしれません。

1930年代に著された非常に古い本で、組織に働く力学や管理者の役割・価値などを説いた本です。実務応用性はないですが、日常的に慣れ親しんだ組織や階層構造がどのような意味を持つのか等について考察がなされており、内容を読み込むことで思考の深みが増す感覚があり面白かったです。

※過去の要約はこちら。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「途上国の人々との話し方」

途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法 | 信明 ...

発展途上国を支援する方が現場で培ったファシリテーションスキルについて論証した本です。国際協力の実情を知る読み物としても面白いです。

メタ認知を促進して内発的動機付けをどのようにするか・相手に対して何を期待して何を期待しないかなど実践知をまとめておりとても勉強になりました。

※過去の要約はこちら。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「日本語の作文技術」

新版】日本語の作文技術 (朝日文庫) | 本多勝一 |本 | 通販 | Amazon

タイトルの通り、日本語の正しい書き方について記述されている本です。

助詞の活用方法・接続詞の使い方など、豊富な事例が基に記述されています。

国語は侮れないという課題意識から基本を学ぼうという考えに至り、読みました。

体系的に学ぶ機会は少ないので非常に参考になる内容が多かったです。

自分は文章がまだまだ美しくないので、発展途上であると思っています。

 

 

MBAオペレーション戦略」

MBAオペレーション戦略 (MBAシリーズ) | グロービス |本 | 通販 | Amazon

定番のグロービスシリーズです。

戦略起因単独の競争優位は生み出せない現代では、業務遂行能力が競争優位の源泉になるという課題意識の基、CRMやSCMについて考察している本です。

戦略と現場を繋ぎ渡しするという意味でオペレーションはバカにならない分野であり、しっかり体系的に学べたのは良かったなと思いました。

※過去の要約はこちら。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

君主論

君主論 (岩波文庫) | ニッコロ マキアヴェッリ, Machiavelli, Nicoll`o ...

最後はこちら。有名な古典です。

様々な統治体系を事例にしながら、極めて現実的に統治をする方法論・考え方について記述がなされています。理想論ではなく、普通の人のメカニズムをベースにこのようにするべきということを淡々と記述されており非常に勉強になります。

当時としてはとても斬新な内容だったのではないかと思います。

※過去の要約はこちら。

ty25148248.hatenablog.com

 

 

 

以上の8冊となります。

意図的に、その分野の名著と呼ばれるような一見読みにくい本を時間をかけて読むことで自分の血肉にしようと意識して読んでいた半期でした。全体感として得るものは多かったなという感触があり、徐々に色々な分野の考え方や知識が有機的に結合していく感覚を持てたのでとても楽しかったです。

自分が介在価値を発揮できる範囲と深さは制限つけず、これからも頑張っていこうと思います。

 

以上となります!

 

 

■要約≪MBA 定量分析と意思決定≫

今回は久々にグロービスMBAシリーズを要約します。

定量分析」に特化した内容になっていて、統計的なものの見方や具体では損益分岐点分析・KPIなどのテーマを取り扱っています。算数的なものの見方を養うという意味で、収益責任を伴う部署で仕事をする人にとっては少なからず関わりのあるテーマかと思います。

 

MBA 定量分析と意思決定」

MBA定量分析と意思決定 | グロービス・マネジメント ...

 

■ジャンル:統計学定量分析

■読破難易度:中(統計学的なものの見方を知らない方だと、大量に登場する数式にびっくりするかもしれません。数式自体にあまり意味はなくて、何を明らかにする概念なのかを理解するとすれば比較的読みやすいと思います。)

■対象者:定量的に物を見るという力に関心のある方・統計学をビジネスの実務に応用させたい方・事業を企画・開発などすることに関わる方全般

 

【要約】

※本書のウェイトの半数を占める具体的な損益分岐点分析・統計学・指標の解説は意味がないので割愛します。興味を持ったら実際に読んでみることをおすすめします。

 

定量分析の意義と価値

定量分析の意義は「意思決定のスピードや質を高める為に色んな角度からモノを検証することを可能にする」ということにあります。・感覚だけで意志決定をすることは共感を生まずリスクしか生まれないですし、共通の物差しを作る定量分析はコミュニケーションのバラエティを生むことになります。数字で説明しないと理解・説得が出来ないということは日常的ですね。

定量分析をして共通の物差し・判断軸を深い次元で置くことは人材の生産性を高め、優先順位を決めることで人材の適性活用に繋がるとみることも出来ます。その意味においてマネジメントは必ず持たないといけない概念ですし、レバレッジが効く仕組みを作るうえで最重要なツールです。

 

定量分析のステップ

「目的の確認」「仮説/切り口の考案」「情報収集」「前提の確認」「分析」「解釈」「シミュレーション」というステップを経て行われるとされます。分析をする際は目的を明らかにして、適切な問いや切り口を立てることに多くの工数を割くことが成果に繋がります。※いきなり部分の分析だけしても意味を持たないですし、この問いの立て方やセグメンテーションの切り方こそがセンスが問われます。定量的に物をみる経験やKSFを見に行く習慣から生まれるので常に試行錯誤し続けることが大事だといえます。

・ゼネラリストとしての定量分析で求められる要素は「分解し、構成要素の大きさ・力関係を見ること」「何かが変わった時の変化の度合いを見る」「分布や分散の様子を見る」の3つです。分析をすること自体には意味はなく、数字の羅列から何らかのインサイトを示すことで、周囲に影響を与えたりクリティカルなポイントを定めることで責任を負う領域の付加価値を上げることが大事です。

 

定量分析の留意点

・論だけで人は動きません。共感を持ってもらわないと組織は動かないので、定性面に訴えかける問いを立てることも同じくらい意味があるということがいえます。自分が本当にしたいことがあるのであればそのテーマ感をあらゆるステークホルダーに刺さるようにつなげるメッセージングも必要になるということが言えます。

 

定量分析の落とし穴

・データ収集や解釈をする際にはバイアスが入るもので国語と算数の読み解きを出来ないと正しいインサイトを示すことが出来ないです。だからこそ、顧客接点や業務プロセスをしっかり解像度もって理解し、ステークホルダーの動きをどこまで想像した上でインサイトを示すことが出来るか」ということは大事になります。

 

■ビジネスを見るうえで重要な代表指標

市場シェア…顧客数を増やすか既存顧客の取引高増加か顧客の購買頻度向上のいずれかにより実現されます。

顧客満足度…成熟市場においては顧客の離反を最低限に抑え、維持拡大していくことが大事であるため、重要指標になりやすいです。かといって顧客の声ばかり応えているとイノベーションのジレンマにも陥るので、顧客の声を俯瞰して洞察することも同じくらい重要です。

顧客内シェア…取引の内訳を可視化することで顧客のロイヤルティが明らかになります。

認知率…「顧客の純粋想起や利用にどれだけ寄与しているか」がわかり、実際の購買に繋がっていない場合、マーケティングマネジメントが最適化されていない恐れがあるということがわかります。

新製品比率…売上高においてどれだけ新製品が寄与しているかを示す指標であり、マーケティングと研究開発の秀逸さがわかる指標といえます。

 

 

 

【所感】

・あくまで分析ツールや指標は道具でしかないので、道具に踊らされても意味はありません。どのように考えるかやどんなものが大事なのかを理解して実践することが最も重要であると思います。個人的には定量的な分析と同じくらい大事なのが「その数字がどのような因果関係の基に形成されたか」という所謂「国語的な分析」でして、国語的な分析が実際のアクションを決める際にはとても重要性を帯びるなという印象です。両方の側面から分析できないと再現性のある打ち手は出来ないですし、かなりの訓練を有するので難しいなというのが実体験としてあります。

・一個人としての成果だけではないものを追求する際にはこのような分析はとても付加価値を生む行為であり、現状把握や指針を決めるうえでとても大事だと思います。なので組織全体にレバレッジを効かせる行動をする為には避けて通れないのが定量分析であるというのが個人的見解です。

・本気でこの分野に取り組み始めて1年弱ですが、ようやくまともにアウトプットに反映できるようになってきた実感覚があり、体得に時間がかかるものだと思っています。しかし、それ故に汎用性と希少性は高く学び甲斐のあるジャンルだなと思います。

 

以上となります!

 

 

■要約≪企業戦略論(上)≫

 

今回は、ジェイB・バーニーの「企業戦略論」三部作を要約していきます。

海外MBAの経営戦略のテキストにも指定されている本であり、2000年前後に著された本ながら既にこの分野の決定版ともいわれるような本です。

ポーターの「競争の戦略」・「競争優位の戦略」と相互補完の関係にある本といわれており、ポーターの書物よりも実務的でかつ内容を基に読者が内省して実務応用することを意図して作られた本ともいえます。

上・中・下巻の三部構成であり、上巻は基本編ということで中下巻にわたり検証される全社戦略・事業戦略を説明する理論の下敷き的な役割と言えます。※裏を返すと、基本編を読めば最も重要な要点は掴めるともいえます。

 

尚、ポーターシリーズの要約は下記です。

「競争の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

「競争優位の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

 

 

「企業戦略論(上)」

企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続 | ジェイ・B・バーニー ...

■ジャンル:経営戦略

■読破難易度:中(一部数式が出てくるものの、基本的には平易な記述がなされており実務利用を意図して著されているのでとても読みやすいです。内容自体は他の本にも記述されているものも多く、恐らくこの本をうまく活用するように意図して初めて意味があるという風に構成されているのだと思います。)

■対象:競争原理について興味関心がある方・企業分析のスキルを体得したい方・事業や経営戦略に対して興味関心のある方

 

【要約】

■戦略という概念の定義

・戦略の定義を「如何に競争に成功するかということに対しての一企業が持つ理論」と置いて本書は理論が説かれます。この本は主に競争原理や競争優位について論証されますが、競争優位が出来ているとは「特定市場において個社がとる選択肢が独自性を帯びており、他の企業が何らかの要因で出来ないという状態になっていること」を指します。

・一方で他の企業も同じようなまたは同程度の付加価値を持つ戦略が実行されている市場の状態は優位や劣位が生まれていないので、「競争均衡」にあるとされます。

 

■業界構造はどのように決まるか

業界構造(Structure)・企業行動(Conduct)・パファーマンスの3要素により企業の競争の力学は生じるとされます。もう少し噛み砕くと、「参入障壁撤退障壁の有無」・「価格の差が製品毎に生まれるかどうか」・「競争を志向するかどうか」・「平均利益率」・「業界のKSF」などの違いにより大大まかな業界構造は決まるという主張の基に分析がなされます。

 

■脅威の分析

・市場参入企業個社毎の脅威は新規参入の脅威・競合の脅威・代替品の脅威・購買者の脅威・供給者の脅威の5つに分類されると説かれます。※個別要因に関する論証は割愛します。

・5フォース分析の一番の価値は戦略立案の際に考慮するステークホルダーをより広く見ることで戦略を複眼的に練り上げるということを補助している所とされます。

 

■機会の分析

・業界は大分類として「市場分散型業界」「新興業界」「成熟業界」「衰退業界」「国際業界」の5つ、その派生形として「ネットワーク型業界」「超競争業界」「コアなし業界」の3つがあるとされます。

・上記分類は業界構造や参入業者の数・参入障壁の有無などにより、業界の競争圧力はおのずと決まり、利益率や平均な収益性も業界によりけりとされます。

 

■企業の強みと弱みに関する分析

・同じ業界に所属していても平均的な収益しか上げられない企業もいれば、圧倒的な付加価値を生みだす企業も存在します。その差は保有する経営資源やケイパビリティ(企業が持つ資源の力の総量的なニュアンスです)によりけり」という立場から論証がなされます。

「企業は生産資源の集合体であり、個別企業ごとにそれらの生産資源は異なっている」という前提があります。経営資源の種類は大分類で「財務資本」・「物的資本」・「人的資本」・「組織資本」、具体的には「ケイパビリティ」・「コアコンピタンス」・「組織内部のプロセス」・「情報」・「ナレッジ」とされます。

バリューチェーン分析により競争優位の源泉にあるケイパビリティは何かを特定するのが、一般的な企業分析です。付加価値を創出する源泉になりうる重要な機能は6つといわれており、「技術開発※生産財に多い」「製品デザイン」「製造※生産財に多い」「マーケティング(営業含む)」「流通※消費財に多い」・「アフターサービス※コンシューマーサービス企業に多い」です。

 

■個別企業の優位性を分析する観点

「経済価値に関する問い」「希少性に関する問い」「模倣困難性に関する問い」「組織に関する問い」の4つの観点が重要とされます。

・経済価値に関する問い…企業が保有する資源・ケイパビリティを活用することにより外部環境を機会と捉えて付加価値の高い営みを出すことが出来るか?という観点

希少性に関する問い市場は競争の力学が働いて成立する為、当たり前であるが特有の経営資源やケイパビリティがどれだけ希少性を持つかに効力は相関します。

模倣困難性に関する問い経営資源やケイパビリティの秀逸さが競合企業に真似できない源泉を辿る場合、持続的な競争優位になります。市場の対応策としては代替か直接模倣をするかのいずれかです。

組織に関する問い…戦略と組織はセットであり、戦略を実行するものとして組織は存在するし組織がうまく機能するかはマネジメントによりけりです。

 

 

【所感】

・実務応用を意識した構成になっており、書かれている内容を内省することで自らの血肉としてくれという著者のメッセージがひしひしと伝わる本です。

・個人的には各パートにおいて、理論の効用と詳細を説きながらも個別理論の限界をしっかり説いている謙虚さと真摯な姿勢が非常に尊敬できる部分です。「そんなに現実は難しくない、内容をうまく噛み砕いて実務応用するのは君たちです」と言わんばかりの内容で長期間にわたり支持されるだけの本だなと感じました。

・企業と業界に関する分析フレームワークは法人営業をする上での実務相関性は勿論、自分たちの対峙する製品や事業が経営観点でどのような意味合いを持つかを考えるきっかけになるので、とても大切だなと改めて感じます。自分が貢献すべき価値や目指す方向性も何となく見えてくるように思えます。

 

以上となります!

 

 

 

 

■要約≪組織設計概論≫

 

今回は波頭氏の「組織設計概論」について要約をしていきたいと思います。

この人の本は「戦略策定概論」とセットで有名で戦略と組織は主従関係にあるという共通したメッセージを持ちます。

よくある組織論というよりも、組織は会社全体においてどのような役割を持つか?組織改革・設計をするにはどのようなプロセスを踏むか?ということを極めて実務的な手順に即して記述されている印象です。

※尚、姉妹作の戦略策定概論の要約はこちら。

 

ty25148248.hatenablog.com

 

「組織設計概論」

組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際 | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

■ジャンル:組織論

■読破難易度:低~中(後半は事例集のような作りになっており、2000年前後に書かれた本なので、現代で標準化した人事制度や福利厚生制度などの紹介がメインです。)

■対象者:組織について興味関心のある方・組織設計の実務的な流れについて知りたい方・戦略と組織の関係性について興味関心のある方

 

【要約】

■組織とは

・「組織とは、複数の組織要員の有機的協働によって、より効率的に共通の組織目標を達成することを通じて、各組織成員の得る個別効用を極大化させるための集団」と定義されます。相互作用することのレバレッジを意図して組織は作られるという大前提があります。

・20世紀後半の日本的経営の崩壊(年功序列型・終身雇用・企業別組合)により、金銭的報酬で人を動機づけるのには限界が来て、ジョブロイヤルティや自己実現などのスコープも加味して組織構成員を評価・動機付けしないと人材は最適な生産性を持たないという組織理論を論証する前の前提があります。

 

■組織の構成3要素

「戦略」「システム」「人材配置」という3つの観点でインフラ構築されると説いています。

・組織が有効に機能する為には「戦略合理性」「組織論理合理性」「業務特性合理性」の3つを含意するような設計がなされないといけないとされます。戦略合理性とは目的とする事業戦略の特徴を備えた設計になっているかという観点で、組織論理合理性とは成員の人数や組織構成を考慮した設計になっているかという観点、業務特性合理性とは個別業務の内容や処理手順に即した自然な組織設計になっているかという観点を意味します。※詰まる所、戦略と組織設計が有機的に結合していて、実現可能性が高く無駄が少ない組織になっているかということです。

 

■組織設計のプロセス

・現状の組織体系が負を持っている場合、組織を再設計する改革を行う必要が発生します。当面の業務生産性の低下などの短期的な問題を乗り越えてでも解くべき課題がある時に実行され、具体的には下記6つのプロセスを経るとされます。

●プロジェクトの編成(トップマネジメントが責任をもち、適切な人材により編成されないと実効性にかける+組織全体へのメッセージングが薄まるとされます。二律背反のような意思決定を伴うこともあり一定の実務経験を持ち、幅広い角度からモノをみれる構成員で編成されないと筋の良い仮説と成果物はなされにくいとされます。※第三者の意見を入れることで透明性を増すということでコンサルなどを使うのもこのような背景があります。)

●組織課題の整理「組織機能」「運用要件」の2つのスコープから現状の可視化・ケイパビリティを検証することが必要とされており、実態に即した実現可能性の高い課題設定と打ち手を決めることが必要です。ここに一番時間を割くべきとされており、全社戦略・事業部戦略・現状の組織コンディションなどを照らして落としどころをつけに行くプロセスがあり、非常に泥臭さを持つとされます。

●基本理念の設定憲法のようなもので、新しい組織体の是とする価値観や目指す方向性を体現したものであるべきとされます。)

●3S(戦略・システム・人材配置)への展開(「事業の数と規模」「事業所の場所」「保有人材の内訳と人数」を考慮して戦略や組織体系(事業部別組織か機能別組織化マトリックス組織か?など)と説かれています。※詳細は割愛します。)

●移行準備(新部長・管理職などの人選をまず行い、その次に具体的な現場人員や組織体系を決めていくのが具体的な手順とされます。組織改革は風土醸成を両立して行うことが大事で現場浸透しないと絵にかいた餅になるので重要なポイントとされています。時には現状の組織で有能な扱いをされている社員を閑職に追いやるような意思決定も含み一定現場の混乱は生まれますが、新たな価値観を体現するという意味で効果があるとされます。)

●定着化可否を測る指標を設定して、モニタリングを継続的に行うことで効果検証・適切なステークホルダーからの意見を収集して必要に応じて骨格を崩さない範囲で軌道修正していくことが実務的な流れとされます。現場マネジメントレイヤーを巻き込み、適切なメッセージングで動機付けしていくことが必要で、息の長い仕事になります。)

 

■組織の時代

戦略の秀逸さが可否を分ける80年代からケイパビリティや組織がしっかり戦略を遂行できるかといった組織の時代に90年代は変化しました。そしてオペレーション・実行などもアウトソースされるような時代になり、その重要性は増しています。

※○○支援サービスという市場がホットになっているのもこうしたトレンドの象徴といえるかもしれません。

・背景には日本的経営の崩壊・国際市場化・ITの経営資源によるビジネスを取り巻く環境が激変したということが挙げられます。

 

■現代の組織戦略のトレンド

「フラット型組織」・「カンパニー制」・「M&Aとアウトソーシング」・「ネットワーク型組織とされています。人材の自由裁量を増して、競争市場に対峙させることで適切に能力開発をすることを目的として上記4種は設定されており、固定費削減観点から重要機能以外は外注し変動費化するということもトレンドとしてあげられます。

ファブレスメーカーなどは最たる例かと。

 

 

 

【所感】

・後半の事例集は2000年代の本ということもあり、さすがに賞味期限切れ感がありましたがようやく現代でスタンダード化しているような事例も多く(裁量労働制・抜擢人事・自己申告制度・選択型研修制度など)、今話題の組織設計や方式もスタンダード化するのにはかなりの年月がかかるのだろうなと感じました。その為、ようやくも一部割愛しているパートがあります。

・会社としてどのような意図を持ち組織設計をしているか・各ポジションにどんな期待や役割を求めているかを色んな角度から検証できることには意味があると思っていて自分の課題感にタイムリーに即した内容の本でした。やはり、戦略や方針を自社資源(資金・ケイパビリティなど)を考慮して実現可能性のある施策に反映したり、やらないことを決める(≒イシューを特定する)ということはどのレイヤーでも行う重要事項だなという再認識が読後感としてあります。

 

以上となります!

 

 

 

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART8≫

 

今回も「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」シリーズを要約していきます。いよいよ、コトラーシリーズの要約はおしまいとなります。

最後のPART8はマーケティング観点で長期的成長を如何に実現するか?」を説いています。具体的に取り扱う概念としては「新商品開発」・「グローバル市場への進出」・「統合型マーケティング」の3つです。

 

尚、過去の要約は下記です。

■PART1

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART2

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART3

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART4

ty25148248.hatenablog.com

 ■PART5

ty25148248.hatenablog.com

■PART6

ty25148248.hatenablog.com

 

 ■PART7

ty25148248.hatenablog.com

 

 

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 | Philip ...

■ジャンル:経営戦略・マーケティング

■読破難易度:低~中(記述量は膨大ですが、論理展開はとてもわかりやすく焼き直したものを大学の専門レベルで扱うこともあるくらいの内容です。)

■対象者:マーケティングに興味関心のある方・顧客接点を伴う業務に従事する方全般・消費財メーカーに関わる方全般・戦略策定プロセスに興味関心のある方

 

≪選定理由≫

・経営と現場の統合ということを個人的なテーマとして置いています。

・その中でも「マネジメントレイヤーがどのようなことを念頭に置き戦略を描いているのか・それをどのように現場に翻訳・推進・部分戦略を描いていくと一番適切か?」

ということに関心があるためです。

・関係性営業や感情マネジメントだけではうまく行かないし、かといって論理だけで解決しないのがビジネスの世界な中で、あらゆるものへの理解度を根元から上げていかないとモグラたたきのように発生する個人的な課題に対処できないと思っています。

・机上の最適な理論を自分なりに体得するプロセスを通じて、うまく現場に適合させて戦略策定・実行をして介在価値をあげたいというのもあります。

 

【要約】

■新製品開発

外部企業の買収・アライアンス・新規事業算出の3つにより新製品開発は成しえられます。全くの新規開発は全体の10%に満たないとされていて、大抵は既存製品のリポジショニングやマイナーチェンジ・既存製品の新市場浸透などを基軸に形成されることが多いです。

・新製品開発を収益性観点を意識して実現する為には、ボトムアップで人為的に生まれる風土形成新規開発のインセンティブを外に表出することの二軸をしていかないと組織として新規開発をマネジメント出来ないとされます。

・開発のプロセスはアイデア創出・アイデアスクリーニング・コンセプト開発・コンセプトテストと段階を経るとされます。標的市場の設定および標的顧客が何を価値と捉えるかを想像し、「自社の資源と照らして自社がやるべきか?」「どの規模で進めるか?」といった問いに照らして選定されていくとされます。

・製品コンセプトが決まった後は予算や収益性の観点を考え、実現可能なプランに落とし込まれていきます。具体的には流通予算・損益分岐点の策定⇒短期売上目標の設定・戦略ロードマップの策定と段階を経ていきます。

尚、新商品を大量に出すということは一見よさそうに見え華々しいですが、裏を返すと既存製品の拡販努力不足や収益性が弱いということの象徴になるかもしれないので、気を付けないといけないと本書では警笛を鳴らしています。

 

■グローバル市場への進出

・インフラが整うにつれ、ビジネスの市場は海外を跨ぐようになりました。大企業の成長ニーズを国内で満足することが出来ず、拡大した結果競争相手は劇的に増加し、収益を継続的に確保することは難しさを増したという背景があります。

・海外進出する動機は「市場を分散させて安定化を図る為」・「規模の経済を働かせて国際競争力を獲得する為」・「海外市場の方が国内よりも集積性が高いと判断」などが代表的なもので上げられますが常に収益観点でその意思決定の妥当性を問うことが必要とされています。

・海外市場にはその地域特性というものが必ず存在する為、自国で展開していたやり方をそのまま適合してもうまく市場ニーズを取られることが出来ないというケースが多く存在します。時には製品コンセプトや表面的価値を変容させたり、現地有力企業にアライアンスを組み拡販を一任するなどの思い切った意思決定も必要とされます。

・どの規模・接点で海外市場に参入するかは千差万別であり、輸入業者を特約を結ぶ・海外拠点を設置する・海外部門を設置する・ライセンス供与し現地企業にマネジメントさせるなど介入度合いは多々あります。

※海外進出は個人主義集団主義というイデオロギー」・「格差の程度」・「男性中心対女性中心」・「不確実性回避の強弱※異質なものをどれだけ許容するかの文化的違い」なども考慮しなくてはいけなくバカになりません。時には価格やコミュニケーションスタイルといったビジネスを構成する主要素を変化し、市場適合する必要がある場合も多くあります。

 

■統合型マーケティング

・作れば作るだけ売れた時代の終焉と共に、マーケティングは部門としてだけではなく全社に導入すべき視点いえると本書では説かれます。即ち、マーケティング観点をどの機能部門も持ち、市場志向・顧客志向を持ちビジネスを行うことでしか継続的に市場から収益を上げ事業を存続することは出来ないとされています。

※これの応用系としてCSRやESG観点などの話しが出てくるとコトラーは2000年代に予言しているので畏怖の念を感じずにはいられません。

企業は社会的責任を負うとされていて、利益を出しながら、社会にわかりやすい課題解決をもたらし社会から共感を得ることがサステナブルな事業運営であり、資源に限りがあり情報化社会にある中で事業運営のルールの根幹をなす思想だと主張します。

・コーズリレーデッド・マーケティングと呼ばれる、企業の活動を通じて特定の思想を社会に表明するように操作するマーケティング活動も時代の潮流であるとされています。取り扱うテーマは自社の資源と相関性の高いものを選ぶとされており、食品関連会社のフードロス問題などはわかりやすい例です。

 

【所感】

・盛りだくさんの内容なのでかなり省略をしました。マーケティング・マネジメント理論の集大成と呼べるような内容で、これまでの理論を随所に織り交ぜながら展開されるので復習がてらとても面白く読めたパートでした。

標的市場を設定し、その市場に対してどんな価値を定義・訴求するかという所がマーケティングの手腕であり、製品市場戦略や販売戦略にも通じる内容で考えさせられる内容が全体感として多かったです。

・コアとなる価値の定義や標的顧客の解像度を上げる重要性を認識し、朧気ながら言語化出来るようになってきたタイミングなので、学んだことをしっかり実務応用し高いアウトプットを出せるように理論を活用していこうと改めて考えた次第です。

※原著と呼ばれるような各分野(戦略論・マーケティング・会計等)は骨が折れますが読んで内省することで確実に自分の血肉になっている感覚があり、継続していこうと思えました。

 

以上となります!

 

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART7≫

今回は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」要約シリーズの第七弾となります。PART7は統合型マーケティングにおける留意事項・ダイレクトマーケティングや人的販売機能についての考察などを扱います。

現代の多様化したマーケティングツールが取り巻く環境だからこそ、マーケティングツールをどのように組み合わせていくかということを体系的にまとめています。

 

尚、過去の要約は下記です。

■PART1

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART2

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART3

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART4

ty25148248.hatenablog.com

 ■PART5

ty25148248.hatenablog.com

■PART6

ty25148248.hatenablog.com

 

 

 

 

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 | Philip ...

■ジャンル:経営戦略・マーケティング

■読破難易度:低~中(記述量は膨大ですが、論理展開はとてもわかりやすく焼き直したものを大学の専門レベルで扱うこともあるくらいの内容です。)

■対象者:マーケティングに興味関心のある方・顧客接点を伴う業務に従事する方全般・消費財メーカーに関わる方全般・戦略策定プロセスに興味関心のある方

 

≪選定理由≫

・経営と現場の統合ということを個人的なテーマとして置いています。

・その中でも「マネジメントレイヤーがどのようなことを念頭に置き戦略を描いているのか・それをどのように現場に翻訳・推進・部分戦略を描いていくと一番適切か?」

ということに関心があるためです。

・関係性営業や感情マネジメントだけではうまく行かないし、かといって論理だけで解決しないのがビジネスの世界な中で、あらゆるものへの理解度を根元から上げていかないとモグラたたきのように発生する個人的な課題に対処できないと思っています。

・机上の最適な理論を自分なりに体得するプロセスを通じて、うまく現場に適合させて戦略策定・実行をして介在価値をあげたいというのもあります。

 

【要約】

マーケティング・コミュニケーションを取り巻く環境

・企業はあらゆる手段を用いて消費者に情報を届け、アプローチしようとするので情報過多になり適切な市場への深耕・ブランドエクイティの醸成は困難を極める状態になっています。その為、そもそも「顧客と適切なコミュニケーションを取れているのか?」という段階から検証を重ねていくことを常日頃行うことが大事と説きます。

 

■効果的なコミュニケーション開発の為の留意事項

・下記のステップが必要とされていて、

標的市場の明確化(想定顧客は誰で、何を期待しているかの定義)」

コミュニケーション目的の決定(なぜ、顧客を深耕するのかの定義)」

コミュニケーションの設計

コミュニケーションチャネルの選択(標的市場に訴求するのに適切なマーケティングツールのポートフォリオの決定)」

マーケティング・コミュニケーションの総予算の設定(収支計画を賄えるように設計しないと意味がない為)」とされます。

「どのように顧客が認知形成をし、動機付けがなされ購買していくのかというストーリーを立てて、チャネルごとの役割を規定する」ことが統合型マーケティングにおいては非常に大切でブランドマネジャーやマーケティングマネジャーは留意しないといけない事項です。

 

■マス・コミュニケーションのマネジメント

・「大衆向けにどのような行動促進(例:認知形成・標的市場からの需要創造・購買促進など)をもたらしたいのか」を定義することにより、適切なマス・コミュニケーションチャネルと盛り込むメッセージはおのずと決定されるとされています。

広告はブランドロイヤルティを形成する為にあり、販促は消費者を行動促進させるという基本概念があります。

・イベントや経験は短期的に需要を一気に喚起し取り込むことを目的として、他手法と抱き合わせで実施されるマーケティングツールです。ブランドロイヤルティが醸成される訳ではないので継続的な需要形成に繋がることはなく、あくまで大多数にリーチすることが主な役割となります。

 

ダイレクト・マーケティング

・中抜き費用を削減し、変数を少なくすることで製品販売側のやりたいメッセージ訴求を効果的に実現するという思想から発達しました。DMは顧客に直接アプローチできるが、非常にリアクションが悪く過剰に横行した現代では存在自体が忌避される傾向にある為、カタログ(視覚に訴える)やテレマーケティング活字で訴求出来ない潜在需要の顕在化)・オンライン広告などと掛け合わせで訴求することは基本とされます。

・これらの進化系としてあらゆる概念を盛り込んだものが現代のECサイトと呼ばれています。(例:UI/UXの磨きこみ+写真活字の豊富な情報量の担保による訴求・WEBマーケによる標的市場にカテゴライズしたレコメンド機能の付与など)

 

■セールス・フォースの組織設計

・販売員・法人営業などの人的組織による訴求する機能を指します。人件費が莫大にかかり、人という感情の生き物をマーケティング資源とするので、マネジメントの難易度は非常に高いとされます。しかしながら、「潜在ニーズを顕在化」する必要のある無形商材単価が高く意思決定に複数の工程を有する嗜好品や、ぱっと見で価値や機能をイメージしにくい専門商材などが親和性が高い為、セールス・フォースは重要な経営資源とされています。

・組織目的は「新規顧客の開拓なのか既存顧客の深耕なのか」により大目的は分岐して、「新規顧客の需要創造なのか・プッシュ型の販売なのか」・「既存顧客のリピート重視なのか・需要創造による取引増加なのか」で更に細分化されていきます。

・人員構成については「自社商品に顧客は何を求めているか」・「どのような行動が推奨されるか」・「マネジメントする上で入社段階で持ち合わせていないといけないものは何か?」を加味して人選していくプロセスを経るとされます。

・効果的に活用する為には生産性(重要顧客に工数をかけられているか)・動機付け・評価(適切に評価・促進する仕組みがシステムとして出来ているか)に留意することが大事とされています。

 

■人的販売の原則

・下記6つを留意することが急所とされます。

販売機会の把握と評価(見込み顧客の存在認知)」

事前アプローチ(セグメンテーション及び顧客ニーズの妄想)」

プレゼンテーションとデモンストレーション(AIDAを促進する・ストーリーに照らして顧客の需要を創造する)」

反対意見への対処(価格で売るのではなく、価格に見合う価値訴求をする)」

制約

フォローアップとメンテナンスリピート顧客の開発及び深耕が再現性の高いビジネスに繋がるので継続的にやるべき行為です。無形商材はきめ細やかさによるカスタマーサクセスを生むことが急所になります。)

 

 

【所感】

・自身が法人営業に従事するということもあり、セールス・フォースに関する考察は自身の仕事についての棚卸にもなり大変面白かったです。

マーケティング・コミュニケーションを構成する各要素自体の存在は認知があれども、夫々がどんな役割・強みがありどのような場面で適切か?ということはあまり思考する機会がなかったのでとても勉強になりました。

・詰まる所、商品のコアバリューの策定⇒標的市場の設定≒顧客価値の定義⇒セグメンテーションに即したマーケティングツールの策定・実行というプロセスを経て思考することが何よりも大事であるということなんだと思います。

・「マーケティング活動が経営の急所なので、マーケティング・マネジメントは事業全体の意思決定に関わるものである」というのがコトラーの基本的な思想の根幹をなしますが、事業戦略・製品市場戦略論と検証する確度は違えど目指すことは同じということなんだろうなと読みながら感じた次第です。だからこそ、周辺領域に関する知見も含めて学び、統合していくことでこうした本の価値はより増すのだろうと改めて考え直した次第です。

 

以上となります!

 

■要約≪ハイパワー・マーケティング≫

今回はマーケティングのバイブルとして20年程前に一世を風靡したという「ハイパワー・マーケティング」を要約していきます。実は3年ほど前にも読んだことがあり、面白く読んだ記憶がありましたが当時と経験値や知識が異なるので、見え方が全然変わった本に思えました。

 

「ハイパワー・マーケティング

新訳 ハイパワー・マーケティング あなたのビジネスを加速させる「力 ...

 

■ジャンル:マーケティング

■読破難易度:低(具体例が豊富です)

■対象者:商売の基本原理について関心がある方・どのように自社製品サービスを拡販するかという基本的な枠組みに関心のある方

 

【要約】

■基本原理

「顧客」・「頻度」・「購買金額」このいずれかの変数を伸ばすことでしかビジネスは拡大しないという議論の大原則があります。新規顧客の適切な需要を喚起することは難易度が高く、基本的にはリピート顧客の離反防止と深耕による取引増加を目指すのがビジネスの大原則というのが著者の一貫した主張です。

■自社に問うべき問い

「顧客から自社サービスはどのように認知されているか」・「何を価値と定義しているか」・「目標水準に到達するまでのビジネス拡大はリピート深耕で足りるのか?それとも新規拡販重視なのか?」などの問いを常に立て、自社の製品サービスの方針をアップデートせよということが説かれています。

■差別化

・「自社が掲げる特別さ・差別化はしっかり持続性を持ち、証明できるものでないといけない」とされます。ビジネスの大半はリピート深耕により形成されるのだからこそ、継続需要を喚起する為に、自社の特徴を定義して差別化を形成する行動は常に絶やさないようにすること、組織としては体現する行動を評価する仕組みを設けることが大事と説かれます。

■DMの有用性

セグメンテーションや競合の数に効果は相関するとされていて、余裕があるないしは逼迫度の高い人は情報収集したがるから効果的になるとされます。

「自分達が何者であるかを明記し、適切なペルソナ設定やセグメンテーションが出来るか」という力がDMには問われます。

■テレマーケについて

・テレマーケは仕立てが大事とされ、闇雲な連絡は工数だけかかり無駄が多いとされます。

・見込み顧客を動かしたり、ニーズ具現化に使うべきで、適切なセグメンテーションやDM、チャネルによる動機付けを事前にした方が価値がでます。質問の意図を明確にし、適切な命題設定やどのように力になれるかの具現化などの力が求められます。

誰に対して製品やサービスを提供するかにより適切な値付けは異なる、それ故に適切な顧客の選定と売り方がビジネスの可否・効率性を決めるということですね。

 

【所感】

・リピート顧客の深耕とセグメンテーションの重要性を一貫して説いており、豊富な具体例があるのでわかりやすいです。少し冗長かつ断定的なようにも感じましたが、導入としてはとてもいい本だなーという印象でした。

・計画的にビジネスを拡大させるための原則というのはそこまで複雑ではなく、どんな業界や世界でも共通するものがあると改めて認識させられる内容でした。

 

以上となります!