10月になり、下半期を迎えました。
数か月に渡り読んできた、ポーターの「競争優位の戦略」を要約してみようと思います。姉妹書に「競争の戦略」があります。競争の戦略は「業界がどのように構成されるか・影響を受けるか」にフォーカスした企業・業界間の関係を分析した本に対し、競争優位の戦略は「企業内部の活動に着目して企業間の関係や差はどのように生まれるか?」にフォーカスした本です。
競争の戦略が業界理解に役立つとすると、競争優位の戦略は企業理解・事業理解に役立つ本という位置づけになります。3C・4Pのような定番の企業理解のフレームワークはありますが、もっと根本の原理を知りたいと思い読んできました。多角化した事業の相互関係などにも着目しているので、自社に当てはめたりして読み解くことが出来たのは面白かったです。
前回の競争の戦略と同じく、膨大な記述量の書籍(4部構成630ページ)なので4回に分けてまとめてみようと思います。物好きな人は眺めてみてください笑
Ⅰ部はバリューチェーンにフォーカスした要約となります、メーカーや商社勤務の方にはかなり明るいパートかと。
※競争の戦略要約は下記です。
「競争優位の戦略」
■ジャンル:経営戦略系
■読破難易度:中~高(基礎的な経営学・ロジカルシンキングがないとかなり読むのが退屈になると思います。5フォースの概念だけも理解した上で読むことをおすすめされます。管理職や経営企画、事業開発等の仕事している人にとっては無茶苦茶面白い本だと思います)
■対象者:企業理解・事業部理解の知見を深めたい方・製品やサービスの拡大に関して強い関心のある方・古典的な経営学を学びたい方
※多角化した企業の事業部間連携などにも着目しており、投資などをする人も面白く読めるのかなーと思っていました。
≪選定理由≫
・個社深耕(主に上場企業・製造業)の幅を広げる為(会社理解を様々な側面から出来ないと筋の良い打ち手は広がらないと思っていて、もう少し裾野を広げたい、かつ自分自身が戦略に明るい人材でありたいという個人的関心です)
・会社全体における事業部の位置づけを自分なりに理解し、拡大の為に必要な打ち手を妄想出来るようになりたい(断片的には色々妄想出来るのですが、基礎的な理論の体得がないとさすがに限界が来るなという危機感から来ています)
【要約】
第一部は導入として競争の戦略のおさらい~バリューチェーン(価値連鎖機能)の概念の説明のパートです。
ポーターの基本思想の5フォース・3つの戦略(差別化・コストリーダーシップ・集中)は割愛するとしてバリューチェーン中心にまとめていきます。
■バリューチェーンとは
バリューチェーンとは差別化・競争優位を生む活動の源泉を分解してみることを指す。バリューチェーンには「供給業者の価値連鎖」⇒「会社の価値連鎖」⇒「チャネルの価値連鎖」⇒「買い手の価値連鎖」という4つの流れにより構成される。競争優位の源泉はどの経済活動において差別化・強みを誇るのかにより規定されるものであり、それは競争業者間により異なるもの
※イメージ図
■バリューチェーンの基本形
・支援活動・主活動の二軸で価値構成要素は分解できます。
●支援活動 「全般管理(インフラストラクチュア)」「人事労務管理」「技術開発」「調達活動」
・調達(全社の経済活動の為のインフラ整備として大きな役割を果たします。)
・技術開発(品質を上げる活動・生産工程を向上させる活動の二軸で構成※製造業の競争優位の源泉のメインはここです。)
・人事労務管理(これは各事業部・工程において同時多発的に発生するものを統合・取りまとめるものとして一つの機能に集約すべきといえます。経営資源の一つの人材をどのように活用するかにより資本の回転率に寄与するので。)
・全般管理(会社の価値連鎖機能全般に関与するのが一般的)
●主活動 「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」
※ここでいう購買物流とはどのように原料を仕入れるかのチャネル選定・計画等・出荷物流は最終製品の保管・輸送経路の策定等に含まれるます。
■競争分野の幅と価値連鎖
・4つの要素から構成されます。ここで言っているのは「価値連鎖により生み出された付加価値をどの範囲において横展開して差別化をしますか」ということです。
・セグメントの範囲
⇒生産される製品の種類と狙う買手の種類、どのセグメントに切って共通の価値を提供することにより競争優位を構築するかという切り方
・統合の範囲
⇒活動が外部の独立会社によってではなく会社の中で行われる程度、どの活動の分担をするかという点において買手・供給業者・チャネルと明確に線引きをすることを指します。
・地理的範囲
⇒会社が統一戦略で戦う地域の範囲、価値活動を一本化したり独立化することにより付加価値の増加・コストカットなどの優位性を生み出す行為を指します。地域ごとにどの活動範囲に裁量を持たせるか・一本化するか、それぞれのメリデメを比較することによる差別化です。
・業界の範囲
⇒会社が統一戦略で戦う関連業界の範囲
■コスト優位をどこで作るか ※コスト推進要因は10から構成され、この10を最小限に抑えることでコストリーダーシップ戦略が形成出来ます。
●規模の経済性●習熟度●キャパシティ利用●連結関係●相互関係●統合●タイミング●自由裁量できる政策●ロケーション●制度的要因
■差別化はどこで作るか ※コスト推進と似たような要因があります。
●ポリシー選択(企業戦略・流儀等)
●連結関係(供給業者やチャネルとの連結等)
●タイミング(他社に先駆けて着手した行動は顧客からの純粋想起に繋がります。)
●立地(製造業の工場集積地帯・サービス業・営業所の都心立地集約等)
●相互関係
●習熟と伝播(経験曲線のような意味合い、習熟の独占は競争優位につながります)
上記に加えて、差別化を生むコストが競争上適切かどうかを勘案する必要があります。
※割愛しますが、他には競争優位を生むための技術戦略(どの工程の技術開発を注力するかを取るべき企業戦略・市場戦略を加味して分析しているパート)・競合をどのように設定することが自社の競争優位戦略を策定する上でベストか?(顧客分類の技法・競合分析等を緻密にもれなく記載しています。)などについても触れています。
あまりに膨大な要約になるのでスキップします。ここばかりは読みながら自分や顧客のビジネスを連想しながら読み込まないと意味がないので、、
【所感】
まず驚くのはポーターの記述の網羅性と思考力の深さ。
規則性はあれども具体的に何に着目してどんな変数が左右するか?といった読者が知見を体系化・活用する観点を加味して記述しているのには恐れ多くなります。
事業部長クラスじゃないとあまりうまく読み込み活用できない、と紹介されることも多い本です。しかしながら、自分が関わる事業部や顧客理解にどこまで自分事として捉えられるかにより、現場でも活用できる知見は多いのではないかと思っています。
俯瞰して物事を見る癖や他社動向を感覚的にではなく、構造的に理解・取り入れることが出来るようになるのは早いに越したことないと思っています。
ただし、あまりにも骨太な内容なので読むのがとても時間がかかり疲れるのが玉にキズです笑 自分の至らなさから読みながら要約メモを取っていくと20ページ/1時間が限界の速度になる本です。少し、着手する年次・スキルではなかったのかもしれませんが読みながらポーター先生の稽古を受けている気分になるので必死に食らいついて読み込んでいました、、
以上となります!
要約記事書くのに時間かかる内容なので、数回に分けて投稿していきます!
尚、次回要約予定の第二部は業界内部の競争要因(市場細分化の効果・代替製品をどのように取り扱うか?)などをまとめているパートです。