雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪経営者の役割≫

今回は大学時代の経営学の参考文献になり、当時は挫折した本を要約しようと思います。チェスターバーナードの「経営者の役割」という本です。マネジメント関連や経営学関連の本を読んでいくと必ず引用される古典的な本で、著されたのは1930年代と非常に古風です。

 

「経営者の役割」

楽天市場】ダイヤモンド社 経営者の役割 新訳/ダイヤモンド社/チェスタ ...

■ジャンル:経営学・マネジメント系

■読破難易度:中~高(具体例の記述なく論が展開される場面が多く、かつ古い本なので当時の歴史的背景やドラッカー中心に展開された近代のマネジメント関連の理論体系を下敷きにしないと読むのに苦戦すると思います。思ったよりも時間がかかりました。)

■対象者:・経営学の理論体系に興味関心のある方・組織力学に興味関心のある方・マネジメントに何等かの形で関与する方

≪選定理由≫

・原著を読み解き、自分の中で内省することで理論・見解の骨組みを増強したい為。

・頭の体操・訓練。

・根本を辿るとなぜ組織は作られるのか?等の問いに帰結し、問いに対するヒントがあるように感じた為。

 

【要約】

・バーナードがAT&Tで働き、管理者及び関連子会社社長を勤める中で自身が思った組織のメカニズムについての考察を体系化したものです。広く一般的に読まれることを意図して記述されたものではなく、むしろ内向けのメモのような側面も強いのでかなり読みにくいです。

「人はなぜ組織化するのか・組織化する上で管理者はどのような役割をするのか・どんな力学が働くのか」について考察しています。

■公式組織に関する定義

・「意識的で計画的で目的をもつような人々相互間の協働」と定義します。

■人はなぜ協働するのか?

・目的遂行と制約克服の為に人は協働するので、「組織≫個人の成果・範囲」になるのが成果物の基本側面となります。

心理的カニズム

・人は機械ではないので、感情の動きが組織の成果・パフォーマンスに相関するという側面を度外視しての論述は意味をなさないとします。「自分が介在することで、組織が効果的に物事が自分の成しえたい方向に進む」という認識促進が協働を促進し、そのような状態を目指して働きかけ続けることの介在価値に責任をもつことが管理者の役割と説かれています。

・なので組織は意図的に調整された人間の活動や諸力の体系であるとバーナードは定義付けしています。

■組織の構成要素

「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通目的」の3つにより構成されます。組織自体が有用性を持ち、効果を発揮すると構成要員に認識され続けることをもって初めて、組織は有効な形で継続化するといいます。なので、ビジョンを策定したり、内発的動機付けをしてケアすることは組織の成果最大化及び組織化そのものに責任をもつ管理者の大きな役割といえるということでしょう。

■非公式組織の役割と公式組織との関係性

・サークル・人的なつながりのような非公式(組織図等に記述されない)組織は自然と発生するものであり、組織の媒介となります。非公式組織単独で存続するものではなく、あくまで公式組織の遂行能力を左右するという側面があるので、自発的な発生は管理者は奨励すべきです。一方で非公式組織の方向性や力学が公式組織を脅かすことがないかは注視して常に関与し続ける、というバランス感覚が管理者には求められる(それこそが人間が感情の生き物であるからであり、難しさをもたらすとのことです)と記述されます。

■権威の源泉

・組織における階層構造は必ず発生し、力関係はどのように働くかを記述しています。「権威とは公式組織の伝達の性格を指し、受け手がそれを受け入れるかどうか」に権威の有効性は機能します。なので、権威の発信者は本質的に個人の成功よりも関係者及び組織の成功を希求できるような資質がないと権威は付与されないし効果を発揮しないと記述されています。

■管理職の適性

・基本的な資質としては「忠誠心」「責任感」「組織人格を作れる」等が必要と記述されます。非公式組織の効果的な促進を促し、かつ組織目的やビジョンを打ち出し高い忠誠心・責任感を持って介在価値を発揮し続けるという像でしょう。※個人的にはかなりタフでバランス感覚と一部サイコパス的な側面が必要と読み解きました。

 

 

【所感】

・あまりにも抽象的な部分も一部あるので大幅に割愛して要約をしました。ドラッカーの「現代の経営」・ミンツバーグの「マネジャーの実像」などを下敷きに自分の実務に置き換えて読みながら理解・納得したところを中心に抜粋しています。

「組織目的の理解および、階層毎の仕事の定義・動機付け」が詰まる所管理者の重要な役割で、その為には社会的背景および個々人の価値観・それがどのような所から来ているかを想像して実行に反映するという芸術的な感覚が必要だなと考えた次第です。

・戦略や構造化・及び型に落とし込んでプロセスで無理くり進めることに頼るパフォーマンスの幅の狭さが課題としてあるので、改めてビジョンを打ち立てて動機付け(人に期待するという意味も込めて)は必要で、少なくとも自分の心は平穏に保ちながら安定的にパフォーマンスを発揮し続けることが目下の課題だなと思った所でした。

 

以上となります!

次はもう少し柔らかいテーマを扱って要約する予定です!