「オペレーション戦略」という所謂「業務遂行能力」・「生産性」観点のテーマです。マネジメントに関わる中で、業務遂行をスムーズに行う為に思考することは常日頃から考えていましたが体系的なものの見方・考え方を体得したいと考えこのタイミングで読むことにしました。(人材紹介等やる人は分業モデルの生産性・効率性向上観点で読み解くと現業にも応用できると思います。)
「MBAオペレーション戦略」
■ジャンル:経営戦略系・業務改善系
■読破難易度:低~中(製造業に従事しているないしはポーターのSCMマネジメント等に精通していればかなり読みやすい部類の本だと思います。)
■対象者:ステークホルダーが多い業務に従事し、自分が関与する仕事の範疇の生産性を上げたい方・「オペレーション」に興味関心があり負を解消したい方・製造業又は管理部門に従事する方全般・構造俯瞰に明るくなりたい方
≪選定理由≫
・組織観点で業務を俯瞰して体系化した戦略策定~実行する力をつけたいと考えた為
・管理部門及び製造業における不文律となる考え方を学び、自身のアウトプットの幅を広げる為
・構造化スキルに明るくなる為
【要約】
・製造業の企業を主題にして澱みのない業務プロセスの実現「オペレーショナル・エクセレンス」を目指す為のエッセンスを5つの観点(CRM・SCM・調達・研究開発・管理部門)で検証している本です。※CRMとSCMだけ今回の要約で扱います。
(※オペレーショナル・エクセレンスとは業務遂行の質自体が競争優位になるという概念です。市場や製品ライフサイクルが飽和しがちな現代のビジネスにおいては戦略自体は競合企業間で重複することが往々にして存在し、その戦略の実行レベルに経営成績が反映されることが多いという前提文脈があります。)
■オペレーションの重要性
・IT技術の台頭・国際競争化により戦略やビジネスモデルの模倣が容易になり、打ち手単独だけで差別化を生むことが難しくなった前提があります。その中ではケイパビリティ(組織能力)を高めることが競争優位につながり、その実現の手腕を担うのは「一部の経営参謀機能+経営と現場を統合する現場マネジメントレイヤー」です。
■オペレーション品質を定義する4つの観点
・「スピード」「正確性」「コスト」「継続性」の観点からオペレーションの秀逸さは判断することが出来ます。4つの観点を実現する為の現場推進の重要な行動を炙り出すものとして「KPI」が存在します。この関係性を弁えないとHOWの議論に終始しかねないのが業務改善関連の議論の全体感として存在します。
■CRMにおけるオペレーション
・CRMとは顧客接点関連(主に営業・マーケティングの職能)で「市場や顧客との最適な関係性を構築する営み」を指します。主目的はロイヤルカスタマーの育成で、自社サービス方針と一番合致する顧客の開発・取引最大化を目指す体系だった行為です。
・CRMの主な4つの役割としては
▼企業が訴求したいメッセージの伝達(マーケティングに近い意味合い)
▼最適な販売チャネルの構築(直販代理店体制の比率等)
▼カスタマーサービスの提供(カスタマーサクセス・伴走等の意味合い)
▼カスタマーニーズの吸い上げ(継続的な顧客接点による業務・サービスの磨きこみを行うサイクルの体系化)があります。
・営業を科学するということを目指し、ITの台頭により価値は見直され主に下記が必要と本書では説かれています。
▼ソリューション営業の必要性(顧客需要を継続的に開発する、顕在ニーズの充足に終始していると価格競争や競合差別化に追われることになり生産性や顧客関係性が悪い。)
▼営業プロセスの設計(BP別に分解・可視化して各要素のKPIや構造化をすることで営業を科学することが競争優位構築に必要という話です。※キーエンスやリクルートはこのあたりをいち早く着手したことによる競争優位性が持続していると色んな本では記述されていますね。)
▼可視化(プロセス・結果・ナレッジが可視化されることで組織としての学習やタイムリーなPDCAがなされるということです。)
■SCMにおけるオペレーション
・SCM(サプライチェーンマネジメント)とは「主に製造業における研究開発~製造における無駄をなくすという思想の基の一連の業務改善」を指します。大量生産方式により作れば作るだけ売れた時代の終焉により、「顧客ニーズに即したきめ細やかかつタイムリーな生産体制と収益性の両立」が市場命題になった近代において、SCMは重要なテーマとして扱われるようになりました。※大量生産方式のほうが変数が少なくて管理も楽だしコストかからないのはイメージしやすいかなと。
・SCMにおける優位性を見出す上での留意点は下記です。
▼戦略的サービス・ポリシーの設定(需要があるから開発するではなく、何の為に「自社」がその製品・サービスを開発するかの前提設定)
▼需要予測精度の向上(営業の継続的な顧客接点+NPSのようなアンケートによるデータ蓄積による実現)
▼業務連鎖の再設計(そもそもの既存の業務体制が最適化を0から見直し、組み立てなおすということです。リエンジニアリングやDX需要はこのあたりの領域にメスを入れているものですね。)
▼部門別業績評価の見直し(組織を動かすとなると行動指針となる業績評価を改定する+部分最適に陥らないような仕組み化が必須です。)
■オペレーション改革の取り組み方
・トップが旗を振り、ものによってはトップダウンに行うことも必要なのがオペレーション改革です。「全体俯瞰をして、あるべき姿を炙り出して打ち手を遂行していく業務の特質上、部門に任せて現場最適するのは意味がない」ということです。(企画系の職種や管理部門の方がこのあたりの実務遂行を担うことが多いイメージです。)
※個人的には経営の意思と現場の意見・起きている事象を統合して両方に取って良い結果につながるように調整・介在することが優れた現場管理なのではないかと思っています。なので、こうした概念に明るくなることは一部の間接部門及びトップだけが関心を持つということであってはならないと認識しています。
・改革のステップとしては下記流れを辿ります。
全体計画の策定⇒改革の範囲の策定⇒課題の構造化とあるべき姿の提示⇒解決策の方向性⇒改革目標と展開の優先順位(現場工数に限りあるかつ、成果が出ないと意味がないので)⇒実行
・留意するべきポイントは・経営陣が意思統一を図る・機能横断型チームを編成する・若手を抜擢する(育成観点+長期的な骨組み構築の為に)・専任体制を築く(片手間でやらせない、逃げ道をなくす)・マイルストーン管理を行うの5つです。
【所感】
・業務プロセスを分解したり、SCMについてはポーターの「競争優位の戦略」でしつこく触れたばかりだったのでしっくりする理論が多かったです。経営と現場の統合ということが最近の課題感ですが、このあたりの俯瞰して企画系職種や経営陣が頭に置く概念に明るくなると一段アウトプットの筋とレベルが上がると思っていたのでタイムリーな課題に応える内容でした。
・理論だけの頭でっかちにならず、法則は理解しながら現場の声やステークホルダーの思惑を想像できるようになることが改めて大事であるなと一連の内容を読んで内省して辿り着いた結論です。
以上となります!
恐らく次の要約本は「メタファシリテーション」を取り扱ったものになります。