雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪ビジョナリーカンパニー≫

 

今回は「ビジョナリーカンパニー」を要約したいと思います。

過去に読んだことあって再読したのですが、久しぶりに読むと得る所が大きかったので要約してみようと思いました。4部作あるシリーズものでして、2が一番有名かつ人気ではないでしょうか。僕も大学時代に何度も読み返して大変意識が高くなった記憶があります。

 

「ビジョナリーカンパニー」

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則 | ジム コリンズ ...

 

■ジャンル:企業論

■読破難易度:低(冊子は分厚いですが、具体例が多く行間も多いので見かけよりも分量が少なくサクサク読めます。)

■対象者:・理念や企業の成り立ちに興味関心のある方・経営者や組織を率いる立場にある方全般・優れた会社に共通する組織体系に興味関心のある方

 

【要約】

・ビジョナリーカンパニーシリーズの最初の作品です。4部作で今回扱う「1」は時代を超えて際立った存在で有り続ける企業に共通する法則を調査して取りまとめた内容になっています。尚、「2」は飛躍する企業に共通して見られる方針・風土にフォーカスした研究内容・「3」はどのようにして優れた企業が衰退の道をたどるのかについての研究内容・「4」は123の内容を改めて整理した上で、リーダーシップにフォーカスして不確実性が多い現代において必要なエッセンスについての研究内容(企業・個人含めて)という棲み分けになっています。

・ビジョナリーカンパニーシリーズはサイバーエージェントの藤田社長始めとした21世紀に急拡大した組織を率いる経営者が共通して影響を受けている著作と評されることが多く、著者のジム・コリンズはドラッカーの思想の影響を受けているのでドラッカーの思想の影響を色濃く受けているリクルートなども本書の内容が反映された組織体系になっています。

≪選定理由≫

・ハード/インフラとしての戦略論と対をなす組織風土やビジョンといった分野の第一人者の本を改めて読み返すことでバランスを取りたいと考えた為。(ロマンとそろばんのようなもので人は感情の生き物なので、そろばんを整備することはスキル開発として大事なのですが、サイコパス気味な感じになりかねないのでバランスをとる意味で情緒的なものを扱った体系だったものを学びたいとこのタイミングで感じたからです。)

 

尚、ビジョナリーカンパニー1で偉大な企業と評されている会社は下記です。

「3M」「アメリカンエキスプレス」「ボーイング」「シティコープ」「フォード」「GE」「ヒューレットパッカード」「IBM」「ジョンソン&ジョンソン」「マリオット」「メルク」「モトローラ」「ノードストリーム」「P&G」「フィリップスモリス」「ソニー」「ウォルマート」「ウォルトディズニー」

 

■時を告げるのではなく時計を作る

・長期にわたり偉大な成果・貢献を社会に発揮している会社・組織というのは共通して「一人のハイパフォーマーに依存することなく、仕組みで継続的に優れたパフォーマンスを発揮できるように制度設計されていることが共通する」と本書では示されます。※ワンマントップダウンもスピード感があり、一代で成り上がるのに必要な要素ではあるのでこのあたりは思想の好みの違いかなと思います。

「型化・成功事例の共有を尊い価値として表出する」といった人事施策に具体的には反映されていることが多いと示されています。

 

■「OR」の抑圧からの解放

・二者択一ではなく、出来る限り両方を満たすような行動・やり方を中心に思考するという共通して見られる組織法則です。実務で言うと「短期的な財務と中長期的な事業価値の追求の両立」と読み解くことが出来るでしょうか。※イメージと異なり両方を追求しにいく為に色々試行錯誤している時の方が結果として財務もうまく行くという逆説があるというのが個人的経験則です。そして、組織の要望と現場の意見の統合というマネジメントに求められる資質を重んじるということでもあるかと。

 

■基本理念を維持し、進歩を促す

・属人的な個人のパワーに頼らないのが偉大な企業の共通原則なので、策定したコアとなる価値観・行動指針を強化・再現する仕組みを常に組織運営の上位事項として据え置くことが大事ということです。(バリューを体現する行動を継続的に表出する仕組みや人事制度の定性評価に反映するなどが具体的な実務イメージでしょう。)

 

■社運をかけた壮大な目標

・企業理念を体現するような野望とも言える大胆な目標を常に掲げ、その実現に向けて組織全体でがむしゃらに働く状態を維持し続けるということです。※個人的には変数が多くマクロ環境が流動的な21世紀の論理としては果たしてそこまで効果的であるのかどうかは気になる所です。とはいえ空虚な投資家向けの謎の中期経営計画等の類よりはよっぽどマシであると思いますが。

 

■カルトのような文化

・行動指針を重んじ、外から見ても「○○らしい」と知らしめるような強烈な方針や風土を醸し出せているかということです。

※これは採用文脈においても再現性の高い人材を手間かけず採用するスキームにつながるので、とても理にかなったものではないかと思います。副次的な効果として組織・会社への忠誠心も必然的に高めます。その為新卒採用を重んじる会社が多いです。

 

■大量のものを試してうまく行ったものを残す

「ビジョンやコアとなる行動指針に即しているかという判断軸の中で、たくさんトライ&エラーをする組織風土・評価体制を敷いている」ということです。ものによっては時代の変化と共に製品が変わってでもやるべきとしている企業が多くあります。こうした企業は外からはシステマチックにイノベーションを生み出したように評論されますが、実際は偶発的なトライの中の一つを捉えて深耕した結果であるということが多いと。

 

■生え抜きの経営陣

・組織風土やビジョンを重んじるので当然の成り行きといえば成り行きですが、新卒社員が役員クラスまで継続的に育つような組織体制を構築出来ていないと実現出来ないので言うは簡単・実行するのは難しいということではないでしょうか。

※急成長や上場ゴールだけを志向するならトップダウンマネジメント+役員陣は中途で調達が一番手っ取り早く成功確率が高いので。なので、基本原則の「時を告げるのではなく時計をつくる」ということを重んじるということに回帰するのだと思います。

 

【所感】

・2年ぶりにくらいに読み返しましたが、当時に比べて多くの企業の成り立ちや戦略が組織にどのように紐づくか等について思考が及ぶようになったので表層的な理解にとどまらず読むことが出来たのではないかと感じています。何にせよ「カルトのような文化」と「時を告げるのではなく時計をつくる」という2つの方針が一番わかりやすいビジョナリーカンパニーの共通原則だなと感じた次第です。

・個人的には戦略と組織設計はセットで考えるものと思っているので、自分の仕事の範疇においてこのような基本的な考え方をどのように実務に生かすのか・企業分析をする際に借用できる所はないか?などということを考えて意識して読んでいました。

・「2」と「4」は読んだことがあり、まだ「3」を読んだことがないのですが、一番現在関心のあるジャンルであり後日読んでこちらも要約を投稿してみようかなと思います。

 

以上となります!

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