雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART4≫

今回は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」要約シリーズの第四弾となります。やっと折り返し地点に到達しましたが、まだまだ膨大な量なので数回に渡り要約投稿していきます(笑)。

 

PART4は「ブランド形成・市場ポジショニング」といった概念を取り扱うパートになり、個人的にはコトラーの著作の一番「らしさ」が表れているパートだと認識しています。※マーケットリーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャーと分類して、それぞれの競争業者の行動方針を記述しているのもこちらのパートになります。

尚、過去の要約は下記です。

■PART1

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART2

ty25148248.hatenablog.com

 

■PART3

ty25148248.hatenablog.com

 

 

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 | Philip ...

■ジャンル:経営戦略・マーケティング

■読破難易度:低~中(記述量は膨大ですが、論理展開はとてもわかりやすく焼き直したものを大学の専門レベルで扱うこともあるくらいの内容です。)

■対象者:マーケティングに興味関心のある方・顧客接点を伴う業務に従事する方全般・消費財メーカーに関わる方全般・戦略策定プロセスに興味関心のある方

 

≪選定理由≫

・経営と現場の統合ということを個人的なテーマとして置いています。

・その中でも「マネジメントレイヤーがどのようなことを念頭に置き戦略を描いているのか・それをどのように現場に翻訳・推進・部分戦略を描いていくと一番適切か?」

ということに関心があるためです。

・関係性営業や感情マネジメントだけではうまく行かないし、かといって論理だけで解決しないのがビジネスの世界な中で、あらゆるものへの理解度を根元から上げていかないとモグラたたきのように発生する個人的な課題に対処できないと思っています。

・机上の最適な理論を自分なりに体得するプロセスを通じて、うまく現場に適合させて戦略策定・実行をして介在価値をあげたいというのもあります。

 

【要約】

・PART4はブランド形成の重要性と市場セグメント細分化及び市場戦略の関係性を説いているパートで、ポーターやドラッカーなどの経営学の大家の理論も借用した展開となるので、個人的にはとても好きな内容です。実務応用性も高い内容です。

■ブランドの役割

・ブランドは「適切な顧客の需要喚起・製品/サービス認知簡略化という重要な役割を持つ」と本書では説かれています。その為に、如何にブランドを狙って形成するか・維持拡大するかがこの本の重要テーマともいえます。

■ブランド形成に寄与する項目

・コアバリュー・コアコンピタンスから導き出されるメインターゲットへの需要喚起を一貫させることがブランド形成の定石です。それ故に、「自社のコアとなる強みや概念は何か?」「何を目指して市場を深耕するか?」「どこを目指すか?」等を策定することがブランド策定には大事と説かれています。

・このあたりは全社戦略と事業部戦略・製品市場戦略を繋ぐものである為に、それぞれを深く理解した上で運営していくことがブランドマネジャーには求められるとされています。

・ブランドを磨きこむ際に留意する点は■記憶可能性(≒純粋想起力)■意味性■選好性(≒訴求力・選ばれる確率)■移転可能性(ブランドを横展開した時にブランドだけで惹きつける力がどれくらいあるかの指標)■適合可能性■防御可能性の6つとされています。

■ブランド管理をする際の留意点

「適切な需要喚起に寄与しているか?」(≒狙いたい市場セグメント・ターゲットからの購買を促進しているか)・「ブランドの好ましさや方向性は製品市場戦略を具現化したものであるか?」という問いは常に問い続けて改善していかないといけないとされています。

「コアの価値観や事業方針を体現したものであるか?という問いを投げかけ市場最適化したものにメンテナンスし続けるべき」ということです。※このあたりは現場マネジメントをする上でどのようにマネジメントが戦略を描いているかを理解し、現場反映していく上で咀嚼して打ち手を打てると滅茶苦茶バリューが高い仕事に繋がるなと思いました。

■ブランドのポジショニング

・「面」を取りに行くのか「高さ」を取りに行くのかという所でブランドの目指す姿は大別され、差別化深耕かコストリーダーシップ深耕であるか等の競争戦略論にも合流していきます。差別化の源泉は一般的に■製品■サービス■スタッフ■ブランド■チャネル等で分岐することが多いとされています。

■製品ライフサイクルとマーケティング戦略

・一般的に製品及びサービスには「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4つの時期に分類される有り様があるとされます。それぞれの時期に特徴・傾向はあり適切なブランド形成や戦略志向性も異なるとされます。

「導入期」は先発優位性が働くとされるフェーズであり、ここでコアとなる価値観の策定および熱狂的なファン獲得をすることが出来ると一気に拡販に繋がるとされています。一般的に競争業者と顧客は少数であり、収益性はまだそこまで高く見込まれない段階とされています。

「成長期」は一定の顧客満足度とリピートを生んでおり、自社に合致する顧客セグメントの設定やオペレーションエクセレンスの追求がテーマとなります。(※仕組み化して面を広げていくことで売上や収益が純増するタイミングの為。)

「成熟期」は多くのマーケティングマネジャーが対峙するフェーズであり、大量生産方式によるコストカットや規模の経済の追求・収益性向上を意図してBP別の磨きこみの打ち手選定などをすることがテーマとなっていきます。(※一定の市場サイズがあり、需要も見込まれるので、適切な売り上げと収益・顧客ブランド想起を追求していくことが適切とされる為。)

「衰退期」適切な撤退タイミングの設定や市場サイズに合わせた事業サイズの縮小等がテーマ感となります。全社戦略や事業の歴史に影響を受けることが多く、製品市場戦略単独で解決しないスケールの意思決定になることも発生します。

■市場ポジショニング別の戦略論

・市場シェア・規模により「マーケット・リーダー」「マーケット・チャレンジャー」「マーケット・フォロワー」「マーケット・ニッチャー」の4分類に競争業者は大別されると本書では説かれます。

「マーケット・リーダー」は業界首位の競争業者を指し、適切な需要喚起や市場サイズ拡大に向けた打ち手の実行・業界の健全性担保に向けた施策の実行などが地位特有の行動とされます。純粋想起のメリットを一番享受しやすいのがマーケット・リーダーなので市場全体の規模を拡大する行為が一番効果的と言えます。また、拡大すればするほどブランドが強化されるという副次的効果も持ちますので、業界健全化・拡大を志向するのは極めて合理的と言えます。加えて、パイを守るという意味で防衛戦略を策定することも多く代表的なものは「絶えざるイノベーションによる市場創造」「フルライン戦略による規模の経済と顧客関係性担保」の2つとされます。※意図的に機会を作り出していかないと、受け身な事業運営にならざるを得なく長期的には内向きに仕事をする組織を生み出す可能性もあるのでこのあたりのかじ取りはマーケットリーダー特有の難しさがあるかと。

「マーケット・チャレンジャー」はリーダーが支配しない顧客基盤やセグメントを深耕することで首位奪還を目指すことが基本となります。中規模業者の買収やバリューチェーンへの積極的なイノベーション志向(≒コストカットや独自製品を生み出す仕掛けを作る)ことが具体的な打ち手となっていきます。

「マーケット・フォロワー」リーダーの動きを模倣し、イノベーション投資をせず最小限の工数で一定の収益性を刈り取ろうと志向する業界中位~下位特有の行動を取るとされます。

「マーケット・ニッチャー」市場をより細分化し、小規模市場深耕してリーダーになろうという思想を持ちます。特定セグメントにおいて参入障壁があるないしは業界の天井が見えていてリーダーが旨味を見出さない場合などに有効とされることが多く、人材・金融・WEBサービス等でよくみられる打ち手に思えます。

 

【所感】

・ブランド選好性を突き詰めることは消費財メーカーでは定番だと思いますが、自社に落とし込んでも応用できる考え方だなと読みながら感じました。価格や表面的な機能性だけの差別化路線は疲弊するので、上位概念のブランドや価値基盤で顧客をリピートさせるように舵取りをしていくことは、息が長いことですが着手し続けるべきという自分の課題感にも合致したので非常に刺さる内容でした。

・対比的に感じたことは、自分が如何に資源的に恵まれている環境でビジネスをしているかということも浮き彫りになりました。というのも一定の資源とケイパビリティがある状態なのでこうしたブランド選好性を突き詰めたり、中長期的な価値基盤磨きこみというのが事業の主題として語られる環境で働いているのだなと思いました。

※数年前までは「とにかく拡大路線・市場開発をして顧客基盤を作るのである!」という方針だった段階からかなりフェーズが進化したタイミングで事業に関わっているのだなと内省させられました。

・また、本書で著されているこの手の戦略論などは一定の場数や思考量を経て、ようやく有機的に知識が結合し筋の良いアウトプットに繋がる感覚があるので早くから着手して活用することに意味があるなと感じています。※英語や会計がレバレッジ効きやすいといわれるのもこのようなことなのだなと最近は思っています。

 

以上となります!

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