雑感

読んで面白いと感じた様々な分野の本を要約しています。

■要約≪組織設計概論≫

 

今回は波頭氏の「組織設計概論」について要約をしていきたいと思います。

この人の本は「戦略策定概論」とセットで有名で戦略と組織は主従関係にあるという共通したメッセージを持ちます。

よくある組織論というよりも、組織は会社全体においてどのような役割を持つか?組織改革・設計をするにはどのようなプロセスを踏むか?ということを極めて実務的な手順に即して記述されている印象です。

※尚、姉妹作の戦略策定概論の要約はこちら。

 

ty25148248.hatenablog.com

 

「組織設計概論」

組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際 | 波頭 亮 |本 | 通販 | Amazon

■ジャンル:組織論

■読破難易度:低~中(後半は事例集のような作りになっており、2000年前後に書かれた本なので、現代で標準化した人事制度や福利厚生制度などの紹介がメインです。)

■対象者:組織について興味関心のある方・組織設計の実務的な流れについて知りたい方・戦略と組織の関係性について興味関心のある方

 

【要約】

■組織とは

・「組織とは、複数の組織要員の有機的協働によって、より効率的に共通の組織目標を達成することを通じて、各組織成員の得る個別効用を極大化させるための集団」と定義されます。相互作用することのレバレッジを意図して組織は作られるという大前提があります。

・20世紀後半の日本的経営の崩壊(年功序列型・終身雇用・企業別組合)により、金銭的報酬で人を動機づけるのには限界が来て、ジョブロイヤルティや自己実現などのスコープも加味して組織構成員を評価・動機付けしないと人材は最適な生産性を持たないという組織理論を論証する前の前提があります。

 

■組織の構成3要素

「戦略」「システム」「人材配置」という3つの観点でインフラ構築されると説いています。

・組織が有効に機能する為には「戦略合理性」「組織論理合理性」「業務特性合理性」の3つを含意するような設計がなされないといけないとされます。戦略合理性とは目的とする事業戦略の特徴を備えた設計になっているかという観点で、組織論理合理性とは成員の人数や組織構成を考慮した設計になっているかという観点、業務特性合理性とは個別業務の内容や処理手順に即した自然な組織設計になっているかという観点を意味します。※詰まる所、戦略と組織設計が有機的に結合していて、実現可能性が高く無駄が少ない組織になっているかということです。

 

■組織設計のプロセス

・現状の組織体系が負を持っている場合、組織を再設計する改革を行う必要が発生します。当面の業務生産性の低下などの短期的な問題を乗り越えてでも解くべき課題がある時に実行され、具体的には下記6つのプロセスを経るとされます。

●プロジェクトの編成(トップマネジメントが責任をもち、適切な人材により編成されないと実効性にかける+組織全体へのメッセージングが薄まるとされます。二律背反のような意思決定を伴うこともあり一定の実務経験を持ち、幅広い角度からモノをみれる構成員で編成されないと筋の良い仮説と成果物はなされにくいとされます。※第三者の意見を入れることで透明性を増すということでコンサルなどを使うのもこのような背景があります。)

●組織課題の整理「組織機能」「運用要件」の2つのスコープから現状の可視化・ケイパビリティを検証することが必要とされており、実態に即した実現可能性の高い課題設定と打ち手を決めることが必要です。ここに一番時間を割くべきとされており、全社戦略・事業部戦略・現状の組織コンディションなどを照らして落としどころをつけに行くプロセスがあり、非常に泥臭さを持つとされます。

●基本理念の設定憲法のようなもので、新しい組織体の是とする価値観や目指す方向性を体現したものであるべきとされます。)

●3S(戦略・システム・人材配置)への展開(「事業の数と規模」「事業所の場所」「保有人材の内訳と人数」を考慮して戦略や組織体系(事業部別組織か機能別組織化マトリックス組織か?など)と説かれています。※詳細は割愛します。)

●移行準備(新部長・管理職などの人選をまず行い、その次に具体的な現場人員や組織体系を決めていくのが具体的な手順とされます。組織改革は風土醸成を両立して行うことが大事で現場浸透しないと絵にかいた餅になるので重要なポイントとされています。時には現状の組織で有能な扱いをされている社員を閑職に追いやるような意思決定も含み一定現場の混乱は生まれますが、新たな価値観を体現するという意味で効果があるとされます。)

●定着化可否を測る指標を設定して、モニタリングを継続的に行うことで効果検証・適切なステークホルダーからの意見を収集して必要に応じて骨格を崩さない範囲で軌道修正していくことが実務的な流れとされます。現場マネジメントレイヤーを巻き込み、適切なメッセージングで動機付けしていくことが必要で、息の長い仕事になります。)

 

■組織の時代

戦略の秀逸さが可否を分ける80年代からケイパビリティや組織がしっかり戦略を遂行できるかといった組織の時代に90年代は変化しました。そしてオペレーション・実行などもアウトソースされるような時代になり、その重要性は増しています。

※○○支援サービスという市場がホットになっているのもこうしたトレンドの象徴といえるかもしれません。

・背景には日本的経営の崩壊・国際市場化・ITの経営資源によるビジネスを取り巻く環境が激変したということが挙げられます。

 

■現代の組織戦略のトレンド

「フラット型組織」・「カンパニー制」・「M&Aとアウトソーシング」・「ネットワーク型組織とされています。人材の自由裁量を増して、競争市場に対峙させることで適切に能力開発をすることを目的として上記4種は設定されており、固定費削減観点から重要機能以外は外注し変動費化するということもトレンドとしてあげられます。

ファブレスメーカーなどは最たる例かと。

 

 

 

【所感】

・後半の事例集は2000年代の本ということもあり、さすがに賞味期限切れ感がありましたがようやく現代でスタンダード化しているような事例も多く(裁量労働制・抜擢人事・自己申告制度・選択型研修制度など)、今話題の組織設計や方式もスタンダード化するのにはかなりの年月がかかるのだろうなと感じました。その為、ようやくも一部割愛しているパートがあります。

・会社としてどのような意図を持ち組織設計をしているか・各ポジションにどんな期待や役割を求めているかを色んな角度から検証できることには意味があると思っていて自分の課題感にタイムリーに即した内容の本でした。やはり、戦略や方針を自社資源(資金・ケイパビリティなど)を考慮して実現可能性のある施策に反映したり、やらないことを決める(≒イシューを特定する)ということはどのレイヤーでも行う重要事項だなという再認識が読後感としてあります。

 

以上となります!