雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪科学的管理法≫

 

今回はフレデリックW・テイラーの「科学的管理法」を要約していこうと思います。

19世紀に著された本で、この本については誤解があまりにも強い影響力を発揮しており「人を機械のように扱う」悪の理論だという見解が言われる本です。実際は現代経営・マネジメント理論の先駆けを作った素晴らしい著作であり、この本抜きにはマネジメントや人的管理論は語れないと思います。

 

 

 

 

「科学的管理法」

新訳|科学的管理法 | フレデリック W.テイラー, 有賀 裕子 |本 | 通販 ...

■ジャンル:マネジメント理論

■読破難易度:低(170ページ程の短い著作であり、具体例も豊富にあるのでとても読みやすいです。)

■対象者:マネジメントに興味関心のある方・標準化や仕事の効率化に興味関心のある方・経営学の発展の歴史に興味関心のある方

 

【要約】

「科学的管理法」と呼ばれる考え方を体系的にまとめた本です。

・問いの発端は資本主義経済の発展・知識労働者の増加による人材マネジメントの発展が社会的気運になった歴史的背景があります。即ち、「自然発生に頼ることなく体系的に仕事を分類・定義したり人材を育成することが経営課題であり、競争優位の源泉にさえなる」という危機意識から人と仕事の関係についてあらゆる考察がなされました。

 

■マネジメントの目的

・「雇用主に限りない繫栄をもたらし、働き手に物的・精神的豊かさをもたらすこと」とされ、最高の仕事ぶりを期待し、加えて仕事を通じて従業員が自己実現をしてもらうことを意図しています。

 

■怠業はなぜ起こるか

・仕事を科学し、生産性を向上させるためにはなぜ労働者は怠業をするのかという問いに応えなくてはなりません。本書では大きく3つの要因があるとされ、具体的には

「一人あたりの生産量が増えるといずれは大勢が職を失うことになるという誤解」

「既存のマネジメントの仕組みが優れておらず、働き手が怠業して権利を守らざるを得ない現状がある」

「非効率な経験則が横行しており、働き手の努力が水の泡になっている現状がある」

とされます。

・テイラーは「基本的にその人材の資質や適性により天井はあるものの、一定の人を用いて成果を上げる方法は存在する」という見地から科学的管理法を本書で体系的に説きます。

 

■科学的管理法のエッセンス

・旧来のマネジメントは「自主性とインセンティブを柱」にしたマネジメントでしたが、属人的でスケールしないしリスクが大きいということからテイラーは下記をハウの柱として科学的管理法を説きます。

「時間研究」

「部門別の職長制」

「標準化」

「企画部門の設立」

「差別的出来高制」

「工程管理」

即ち、仕事を要素分解・可視化することで科学的に検証できるようにし、実行する人と管理する人で権限と役割分担を明確にし、成果がでた人に相応の報酬体系を与えることで動機付けをするということを説いています。この考え方は今にも通じるマネジメントの基本的な考え方であるといえます。

 

■テイラーのマネジメント哲学

「一般的な人材は短期的な欲求充足に支配されるので、成果に対する報酬は短期的にわかりやすいものでないと効果をなさない」

「経験則の世界を逸脱して誰でもできるような仕事の体系化と動機付けこそがマネジメントの役割」

⇒個人的に印象に残ったフレーズ2つを抜粋しました。

 

 

 

【所感】

・もっと早く読んでおくべきだったと思えるくらい、自分の関心毎に刺さる名著だったと感じました。非常に人間味溢れる考察と、テイラー基礎理論をベースにバーナードやドラッカーが近代経営学を体系化していったことがわかる内容に心踊らされました。

「属人的な仕事の世界観から逸脱し、高い生産性を追求することこそが企業・労働者・社会の発展に繋がるのだ」という一貫した本書のテーマはとても温かみがあるというか熱い想いを感じる所が多かったです。

・組織行動学(OB)と経営戦略論は大学時代から好きであり、アルバイト・学生団体・仕事においても自分が常に重点的に取り組んできたテーマですが、こうした原著を読み解き内省する行為を通じて、定期的に見解を磨いていかないと卓越した成果は残せないなーと反省をするきっかけにもなりました。

・個人的な関心としての学問領域と自分が仕事としてメインで取り組む領域、どちらに据えるかどうかということは今後のキャリアを考える上でも大事なポイントだなーと気づかされました。

 

以上となります!