今回は会計分野の「財務3表一体分析法」を要約していきます。
学生時代から会計学に苦手意識があった自分ですが、武器として決算資料などを読み解いて企業理解や企業の意思決定を向上させたいという思いから学び直しをしています。
姉妹作の「財務3表一体理解法」がとても有名ですが、この本はBS・PL・CFといった財務諸表をどの様に分析してインサイトを出すかという点にフォーカスして記載されている本です。
※会計を実務で活用する方向けというより、「会計の知識を意思決定に用いると効果的である」という場面に遭遇する方にとって有効な内容の本なので読む対象を選ぶ本だと思います。(学問的側面から見るとこの本の内容は非常に表面的ですし、専門で仕事で扱う方にとっては会計の一側面に過ぎないでしょう。)
「財務3表一体分析法」
■ジャンル:会計学
■読破難易度:低(決算書を読むうえでの重要個所の説明⇒ケーススタディーという構成なので平易です。)
■対象者:法人向けビジネスに従事する方全般・経営資源を扱う仕事に関わる方全般・会計諸表を読めるようになりたい方
【要約】
・会社分析の急所は「ROE」「レバレッジ比率」「総資本回転率」「当期純利益率」の4つとされます。もう少し噛み砕くと、株主からの投資を効果的に回せているかがわかります(≒投資先として魅力的な会社かどうかがわかる)。
・ビジネスの現場では利益をどれだけあげたかが大事になりますが、株主からすると投資対効果や配当が目的です。だから、CFとしてうまく現金化出来ているかという点も見られるというのが決算の世界のルールです。
※利益剰余金や負債比率などは会社の健全性を測る指標として、これも重要指標であるとされます。
・本書では財務諸表のBS・PLを棒グラフにして可視化し、経年比較や競合比較をすることで視覚的にわかるようにするということを推奨しています。
■分析する上での着眼点
・各指標は業界平均水準や経年比較と照らして検証しないと、それがいい悪いは図れないという原則があります。業界特有の収益性やPL/BSの形等があるので、その前提の中でどれだけ効果的に経営出来ているかを見れないと見当違いなインサイトになる可能性があると言います。
■各指標の補足
・ROEは当期純利益が純資産に占める割合を示したものであり、どれだけ手元に残る純資産に貢献出来ているか(効果的にキャッシュを生み出せているか)を示す指標となります。
・流動比率は手元にどれだけ返済しなくていいお金を残せるか(キャッシュを出せるか⇒配当に回せるか⇒投資対象になるか)を示すものとして意味を持ちます。
・総資本回転比率はBSの資産金額を用いてどれだけ売り上げを出しているか(○○回転の資産で売上を形成しているか)を示し、経営の効率性を測る指標・資本の有効活用度合いを測るといえます。
・利益剰余金はどれだけ利益を貯蓄する堅実な経営が出来ているかということを測る指標です。
・家電・通信キャリア・飲食・商社・自動車などの大手メーカーの経年比較・競合比較により何を読み解くことが出来るかということを明らかにしています。ドリル形式になっており、全部読み解いていくと何を見ればいいのかの手順が身につく構成になっています。
【所感】
・ケースの内容が2000年代後半のものなので、今との違いも浮き彫りになり面白かったです。会社はお金を集めて投資し、収益を出します。資本主義市場のルールとして会社は株主のものであり、株主還元や企業価値向上について考慮しない事業運営はあり得ないです。なので、一現場社員としてもこの観点を視野に入れて事業に携わるかどうかで見えてくるものや思考の範囲は変わるなーと思いました。
・会計学というのは漠然とした苦手意識・食わず嫌いを持っている人が多いと思います。自分自身は上場企業を担当顧客とし、事業課題や現状分析をする為に、必要に迫られて無理やり色んなIR情報や会計入門書を読み漁り覚えた記憶があります。この本は会計を専門で行わない人の為に意図的に構成を工夫されているので、ビジネスや企業分析に関心がある人にとってはとても面白く読めるのではないかなーと思いました。知識を棚卸する形で読んで、勉強になった実感があります。
・一方で、最も大事なのはこうした数字の裏にある事象や因果関係を推測・読み取る国語的な分析であるとも感じました。定量分析だけでは秀でた示唆を示すことというのは難しく(誰でも出来るので)、現場感や何がその数字をもたらしているのか?ということについて仮説構築を出来るようになることこそが社会人としてはとても重要なのだろうなと再認識しました。
以上となります!