雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪組織行動のマネジメント 後編≫

 

今回は「組織行動のマネジメント」要約後編となります。

前編は組織の中における個人の役割について要約しましたが、後半は本書の後半半分を占める組織の中の集団・組織のシステムについて要約していきます。

 

※参考※ 前編の要約

「組織行動のマネジメント」

新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ | スティーブン P ...

■ジャンル:組織行動学

■読破難易度:中(実験やデータを基に記述がなされているので、前知識がなくても比較的容易に読むことが出来ると思います。)

■対象者:マネジメントに関わる方全般・組織と個人の関係性に興味関心のある方・行動経済学や心理学に興味関心のある方

 

※合わせて読むと面白い本は下記。

「マネジャーの実像」

マネジャーの実像 | ヘンリー・ミンツバーグ, 池村千秋 |本 | 通販 ...

ty25148248.hatenablog.com

 

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【要約】

■集団の定義と分類

・組織図に記述される公式組織、組織図には記載されない非公式組織の2種類が集団には必然的に発生します。公式組織は指示命令系統などの関係性を示しますが、組織活性や実際の組織力学を司るのは非公式組織です。

・旧来の組織行動学では「非公式組織は公式組織の遂行を妨げるので悪である」という見方さえありましたが、現代では「非公式組織の役割(組織活性化・連携強化)に着目したマネジメントをしていかないと従業員を長期的に組織に定着させることは出来ないので、非公式組織は有効だ」という見解が主流です。

・組織には同調性権威付け凝集性等の側面があり、個人の行動に大きく影響をもたらすということを理解しておく必要があります。

 

■チームとグループの関係性

・グループは領域や組織の単位として区分され、チームは相乗効果を意図して組織化された少人数の組織を指します。機能横断的な組織やプロジェクトチーム等はビジネスを取り巻く環境変化・課題解決の難易度増加により日常化していますが、これはチームの有用性に着目した人材マネジメントの一例と言えます。

・優れたチームを構成する為には基盤(インフラ等)・構成(パーソナリティや関係性に配慮した人員構成)・職務設計(誰に何を任せるかの範囲を明確にする)・プロセス(組織目的の設定・動機付け等)について考慮しないといけないとされます。

 

■コミュニケーション

・口頭・書面・非言語などあらゆる手段により組織でコミュニケーションは図られます。目的は統制動機付け感情表現情報の4種類とされており、組織に対するロイヤリティを醸成し、人材活性化をする必要が増している現代においては特に動機付けが重要な役割を果たすといえます。

・コミュニケーションはパーソナリティや文脈・文化的背景により異なる意味合いを持ちます。それ故に、個々人の価値観が何でどのように形成されているかを理解して対峙することは必須のスキルと言えます。

 

■リーダーシップ

・リーダーシップとは「集団に目標達成を促すよう影響をあたえる能力」であるとされます。旧来のカリスマ型リーダーシップはあまりにもリスクが大きく、従業員の動機付けを必要とする現代の環境にはあまり即さないとされています。サーバント型リーダーシップのように、ビジョンを打ち立てるというよりも支援者で有るべきという考え方も台頭しています。重要なのは「適切なリーダーシップは場面による」という条件付け理論です。

・そして現代ではEQと呼ばれる感情知性の高さがリーダーシップの発揮度に相関するという見解が主流です。「相手がどのように思うのかを高い次元で想像・理解し適切なコミュニケーションを取ることがリーダーシップの発揮には不可欠」というものです。

 

■組織構造

・組織構造は戦略実現の為に用いられます。そして、組織構造が従業員の態度や行動に影響します。組織は職務専門化(似たような職能を持つ人を集結することで専門性の担保とマネジメント工数の低下)・指示命令系統(力関係や役割がどのようであるかを明文化する)・管理の範囲の設定公式化(組織の行動形式を定義づける)といった役割・側面があります。

・仕事をグループ化・分解することにより習熟度の低い個人が相応の成果をあげられるという側面があるので、非常に重要な役割と言えます。具現化したものとしては集権化・分権化⇒シンプル組織・官僚制・マトリックス組織等が挙げられます。

 

■組織文化

・構成員が共有する意味のシステムであり、価値があるとみなすものの傾向です。

主要特性としては下記の7つ。

■革新及びリスク性向

■細部に対する注意

■結果志向

■従業員重視

■チーム重視

■積極的な態度

■安定性

・組織文化は境界を定義し、アイデンティを醸成します。社会的結束を高め、関心の範囲を広げる効果があるとされます。また、「誰が成果を上げ、どのような行動が評価されるかを決める」ことになり、内発的動機付け組織の凝集性を高める効果があります。

・組織文化を形成・維持する為には採用トップマネジメントの行動社会化の3つの要素が重要だとされています。戦略や情報の非対称性に起因した競争優位の構築が難しい現代において、組織のケイパビリティを最大化するために組織マネジメント・組織文化のメンテナンスは大きな役割を持つといえます。

 

■人材管理

採用活動・研修などの開発プログラム業績評価等が手段として必要とされます。

・採用においては面接や筆記試験といった旧来のものだけではなく、ワークサンプルアセスメント(ケース面接に近い実務想定の思考プロセスを問うもの)がより適切な人材を測る意味合いで有効とされております。

・終身雇用に代表されるような会社が従業員のキャリアを保証することが難しくなった現代においては、会社は従業員のキャリア開発の「機会」を提供し個々人の活性化を促すというスタンスにシフトしています。

・業績評価は組織文化と相関しており、どんな行動を評価するかにより各職務の模範的な行動形式を設定するものになります。目先の業務の成功は勿論、中長期的に会社がどのような方向に舵取りをしていくかというメッセージにもなるので、現代において非常に重要なものとされます。

 

【所感】

・後半パートの内容は類似内容を扱った本を数冊読んだことがあり、大学時代に経営組織という授業で学んだことがあったので非常に読みやすかったです。

・理論の歴史を紐解いて感じたのは「マネジメントが解くべき課題が複雑化・抽象化している」という何よりの証明なのではないでしょうか。テクノロジーの台頭と国際競争化による文化的差異や業務プロセスの抜本的変革を想定して、組織を率いて成果を出していくということは歴史上にない難易度を誇る局面にさらされているということなんだと思います。

・マネジメントの役割範囲が肥大化する中で、自分がどのような関わり方・スキルセットを持ち合わせていると効果的であるか?を考える上でとても勉強になった本でした。戦略論・組織行動学・経済学・歴史等色々な要素に明るくなり、その知識を結合していくことをしていくのがとても効果的な職業人としての成長なんだろうなと感じました。

 

以上となります!