雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神≫

 

今回はマックス・ウェーバープロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神を要約していきます。

比較宗教社会学研究の大家である氏の代表的な作品と言われています。

経営学について学び直しをする中で、経営学の土台となる資本主義の浸透・発展の歴史について興味を持つようになりこの本にたどり着きました。

 

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫) | マックス ...

 

■ジャンル:社会学・宗教学

■読破難易度:中~大(背景知識がないと、非常に読むのに苦労してしまいます。マックス・ウェーバー自身が多元論的立場に立ち、見解を記述している為、様々な解釈が出来る内容が多く大量の注釈が存在します。)

■対象者:・資本主義の歴史に興味関心のある方・欧米諸国の発展に興味関心のある方・プロテスタント諸派の思想について理解を深めたい方

 

【要約】

・資本主義の発展に対して、一見対極にあるようなプロテスタントキリスト教における、カトリックと対をなす諸派)の倫理観が大きく寄与したという逆説を説いています。

プロテスタントとはルターを始めとした宗教革命以後に派生した諸派の総称を指します。

・代表的な特徴としては「聖書第一主義※教会の権威を否定」「天職概念」「禁欲の精神」などが挙げられます。

プロテスタント諸国では寄付を積極的に募る慣習があるのは現世において、禁欲の精神・公共の福祉への貢献を中心に生きることを推奨する為です。

「日々の労働行為を通じて神への信仰を体現せよ」という根底の思想があり、同時に必要以上の富を保有することを否定します。労働すれば対価としてお金が必然的に生まれる訳ですが、倹約な日常生活を是とするプロテスタントにとってはその余剰資金は持っていることは望ましくありません。それ故に投資へお金を回すことになり、資本主義経済における発展を加速させるという循環が働きます。「極めて合理的かつ倹約な精神」を美徳とするプロテスタントの倫理観は資本主義における良し悪しと親和性が高いのです。そうして、利潤追求を是としないプロテスタントこそが、資本主義経済においては勤勉に働き、積極的な投資をし(せざるを得ない)その結果として利潤を最大化してしまうという矛盾のような逆説が生まれるということをウェーバーは説いています。

産業革命がピューリタニズムが色濃いイギリスで誕生したのは上記見解を裏付ける具体例とも言えるでしょう。

・この「利潤追求をした結果、富を抱えたままで有る状態を良しとしない」プロテスタントの宗教観が色濃い国で資本主義が発展をしたというのがミソで、日本や中国・非プロテスタント諸国で資本主義の発展が遅れたのは上記状態になった時に勤労を辞め、現状維持や怠慢をしてしまうインセンティブが働いてしまう人間の摂理が働くからです。それだけプロテスタントの宗教観というのは現世において禁欲的で合理的な振る舞いを推奨したと言えます。

・資本主義発展の歴史と言える19~20世紀の世界の覇権を収めたイギリス・アメリカなどの大国がプロテスタントの思想が色濃かったのは後にウェーバーの考察を補強する形の結果として見ることが出来ます。※ヨーロッパ諸国の信仰宗教・宗派とGDPの伸び幅は凡そ比例関係にあるので、興味のある方はデータを調べてみることオススメします。

 

 

【所感】

・世界史や宗教学に疎かったが故に用語について調べながら読んだので、かなりの時間を費やしてしまいました。経済学と政治や歴史が大きく関わるということもこの本を読みながら何度も痛感しました。旧約聖書新約聖書などについても内容を学びなおしてみないといけないなと思ったのが読後の感想です。

・日本にいると宗教をあまり気にすることがなく、それが当たり前になってしまいますが海外諸国では世界史とは宗教の歴史であると言ってもいいくらい密接に生活に関わるものです。今回は資本主義の歴史を知るという観点でプロテスタントについても学ぶことになりましたが、より深く多面的に物事を知るという意味で興味を持つ良いきっかけになったと思っています。岩波文庫君主論孫子・国家など歴史的名著に触れることが出来、どれも読むのが大変ですがとても考えさせられる名著が多いなと感じます。体力と根気がいるので、少しずつですが他の著作についてもチャレンジしていきたいなと思います。

 

以上となります!