雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪国家(上)≫

 

今回はプラトンの著作「国家」の上編を要約していきます。

ソクラテス「人間の魂の在り方とは?」「国家の在り方とは?」「正義とは?」といった根源的な問いについて考察した様を記述した本です。今に通じる話も多く記述されており、偉大さが伺える本です。教育書や統治書とも言える内容で、読み手によりどんなジャンルかという解釈は分かれると思います。

 

「国家(上)」

国家 上 (岩波文庫) | プラトン, 藤沢 令夫 | 哲学・思想 | Kindle ...

■ジャンル:政治学・哲学

■読破難易度:中~高(世界史や倫理に興味関心があるとかなり読みやすいと思います)

■対象者:・正義や国家のあるべき姿に興味関心のある方

    ・人間とは?という問いに興味関心がある方

    ・自分の振舞いについて内省する機会を持ちたい方

 

【要約】

・「国家」は上下巻で構成される著作物で、原著は10巻構成のプラトンの作品です。

・紀元前の倫理学特有の「人間とは?」「何が美徳か?」といった問いについて色々な方とソクラテスが弁証をしていく形式で記述されています。※この手の問いはキリスト教の普及と共に影を潜め、カントが登場するまであまり発展をしない時期が続きます。

■国を統治する時の基本ルール

支配される側の利益最大化を追求し続けることが支配する側が自由に行動することが出来る条件とされます。故に、他者や全体最適の為に揺るがない価値観で行動・思案することの出来る人というのが国の守護者の絶対条件であるとされます。

■不正は正義よりも得になりうるか?

・個人の不正・組織の不正、どちらをとっても価値基準が短絡的であり、長期的にその目的を維持・遂行することが出来ないが為に、自然に崩壊するので長期的にみると損であるとソクラテスは言いきります。実社会では経済合理や目先の生を生きる為の短絡的な行為が正当化・促進されるメカニズムが働くので、このあたりの取扱は諸説あると思われます。

■正義とは

外的報酬の為ではなく、「自分の価値基準」に照らして自己実現として良き姿であるという様に忠実である姿が正義であるとされます。なので、正義の対立による闘争ということは起こりうるとソクラテスは説いており、これは現代においても思想の不一致による衝突は日常的にあり普遍的な考察と言えるでしょう。

■国の守護者の教育

・国を守る・統治するという責務は個人欲求ではなく、組織目的他者貢献という原動力で動く価値観を持たないと務まりません。故に、価値基準・思想を養う体系だった教育は必須であり、神や魂の美徳を謳ったものや人間として備えるべき価値基準・美的感覚としての芸術などを知識として接種するべきとされます。※軍事教育や国語教育という形で現代でも応用されていますね。宗教ではなく神を信仰するというのが時代背景が感じられて面白いです。

・こうした社会の要望に応える形で、戯曲や詩は表現の場として古代で発展したと言えます。人としての振舞いを歌ったものが芸術に多いのは必然なのだと思います。

■守護者の選抜・条件

・国の守護者を育てる過程では気を付けないと力を持った暴君/暴徒と化してしまうリスクがあるので、そうならないように環境をうまくコントロール必要があるとされます。

・悪事を働くような方向に動かないために最低限の住居及び待遇はしっかり完備しながら、あまりにも私有財産を持つと暴君と化してしまう(必要以上の権力を持つ恐れがある)ので基本的には利潤追求をさせない、私有財産を禁止するというのが基本原則だとソクラテスは説きます。※このあたりの考え方は軍隊/自衛隊や公務員組織等にも適応されている価値観と思われます。

・加えて、協働生活により統率を図り、正義感を維持担保することも組織マネジメントとして有用であるという点もソクラテスは指摘します。

■個人の価値基準

・節制がある人というのは自分の価値基準を持ちながら、他者のそれを友愛と協調の精神をもって受け入れることにあると言います。「自分が支配する部分と支配される部分」というものを節度を持って理解している人が正義があると言えるというのがソクラテスの主張です。

 

【所感】

岩波文庫シリーズは色々な色の帯がありますが、青シリーズは古来の本が多く難しい傾向にあると思います。記述内容を自分の頭で咀嚼しながら進めるステップを踏む必要があるので、読むタイミングが大事に思えます。※グレーの帯の社会学や経済学を取り扱った本は比較的読みやすいです。

・自分が何の為に生きているのか・どんな原動力で日々行動しているのか?ということを問い正す機会にもなったので面白かったです。全く実務応用性はないですが、思考を深めたり、教養として認知しておくことは非常にポータブルな知識だと思うので個人的には大変意味があると思います。※相応の立場になった時に色々な角度からモノをみて考察する引き出しを持ち合わせておくことは人生を豊かにすると信じる個人的な信条なのですが、、笑

・下巻も引き続き読んでいきたいと思いますが、こうした普遍的な問いについて考察を深めることが好む人の性質として経営者や政治家が多いから、古典は愛されるのだろうなと気づきました。読むのに体力がいるのでペースは考え物ですが、定期的に古来の本は読んでみる価値があるなと思った次第です。

 

以上となります!