今回はシュンペーターの「経済発展の理論」下巻を要約していきます。
下巻は利子の源泉・信用創造のメカニズム・景気循環理論が主なトピックスで、古典派経済学及び上巻で述べたイノベーションのメカニズムを応用し理論展開がなされます。
※上巻の要約はこちら。
■要約≪経済発展の理論(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■経済発展の理論(下)
■ジャンル:経済学
■読破難易度:中~高(ミクロ経済や金融に関する前提知識があると読みやすいと思います。)
■対象者:・イノベーションに関して興味関心のある方
・マクロ経済の理論について興味関心のある方
・金融理論について理解を深めたい方
経済発展の理論 下(シュムペーター) 企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究 (岩波文庫 白147-2) [ シュムペーター ]
【要約】
・シュンペーターの本書での代表的な主張は下記3つと言えます。
■イノベーションの価値
「イノベーションは経済活動の根幹をなす」
・経済主体の企業努力によりイノベーション(新製品開発・新市場開発等)がなされ、絶えず需給曲線の均衡は崩壊し続ける為、古典派経済学が提唱した「神の見えざる手により需給曲線は閾値を超えると均衡し続ける」という前提を否定した所にシュンペーターの凄みがあります。資本主義の動的な側面を明らかにしたことが功績です。
■利子の源泉の説明
・労働者の待遇は企業利潤の最大化によりもたらされます。(企業利潤の取分として、労働に従事した人への賃金が支払われる為)
・そして、資本を持つことは企業の購買力増加を意味し、企業に一時的に資本を貸し出すことで、「購買力を増す⇒企業の生産能力を増す」という構図を働かせることにより、資本を仲介する際の利子が成立するということをシュンペーターは説きます。
※資本市場(金融・不動産等)にアクセスすることで、多くのビジネスが手数料ビジネスという形で儲けを得ているのはこうした原理原則が時代を超えて通じるものであるという何よりの証明でしょう。
・一時的に企業の購買能力を高めることが経済発展に寄与し、その為に金融機関による信用創造(貨幣という価値貯蔵機能を有した資本)という仕組みが成立し、それが経済発展を支援するという現代の構図が成立する意味を示します。
・「利子は発展の産物である」
・「利子は企業者利潤を源泉とする」
・「利子は具体的な財貨には結びついていない」
これが利子の基本3原則です。
■景気循環理論
・イノベーションに関する理論・利子の源泉の理論を応用する形で、景気は循環するというシュンペーターの最大の功績とも言える「景気循環理論」の導出に辿り着きます。即ち、経済主体の努力により(企業・政府・中央銀行等)景気は一定の期間で好況・不況を繰り返し、それは中長期的に見ると一定の周期を持つ運動として垣間見ることが出来るということを言わんとしています。
※これをもう少し応用すると、「ある程度の社会のシステムにより一定周期で景気は変動するので、経済主体は各自置かれた立場・フェーズで理論に忠実に最善を尽くしていけば長期的に社会は経済発展し続ける」ということを言わんとしているのだと思います。
【所感】
・今回はかなり要点を掻い摘んでまとめてみました。下巻は抽象的なモデルや言葉による論証が永遠と続くパートが多く、つぶさに要約をすることが部分を明らかにするだけで、あまり意味がないように思えた為です。
・マクロ経済学に関する基礎知識があるともう少し読めるなという感覚があったので、学び直しもう一度読むことで更に自分のものにしたいなと思いました。本書で述べられている内容は後のケインズ経済学・財政学・公共経済学などの発展に大きく影響をもたらしており、功績は偉大と言えます。
・逆説的ですが、古典派経済学についても理解を深めることで社会のシステムをもう少し自分なりに論じれるようになりたいなという気持ちも同時に芽生えてきました。経営学やファイナンスなどの知見からしか本書の内容を批判的に検証し読み進めることが出来ない、自分の知識不足を痛感せざるを得なかったからです。
以上となります!