雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪貞観政要≫

 

本日は貞観政要(じょうがんせいよう)」を要約していきます。

帝王学の古典とされ、徳川家康が愛読書としたとされる本です。中国の唐の時代に長期的な安定政権を築いた太宗と臣下の問答をから見出される教訓をまとめた内容となっています。「指導者の条件」「人材の登用」「後継者の育成」などのトピックスを扱います。この分野では「失敗の本質」と並んで有名な古典本です。

 

貞観政要

f:id:ty25148248:20220402182446p:plain

■ジャンル:政治学・組織行動学

■読破難易度:低(平易な文章であり、サクサク読めます)

■対象者:・守りの組織運営に従事する方全般

     ・為政者の振舞いについて興味関心のある方

     ・歴史好きな方

 

【要約】

■治世の要諦

「欲望を抑え、自身が模範となるような生活をすること」「部下の進言を積極的に受け入れる姿勢を作ること」の2点は組織運営をする上で根幹を成す君主のあるべき姿とされます。

・組織には階層が形成される以上、そこに付随する権力による抑止力権力の暴力性が君主(≒上位者)と臣下の間には発生します。他人の力を用いて組織全体の成果を最大化することに責任を負う組織マネジメントにおいては臣下には敬意をもって接し、臣下の力が最大限発揮されるよう身を粉にして環境を整備し、謙虚な態度で振舞うべきということが本書では一貫して説かれています。その意味において、太宗は「組織マネジメントとは非常に禁欲的な行いである」と評しています。

 

■人材の登用

「いい人材に巡り合えるかは人材に対してどのような態度で振舞うかによる」と本書では評しています。人間は自己の重要感を大切にする生き物です。故に、「敬意をもって教えを乞うような態度で管理対象の人材に接する」ということが帝王学の基本中の基本であるということです。

※臣下の短所や気になる点なんて、統治する側から見れば探そうと思えばたくさんあるものでしょう。ノックアウト項目は別として、基本的には仕組みで弱みが露呈しないように補いながら、明らかに平均を逸した強みを有している部分にフォーカスし、その強みが市場機会の追求・成果還元されるように設計するべきということのようです。ましてや「管理対象の人材について憂いているのは愚の骨頂である」とさえ太宗は断言します。

 

■後継者育成

・後継者育成は組織の成果に真剣に向き合おうとすると必ず着手しないといけないものとされます。組織の新陳代謝は健全な組織運営を支え、権限移譲なくして優秀な人材を組織に誘因することは出来ないと太宗は評します。なお、背面服従は最悪の組織コンディションの象徴であるとされており、イエスマンで固めた組織は情報の透明性に欠け、内部から崩壊していく傾向にあるとのことです。

 

■学問の効用

・学問を学び、経験だけではなく歴史から因果関係普遍的な法則を見出す見地を獲得することが学問を学ぶ意義であるとされます。未来を予測し、正しく組織のベクトルを課題解決やあるべき姿に導く為には歴史から帰納法的に考えを導き出す思考プロセスが不可欠であるということを太宗は主張しています。

 

【所感】

・久々に東洋の古典本を読みましたが、儒教的な思想が随所に垣間見えてとてもしっくり来るなという感覚を持ちました。資本主義社会を生きる自分にとっては西洋由来の思想が実務・実利的にはあるのですが、感覚的なフィット感はこっちだなと(笑)

・個人的には階層組織の上位に行けば行くほど、「他人の力を用いて成果に責任を持つ」範囲が広くなると思っていて、その意味では実務的な面は他人の奴隷的な要素が強くなると考えます。その意味において、謙虚に慎み深く物事に向きあうのは必須かなと感じます。※階層組織には権限や地位に紐づいた権力関係や暴力が発生するので、表面上と実態が乖離するという皮肉な現象が起こります。

・とはいえ、理論と実践は別物であり、組織マネジメントにはサイエンス・アート・クラフトの3要素があるとミンツバーグが評するようにその場面に応じた実践が何より大事だなーと感じます。なので、若手社員時代に経験を重んじる人を蔑視するような狂った自分がいましたが、今となってはそういった人の言い分も分かるなと改めて再認識した次第でした。

 

以上となります!