雑感

読んで面白かった様々な分野の本を要約しています。主に社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)。

■要約≪伊豆の踊子≫

 

今回は川端康成伊豆の踊子を要約していきます。

川端康成ノーベル文学賞を受賞した日本純文学を代表する作家で「雪国」「古都」等が有名作品です。伊豆の踊子には伊豆の踊子」「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」の4作品が収録されています。

※今回は初めて小説をまとめる形式を採用します。中身を要約してもあまり意味がないと思うので、個人的に気になったポイントを列挙していく形式を採用します。

 

伊豆の踊子

伊豆の踊子 小説 に対する画像結果

■ジャンル:文学

■読破難易度:低~中(文字をなぞるだけであれば各作品は40ページ程度の短編なので、とても読みやすいと思います。)

■対象者:・日本純文学について興味関心のある方全般

    ・新感覚派のエッセンスを味わいたい方

    ・身分差別・男女差別を始めとした日本古来の伝統的な考えを理解したい方

【要約】

川端康成横光利一と二大巨頭を成す新感覚派の作風です。

新感覚派とは簡単に言うと、ヨーロッパ文学の表現技法を用いて美術や音楽の世界に通じる「美」を表現するポエム調の作風です。擬人法比喩を積極的に用いて、日本社会のある場面を切り取りエモーショナルな感じに現実を描写するという作風です。

 

伊豆の踊子

旧制高校旧帝大への進学が確約されているエリート)在学中に自分探しの伊豆への旅をした川端康成の高校生時代の経験をベースにした作品です。自然や踊子の初々しさを賛美する描写が特徴的です。本書は旧制高校に通うエリート階級の主人公と当時の最下層に位置した商人・踊子とが数日間旅を共にし、感情を交錯する中で断絶した格差を場面場面で実感しながら、自己変容していく主人公の感情を吐露した作品です。

※個人的には日常を生活していると臭い物に蓋をするようにして、面と向き合うことを避けているような種類の感情に向き合う内容で少し重苦しいですが、印象的な作品でした。表現技法が秀逸で美しさがあり、とても読みやすいです。

 

■温泉宿

・娼婦という身分階級の感情的葛藤を描いた作品です。川端作品の中では少し異質で、プロレタリア文学に近しい要素があります。生まれた段階で既に走るレーンが決まった人生を必死にもがいているということを突き付けられる描写はとても重苦しいと共に、「なぜこんな理不尽が過去には存在したのか?」と思わざるを得ない内容です。

・個人的には逆説的に、「経済活動を活性化し、社会全体が物質的に豊かになる道を突き進む資本主義経済の恩恵」というものはあるよなと感じざるを得ませんでした。

 

■抒情歌

・作品全体に新感覚派の表現技法が散りばめられたらしさ満点の作品です。川端康成自身の失恋経験をベースに主人公が感情を吐露していく独特の内容です。ギリシャ神話・キリスト教・仏教・神道などに言及する場面があり、精神世界に理想を見出すという哲学的な問いも出てきます。

※本書は川端康成研究をする上で抑えておくべき重要作品として位置するようです。

 

■禽獣

に関する川端康成の見解を「主人公が飼っている動物の生死を通じて表現する」という内容の作品です。少しグロテスクな内容も含み、精神的に歪んだ主人公の感情的葛藤も見られる作品です。三島由紀夫はこの作品を称賛しており、川端康成自身は自分の価値観が詰まった作品故に面と向きあって向き合うことを嫌う作品と評したようでした。

 

【所感】

・大正~昭和期の日本文学は基本的に暗い話が多く、意図的に避けてきたのですが非常に印象に残る面白い作品ばかりでした。巻末にある三島由紀夫の作品解説がとてもわかりやすく、これを読んでから本書を読んでいくことで川端康成が何を表現したかったのかがわかるようになっています。

・「伊豆の踊子」「抒情歌」「禽獣」の3つは川端康成自身の過去の経験を借用する私小説調であるので、氏自身はあまり面と向き合いたくない作品と評されています。

・明治以降西洋文化と融合する中で、日本独特の価値観や文化等が研ぎ澄まされていくのは大正以降の日本全体の傾向ですが、本書でも西洋と比較する形での東洋並びに日本という構図が随所に見られます。キリスト教ギリシャ神話は勿論のこと、仏教神道に関しても造詣があるとより理解が深まるのだろうなという描写が何か所かあり、学び直した後に読み返してみたいなーと思いました。

※「伊豆の踊子」は日本の美しい風景を賛美したような記述が随所に見られ、古来からの神道に通じる考えが素人の僕にもわかりました。

 

以上となります!