雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪銃・病原菌・鉄(下)≫

 

今回はジャレド・ダイアモンド氏の「銃・病原菌・鉄」を要約していきます。

文明間の競争の雌雄を決した三要素「銃・病原菌・鉄」に着目して、人類の歴史を紐解いていく構成になっています。下巻は中国・オーストラリア大陸南北アメリカ大陸・アフリカ大陸などヨーロッパ以外の文明について考察をし、「現代のヨーロッパ諸国に富と権威が偏在する社会がどのように形成されたのか?」を明らかにしていくパートとなります。

※上巻の要約は下記。

■要約≪銃・病原菌・鉄(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

■銃・病原菌・鉄(下)

 

■ジャンル:歴史

■読破難易度:低~中

■対象者:・人類の歴史の起源に興味関心のある方

    ・文明間の衝突に関わる力学に興味関心のある方

    ・先進国・途上国の構図がどのように形成されたのかについて関心のある方

 

【要約】

■集権社会の到来

・狩猟民族⇒農耕民族へ移行し、定住が広範囲で行われるようになると人類は社会を形成し国家を築くようになりました。イデオロギー共産主義社会主義等)や宗教キリスト教イスラム教など)によりエリート階級が一般階級を統治することを正当化するという手法をこぞって採用してきました。

・首長社会⇒国家へ移行する過程で必ず各文明は文字を開発し、文字による情報伝達・蓄積などを試み、知的生産活動を行おうとしてきました。国家になる中で社会全体で分業がなされ、各産業で役割分担をし、貨幣公共サービスを通じて取引をし、各経済主体が得たい効用を得るように取引をするということが浸透し現代のような社会の基盤がつくられたとされます。

 

オーストラリア大陸に纏わる謎

ニューギニア島オーストラリアなどは17世紀以降にイギリスオランダの入植がようやく進んだ地域です。先住民は高低差の激しい地形や生態系の制約から旧来の文明レベルにとどまる生活を数千年繰り返していました。中には船の技術を放棄し、未開社会に回帰した文明もあるなどです。

・こうした地域がなかなか入植が進まなかったのはヨーロッパ諸国の食糧生産システムを持ち込んでも生態系が異なる為、成立しないという制約故に発展がひどく遅れました。※独自の文明を発展させられなかった点からも環境がもたらした制約は大きかったといえるでしょう。

 

■中国大陸について

・一つの言語・民族で統率がここまで広範囲に出来ているのは非常に珍しいとされるのが中国の特徴です。大量の人口を有しており、黄河流域を中心に古来から文明が発達しており、ユーラシア大陸東部の覇者として独自の文化・文明を形成してきました。朝鮮半島や日本にもたらした影響は甚大でした。

・良くも悪くも非常に統率の取れた国家を広範囲で統治していた為、競争の力学が働きにくく、外航を止めた時期に一気にヨーロッパ諸国に後塵を廃してしまったということがあります。

※ヨーロッパ諸国は地形の制約からなかなか一つの国家になることは出来ないが、宗教や文化の相違から常に戦いを繰り広げており、文明を発展させるインセンティブがあったということが中国との違いでしょう。

 

■まとめ

・世界各地で文明は発達したが、その後の加速度合いには大きく差が出来ました。最も有利な条件を有していたのはユーラシア大陸であり、東西に広い地形の利を活かして農耕技術や生態系を容易に横展開し、文明間が競争を繰り返すことで高度かつ高速に文明を発達させたということが言えます。加えて、宗教が統治システムであり、道徳教育として社会に根深く存在した為、宗教が行動に常に大きな影響を与え続けたということも重要な要素です。※プロテスタントの営利追求を是認する思想は革命的で、これが大航海時代や資本主義を促進し、究極系として帝国主義に発展していったので。

・南北に長い地形のアフリカ大陸・アメリカ大陸、そもそも食糧生産システムを築くのに不得手な地形のオーストラリア大陸がヨーロッパ諸国の好漁場と化してしまったのは歴史的必然であるのかもしれないと本書ではまとめられます。

 

【所感】

・文明の起源とされたアフリカ大陸や肥沃な三日月地帯が初期のアドバンテージを活かすことが出来ず、後塵を廃し、人類の歴史で見ると後発組の西ヨーロッパの諸国が競争を繰り返しながら独自の文明を発達させ続け、現代の構図に至るというのは皮肉なものだなと感じました。

・人類の歴史を知る上では宗教やヨーロッパ社会の成り立ちを学ぶことが非常に重要であると改めて認識をしましたし、比較する形で儒教や中国の歴史についても理解を深めてみると特異性のある日本というものがつかめるのだろうなと感じました。

 

以上となります!