雑感

読んで面白かった様々な分野の本を要約しています。主にプロダクト関連領域・社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)。

■要約≪法の精神 第一部≫

 

今回はモンテスキュー「法の精神」を要約していきます。

三権分立で有名なフランスの哲学者で、ペルシア人の手紙」ローマ人盛衰原因論と並んだ氏の代表作です。「法の精神」は上中下巻の三部作で六部構成となっております。今回は第一部を要約していきます。本書はジョン・ロック「完訳統治二論」と並んで政治学に大きな影響を与えた書物として有名です。

※参考※

■要約≪完訳統治二論 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪完訳統治二論 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

■法の精神(上)

 

■ジャンル:政治学

■読破難易度:低~中(明快な文体なのでとても読みやすいです。ただし、古代ローマギリシアの歴史の引用が多い為、周辺知識が足りないと部分部分で置いてきぼりになるかもしれません。)

■対象者:・世界の統治体制の歴史について興味関心のある方

     ・政治と法律の関係性につちえ興味関心のある方

     ・立法・行政・司法の役割について理解を深めたい方

 

【要約】

・第一部は共和制君主制専制という代表的な3つの政体に関して歴史を紐解き、統治に関する原理原則を明らかにしていく仕立てです。共和制人民の全体が政治に参画することを重んじており、君主制一人の君主が絶対的な権力を持つが法に支配・制限されるというもので、いずれでもない独裁的な動き専制です。

 

■法律の役割

法律原始理性という道徳観に基づきあらゆる関係性を論述したもの」と本書で定義されます。これは「法律が定める価値基準に従い物事を進める(≒法を執行する)ことが人類全体の便益にかなう」という価値観が根本にあります。なので、統治体制により法律の性格・意味合いも異なるという関係性を示唆しています。

 

■政体の発達

「人民が政治に参画するというプロセス」ローマで発達した制度です。各階級から選挙により人民を選出するというプロセスは既に古代ヨーロッパで試されていた手法でした。直接民主制は理想ですが、実行するのは物理的に不可能な為、代議士を通じて間接的に統治を委任するという形式で発達しました。

民主制共和制は全ての階級に開かれたものでないと、必ず全体に不利益をもたらすことになります。貴族階級への富の偏在や汚職の横行などとして顕在化していきます。

・人間は欲深い生き物であり、権力や権威に群がるもので、その前提に立ち物事を成していかないと実態と乖離すると本書でモンテスキューは強く批難します。その為、「一部の特権階級優遇のような法律整備や政治運営がなされるリスクがあるので、立法に関わる人の任期は限定的にするべきである」という主張が手を変え品を変え何度も本書では登場します。

 

■政体がもたらす教育原理への影響

・統治体制が異なると望ましい価値観や判断軸が変わります。それ故に、人材を育成する教育の原理原則も変わります。

君主制は君主の名誉の基に統治がなされるので、名誉という概念のインプットに重きを置くことになります。共和制(民主制)正しさをベースに統治をする為、分別をつける為のを重んじた教育、専制は恐怖を重んじた教育といった具合になります。

・尚、「徳による統治は愛国心や法律による支配を好んで受け入れるといった協業が可能な知性レベルに万人がならないと破綻する統治制度である」モンテスキューは指摘します。

 

■司法機能と政体の関係性

・法を執行する司法機関は神聖不可侵であり、独立した権力を持たないといけないというのが前提の考え方です。特に君主制共和制においては人民のあらゆる財産や権利を守り統治基盤を確かなものにする為に司法機関は必須とされます。実態としては階級世襲による財産移転がされるという慣習がありますが、原理原則に基づき公正な取引を促進する機関として司法機関は存在することに意味があるとされます。

・実際の世界の歴史を見ると、古代のギリシアやローマではこの原理原則を守りきることが難しかったことは明らかです。特に専制においては独裁者こそが法律そのものになってしまう(その権力・権威が存在することこそが専制という統治制度の根幹をなすパワーなので)という難しさが発生しました。

 

■政体が腐敗に至るプロセスについて

民主制平等の精神が崩壊した時に、それがどのような理由であろうと崩壊の道を辿るとされます。共和制においては徳による統治が成立しなくなり、一部の人の権利・名誉の為の行為が横行してしまうと共に破綻の道を歩むことになります。徳による統治が一度崩壊すると腐敗の温床となり、金で権利を獲得する動き専制政治を呼び寄せることになってしまいます。

貴族制は共和制に近い思想で、「血筋能力が一定保障されている集団に統治を委ねる」という思想のものです。この特権階級の利権が社会の為ではなく、自分達の為に行使され始めると崩壊の道を辿るようになります。君主制名誉の名の下に統治がされるため、その名誉の源泉となる信頼残高がなくなると共に腐敗の道を辿ります。また、原理原則により運用されるから素晴らしい統治制度なだけで、わき道にそれた瞬間に専制政治を招く性質を持っており、極めて性善説的な考え方の制度と言えます。

専制はその性質上、最初から腐敗しています。なので、長期的に持続的かつ安定することはなく、短期に時間軸を据えおいた統治制度である宿命です。

※いずれの政体も単独で統治するのは難しいから戦争や宗教などの飛び道具を駆使して統治制度を確実にしていくのが望ましいという結論に至ったのは世界の歴史を見ると明らかです。

・そしてこの3つの政体には絶対の解がなく、国家の大きさにより適切な統治制度が決まるという性質があります。即ち、「国家の大きさに即して適切な統治制度・精神をアップデートしていかないと優れた国にはならない」ということをここで示しています。

 

 

【所感】

三権分立のイメージが強かったモンテスキューですが、実際は歴史家としての側面が非常に強いというのは意外でした。マックス・ウェーバーのように歴史を比較することで普遍的な法則や傾向を丁寧に論証していく様は圧巻です。

・三つの政体について、どこかに肩入れすることなく淡々と原理原則を論じていく様は自身の思想を前面に出すというよりも真理や法則を導き出すことに重きを置いている氏のスタンスが垣間見えて、素晴らしいなと感じました。

・本書は古代ローマギリシアに関する歴史や書物の引用が多く、昔学んだ世界史の知識を引っ張り出して読み進めることになりました。これらの文化・文明に明るい状態でもう一度読み直したらとても面白いのだろうなと感じました。※積読になっているローマ人の物語ギリシア人の物語」を読む丁度いいタイミングだと思いました。

 

以上となります!

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