雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

≪下期総集編≫2022年度に読んで面白かった本7冊

 

今回は半年に1度まとめている「読んで面白かった本シリーズ」です。

上半期に引き続き、歴史的偉人に薫陶を受ける想いで社会科学の古典本を中心に読み進めていました。「時間軸を長く・スコープを広く・深く」していくことが直近1年の個人的なテーマ感の中で歴史や原理原則に学んでいくことが自分に必要と感じており、自然と偉人と対話を繰り返すような想いで本を選定して読んでいた感覚です。

 

※直近のまとめ記事は下記。

≪上期総集編≫2022年度に読んで面白かった本7冊 - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪目次≫

・戦略サファリ

・外交談判法

功利主義

・経済原論

雇用、利子および貨幣の一般理論

・法の精神

・権力と支配

 

「戦略サファリ」

≪要約≫

■要約≪戦略サファリ≫ - 雑感 (hatenablog.com)

・マネジメントが管掌範囲の成果を最大化する為に織りなす戦略を「何にレバレッジポイントを置くか」という観点で10の学派に分類し、そのアプローチの特徴や学派間の相互作用・関係性についてまとめた本です。

・日本の伝統的な経営学の世界では形式的策定や分析といった「秩序を形成し、その方針に忠実に役割分担をして成果最大化を目指していく」というアプローチが多いですが、組織学習やビジョン・環境適応など様々なレバレッジポイントが存在するということを俯瞰して学ぶことが出来たのは個人的に大きな収穫でした。制約条件や目指すものにより、組織や戦略の最適解は自ずと異なると感覚では認識していても、秩序偏重になる自分の思考スタイルの矯正にとても役立ちました。

 

「外交談判法」

≪要約≫

■要約≪外交談判法≫ - 雑感 (hatenablog.com)

・フランスの黄金期(ルイ14世の治世)に活躍した外交官のカリエールが外交官の職業倫理について体系立てて論じた本です。本書の内容は抽象化すると、部門折衝を伴う人(≒組織の成果に責任を負う人)全般に通じる内容であると解釈しています。「様々な分野への知見を持つことの重要性」や「情理のバランス」など非常に示唆に富んだ内容でした。

・自分の役割や責任範囲が変化していく中で、これまでの延長線上にない価値観・バランス感覚が必要とされていたタイミングに本書に巡り合えて貪るように読んだのを覚えています。前提知識不要でサクサク読めるのもポイントです。

 

功利主義

≪要約≫

■要約≪功利主義≫ - 雑感 (hatenablog.com)

・J.S.ミルの代表作で質的功利主義を提唱した本です。「最大多数の最大幸福を目指す功利主義は目先の快楽追求に満足しないソクラテスの有徳な生き方と両立する」という考えを打ち立てており、近代思想・経済学の発展に大きく寄与したとされています。

・「短期的な実利・エゴ」と「中長期的な価値・社会寄与」のバランス・解釈の在り方に悩んでいた時期に本書を読んで、腹落ちしたのを覚えています。

※もう一つの代表作「自由論」も面白くこちらもオススメです。

■要約≪自由論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

「経済原論」

≪要約≫

■要約≪経済原論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

マルクスの「資本論」からイデオロギー要素を排除し、経済思想のエッセンスだけを抽出・編み直し体系立てた日本の代表的な経済学者宇野弘蔵氏の本です。

マルクス経済学は「商品・貨幣・資本」という資本主義経済の根幹を成す3つの概念の相互作用関係性にフォーカスし、流通論生産論分配論の三部構成で論が展開されます。労働者資本家土地所有者という3階級の配分のメカニズムに着目した斬新さや貨幣土地金融資本などの基本概念の相互作用を緻密に分析した点などマルクスの慧眼に驚かされる内容でした。

・古典派経済学(ミクロ経済学)の発展形としてマルクス経済学とケインズ経済学(マクロ経済学)が存在すると解釈しており、その双璧をこの半年で学ぶことが出来たのは大きな収穫でした。

 

雇用、利子および貨幣の一般理論

≪要約≫

■要約≪雇用、利子および貨幣の一般理論(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪雇用、利子および貨幣の一般理論(下)≫ - 雑感 (hatenablog.com)

マクロ経済学の大家ケインズの代表作です。「雇用量」を社会全体の経済動向を規定するKSFと置き、経済活動および資本主義経済の基本概念の関係性を編み直した点が功績です。

・「雇用量(有効需要)最大化」の為に金融政策財政政策消費/投資誘致などの政府の経済政策を実行することで、市場経済に介入すべきという「大きな政府論」を説いているのが特徴です。氏のエッセンスはパレート最適分配に目的を置く公共経済学に受け継がれ理論として昇華されており、本書はその功績の偉大さに感服する内容でした。

 

「法の精神」

≪要約≫

■要約≪法の精神 第一部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第二部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第三部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第四部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第五部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第六部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

三権分立で有名なモンテスキューの代表作です。ヨーロッパ文明(主にローマ・ギリシア)を中心とした歴史研究を通じて、法律の在り方や政治機構の役割を中心に論じている本です。「風土や宗教の精神が法律に与える影響」「フランス封建制の歴史研究」など個別論点が非常に重厚で深いテーマとなっております。

「歴史と比較というアプローチで一般化した法則を見出す学術スタイル」は今となっては当たり前ですが当時としては非常に先進的で後のマックス・ウェーバーなどに引き継がれ大成していったアプローチ方法で、スケールの大きさに圧倒される本でした。

 

「権力と支配」

≪要約≫

■要約≪権力と支配≫ - 雑感 (hatenablog.com)

マックス・ウェーバー「経済と社会」という大作から支配の諸類型官僚制組織について考察した部分を抽出・再編成した本です。合理的支配伝統的支配カリスマ的支配という3つの代表的な支配体系に関する考察が中心となっており、指示命令系統・組織の効果・作用を広く、深く学ぶことの出来る内容となっております。

・本書を読み、政治学・経済学・社会学は相互に作用しておりエッセンスを学んでいくと関係性が掴め着眼点が広がる」という感覚を得ることが出来たのが大きな発見でした。

 

まとめは以上となります。

歴史や学問から因果関係や法則を学び、自分の思考や行動を変化させていく必要性・重要性を改めて感じた半年でした。骨が折れる作業ではありますが、自分の思想の血肉となった感覚が非常に強く、大切にしていこうと感じた次第です。