雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪種の起源(上)≫

 

今回は進化論で有名なダーウィン種の起源を要約していきます。

自然選択と適者生存の事実から従来信仰されていた生物に対する神による「個別創造説」を否定し、進化論を提唱・体系立てて論じた本です。上下巻の二部構成となっており、今回は上巻を要約します。

 

種の起源

ブランド直営 チャールズ・ダーウィン『種の起源』 1902年 - insight.eco.br

■ジャンル:生物学

■読破難易度:低(事例を基に積み上げ式で論じていくので非常に読みやすいです。生物学の知識は不要で動植物への関心の方が重要です。)

■対象者:・進化論のエッセンス興味関心のある方

     ・生物学の古典に興味関心のある方

     ・自然淘汰・環境適応のメカニズムについて理解を深めたい方

 

【要約】

■本書記述の時代背景

ダーウィンが活躍した時代はビクトリア女王治世の大英帝国時代で、ロンドンで博覧会が開かれるなど平穏な栄華を誇った時代です。イギリス国教会が強い権威を持つ時代であり、生物学など「神の営み」を探究する自然科学は未だタブー視されている時代です。そんな中、ダーウィンは様々な動植物の観察・考察から導き出した進化論を世に出す為に本書が記述されました。パラダイムシフトを起こし得る仮説を扱うにあたり、慎重に論を展開していく仕立てになっているのは上記の時代背景が大きかったとされます。

 

■進化論

「多くの動植物というのは起源を共通としており、環境適応や遺伝・変異により特徴を際立たせてきたものである」これが進化論の概要です。進化論は自然界の法則や因果関係を弁証法的に説明しようとした理論です。

・何代にもわたって、「当該年度で最も質の高い品種や作物の種を残して遺伝させていく」ということを繰り返していくことで生物は進化します。それは長期的には環境による自然淘汰の力学で勝手に発生して最適化されるとダーウィンは様々な動植物の事例を用いて論証します。

 

■生存競争

・動植物は自己増殖機能を必ず有しており、世代を超えて増加していく傾向にあります。理論上は放置していると「等比級数的に増加していく」ことが予測されますが、現実にはそうはなりません。種を超えた競争が勃発し、長い歴史の中で「自然淘汰・自己変容を繰り返していく自然の摂理」がシステムとして作用するからです。

・生物各種は生き残る為に他の動植物を栄養供給源とします。その過程で「他の種との競争や外部環境(気候)変化に伴う変化などを経て進化・変化していく宿命にある」という食物連鎖に通じる考察も本書では導き出しています。

 

■本能

「無意識になされる習性的行動」本能と呼び、矯正の末に習慣化された行動とは異なるものをあらゆる動植物は兼ね備えているとされます。本能は「種の利益にかなうようにプログラムされた無意識的な行動」であり、環境変化など長い年月を経てアップデートされ続けるものとされます。「特定の動植物に対する恐怖がプログラムされ本能的な行動になるケース」も存在し、これは後の生物学領域における刺激反射のメカニズム解明により論証されます。

・「反射的行動」・「外見」・「特性」などは長い歴史で特別変異が選別・自然淘汰されており種の歴史を辿ると様々な生物は一括りの起源に辿り着きうるとダーウィンは問題提起します。一見、奇妙な特徴も「外界や種間のバランスを加味して緻密に意図されているシステムを成しており、部分だけで捉えても狙いや意味がわからない」ということをダーウィンは本書で示唆しており、本能は「完全体ではないが、他の動植物の本能活用は生態系のプログラムに組み込まれていることが多い」という見解を様々な動植物の観察・分析から導き出しています。

 

【所感】

・遺伝のメカニズムが解明されていない中で、進化論の結論に到達したダーウィンの先見性は圧巻です。「様々な条件を固定し、比較検討・観察から帰納法的に論を導きだす」という現代の生物学に通じるアプローチ方法・論証方法を確立した点からも学問及び自然科学全体の発展にもたらした寄与は偉大と言えるでしょう。

自然淘汰の力学は経済学領域における「市場の競争原理」に通じる考え方です。また、進化論の帰結は弁証法的アプローチの有用性」を証明・補完するものでもありました。ダーウィンの一連の論証や考察プロセス・学びは「特定領域の学問における思考プロセスや原理原則は他領域の解明・他領域への応用に寄与する(自然科学(生物学)⇔社会科学(経済学))」ということを証明する最たる例と言えるでしょう。

 

以上となります!