雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪組織行動の「まずい!!」学≫

今回は樋口晴彦氏の「組織行動の「まずい!!」学」について要約していきます。著者は警察大学校警察政策研究センター主任教授として危機管理分野に精通しており、様々な不正事件を題材に組織において不正はなぜ発生してしまうのか・どのように危機管理を考えればいいかということを論じた本です。2006年著ということもあり、事例が古いですが、時代を超えて通じる教訓が散りばめられた内容となっておりリスクマネジメントについて考えるに適した題材となっております。

 

「組織行動の「まずい!!」学」

組織行動の「まずい!!」学: どうして失敗が繰り返されるのか (祥伝社新書 44) | 樋口 晴彦 |本 | 通販 | Amazon

■ジャンル:組織論・リスクマネジメント

■読破難易度:低(平易な言葉で書かれており、前知識不要で読むことが出来ます。新聞やテレビで大規模に取り上げられた事件を題材としており、読みやすいです)

■対象者:・不正・失敗の構造について興味関心がある方

     ・組織マネジメント・危機管理に従事する方

     ・問題発見・問題検知の仕組み作りに携わる方

 

≪参考文献≫

■組織行動のマネジメント

■要約≪組織行動のマネジメント 前編≫ - 雑感

■要約≪組織行動のマネジメント 後編≫ - 雑感

 

■CHANGE なぜ組織は変われないのか

■要約≪CHANGE 組織はなぜ変われないのか≫ - 雑感

 

【要約】

■人はなぜミスを犯すのか

・失敗学は技術工学分野で発達しました。著者は技術工学の理論を文科系の分野でも活用できないか?という問題意識から本書を記述しました。著者のスタンスとして問題解決は問題の現委員を深く理解することにミソがあるという立場を取ります。具体的にはJR西日本脱線事故雪印日本航空などの不正の事例などを解説しながらどのように失敗学を実践していくかを論じます。

・産業事故の7割はヒューマンエラーであり、ケアレスミスや意図していないなどがよくある行動とされます。危機管理については対症療法ではなく、予防治療的なアプローチや根元のシステムに問題がないかを考えることがポイントになります。左記をしない限りにおいては組織は細部の判断ミスやサイロ化による不正の温床形成などがトリガーとなり失敗を繰り返す構造にあるとされます。不慮の事故は未熟な若手のミスは少なく、ベテランがガバナンス不全で我流でやり陥ることのほうがほとんどです。阿吽の呼吸年上の部下問題などが日本には特有の風土としてあり、結果としてガバナンス不全になるという構図は起きやすいとされます。

・合議は結果的に研ぎ澄まされた方針や考えを失うことにもなりうるものであり、現実には周囲の意見や判断は確認するが、トップダウンに判断することが求められるというのが組織の実行の常とされます。グループシンクは結果的に凝集性が高まり、前例踏襲などの愚かな意思決定を助長する力学を生むとされます。集団独自の道徳の押し付け・ステレオタイプ・異質性の排除などは典型的なアンチパターンです。優れた意思決定をするには時に全員がすり合わない状態で決断することが必要になります。属人的組織風土は地殻変動に弱く、意思決定の質を招き、これは同質性や安定成長を長らくしてきたが故の功罪として露呈しやすいとされます。

 

■危機管理における組織の力学

・安全対策は時間の経過と共に摩耗し形骸化して、その結果不正を招くとされます。標準業務動作から逸脱した時に不正は起こるもので、それは怠慢や統制不全などによるものです。逆に、本来の標準業務動作や体制に不備がある場合、予測の洗い出しが不足していることになり、対症療法と予防治療の両方がリスクマネジメントの原則となります。業務のエラーは効率化や改善の行く末に到達することもあり、部分が全体に波及する影響があることや安全対策の観点が抜けるなどは学ぶべき事象です。欧米はマニュアル遵守・指示命令系統厳格ですが、日本ではQC活動など現場の裁量・改善に重きを置いてきたこともあり、この統制は難しくなりやすいようです。

・専門家は見たいと思う世界・過去の意思決定の正当化を目指す力学がどうしても働いてしまい、意思決定の透明性・妥当性の問題がつきまとうとされます。専門家は詳細を理解できるものの俯瞰してみることが出来ないというものであり、外部からの嫌な切り口や俯瞰視点を軽視しやすいとされます。専門家は結論ありきで正当化しようと継ぎはぎすることをしがちとされます。専門化は専門性に拘泥する一方で、専門外に対して極端に興味を持たない・受け身になる生き物ともされます。

 

リスク管理の要諦

・リスクマネジメントはサイロ化する業務フローを作らないことリスク検知の仕組みを複眼で設けることにあるとされます。ピラミッド構造の組織は実行力同質性においては優れていても批判的な視点にかけたり、変化対応・違和感を行動に移す力学が極端に乏しく、その前提でリスクマネジメントや変革をするのは相当に大変ということになります。失敗や現実を直視して考える・対話するを繰り返していくことが一番必要になります。人間は必ず過ちを犯す生き物であり、現実を直視して如何に学び組織学習・再発防止や意思決定の精度に反映していくかという修行のような営みが大切なのです。

 

【所感】

・仕組み構築やガバナンス・組織マネジメントに非常に示唆に富んだ事例考察と主張が詰まった内容でした。人は見たいと思う現実しか見ないということや慣性の法則により惰性化・硬直化していくという組織の構造的な性質に関する警笛を鳴らしている内容でもあり、危機管理の学問としては勿論人間社会の本質を射抜くような内容で、考えされるものでした。

・組織の流動性や複眼的なチェックは勿論、継続的に批判的な視点で当たり前を疑うということが問題解決・問題回避の質を高める唯一にして最大の原理原則と個人的には考えており、そうした行為をトップが評価する・実践することや定期的な環境変化を自らに課すといったことが大切であると再認識しました。居心地がよくなったり、軽視しようとすることは人間の欲望的な性質として避けられないものであり、その現実を如何に直視してリスクコントロールしていくかなんだなと感じた次第です。

 

以上となります!