雑感

読んで面白いと感じた様々な分野の本を要約しています。

■要約≪プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神≫

 

今回はマックス・ウェーバープロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神を要約していきます。

比較宗教社会学研究の大家である氏の代表的な作品と言われています。

経営学について学び直しをする中で、経営学の土台となる資本主義の浸透・発展の歴史について興味を持つようになりこの本にたどり着きました。

 

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫) | マックス ...

 

■ジャンル:社会学・宗教学

■読破難易度:中~大(背景知識がないと、非常に読むのに苦労してしまいます。マックス・ウェーバー自身が多元論的立場に立ち、見解を記述している為、様々な解釈が出来る内容が多く大量の注釈が存在します。)

■対象者:・資本主義の歴史に興味関心のある方・欧米諸国の発展に興味関心のある方・プロテスタント諸派の思想について理解を深めたい方

 

【要約】

・資本主義の発展に対して、一見対極にあるようなプロテスタントキリスト教における、カトリックと対をなす諸派)の倫理観が大きく寄与したという逆説を説いています。

プロテスタントとはルターを始めとした宗教革命以後に派生した諸派の総称を指します。

・代表的な特徴としては「聖書第一主義※教会の権威を否定」「天職概念」「禁欲の精神」などが挙げられます。

プロテスタント諸国では寄付を積極的に募る慣習があるのは現世において、禁欲の精神・公共の福祉への貢献を中心に生きることを推奨する為です。

「日々の労働行為を通じて神への信仰を体現せよ」という根底の思想があり、同時に必要以上の富を保有することを否定します。労働すれば対価としてお金が必然的に生まれる訳ですが、倹約な日常生活を是とするプロテスタントにとってはその余剰資金は持っていることは望ましくありません。それ故に投資へお金を回すことになり、資本主義経済における発展を加速させるという循環が働きます。「極めて合理的かつ倹約な精神」を美徳とするプロテスタントの倫理観は資本主義における良し悪しと親和性が高いのです。そうして、利潤追求を是としないプロテスタントこそが、資本主義経済においては勤勉に働き、積極的な投資をし(せざるを得ない)その結果として利潤を最大化してしまうという矛盾のような逆説が生まれるということをウェーバーは説いています。

産業革命がピューリタニズムが色濃いイギリスで誕生したのは上記見解を裏付ける具体例とも言えるでしょう。

・この「利潤追求をした結果、富を抱えたままで有る状態を良しとしない」プロテスタントの宗教観が色濃い国で資本主義が発展をしたというのがミソで、日本や中国・非プロテスタント諸国で資本主義の発展が遅れたのは上記状態になった時に勤労を辞め、現状維持や怠慢をしてしまうインセンティブが働いてしまう人間の摂理が働くからです。それだけプロテスタントの宗教観というのは現世において禁欲的で合理的な振る舞いを推奨したと言えます。

・資本主義発展の歴史と言える19~20世紀の世界の覇権を収めたイギリス・アメリカなどの大国がプロテスタントの思想が色濃かったのは後にウェーバーの考察を補強する形の結果として見ることが出来ます。※ヨーロッパ諸国の信仰宗教・宗派とGDPの伸び幅は凡そ比例関係にあるので、興味のある方はデータを調べてみることオススメします。

 

 

【所感】

・世界史や宗教学に疎かったが故に用語について調べながら読んだので、かなりの時間を費やしてしまいました。経済学と政治や歴史が大きく関わるということもこの本を読みながら何度も痛感しました。旧約聖書新約聖書などについても内容を学びなおしてみないといけないなと思ったのが読後の感想です。

・日本にいると宗教をあまり気にすることがなく、それが当たり前になってしまいますが海外諸国では世界史とは宗教の歴史であると言ってもいいくらい密接に生活に関わるものです。今回は資本主義の歴史を知るという観点でプロテスタントについても学ぶことになりましたが、より深く多面的に物事を知るという意味で興味を持つ良いきっかけになったと思っています。岩波文庫君主論孫子・国家など歴史的名著に触れることが出来、どれも読むのが大変ですがとても考えさせられる名著が多いなと感じます。体力と根気がいるので、少しずつですが他の著作についてもチャレンジしていきたいなと思います。

 

以上となります!

■要約≪組織は戦略に従う≫

 

今回はアルフレッド・D・チャンドラーの「組織は戦略に従う」を要約していきたいと思います。邦題はとても有名で「組織は戦略に従う」という言葉が独り歩きしていますがその元となる本です。

集権型組織(≒機能別組織)⇒分権型組織(≒事業部制組織)の歴史的変遷を紐解いた本です。主に19世紀後半~20世紀前半を舞台に4社(デュポン・GM・スタンダード石油・シアーズ)のケーススタディーを筆頭に、組織と企業戦略の関係性の観点から企業分析がなされています。

 

「組織は戦略に従う」

組織は戦略に従う | アルフレッド・D・チャンドラーJr., 有賀 裕子 |本 ...

■ジャンル:経営戦略論

■読破難易度:中(ケーススタディーがメインなので、そこまで抽象的な記述はないです。当時の世界情勢や業界基礎知識・事業部制組織に関する理論に明るいと、とても読みやすいと思います。)

■対象者:・組織と戦略の関係性について知りたい方・20世紀前半の民間企業発展の歴史について知りたい方・分権制等の組織論について理解を深めたい方

 

【要約】

「集権型組織⇒分権制組織への変化は歴史的必然であった」ということを4社のケーススタディーから導き出し、分権制の浸透度合いが業界や個社事情により傾向が異なるということを示唆している本です。

 

・分権制へのシフトがすんなりうまく行った例としてデュポン・GM社、感覚的に組織改編や市場対峙を行い、最適化に苦しんだスタンダード石油・前述3社と異なり小売業という特質上、実現過程で苦しんだシアーズという形で4社の直面した課題や展望が異なることが浮き彫りになります。

 

・19世紀後半~20世紀前半というのはまだまだ民間企業が発展段階ですので、基本的に組織の発展の歴史のパターンとしては

1)「バリューチェーンの一部に特化した形で創業」

2)「事業拡大の中で川上・川下統合を行い事業を拡大」

3)「市場拡大などをしていく中で組織は肥大化・更なる企業の成長ニーズを満たす上で事業の多角化(主に関連領域)を推進」

4)「管理工数が膨大化し、経営陣が実務に忙殺され、事業は市場最適化が出来なくなり課題が山積する」

5)「事業部制組織になり経営陣は全社戦略と事業部の戦略承認監視・事業部は現場最適化人材育成に責任を負うという形で権限移譲が発生」

という流れを経るとされています。これは20世紀半ば~後半の日本の民間企業の飛躍的な発展の歴史においても言えることなので、真理と言えるでしょう。

 

「事業の市場最適化促進」「経営陣の業務の選択と集中による生産性向上」などが代表的な組織改編により追求したい成果(機能別組織⇒事業部制組織)です。競争戦略論的なワードで言うと「規模の経済」の追求から「範囲の経済※≒多角化によるシナジーとも言えるでしょう。※こうして企業が肥大化していき、成長ニーズを満たす為に大量に経営資源を調達(金・人)が生まれ、コーポレートファイナンスという概念や人材採用市場の拡大ということがもたらされたとも言えます。

 

・「人材育成・組織の持続性の観点からも分権制は必要であった」ともこの本では記述がなされています。多くの企業は同族経営やカリスマ社長による経営基盤をベースとしており、ある種「人に依存するマネジメント」で競争力を保っていた側面があります。創業者が年齢的な兼ね合いから経営の舞台から引退をすることが増えてきたタイミングで、「経営陣の生産性担保」と「経営陣を担える人材の確保」が組織の競争力・持続性に紐づくと実体験を持って学ぶ企業が増えたことも分権制へのシフトを促したと本書ではまとめられています。

 

【所感】

・産業の歴史を紐解くような形でケーススタディーを読むことが出来て、とても面白かったです。ビジョナリーカンパニーやドラッカー著作でも触れられることの多い企業を緻密に読み解いているので、「組織改編はどのような外部環境・内部環境の影響を受けて意思決定されるのか?」ということがとてもリアルに伝わります。

・本書は「資本主義経済が浸透し、戦時経済を牽引する形で欧米諸国では民間企業が発展していった」という歴史的事実を改めて目の当たりにする内容です。日本は島国であり敗戦国で有る為、分権制等の制度や経済観が浸透するのは30年程遅れて、高度経済成長という形で一気に拡大するのですが、欧米諸国の企業と比較することで自分なりの見解や考えが導き出せそうだなーと読んで思いました。

・本書の具体的なパートはケーススタディーなので、敢えてあまり抽出せず要約しましたが、「マネジャーの実務は経営資源の調整・評価・プランニングである」と言いきる箇所は個人的にはとても好きでした。本社経営陣・スタッフと事業部長がどのような役割分担をするのか・何に責任を負うのか等が丁寧に記述されており、自分の実務にも置き換えることが出来たので、色々な思考が及んだのは良かったです。

 

 

以上となります!

 

 

 

 

 

 

 

■要約≪組織行動のマネジメント 後編≫

 

今回は「組織行動のマネジメント」要約後編となります。

前編は組織の中における個人の役割について要約しましたが、後半は本書の後半半分を占める組織の中の集団・組織のシステムについて要約していきます。

 

※参考※ 前編の要約

「組織行動のマネジメント」

新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ | スティーブン P ...

■ジャンル:組織行動学

■読破難易度:中(実験やデータを基に記述がなされているので、前知識がなくても比較的容易に読むことが出来ると思います。)

■対象者:マネジメントに関わる方全般・組織と個人の関係性に興味関心のある方・行動経済学や心理学に興味関心のある方

 

※合わせて読むと面白い本は下記。

「マネジャーの実像」

マネジャーの実像 | ヘンリー・ミンツバーグ, 池村千秋 |本 | 通販 ...

ty25148248.hatenablog.com

 

ty25148248.hatenablog.com

 

 

【要約】

■集団の定義と分類

・組織図に記述される公式組織、組織図には記載されない非公式組織の2種類が集団には必然的に発生します。公式組織は指示命令系統などの関係性を示しますが、組織活性や実際の組織力学を司るのは非公式組織です。

・旧来の組織行動学では「非公式組織は公式組織の遂行を妨げるので悪である」という見方さえありましたが、現代では「非公式組織の役割(組織活性化・連携強化)に着目したマネジメントをしていかないと従業員を長期的に組織に定着させることは出来ないので、非公式組織は有効だ」という見解が主流です。

・組織には同調性権威付け凝集性等の側面があり、個人の行動に大きく影響をもたらすということを理解しておく必要があります。

 

■チームとグループの関係性

・グループは領域や組織の単位として区分され、チームは相乗効果を意図して組織化された少人数の組織を指します。機能横断的な組織やプロジェクトチーム等はビジネスを取り巻く環境変化・課題解決の難易度増加により日常化していますが、これはチームの有用性に着目した人材マネジメントの一例と言えます。

・優れたチームを構成する為には基盤(インフラ等)・構成(パーソナリティや関係性に配慮した人員構成)・職務設計(誰に何を任せるかの範囲を明確にする)・プロセス(組織目的の設定・動機付け等)について考慮しないといけないとされます。

 

■コミュニケーション

・口頭・書面・非言語などあらゆる手段により組織でコミュニケーションは図られます。目的は統制動機付け感情表現情報の4種類とされており、組織に対するロイヤリティを醸成し、人材活性化をする必要が増している現代においては特に動機付けが重要な役割を果たすといえます。

・コミュニケーションはパーソナリティや文脈・文化的背景により異なる意味合いを持ちます。それ故に、個々人の価値観が何でどのように形成されているかを理解して対峙することは必須のスキルと言えます。

 

■リーダーシップ

・リーダーシップとは「集団に目標達成を促すよう影響をあたえる能力」であるとされます。旧来のカリスマ型リーダーシップはあまりにもリスクが大きく、従業員の動機付けを必要とする現代の環境にはあまり即さないとされています。サーバント型リーダーシップのように、ビジョンを打ち立てるというよりも支援者で有るべきという考え方も台頭しています。重要なのは「適切なリーダーシップは場面による」という条件付け理論です。

・そして現代ではEQと呼ばれる感情知性の高さがリーダーシップの発揮度に相関するという見解が主流です。「相手がどのように思うのかを高い次元で想像・理解し適切なコミュニケーションを取ることがリーダーシップの発揮には不可欠」というものです。

 

■組織構造

・組織構造は戦略実現の為に用いられます。そして、組織構造が従業員の態度や行動に影響します。組織は職務専門化(似たような職能を持つ人を集結することで専門性の担保とマネジメント工数の低下)・指示命令系統(力関係や役割がどのようであるかを明文化する)・管理の範囲の設定公式化(組織の行動形式を定義づける)といった役割・側面があります。

・仕事をグループ化・分解することにより習熟度の低い個人が相応の成果をあげられるという側面があるので、非常に重要な役割と言えます。具現化したものとしては集権化・分権化⇒シンプル組織・官僚制・マトリックス組織等が挙げられます。

 

■組織文化

・構成員が共有する意味のシステムであり、価値があるとみなすものの傾向です。

主要特性としては下記の7つ。

■革新及びリスク性向

■細部に対する注意

■結果志向

■従業員重視

■チーム重視

■積極的な態度

■安定性

・組織文化は境界を定義し、アイデンティを醸成します。社会的結束を高め、関心の範囲を広げる効果があるとされます。また、「誰が成果を上げ、どのような行動が評価されるかを決める」ことになり、内発的動機付け組織の凝集性を高める効果があります。

・組織文化を形成・維持する為には採用トップマネジメントの行動社会化の3つの要素が重要だとされています。戦略や情報の非対称性に起因した競争優位の構築が難しい現代において、組織のケイパビリティを最大化するために組織マネジメント・組織文化のメンテナンスは大きな役割を持つといえます。

 

■人材管理

採用活動・研修などの開発プログラム業績評価等が手段として必要とされます。

・採用においては面接や筆記試験といった旧来のものだけではなく、ワークサンプルアセスメント(ケース面接に近い実務想定の思考プロセスを問うもの)がより適切な人材を測る意味合いで有効とされております。

・終身雇用に代表されるような会社が従業員のキャリアを保証することが難しくなった現代においては、会社は従業員のキャリア開発の「機会」を提供し個々人の活性化を促すというスタンスにシフトしています。

・業績評価は組織文化と相関しており、どんな行動を評価するかにより各職務の模範的な行動形式を設定するものになります。目先の業務の成功は勿論、中長期的に会社がどのような方向に舵取りをしていくかというメッセージにもなるので、現代において非常に重要なものとされます。

 

【所感】

・後半パートの内容は類似内容を扱った本を数冊読んだことがあり、大学時代に経営組織という授業で学んだことがあったので非常に読みやすかったです。

・理論の歴史を紐解いて感じたのは「マネジメントが解くべき課題が複雑化・抽象化している」という何よりの証明なのではないでしょうか。テクノロジーの台頭と国際競争化による文化的差異や業務プロセスの抜本的変革を想定して、組織を率いて成果を出していくということは歴史上にない難易度を誇る局面にさらされているということなんだと思います。

・マネジメントの役割範囲が肥大化する中で、自分がどのような関わり方・スキルセットを持ち合わせていると効果的であるか?を考える上でとても勉強になった本でした。戦略論・組織行動学・経済学・歴史等色々な要素に明るくなり、その知識を結合していくことをしていくのがとても効果的な職業人としての成長なんだろうなと感じました。

 

以上となります!

 

 

■要約≪企業とは何か≫

 

今回はドラッカーの「企業とは何か」を要約していきます。

1946年に著された本であり、主にアメリカ経済・GMケーススタディーを題材にして、分権制(事業部制組織)の効用民間企業が社会に果たす役割について言及した本です。

「戦時経済から平時経済へ移行する中で、民間企業が産業を形成し雇用を生み出していかないといけない」ということをあらゆる角度から熱をもってドラッカーが説いており思わず世界史や経済学を学び直したくなるような内容になっています。

この本の内容をより高度化・発展させたのが「現代の経営」や「マネジメント」になります。※個人的には現代の経営のほうが実務応用性は高いように感じました。

 

■企業とは何か

ドラッカー名著集11 企業とは何か | P F ドラッカー, 上田 惇生 ...

■ジャンル:経営学

■読破難易度:中(古典派経済学等の理論やアメリカの歴史に明るいとより面白く読むことが出来ると思います)

■対象者:企業が果たす社会的役割について関心のある方・分権制の歴史について興味関心のある方・マネジメントや知識労働者の役割・価値について興味関心のある方

 

【要約】

・本書はGMケーススタディーを通じて、民間企業が果たす社会への役割及び知識労働者の台頭に伴う分権制の有用性を説いた本です。他のドラッカーの著作に比べて、社会への提言が多くなっており少し毛色が異なります。

・印象に残った部分を抜粋して要約していきます。

 

■企業の有用性

・目的の遂行の為に人間を組織化した機能体が企業であり、間組織の高度な組織化マネジメントシステムの発展によるレバレッジが効くことから企業は組織化することが有効であるということをドラッカーは説きます。

・優れた組織の要件としては凡人をもって秀でた成果を出し、その人が成長していく仕組みになることだと定義します。属人的な仕事の進め方をどんどん脱却、システム化して低賃金化し、本来その仕事についていた人を高度な仕事に従事させるようにイノベーションを起こしていくことを続けることで企業や産業は発展するとします。

・組織は「個々人の弱みは組織の仕組みで帳消しにし、強みを成果に還元するように人をマネジメントしていくことが出来るので有効である」としています。

■分権制のメリット

「意思決定が早い」「経営人材の育成に適したメカニズム※意思決定の実践経験を積める人の総量が他の組織構造に比べて相対的に増える」「民主的な実力主義が実現される」・「事業部の力関係が明確化する」の4つだとされます。事業部間の競争原理を働かせ、人材育成の効果をもたらすことで知識労働者を活性化することが分権制の本質的な価値であるとドラッカーは言いきります。

・そして、分権制がうまく成り立つ為には本社経営陣及び本社スタッフと事業部経営陣の適度な力関係・役割分担が不可欠であると説いております。本社経営陣は「全社視点での資源配分や成長戦略」を描き、事業部経営陣は「事業にフォーカスして事業の成長戦略を描くことと全社から投資対象になるような青写真を描く」という役割を持ちます。

■分権制を持続的に行うための人材育成

スペシャリスト」「マネジメントを担うリーダーの育成」それぞれを偏らせることなく全社・事業部ベースそれぞれで行うことが分権制の組織面の競争優位担保に必要としており、その為には多様な機会の追求と公正な評価システムが必須であるとドラッカーは説きます。※この論調は現代でも色褪せない普遍的なものかと思います。してや、知識労働者の増加及び無形商材・サービスの発展による人材マネジメントが組織の競争力に起因する現代では、強い組織の必須条件といえるでしょう。

自己実現としての労働

・生きる為だけの労働が終焉し、自己実現等の意味合いを持つようになった労働の価値は変容していると説きます。その中でも、仕事の満足度を示すのは「仕事の単純さやプロセスではなく、その人が仕事をどの様に重要視して認識するかの違い」であるとします。

■企業が社会へ果たす役割

自己実現の場としての労働は勿論、雇用の創出を通じて社会の発展に寄与することです。特に重要なのは生産財の生産を円滑にし、企業間取引(BtoB)を活性化することが雇用や景気に大きな影響を与えるとします。消費財の生産は消費刺激などの感情面に大きな影響を与えるだけであり、最も大事なのは生産財の生産であるとしています。

 

【所感】

・時代を感じる記述であり、どのように現代の企業論や産業が発展していったのかということの理解を深める意味でも面白い本でした。

・戦時経済から平時経済へ発展していく中で雇用やGDPが衰退することなく、社会が発展していったのはこうした民間企業の発展及び組織マネジメントの理論が大成したからなのだなと知ることが出来、非常に感慨深い内容でした。

・一方でジョブローテーション・規模の経済など旧来の前提をベースにした説明も多かった為、それが現代のビジネスではどのように効果をもたらすのか・通用しないのかといったことも理解した上で読み解いていかないとこの本の内容の実務応用性は低いなと思いました。情報の非対称性や会社に長く勤めあげキャリア形成をしていくという価値観が前提になっている論理なので、現代の商環境や人材マネジメントの課題やトレンドを度外視した内容にならざるを得ないからです。

・大事なのは理論の歴史や原点を知り、現代の潮流を自分なりに意味づけすることだと思うので、記述されている内容をどの様に咀嚼するかは読者に委ねられているなと思いました。

 

 

以上となります!

 

 

 

 

■要約≪財務3表一体分析法≫

 

今回は会計分野の「財務3表一体分析法」を要約していきます。

学生時代から会計学に苦手意識があった自分ですが、武器として決算資料などを読み解いて企業理解や企業の意思決定を向上させたいという思いから学び直しをしています。

姉妹作の「財務3表一体理解法」がとても有名ですが、この本はBS・PL・CFといった財務諸表をどの様に分析してインサイトを出すかという点にフォーカスして記載されている本です。

※会計を実務で活用する方向けというより、「会計の知識を意思決定に用いると効果的である」という場面に遭遇する方にとって有効な内容の本なので読む対象を選ぶ本だと思います。(学問的側面から見るとこの本の内容は非常に表面的ですし、専門で仕事で扱う方にとっては会計の一側面に過ぎないでしょう。)

 

 

「財務3表一体分析法」

財務3表一体分析法 (朝日新書) | 國貞 克則 | 実践経営 ...

■ジャンル:会計学

■読破難易度:低(決算書を読むうえでの重要個所の説明⇒ケーススタディーという構成なので平易です。)

■対象者:法人向けビジネスに従事する方全般・経営資源を扱う仕事に関わる方全般・会計諸表を読めるようになりたい方

 

【要約】

・会社分析の急所はROE」「レバレッジ比率」「総資本回転率」「当期純利益率」の4つとされます。もう少し噛み砕くと、株主からの投資を効果的に回せているかがわかります(≒投資先として魅力的な会社かどうかがわかる)。

・ビジネスの現場では利益をどれだけあげたかが大事になりますが、株主からすると投資対効果や配当が目的です。だから、CFとしてうまく現金化出来ているかという点も見られるというのが決算の世界のルールです。

※利益剰余金や負債比率などは会社の健全性を測る指標として、これも重要指標であるとされます。

・本書では財務諸表のBS・PLを棒グラフにして可視化し、経年比較や競合比較をすることで視覚的にわかるようにするということを推奨しています。

 

■分析する上での着眼点

・各指標は業界平均水準や経年比較と照らして検証しないと、それがいい悪いは図れないという原則があります。業界特有の収益性やPL/BSの形等があるので、その前提の中でどれだけ効果的に経営出来ているかを見れないと見当違いなインサイトになる可能性があると言います。

■各指標の補足

ROE当期純利益が純資産に占める割合を示したものであり、どれだけ手元に残る純資産に貢献出来ているか(効果的にキャッシュを生み出せているか)を示す指標となります。

流動比率手元にどれだけ返済しなくていいお金を残せるか(キャッシュを出せるか⇒配当に回せるか⇒投資対象になるか)を示すものとして意味を持ちます。

総資本回転比率BSの資産金額を用いてどれだけ売り上げを出しているか(○○回転の資産で売上を形成しているか)を示し、経営の効率性を測る指標・資本の有効活用度合いを測るといえます。

利益剰余金はどれだけ利益を貯蓄する堅実な経営が出来ているかということを測る指標です。

ケーススタディ

・家電・通信キャリア・飲食・商社・自動車などの大手メーカーの経年比較・競合比較により何を読み解くことが出来るかということを明らかにしています。ドリル形式になっており、全部読み解いていくと何を見ればいいのかの手順が身につく構成になっています。

 

 

 

 

 

 

【所感】

・ケースの内容が2000年代後半のものなので、今との違いも浮き彫りになり面白かったです。会社はお金を集めて投資し、収益を出します。資本主義市場のルールとして会社は株主のものであり、株主還元や企業価値向上について考慮しない事業運営はあり得ないです。なので、一現場社員としてもこの観点を視野に入れて事業に携わるかどうかで見えてくるものや思考の範囲は変わるなーと思いました。

会計学というのは漠然とした苦手意識・食わず嫌いを持っている人が多いと思います。自分自身は上場企業を担当顧客とし、事業課題や現状分析をする為に、必要に迫られて無理やり色んなIR情報や会計入門書を読み漁り覚えた記憶があります。この本は会計を専門で行わない人の為に意図的に構成を工夫されているので、ビジネスや企業分析に関心がある人にとってはとても面白く読めるのではないかなーと思いました。知識を棚卸する形で読んで、勉強になった実感があります。

・一方で、最も大事なのはこうした数字の裏にある事象や因果関係を推測・読み取る国語的な分析であるとも感じました。定量分析だけでは秀でた示唆を示すことというのは難しく(誰でも出来るので)、現場感や何がその数字をもたらしているのか?ということについて仮説構築を出来るようになることこそが社会人としてはとても重要なのだろうなと再認識しました。

 

 

以上となります!

 

■要約≪組織行動のマネジメント 前編≫

今回はスティーブンP.ロビンスの「組織行動のマネジメント」を要約します。

組織行動学(OB)の代表的な教科書と言われており、MBAのテキスト等にも用いられている本です。

「組織行動学の定義」・「組織の中の個人」・「組織の中の集団」・「組織のシステム」の4分野で構成されており、今回は主に組織の中の個人の役割を説いたパートをまとめていきます。組織にどのような力学が働くかということを体系的にまとめた本で、研究論文からの引用が多く非常に示唆に富む本だと感じています。

 

 

「組織行動のマネジメント」

新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ | スティーブン P ...

■ジャンル:組織行動学

■読破難易度:中(実験やデータを基に記述がなされているので、前知識がなくても比較的容易に読むことが出来ると思います。)

■対象者:マネジメントに関わる方全般・組織と個人の関係性に興味関心のある方・行動経済学や心理学に興味関心のある方

 

※合わせて読むと面白い本は下記。

「マネジャーの実像」

マネジャーの実像 | ヘンリー・ミンツバーグ, 池村千秋 |本 | 通販 ...

ty25148248.hatenablog.com

 

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【要約】

■組織行動学とは

「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問」であり、「人間の行動について説明し、予測し統制を助けること」を目的としています。心理学・社会学・人類学・政治学など様々なエッセンスを統合して用いた学問であり、人を対象に責任をもつマネジメントを助ける学問と言えます。

 

■個人の動機付けに関する理論の歴史

・旧来の理論はマズローの五段階欲求説自己実現欲求を再上位とした五段階のピラミッド形式で人間の欲望は階層化をするというもの)・マグレガーのX理論Y理論(X理論は人は怠慢であり、矯正を強いることで頑張らせないといけないという性悪説・Y理論は人は自己実現や内発的動機付けに基づいた能動的な生き物であるという性善説)・ハーズバーグの動機付け要因衛生要因理論(動機付けにより人は頑張るが、その前提には整った外的環境がないと機能しないということ)の3つが有効であるとされて来ました。全ての理論にはケースバイケースな側面があり、人間の組織におけるメカニズムを説明しきれているとは言い難いというのが現代の見解です。※それぞれの理論の限界については割愛。

・上記理論の前提に立ち、組織マネジメントにおいて有効であるとされる現代の理論は「目標設定理論」と「職務設計理論」であるとされます。目標設定理論は目標を設定し、その目標を達成する為に普段以上に負荷・努力をすることで能力開発と高いパフォーマンスを目指すという思想の理論で、目標管理制度(MBO)として20世紀後半以降の組織マネジメントの潮流となりました。職務設計理論は人に着目することも大事だが、従事する仕事自体をしっかり科学しないと適切な人材マネジメントは出来ないという前提の基で仕事を定義し測定することが大事であるという主張をなしています。現在の職務要件定義等に用いられている考え方です。

・共通するのは「人は仕事を通じて能力開発と自己実現を目指すべき」という性善説に立っている点と言えるでしょう。

 

■個人の意思決定

「同じ状況下に置かれても、組織において個人が下す意思決定に差が出るのは外的環境の認知・スキル習熟性・価値観等の差異によるもの」ということを個人の意思決定のメカニズムを分解して説明しています。※詳細は割愛。

・マネジメントは「人は感情の生き物であり、かつ文化的背景や組織の制度による制約等を受ける為多様な意思決定が生まれる」ということを理解して、意思決定や組織運営をしないと有効に機能しないと説かれています。

 

 

【所感】

・大学時代に講義を受けた「経営組織」を思い出す形で読み返せたのでとても面白く読むことが出来ました。マネジメント業務に関わる中で必然的に関心を持つ組織の力学や組織内の個人の役割・メカニズムについて研究ベースに淡々と記述があり、深みのある内容となっています。※要約で用語や内容を抜粋しても無味乾燥なので今回は敢えて割愛しています。

・個人の癖として、何か物を見るときはその人個人のスキルや価値観にだけ着目して知覚してしまいがちですが、組織という枠組みの制約の中で個人は行動しているという前提を認識しないと現状把握や打ち手はずれてしまうなと反省をさせられました。

 ・組織行動学をしっかり理解し、現実の局面に適応していくためにはまだまだ訓練が必要ですが、この分野の知識を体系的に取得できるのは素晴らしい本だなと思いました。

 

以上となります! 

 

■要約≪企業戦略論(下)≫

今回は、ジェイB・バーニーの「企業戦略論」三部作の下編を要約していきます。

主に全社戦略について扱っており、代表的なトピックスとしては「戦略的提携」・

多角化」・「多角化戦略の組織体制」・「合併買収」・「国際戦略」となります。中編でフォーカスした事業戦略の上位概念として複数の事業を跨ぐ全社戦略の役割について記述がなされております。規模の大きな企業や現代のビジネスにおける拡大路線の定番を扱うものなので、一番ダイナミックスなテーマとなります。

下巻の内容はファイナンスや国際政治・マーケティングについての知識があるととても読みやすくなる印象です。

内容理解の下敷きになるこれまでの要約及び、ポーターの競争戦略まとめは下記です。

 

「競争の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

「競争優位の戦略」

ty25148248.hatenablog.com

 

ty25148248.hatenablog.com

 

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「企業戦略論(下)」

企業戦略論【下】全社戦略編 競争優位の構築と持続 | ジェイ・B ...

■ジャンル:経営戦略

■読破難易度:中(一部数式が出てくるものの、基本的には平易な記述がなされており実務利用を意図して著されているのでとても読みやすいです。内容自体は他の本にも記述されているものも多く、恐らくこの本をうまく活用するように意図して初めて意味があるという風に構成されているのだと思います。)

■対象:競争原理について興味関心がある方・企業分析のスキルを体得したい方・事業や経営戦略に対して興味関心のある方

 

【要約】

・下巻は主に全社戦略を扱っており代表的な戦略オプションである「戦略的提携」・「多角化戦略」・「合併買収」・「国際戦略」についてフォーカスしてまとめられています。一貫して検証される論点は「範囲の経済≒シナジー効果」が成立するかどうかです。主に全社戦略を採用する上場企業にとっては投資家(株主)の視点をさけて企業経営は出来ません。投資家から見た際には「単一事業株を複数持つこと以上のメリットを見いだせない場合において投資先が全社戦略を採用することを好ましく思わない≒投資対象にならない」というルールが存在するからです。

 

■戦略的提携

・業務提携・業務資本提携・ジョイントベンチャーなどが代表的で、行うのには相応の理由があります。主な理由としては「規模の経済の追求」・「競合からの学習」・「リスク管理とコスト分担」・「低コストでの新規参入」・「不確実性への対処」などが挙げられます。

 ・戦略的提携はリスクを分散し、シナジー効果を創出することを意図して行われ、業界のフェーズによりその意味合いは異なりますが双方の利害が一致した場合に持続的競争優位に発展する可能性が高いとされます。

自社内製化多角化を推し進めるための買収という代替案がある中で、その適度な規模感に旨味を感じて戦略的提携を続けることが一般的です。(裏を返すと全資源を投入するほど旨味を見いだせていないとかリスクを取れないという企業のシグナルともとることが出来ます。)

 

多角化

多角化をするメリットとしては「事業運営上の範囲の経済(管理部門やマーケティングなどの活動の共有)」・「財務上の範囲の経済(内部資本(人材・お金・インフラなど))」・「市場支配力増加」などが挙げられます。※個人的にはブランドの共有化やマネジメントシステムの一体化に大きな価値があると信じています。

・現実にはマネジメント工数の増加・意思決定ステークホルダーの増加といった負の側面も大きく単独で行う以上に収益を見出すことが難しいとされています。

多角化戦略を推進する為の最適な組織構造はM型組織とされます。具体的には経営者が全ての意思決定に責任を持ち、コーポレートスタッフと各機能別組織マネジャーが役割分担をして戦略策定・実行していき、その様を取締役会が監視・承認するという分担です。

 ・多角化戦略を支えるマネジメント・コントロール・システムとしては「事業部パフォーマンスの評価」・「各事業部への資本配分」という点を考慮することが必要となります。※「事業部別に人を採用・評価するのか」・それとも「全社戦略に合致する人を採用・評価するのか」という所で流派が分かれるのが実際ですが、これは何に重きを置いているかの思想の違いといえるでしょう。

 

■合併買収

多角化戦略を実現する為の代表的な手段としてM&Aがあります。M&Aの代表的な価値としては「企業存続の確保≒事業継承」・「時間と資源の短縮化※自前でやるより早い」・「M&Aの実行により競合優位性を獲得できる可能性がある」というものが挙げられます。

・M&Aが効果的である為には「価値があり、希少で他の企業に知られていない」又は「価値があり、希少で複製コストが多大≒模倣困難性」の場合に限るとされます。現実には売買の双方に走る企業文化や戦略の統合などのコストは甚大であり、実際に範囲の経済を実現することは困難である為です。(投資家サイドから見ても単一株の分散投資で実現できる以上のメリットを見出しにくいということで敬遠されるとされます。)

 

■国際戦略

・国境を越えた事業機会の追求をする多角化戦略の一つとされます。代表的な効果は「既存製品・サービスに対する新規顧客の獲得」・「製品ライフサイクルの長期化※先進国で飽和している需要も途上国では白地があるというケースが往々にして存在する為」・「安価な生産要素へのアクセス確保」・「新たなコア・コンピタンスの形成」・「現在のコア・コンピタンスを新たな方法で活用する」・「企業リスクの低減」とされます。

 ・実際問題としては「現地パートナーとの提携⇒現地法人化」と段階を経ていく中で適切なパートナーの選定や現地政治事情を理解した事業運営・為替リスクなどの外部要因が困難を極め、標準以上の利益を見出しにくいというのが存在します。

 ・それでも20世紀後半~21世紀にかけてグローバル化が企業のトレンドとなったのは「ITの進展による国際競争化」・「国際化を推進しないことには企業成長ニーズを満たす機会は存在しない」ということなどの背景が存在します。※このあたりの造詣が深くなるとまた面白いのだろう個人的な見解です。

 

【所感】

 ・上場企業の分析や現状把握をする上では全社戦略を理解しないと限界があるので、とても実用的な内容だなと感じました。事業戦略は現場での汎用性・応用性が高いですが、全社戦略は概念に加えファイナンスや国際政治・マーケティングなどを理解するとより深く自分なりの知見にして見解を持つことが出来るだろうなと読みながら感じました。

・基本的にポーターの「競争の戦略」・「競争優位の戦略」をあらゆる角度から肉付けした本ですが補完関係にあると共に両方読んで初めて企業戦略論をしっかり理解出来た感覚があるのでとてもよかったなと思います。自分に足りない視点と、これを現場実務でどのように応用していくかということが浮き彫りになりこれは自分の工夫次第であるなと思った次第です。

 

以上となります!