雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪LEAN ANALYTICS前編≫

 

今回はアリステア・クロール/ベンジャミン・ヨスコビッツ共著の「LEAN ANALYTICS」を要約していきます。EricRiesシリーズエディタの1冊であり、構築・計測・学習における「計測」にフォーカスした内容となっております。本書はソフトウェアプロダクトの代表的な6つのビジネスモデルを例に挙げながら、「プロダクトグロースを志向していく中でいつ・どんな指標を測定・活用すればいいか」の理論枠組みおよび具体的なプロダクトマネジメントの方法にまで言及します。今回は前編ということでリーンアナリティクスの基本的な考え方・ベーシックな抑えるべき指標と各ビジネスモデル毎の要諦に関してフォーカスします。

 

「LEAN ANALYTICS」

■ジャンル:開発管理・IT・経営

■読破難易度:低~中(データ活用・分析に何らかの業務で関わる機会があるorソフトウェアプロダクトに関わる仕事をしている人であれば馴染みやすく理解できると思われます。)

■対象者:・定量分析・仮説検証に関する理論を理解したい方

     ・事業開発・プロダクトマネジメントにおけるお作法を抑えたい方

 

≪参考文献≫

■リーン顧客開発

■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■LEAN UX

■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

■要約≪サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■なぜデータ解析・活用をしないといけないのか

・プロダクト開発・グロースをしていく中では高い不確実性資源制約の中で、「顧客は存在するのか?」・「お金を払ってでも解決したい課題か?」・「マーケティングチャネルとソリューションは適切か?」といったプロダクトが成立・成長する為に抑えないといけない重要仮説があり、フェーズにより論点や解くべき問いは異なります。全てを網羅的に測定・抑えることは出来ない中で、仮説検証と意思決定の精度・速度を高めるという意味において、測定・注視する指標を定めて管理・運用する、重要指標を高める打ち手検証を行い続けるということがプロダクトグロースのミソになるとされます。

・プロダクト開発は「ビジネスとして顧客の課題を解決してマネタイズし、持続的に供給する・成長する」ということが絶対条件になるので、顧客価値とビジネス収益の両立を図る意味において「NSM(KGI)KPIツリーの構築」、「運用しながらロードマップに重要アジェンダを記載して優先順位付けしながら解いていく」というのが具体的な手順で、その道しるべとしてアナリティクス環境の構築・運用は欠かせません。

 

■ベーシックな測定指標とフレームワーク

・ソフトウェアプロダクトのマネジメントにおいては顧客数未来予測顧客数離脱率単価(LTV)などは健康状態を測る指標としてどのビジネスモデル・どのフェーズでも参照するとされます。加えて、月間ユニークユーザー滞在時間なども打ち手検証などの際には頻出で算出する指標です。ファネル分析のように「ビジネスにおけるワークフローを可視化して測定できる指標を設定し、歩留まりを測定する・歩留まり変化に寄与する施策を検証する」というのがデータを活用したプロダクトマネジメントの基本手順となります。加えて、顧客セグメンテーションABテストコホート分析(異なる顧客群を時間軸における違いの変遷を捉えて因果関係・相関関係の仮説を炙り出すもの)・多変量解析なども欠かせないフレームワークとされます。

・また、プロダクトがPMFしないとグロースしないのでAARRR獲得アクティベーション定着収益紹介)に寄与する指標を測定するのはよくあるやり方です。ビジネスモデルによりKPIツリーの構成要素は変わり、「測定環境構築」と「何をキーにするか」はビジネスセンス、戦略の妙とされます。リーンスタートアップ的には顧客数・定着率・単価の三指標を見るのが定跡とされます。

・アナリティクスをするにしても対象を定めないと意味がない。「何を測定してビジネスグロースにヒットするように仮説検証するか?」という問いに対する解をまとめるフレームワークとしてはリーンキャンバスが有効とされます。リーンキャンバスはビジネスモデルキャンバスに着想を得て、事業開発における仮説検証の際に参照する一枚絵として、問いと解を一覧化したフレームワークです。具体的な設問は課題(既存の解決策)・顧客セグメント(アーリー・アドプター)・独自の価値提案・ソリューション・チャネル・収益の流れ・コスト構造・KPI/KGI・競合優位性の9つです。

 

■代表的なビジネスモデル毎の抑えるべき指標について

・本書ではECサイトSaaS・無料モバイルアプリ・メディアサイト・ユーザー制作コンテンツ・ツーサイドマーケットプレイスの6つを例に測定するべき指標とその理由について解説されています。

ECサイトのような広告やアフィリエイトで顧客を獲得しその顧客に電子的・物的なものを届けるというビジネスモデルの構造においては継続利用率・単価などで顧客と商品をセグメンテーションし、「どこにフォーカスするべきか?」・「望ましい顧客はどのようなセグメントでどこから流入するか?」などの解像度を高める為に定点観測・指標を設定・運用することが要とされます。単価・継続利用率・プロダクトフェーズにより、「新規顧客獲得を頑張るのか」・「既存顧客の定着率や単価をあげにいくのか」どちらが望ましいかは決まるとされ、具体的には「●日以内再購買率(例:90日以内再購買率)」などを設定するのがよくあるやり方とされます。CVR年間購入回数(90日以内再購入率をKPIとして合わせてみること推奨)・取引平均単価購入プロセスにおける離脱率および原因分析・顧客獲得コストなどはこのビジネスモデルで常に抑えておくべき指標とされます。尚、ECサイトビジネスはロイヤリティ顧客獲得どちらにフォーカスするかでマーケティング戦略の方向は大きく変わるとされます。オンライン・オフライン融合の側面があるということを軽視してはならず、「ECサイトビジネスモデルにおける構造や示唆はマッチングプラットフォームビジネス(ツーサイドマーケットプレイス)にも通じるもの」とされます。

SaaSは「フリーミアムで使ってもらい利用体験により課金、定着+活用促進でLTVUP狙うの」がプロダクトグロースの基本定跡になります。顧客数歩留まりを定点観測し、目安値設けて良し悪しを測る、重要指標高める打ち手の仮説検証を順次するが基本動作となり、月間定期収益(MRR)をプロダクトグロースの定期観測にするケースが多いとされます。尚、顧客獲得定着は軽視されがちですが非常に難しいものであり、フリーミアムや特定セグメントに集中するなど狙わないとうまく浸透しないとされます。プロダクトのユースケースや顧客セグメントを理解して、プロダクト開発進める中で「ホールプロダクト化して単価を上げていく」・「プロセス毎の顧客離脱防止に努める」・「オンボーディングに努めるデザイン開発・マーケティングマネジメント」がミソになるとされます。

無料モバイルアプリの場合、チャーン課金ユーザー率LTなどを測定することが多く、アクティベーションするためのマーケティング施策・費用対効果測定などがよくある営みとされます。アプリ内課金広告で稼ぐがこのモデルのグロースの王道で体験価値と時にトレードオフになるから悩ましい問題とされます。

メディアサイスポンサークリック課金掲載課金などで販促支援しマネタイズするのが一般的で、顧客価値を満たしながら売り手のニーズを満たすメディアマネジメントがカギとされます。広告でマネタイズしながら、スペースコンテンツマネジメントユーザーと顧客セグメントの把握がグロースの要になります。スペース・コンテンツマネジメントは顧客体験・マネタイズとトレードオフになりかねず、「誰のために何を、どのように」のバランスと意思決定がミソとなるのでプロダクトマネージャーのような専属で責任を持つ役割を設けて管理するのが一般的とされます。

ユーザー制作コンテンツとはWikipediaNoteなどユーザー自身がコンテンツを制作し、プラットフォームをグロースさせていくようなプロダクトです。

エンゲージメントファネルと呼ばれる「コンテンツを作る人・作らない人」「質の良いコンテンツ・悪いコンテンツ」という二軸でセグメンテーションして打ち手を施すというのが基本的な動作になります。アクティブユーザーを維持すること拡大することプロダクトマネジメントのキーとなり、その為に「通知セグメント・タイミングの科学」や「いいね・シェアなどにインセンティブをはる」などしてアクティベーションし続けることが大事になります。

ツーサイドマーケットプレイスはマッチングビジネスと呼ばれる「購入者と販売者の取引を促進するエンジンとなり、取引対価として仲介手数料をもらう」形式を採用します。ステークホルダーが複数存在し、時に二律背反になるようなことに対しての意思決定・管理をし続けるという難しさが付いて回ります。お金を使いたいグループにフォーカスするのがミソとされ、Amazonなどは顧客第一主義を掲げていることなどがわかりやすい事例です。

 

【所感】

・本書の副題はスタートアップのためのデータ解析と活用法ということで「資源制約・不確実性の中でどのようにデータを扱い、意思決定に昇華させていくか」という観点で非常に示唆に富んだ内容に感じました。本書で重点的に語られるKPIツリーの概念や定期モニタリングをして状態把握・構造特定・打ち手設定というのは部分的に自分自身の業務でも長らく行ってきましたが、理論的な規範を体得できた感覚を覚えました。

「顧客がほしいものを把握し作り、売れ」というシンプルな原則において仮説の裏付けやファクトが大切で、その適切な収集・計測・分析に関する理論が本書のポイントです。あらゆる仮説検証・事業開発には投資回収の責任が伴うので「CFに寄与した」・「投資対効果が○○である」ということを説明して投資を獲得する・投資を証明・報告するといった手順から避けて通ることはできないと再認識しました。常に優先順位付けをして機能開発をしてプロダクトグロースを志向するのでメリットやインパクトがないと進まないものです。「プロダクトのコアとなる価値」・「顧客は誰か」・「何に課題設定して、どんな問題を解いていく・どんなゲインをもたらすのか」という問いに対する解は言語化し続けること・ビジョンや戦略を描き続けることは基本のお作法にして最大の原理原則であるということを改めて感じた次第です。

 

以上となります!

■要約≪キャズムver2≫

 

今回はジェフリー・ムーア著のキャズムを要約していきます。新商品をブレイクさせるマーケティング理論を体系化した古典的な本であり、2010年代になり最新事例を取り入れアップデートしたVer2を要約していきます。プロダクトグロースに纏わる理論ということで概略は昔から知っていましたが、理解を深めようと考えこのタイミングで読んでみることにしました。本書は主にテクノロジー業界を想定したプロダクトライフサイクルの概要死の谷」にあたるキャズムをどう乗り越えるか?というテーマに関する考察が中心となります。

 

キャズムver2」

キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論 | SEshop| 翔泳社の本・電子書籍通販サイト

■ジャンル:マーケティング・開発管理

■読破難易度:低(身近なプロダクトの事例が豊富に記述されており、イメージしやすいです。本書特有の用語やカタカナがたくさん登場する為、アレルギーのある方は一定数るかもしれません。)

■対象者:・ハイテク業界のマーケティングに興味のある方全般

     ・「キャズム」の概念に関する理解を深めたい方

     ・非連続の成長・変革を牽引していく責任をお持ちの方

 

≪参考文献≫

■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■ジョブ理論

■要約≪ジョブ理論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART1≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART2≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART3≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART4≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART5≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART6≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART7≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART8≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

プロダクトライフサイクルと顧客セグメント

・新商品市場には初期市場メインストリーム市場と呼ばれる2種類の市場セグメントが存在します。プロダクトライフサイクルが進展し、市場を拡大するにつれて初期市場→メインストリーム市場と移行します。初期市場→メインストリーム市場への移行時には顧客セグメント・インサイトが大きく変容し、PMFできるかどうかの境目になる鬼門になり、これをキャズムと呼ばれます。

・初期市場はイノベーターアーリーアドプターの2セグメントで構成され、メインストリーム市場はアーリー・マジョリティーレイト・マジョリティーラガードの3セグメントで構成されます。プロダクトグロース過程ではまずはイノベーターを取り込み、そのインサイトと実績をベースにアーリー・アドプターを顧客層として取り込みます。その後、メインストリーム市場におけるアーリー・マジョリティー(実利主義者)を顧客層に取り込むことが最大の関門である為、本書ではそのフェーズ(アーリー・アドプター→アーリー・マジョリティーへの移行期)にフォーカスして考察・提言がなされます。

 

■各顧客セグメントの特徴

・初期市場を構成するイノベーター(テクノロジー・マニア)テクノロジーの価値や仕組みを理解し好んで消費することのできる選好性を持ち合わせています。テクノロジーによりユーザーや日常の生活体験がどのように変化・向上するかということに関心があり、それを突き詰めたい・進化に寄与したいという志向性があります。テクノロジー民主化があるべき状態と認識し、「技術革新・仮説検証を自ら行っていくことを信条とする」ような顧客セグメントです。真新しさそのものが価値であるということです。

・初期市場を構成するもう一つのアーリー・アドプター(ビジョナリー)はイノベーターと異なり、テクノロジーそのものではなくテクノロジーがもたらすビジネスアウトカムに着目してプロダクトを雇用する傾向があるので、ビジネスストーリーや課題設定ポイントなどを明確にビジョンとして語ることがプロダクトマーケティングにおける要諦とされます。アーリー・アドプターはイノベーションを推進していくプロジェクトの中でプロダクトを雇用する傾向が強いので、プロダクトビジョンと機能的価値を明確に言語化し、顧客と対話しながら購買プロセスを踏んでいくステップでユーザー獲得・定着・LTV向上を狙っていくことになるとされます。アーリー・アドプターはイノベーターから紹介されて情報を経てプロダクトにアクセスすることが多く、執行役員以上の変革を牽引するロールの中で「自社のビジネスストーリーにプロダクトがマッチするか?」という観点で吟味検討することになるケースが多いとされます。

キャズムを越え、PMFするにはメインストリーム市場のアーリー・マジョリティー(実利主義者)を顧客層に取り込むことが最低条件とされます。アーリー・マジョリティーはイノベーターやアーリー・アドプターと異なり、リスク選好性に乏しく実利を明確にしていくことでプロダクトを雇用する傾向が強いとされます。その為、他社事例や機能的価値・体験価値をシャープに言語化することやマーケティングチャネルもこれまでと異なる大衆向け法人営業組織などを設けて深耕していく必要性に迫られるケースが多いです。これを成しえるには初期市場と異なる戦略・コトを遂行するケイパビリティの人材資源・投資資金が必要な訳でこの適合・人材アロケーションは鬼門とされる所以です。尚、アーリー・マジョリティーは購買コストを下げる為に、複数の業者を雇用して競売にかけるようなやり方を好む傾向があります。アーリー・マジョリティーマーケットリーダーを好んでプロダクト雇用する傾向があり、加えて自分の評価の為にプロダクトのビジネス貢献度合いを測定できるようなアウトプットを好む傾向があります。これは汚いのではなく、セグメント特有の行動形式なだけです。

・メインストリーム市場を構成する3セグメントの1つであるレイト・マジョリティーは「購買金額が大きいが、変化を極めて嫌いぞんざいに扱われることを避ける」傾向にあります。その為に、トータルパッケージで販売することや非注力セグメントとせず丁寧に対応すると、競合の少ない粘着性の高い顧客層が出てくることも多いという性質があります。レイト・マジョリティーは変化対応を好まないために、UXデザイン既存プロダクトからのスイッチングコストが低い導線を引くことが購買を促進するとされます。このフェーズになると、業界セミナー・レポート・業界団体への参画活動などによるリード顧客の生成やブランド構築という中長期的な顧客資産構築の為にリソースを割く必要が出てきます。それ故に、ブランドマネージャー・プロダクトマネージャーが専門で役目を引き受けることが多くなります。

 

キャズム越えの要諦

・初期市場からメインストリーム市場へ移行しPMFするにはホールプロダクト化競合と市場を創造する人材のアロケーションの3つがポイントとされます。3つを遂行するにあたり、まずは「購入の必要性がある顧客セグメントを見出すこと」が大事で、その為には顧客価値定義や顧客インサイトの深い理解を常日頃から行うことが欠かせません。その上で、提供者側が掲げるバリュー・プロポジションと顧客が享受する価値には明確に差分があり、その穴埋めをする補完機能・プロダクトをもってプロダクト体験を完結させるというホールプロダクトの思想を以てプロダクト開発していく必要性があるとされます。

・ホールプロダクトを推進する上では具体的にはアライアンス締結M&AUXデザインなどが戦略オプションとしてなされ、プロダクトを構成する重要KPIツリーの構築・重要仮説を検証するアジェンダ遂行(プロダクトロードマップで優先順位付け・言語化・合意形成していくステップ)するのが一般的とされます。この過程は「MVP開発~仮説検証をしていくことでプロダクトグロースの方向性・種を把握する」プロダクトマネジメント機能と「販売戦略のトータルマネジメントをする」プロダクトマーケティングマネジメント機能がカギになり、それぞれ専属の役割をする最高の人材で遂行するのがセオリーとされます。

・また、アーリー・マジョリティー(実利主義者)はマーケットリーダーからの購買を好み、他社事例や確固たる機能実績の証明、比較検討購買プロセスなど特有の商慣習を持ちます。これは購買者の所属する企業フェーズ・職務要件などに起因する所であり、ハイテク業界の新規性が仇となるという皮肉でもあります。その為に、潜在・顕在競合するプロダクトとの差別化類似競合・市場そのものを一定育てる活動にリソースを割く必要があるとされます。この考え方・切り口はジョブ理論が有効とされます。

※詳細はジョブ理論要約ブログを参照ください。

・上記のようなプロダクトフェーズの変容に伴い、過去の成功体験や資産を一部捨てながら変革する必要がキャズム越えにはあり、具体的には人材資源のアロケーションが必要になります。目指す山・為すべきことが変容するので、必要な能力・経験も変わるということです。その為に、外部からの積極的な人材採用や既存社員の配置・役割変換・資金調達をしながら先行投資をするなどの戦略オプションを遂行しながら「狙って変革を牽引する」必要性があるとされます。お金を払ってでも解決したいペイン・得たいゲインを持つ顧客がどれだけいるか?・それはなぜか?という初期仮説の構築・解像度深化を研ぎ澄ますことも欠かせなく、混沌とした局面をプロダクト提供企業は迎えるとされます。この人材の環境適応の問題に対峙する為に本書としてはターゲット・マーケット・セグメントマネージャーホールプロダクト・マネージャーと呼ばれプロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングの移行を専門で扱うポジションをつくり専念させるべきであるということを提言されています。前者は業界別マーケティングマネージャー、後者はPMMが本来になっている役割です。「顧客のセグメンテーションと市場規模の推定」・「重要KPIの設定」・「ファネル分析・コホート分析による定量と定性のバランスを取り続ける」など特有の管理業務のような要素を遂行します。

 

【所感】

・本書はマーケティングとエンジニアリング分野に大きな功績をもたらしたとされています。モバイル機器クラウドコンピューティングなどの技術の発展により、ソフトウェアプロダクト市場が急拡大し、プロダクトマネジメントが経営や事業のトレンドになったことでキャズムは再考されるに至ったとされます。

・名前とキャズムそのものの現象だけは昔から知っており、敢えて読む必要はないと高をくくっていましたがもっと早く読むべきであったなと後悔するくらい非常に面白い内容の本でした。サービスのプロダクト化・プロダクトグロースに寄与するマーケティングマネジメントなどに自身が関心があり、間接的に一部関与する役割をする中で非常にタイムリーな内容でした。「顧客セグメントとユーザーストーリーの解像度を常に高くできるようにリソースを投下し続け、プロダクトグロースポイントを抑える」・「グロースポイントに寄与するアジェンダ選定・論点を解くといったことをどれだけやれるかが大切」という変革を牽引する上での要諦を再認識させられました。

 

以上となります!

■要約≪ペルシア人の手紙(上)≫

 

今回はモンテスキューペルシア人の手紙」を要約していきます。法の精神で有名なモンテスキュー出世作で「ペルシア貴族が中東~ヨーロッパを旅しながら見た出来事・感じたことを知人・友人宛に書簡にしたためて言語化するという体を通じて、中東社会・ヨーロッパ社会を評論・風刺する」という内容です。ユズベク・リカという2名のペルシア人が主人公で、ヨーロッパ社会に適合していき現実的に評論を展開するリカと中東社会に回帰しようとし、遠隔マネジメントの出来ない専制政治の状態に暴発するユズベクという奇妙な対比が非常に美しく小説としても面白い本です。今回は上巻にあたる手紙1~80までの前半部分を要約します。

 

ペルシア人の手紙(上)」

ペルシア人の手紙 上 (岩波文庫 白 5-6)

■ジャンル:小説・歴史・社会科学

■読破難易度:低~中(文章自体は非常に読みやすいです。中東社会・ヨーロッパ社会の歴史知識・キリスト教イスラム教などの宗教知識などがあるとさらに面白く読むことが出来る構成となっております。)

■対象者:・中東社会とヨーロッパ社会の対比について興味関心のある方

     ・モンテスキューの思考プロセスに興味関心のある方

     ・諸制度・規範などの意義・あり方について考えを深めたい方

 

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論 (モンテスキューの著作、本書同様のプロセス・命題)

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■法の精神 (モンテスキューの著作、代表作)

■要約≪法の精神 第一部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第二部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第三部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第四部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第五部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第六部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■本書執筆の制約条件について

モンテスキューは中東や東欧の文明と直接接点を持ち、法の歴史に関する考察を深めてきたというバックグラウンドがあります。アジア・中東とヨーロッパ文明は分断されるような状態にある中で、本書は執筆されたという歴史背景があり、それ故に政治評論を慎重に行う為に中東文明の人が社会を論じる小説という体を取らざるを得なかったとされています。具体的にはペルシア人がヨーロッパ・中東を旅する中で気づいた違和感や考察を知人・家族向けに披露していく」という仕立てになりました。このプロセスは「ローマ人盛衰原因論も然りで、ローマ史の研究を通じて婉曲的にフランス絶対主義を批判するというものでした。

 

■ペルシア文明について

・主人公のユズベクとリカの原点であるペルシアは専制政治国家で、一夫多妻制を採用しています。「女性はハーレムに幽閉させられ、行政は黒人白人の宦官が牛耳る」といった具合の構図であり、社会秩序を維持する為に理不尽や不幸でいっぱいな抑圧的な統治体制が維持されているといった状態でした。本書では元々閉鎖的な空間であったことに辟易してヨーロッパ旅行を意図したユズベクとリカがヨーロッパ社会との在り方の違いを通じて、時に違和感や驚きを見せながら中東社会を風刺していくという展開が続きます。

・「協働ができず略奪が横行するゼロサムゲームのような社会秩序の崩壊した世界」は極めて生産性が低く、中東社会はそのような劣悪な世界として本書では描かれます。様々なハーレム・宦官に纏わる不合理・人間の強欲さを通じて「不正が横行する中で徳を全うする高潔な精神、いわば自己満足のようなものを貫くことが如何に難しいか」ということを説いています。これは法秩序による社会規範の形成こそが専制政治封建制にも増して重要な統治システムであるというモンテスキューの著作全般にみられる主張が強く打ち出されています。

 

■ヨーロッパ社会について

・主にリカを主語としてフランスを始めとしたヨーロッパ社会の矛盾と強欲さを炙り出す論調が本書では色濃く見られます。具体的にはフランスの売官制度批判やキリスト教は「天国に万人がいける訳では無いのに信仰され支配の源泉にされるのは滑稽だ」といった論調などです。※著者のモンテスキューは法秩序・個々人の権利を重んじ、キリスト教による支配に対して懐疑的・批判的な態度をとることで有名な社会学者です。

・ヨーロッパの婦人階級の振る舞いや建前主義とペルシア文明のハーレムの高潔さ、宦官支配の正統性に関する述懐。「コメディーや演劇をみる、サービスを消費する」というヨーロッパ社会特有の文化を物語る仕立てなど中東社会とヨーロッパ社会の対比からそれぞれ、もしくは両方の社会の矛盾と愚かさを指摘する論調がリカ・ユズベクの手で存分に語られます。

・ヨーロッパ社会では「他人の弱点に自分の慰めを見出す、比較検討して自尊心を保つ、おべっかを好む」などの文化があると語られます。こうした社会規範の違いから「ヨーロッパ社会を理解し適合しようとする、婦人や様々な職業・身分のあり方を把握しようとする」リカ「保守的で中東専制政治に回帰したがる」ユズベクで距離感が出ていくような記述が本書中盤からは目立つようになります。

 

 

【所感】

・本書は岩波文庫講談社学術文庫の2社で出版されており、岩波文庫では2冊・講談社学術文庫では1冊にまとめられています。本書でモンテスキューが論じたい命題や主張の為に取る手法はローマ人盛衰原因論法の精神でとった手法と似ており、「歴史から法則を導き出す」・「比較検討して真理を導き出す」といった社会科学の基本に忠実な論証プロセスが採られています。

・本書ではオスマン帝国は「海上航海技術に乏しく、商売も下手な愚かな国」として記述されており、近々どこかの文明に侵略される未来を予言していた点など歴史考察の観点からも非常に読み応えのある内容です。また、「男女平等であるべきなのか」・「宗教や伝統が教えるように家父長的に男性優位に見なすべきなのか」というヨーロッパとアジアで度合いの異なる問題に対する解釈・問いを投げかけるなどのメッセージ性も強い作品です。自然法・慣習法ではなく明文化された法律により物事の法則は論じられるべきである」というのがモンテスキューの主張で、これは法の精神にも受け継がれるモンテスキュー著作の強烈な指針です。

・宗教の位置づけ(キリスト教イスラム教)・個々人の権利のあり方など特徴的な違いを並べて、どちらにも良し悪しはあるが絶対の真理も一部存在するよねということを論理的に導いていくプロセスを辿るように慎重に記述していく様が本書では強く感じられます。それだけタブーな問題をなんとか言語化しようと苦慮していたということが伺える内容で、非常に考えさせられる内容でした。本書を始めとしたモンテスキューの所業は歴史研究社会科学哲学などの理論の大きな土台を作った功績が非常にあるなと感じた次第でした。

 

以上となります!

■要約≪アート・オブ・プロジェクトマネジメント 後編≫

 

今回はScott Berkun氏の「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」を要約していきます。マイクロソフト社で多くのプロジェクトマネジメントを成功に導いてきた氏の経験に裏打ちされたプロジェクトマネジメントにおける急所を体系的にまとめた本です。本書は三部構成となっており、Ⅰ部はプロジェクトマネジメントにおける計画・Ⅱ部はプロジェクトマネジメントを行うに必要なスキル・Ⅲ部はマネジメントの技法を解説しております。後編の今回はⅡ部のPMスキル・Ⅲ部のマネジメントの技法に関する要約を行います。

 

「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」

O'Reilly Japan - アート・オブ・プロジェクトマネジメント

■ジャンル:開発管理

■読破難易度:中(主にソフトウェア関連のプロジェクトワークを想定していますが、サービスや製品のプロジェクトマネジメントにおいても示唆に富んだ内容になっております。実践経験があると自分自身の実務の棚卸と合わせて学べてオススメです。)

■対象者:・プロジェクトマネジメントのベストプラクティスを理解したい方

     ・非定型業務に従事する方全般

     ・コトマネジメントにおける手順・思考法を体得したい方

 

※前編の要約は下記※

■要約≪アート・オブ・プロジェクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■エンジニアリング組織論への招待

■要約≪エンジニアリング組織論への招待≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■仕様書の記述

・仕様書はプロジェクトにおける下記3つの目標を達成するべきとされます。

「正しいものの構築を保証する」

「プロジェクトの計画フェーズを締めくくるマイルストーンを提供する」

「プロジェクトの過程で踏み込んだレビューや各個人からのフィードバックを可能にする」

・仕様書はビジョンドキュメントと同様にコミュニケーションの1形態です。仕様書は「何を目的とするプロジェクトで、スコープはどこにあるか」・「期間・予算はいくらか」といったレビューを受けることや共通認識を促進するための要素を盛り込んだ簡素なものであることが求められます。要求・機能・技術の3つの角度から仕様書は記述されるのが基本的です。仕様書記述の工程に創造性は必要なく、正しく簡潔に情報を記述すること多義のないように表現することが求められます。「いつ・誰が・どのようにやるか」の記述や「何をもって良し悪しを測るか」の基準設定など言語化しないといけない仕様書の項目は多岐に渡ります。

・仕様書の作成・レビュープロセスにおいては重要な人材だけ招聘して事前に提出された資料を読み込むというステップを踏むことが大切であるとされます。仕様書に対するリアクションやキャッチアップの様でステークホルダーにおけるプロジェクトそのものの重要度合いが図れるので、レビュー内容によってはレビュー範囲を狭める・変更することも可能になります。シニアステークホルダーとのコミュニケーションにおいてはタスクの依存関係や不確実性のあたりを示しておき、どの方向に開発するかどの範囲なら遅延や未達を許容できるかといった基準をステークホルダーで認識合わせする・言語化するといったプロセスを踏むことが重要になります。

 

■意思決定

・プロジェクトにおける意思決定には下記2つの観点を考慮することが求められます。

「この意思決定がどの期間・どの範囲に影響を及ぼすのか?」

「リスクや不確実性はどのようなものが存在し、それぞれ打ち手を施すことでなくすことはできないのか?」

・意思決定の透明性や重要度を保つ為に、要求定義やスコープなどコアの概念をまとめた文書・仕様書に忠実に判断していく複数の判断軸で取捨選択するというプロセスを徹底することが大切とされます。また、常に「何もしない」という選択肢を考慮することが盲点になりがちですが欠かせない視点とされます。不確実性や資源制約の中では「時間が解決する」・「今決断することでは最適解に辿り着けない」という要素が絡むからです。

・意思決定の精度を高めるには事後にレビューを客観的に振り返る場を設けることがポイントであり、「その意思決定は核となる問題を解決することに寄与したのか?」という問いを立てて振り返ることが大切とされます。

 

■プロジェクトチームのコト推進の妨げになるもの

・前提として、プロジェクトチーム内のコミュニケーションの質と有効性を管理することは成果物にコミットする上でPMが避けて通れないものとなります。その上で、コミュニケーション能力とは自分および他人のメンタルモデルを理解して適切な情報伝達を出来るスキルと表現されます。「仕事の進め方(プロセス)の強要・固定化」や「打ち合わせ」・「電子メール」などメンバーを不快にさせるものは日常に潜んでおり、細部のやり取りや進め方を等閑にせず、秩序と自由裁量を両立できないように資源に働きかける・仕事のリズムを整え続けるなどのスタンス・リソース投下がPMワークには欠かせないとされます。

 

■プロジェクトマネジメントにおけるマネジメントの技法

明確な優先順位付け資源配分プロセスにおける不確実性を解き論点を炙り出しチームをチアアップしていくのがPMの実行力を構成する要素です。「目的や判断基準・ビジョンなどを言語化して文書に落とす」ということを通じて、デリバリーの遅延や方向性のずれを防ぐ働きかけをし続けることが大切です。タスクマネジメント工程ではPMはクリティカルパスを解像度高く把握しておくことが納期やコストを管理する上で必須になります。コンフリクトや問題から逃げず、時には手段を選ばずやれることを全てやりきるというスタンスを全うすることが絶対感覚とされます。

・プロジェクト中盤の実行フェーズにおいてPMはプロジェクトの品質や成果を測る指標を定点で観測して変化を捉える危機を未然に予測するなどのスタンスとリソース投下が推奨されます。プロジェクトチーム向けの会話としては「日々のタスクがプロジェクト目標やビジネスゴールにどのようにヒットするのか?」の問いに対する解の言語化や「我々は要求やシナリオを満たすものを推し進めているか?」という批判的視点などで対峙することが大切とされます。

・プロジェクト終盤においてPMは要所で期日を守り、期限に間に合わせることにリソースを割いていくことが推奨されます。具体的には各工程のゴール目標終了基準を明確に言語化・合意形成することが大事です。万が一、プロジェクトが遅延する際は成功基準の定義スコープの確認優先順位付けの再調整などをプロジェクトチーム内・シニアステークホルダーと行い、コトと人をマネジメントしていくのが重要になります。尚、工数見積もりは過去実績によって悲観的に見立てるのが成果にコミットする上で欠かせないスタンスであり、「人に期待することと計画を楽観的にするのは似て非なるものである」とされます。

 

【所感】

・要所要所はソフトウェアプロダクト開発を想定した記述になっており、エンジニアリングの世界における価値観や考え方に即した内容もありましたが、全般的に非常に納得のスキルとスタンスに関する記述でした。プロジェクトマネジメントとピープルマネジメントにおける人とコトのマネジメントの優先順位は似て非なるものであるというのが読みながら感じた感触であり、自分が行う仕事においては両方を包含するケース・片方だけなど様々ありますがその都度、「プロジェクト成果(戦略推進・ビジネスアウトカム)・人材育成(スキル開発・成長機会)などの中で何を優先するのか?」という問いに対して考えを深めていくというプロセスを踏むことは欠かしてはならないなと考えさせられる内容でした。

・全般的に自分自身が複数のプロジェクトワークを様々な役割を通じてこなす中で、うまく言語化出来ていなかった内容に対して正当な理論立てや内省を深めるような示唆を与える内容に感じました。その為、一定のプロジェクトワークやコトマネジメントの経験を積むに至ってから本書を読み、理論と実践の知見を統合していくと非常に読みやすいのではないかと感じました。

 

以上となります!

■要約≪[新訳]経験経済≫

 

今回はB・J・パインⅡとJ・H・ギルモア共著の[新訳]経験経済を要約していきます。2005年に書かれた本で、モノで溢れる時代において、機能的価値だけでなく体験価値・経験をデザインしていくことがビジネスの急所であるという論を展開する本です。本書で展開される論はマス・カスタマイゼーションやUXデザインの先駆けとなる考え方であり、テクノロジーの発展によりソフトウェアプロダクト市場が急拡大したこと・オンラインとオフラインの融合が容易になったことで経験経済は2010年代以降一気に加速していきました。

 

「[新訳]経験経済」

[新訳]経験経済

■ジャンル:企業経営・マーケティング

■読破難易度:低(前提知識不要で豊富な製品や企業の事例を基に論が展開されます。意識高い論調が続く為、読みづらさを感じる人は一定数いるかもしれません。)

■対象者:・現代の潮流であるマーケティング理論の理解を深めたい方

     ・UXデザインの必要性について理解を深めたい方

     ・サービス・ソリューションに関する体系だった理論を学びたい方

 

≪参考文献≫

■UXデザインの教科書

■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪UXデザインの教科書 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART1≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART2≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART3≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART4≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART5≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART6≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART7≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART8≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■経験経済到来の必然性

・モノで溢れる時代においては大量生産方式によるコスト優位やニッチセグメントを探索する差別化戦略といった従来の製品市場戦略単独では思うように成果を上げることが出来ない局面が到来しました。機能的価値のみでは顧客の需要を喚起することが出来ず、利用体験意味報酬などにヒットするような製品・サービス提供プロセスの磨きこみが欠かせなくなるのはコト消費の流れから必然でした。

・経験経済においてはユーザー体験を構成する意味・効果的な情報伝達導線の設計が付加価値の源泉となり、UXデザインは顧客価値を効果的に届けるマネタイズポイントを司る中核として着目されるようになっていきました。利用目的体験価値を深く理解し、特定セグメントへ狙って価値提供することがビジネスの急所になる以上、「顧客セグメンテーション」と「ユーザーストーリーへの深い理解・共感」が重要事項になるのでした。

 

■経験を狙って提供するには

・製品やサービスが機能面だけではコモディティ化する社会において、意味という側面で差別化を志向する中で体験価値にスポットライトがあたるようになりました。体験価値(経験)を形成する要素として、本書では美的脱日常娯楽教育の4つが抑えるべきポイントとして記述されています。その上で、顧客毎に抱える課題や目標、認知の枠組みであるメンタルモデルが違うことを前提にして、「どのセグメントを深耕していくのか」・「それはなぜ自社・●●(製品・サービス名)が担うのか」といった戦略・意思決定は事業開発の急所になるのでしたこれらを体系化したのが現代のプロダクトマネジメントの技法やフレームワーク(例:ロードマップ)と言っても過言ではありません。

大量生産とカスタマイゼーションの両立が経験経済におけるサービスマネジメントのポイントになります。尚、顧客満足は「当初想定と実態の差分」で形成され、マイナスは顧客我慢を生み出します。「顧客とのタッチポイントにおける顧客我慢・顧客満足の基準を定義し、測定できるようにする」・「我慢・満足の基準を言語化する」などして再現性高く提供する仕組みを構築していくことが経験経済におけるマーケティングマネジメントの基本と言えます。

 

■経験ビジネスを成功させるための要諦

・本書では経験経済におけるビジネスの7つの原則を下記として推奨しています。

フラグシップとなる場をつくれ」

「伝統的マーケティングから予算を奪取せよ」

「クリエイティブなアイデアこそが研究開発だ」

「幅広い経験のポートフォリオを用意せよ」

「リアルとバーチャルの経験を融合せよ」

「経験に料金を請求せよ」

「チーフ・エクスペリエンス・オフィサーを雇え」

・意味を消費する世界線において、顧客を変革してその対価として高いビジネス報酬を獲得する・持続的な競争優位が構築される次元で消費され顧客を惹きつける状態を目指すことが要であり、それ専門のマーケティング活動とUXデザインはバカにならないということが示唆されています。

 

 

【所感】

・2005年著のマーケティング分野の本ということもあり、さすがに事例や論の目新しさはなかったですが本書の未来予測になるかのような考察は圧巻です。経験経済において重要視される顧客中心主義人間中心設計などソフトウェアプロダクトを語る上では欠かせない概念や考え方はこうしたマーケティング理論に裏打ちされているという一貫性も再認識できたので良かったです。

・本書然り、「部分的には理解しているが原典から体系だって理論を学ぶということをしてこなかった分野」というのは読むことで別分野の理論やこれまで学んできた当該分野の知識が線で繋がるケースが多く面倒がらず自分の頭を動かし読み解くことを絶やさないようにしたいと気付いた次第でした。

 

以上となります!

 

■要約≪ローマ人の物語10≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。10は「ユリウス・カエサルルビコン以前」の下巻です。8年間のガリア遠征を通じてカエサルは脅威であるゲルマン民族を抑制しながらガリア領(現フランス・スイス)ローマ帝国の属領に組み込むことに成功します。その最中、ローマ本国の元老院との対立を深め、三頭政治が崩壊しカエサル軍は国賊扱いされながらルビコン川を越えていくまでの過程を扱います。

 

ローマ人の物語10」

『ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)』|感想・レビュー - 読書メーター

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語8・9(ユリウス・カエサルルビコン以前)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語8≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語9≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

ガリア戦役六年目~八年目

カエサル率いるローマ軍は四個軍団からスタートして最初の2年で八個軍団になりルッカ会談を経て十個軍団となっていました。ガリア北東部攻略に焦点を定めてカエサル率いるローマ軍は動いており、ネルヴィ族を攻撃し講和を持ち掛けた後には最大勢力であるトレヴェリ族を攻撃し、反乱の首謀者であるエブロネス族長アンビオリクス掃討を進めました。この期間はゲルマン民族領土が近くにある中で抵抗勢力と一部結託する動きを見せ、ゲルマン民族ガリア領土制圧の抑止力として立ちはばかりました。ガリア民族は定住・農耕型であるのに対し、ゲルマン民族狩猟・移動型であり「ゲルマンよりもガリアをローマ化するほうが筋良く領土拡大できる」という見立てがカエサルにはありました。その為、ライン川を越えてゲルマン民族を威嚇しガリア攻略に戻るなどの工夫を凝らして進めていくこととなりました。

ガリア戦役七年目はガリア民族が一斉に放棄してローマへ反戦体制を掲げる年となります。ガリア反乱軍は中央部へ結託・蜂起し兵糧攻めをする形でカエサル率いるローマ軍に抵抗の動きを示しました。ガリア反乱軍の総大将はヴェルチンジェトリックスという将軍であり、非常に誠実であり、頭の切れる将軍であり、カエサルと均衡を保つことのできるような将軍の器であった人物とされたようです。オーヴェルニュ族の族長でありガリア総大将であるヴェルチンジェトリックスは族の首都であるジェルゴヴィアに籠り、ローマの同盟的な存在であったガリア兵ヘドゥイ族の内乱をうまく活用してカエサル率いるローマ軍と対峙しました。前半はローマ同盟にあるヘドゥイ族の同盟離脱に成功し、兵糧攻めでじり貧を狙う構成を構築することができたローマ反乱軍ですが、圧倒的な勝利や大義名分のない多国籍軍であった為、結託力に欠け南欧での衝突における敗北を機に一気に体制を変更して都市アレシアに籠るという動きを見せました。アレシア攻城戦は兵糧攻めをローマ軍が展開することで逆にガリア軍がじり貧になる展開を見せました。尚、アレシア攻城戦は「五万のローマ軍VS三十四万のガリア連合軍」という構図でした。中央の丘での均衡を巧妙に活用し、背後から襲い掛かるという戦術の妙でカエサル率いるローマ軍はガリア連合軍を打ち克つことに成功し、ガリア最大勢力ヘドゥイ族オーヴェルニュ族の主要勢力に降伏を強いるという形で守備陣営を盤石なものにしてガリア領土の統治を進めていくきっかけとしました。

ガリア戦役八年目はアレシアの戦いの戦後処理としてガリアとの同盟関係を強固にしていく年となりました。カエサルは「現地の身分制度を最大限尊重しながらローマ帝国内部に組み込む」という構想を描き、ローマ化は有力家系の子息をローマ・南仏に留学させるという形式と通商をローマ帝国内部に組み込むが思想信条の自由は担保・最低限の国防に関わる納税だけを強いるというやり方で対峙しました。

 

カエサル不在のローマ帝国内で起きていたこと

ガリア戦役六年目に三頭政治の一角をなすクラッススパルティア遠征に赴きます。パルティアは現在のイランイラクにあたる中東の大国として長らくローマの脅威となっていました。東欧~中東地域とヨーロッパ文明の関係はアレクサンドロス大王が平定をしてから現地勢力が盛り返し、ポンペイウスが東欧地域はローマ帝国属領内部に取り込むことに成功・中東地域はこれからといった状態でした。クラッススは軍事の功績とリーダーシップ・シンプルな戦略戦術スキルが災いしてパルティア遠征にて戦死すると共に、ローマ軍に多大な被害を与えてしまいます。これを機に三頭政治は崩壊し、ポンペイウスカエサル元老院派というパワー均衡になります。

カエサルガリア領を統一する最中、ローマは元老院派と民衆派で世論が二分されていました。元老院派は寡頭政治を理想とし、独裁官のような体制を回避することを重視していました。ポンペイウス元老院の息の根がかかったメテルス・スキピオの二名による執政官体制になり、ポンペイウス元老院派に近づくことになりました。ポンペイウスは自身がもつ虚栄心を元老院派のキケロや小カトーにそそのかされて元老院派へ取り込まれることになりました。「属州統治に従事するものはローマ首都の政治機関にアクセスできない」というガバナンスコードの中で、カエサル元老院派の結託に対抗するために護民官勢力を金で買収する動きを見せました。護民官クリオマルクス・アントニウスカエサル派で固めて対抗し、じわじわと「元老院ポンペイウスvs民衆・カエサル」の構図に世論は傾きました。

カエサルガリア領統治から解任する元老院の法律を護民官が拒否権を行使して抑止する局面が進み、ついに元老院カエサルおよび護民官国賊とみなす元老院最終勧告を出しました。カエサルはマリウス率いるローマ軍の暴動により親族が皆殺しにされた生い立ち故に元老院体制を終わりにして新たなローマ政治体制を構築することを人生のミッションとしており、その思想に従い葛藤しながらも属領とローマ本国の境目であるルビコン川を渡り、ローマ本国およびポンペイウス軍と戦うという道を決断することとなります。

 

【所感】

・圧倒的な兵力差・制約条件の中で八年の月日を用いてゲルマン民族を抑圧しながらガリア民族のいるガリア領土を完全にローマ帝国内部に組み込むことに成功したカエサルの偉業は圧巻でした。カエサルは「ガリア戦記」にて淡々と記述し、民衆を鼓舞する・後代まで受け継がれる文学作品を生みだすという功績もありカリスマ性が際立つものです。著者が特別視して多くのページを割いてカエサル関連を描くことも納得というような内容です。

スキピオによるスペイン・ポンペイウスによるギリシアカエサルによるフランス・スイスのローマ帝国内部組み込み化に成功するという偉業が続く中でローマ帝国は肥大な国家に成長していきました。大事を成すというのは「時流を見極め、選択と集中をして強烈なリーダーシップと実力を以て成しえる」のだということを思い知らされる思いです。また、ローマ帝国の数百年の歴史における元老院勢力の動向というのは人間の性質や政治の難しさを炙り出すような出来事が非常に多いと考えさせられます。強烈なビジョン・野心と共に時流に乗れるように爪を研いで小さな功績を積み上げていくということなしには大きなことはできないということの教訓を歴史は物語っているのだなということを再認させられる内容でした。「ガリア戦記」も読んでみて理解を深めたいと思う次第でした。

 

以上となります!

■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫

 

今回はJeff Gothelf・Josh Seiden共著の「LEAN UX」を要約していきます。Eric Riesシリーズエディタの1冊であり、LEAN UXキャンバスと呼ばれるプロダクト開発におけるフレームワークを用いた効果的な開発手法・コミュニケーションマネジメントについて体系的にまとめた本です。プロダクトマネジメントにおいて顧客価値を定義し、仮説検証を進めながら価値交換システムの機能を高めていく具体的な営みにおいて非常に役立つフレームとして名高く、本書は第三版が出版されています。

 

「LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発」

Lean UX 第3版

■ジャンル:開発管理・IT・経営

■読破難易度:中(馴染みがない人にとっては読みづらさがあるかもしれません。バリュープロポジションやビジネスモデルキャンバスに近しい内容となっております。)

■対象者:・事業・プロダクト開発に関わる方全般

     ・効果的に仮説検証を進めていく上で抑えるポイントを体系的に学びたい方

     ・UXデザインとアジャイル開発の橋渡しに興味関心のある方

 

≪参考≫

■リーン顧客開発

■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■バリュー・プロポジション・デザイン

■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■UXデザインの教科書

■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪UXデザインの教科書 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■LEAN UXとは

・LEAN UXとはリーン・スタートアップ的な思考法でUXデザインを行う行為で、本書はその理論と実践的なフレームワークを体系化した内容となっております。実験計画を立てて、効果的に高速に学習することでビジネスゴールと顧客価値増強にヒットするような開発をしていくことを目指しており、アジャイル開発デザイン思考の概念が随所に盛り込まれています。

・本書の念頭には主にソフトウェア開発があり、製造業の世界と異なり、ソフトウェア開発には要件の完璧さを実現することはかなり難しく、「学習しながら不確実性を解いていく中でピボットしていく」のが基本的な考え方となります。その為にも顧客や課題の解像度を上げてコアを特定しておくことソリューションや課題・ドメインのピボットありきで進められるように整理しておくことなどが優れたプロダクトマネジメントには欠かせません。尚、「仮説検証をしながら不確実性やリスクを取り除いていく工程」をプロダクトディスカバリーと呼びます。

 

■LEAN UX キャンバスを構成する要素について

・プロダクト開発・UXデザイン過程において「何かあった時に立ち返る重要な問いに対する解を記述して一枚絵にしたもの」がLEAN UXキャンバスとなります。具体的にはビジネスプロブレムビジネスの成果ユーザーユーザーの成果とメリットソリューション仮説学習項目MVPと実験計画の8つのボックスです。

・ビジネスプロブレム:「ビジネスが抱えている課題は何か?」という問いに対する解を記述するものです。実装すべき機能開発ではなく、解決しないと行けない顧客および自社ビジネスの課題・どんな状態を目指すのかなどを文書化することがポイントです。「何がスコープの対象で何が対象外とするか」・「ビジネス成果を測るKPIのような定量的な指標を設定すること」なども重要な要素となります。ポイントは「ソリューションありき、決めつけ」にならないように言語化・会話していくこととされます。スコープや戦略に即した適切な課題設定をすることが重要であり、そして「明確に定量的に測定できる」とか「ビジネスアウトカムにヒットすることを見越して逆算的に作りこむ」など判断軸の急所が多数存在します。

・ビジネスの成果:「ソリューション開発によりビジネス課題を解決したと見なすのはどの指標がどの程度になったらか?」という問いに対する解を記述します。具体的なステップとしてはNSMKPIツリーを設定して、「カスタマージャーニーマップがAs is→To beとしてどのように変容するか」を明確に記述することやAARRR(獲得・活性化・継続・収益・紹介)やファネル分析などのフレームワークに忠実に可視化・論点整理をしていくことがポイントとされます。

・ユーザー:「どのタイプの顧客とユーザー(ペルソナ)に集中するべきか?」という問いに対する解を記述します。「どんな社会属性・制約条件を持ち、プロダクト・サービスの利用目的は何か?」ということを言語化し、具体的には事実を把握するためのユーザーインタビューや定量分析をして解像度を高めていき人口統計学的属性・心理学的属性・行動学的属性に関する情報を記述しながらペルソナを定義してく手順を踏みます。「機能的・情緒的何らかの目標を達成したいとしてプロダクトと接点を持つ」という前提で一連のワークフロー・その過程での心理と行動の変遷を記述していくことを怠らないことがポイントとされます。

・ユーザーの成果とメリット:「ユーザーがプロダクトやサービスを雇用する理由・得られるメリットは何か?」という問いに対する解を記述します。ユーザーストーリーによる可視化・論点化を通じてユーザーへの深い共感をプロダクト開発チームが持ち続けるようにすることがプロダクトマネジメントの妙です。往々にして顧客とエンドユーザーが異なるプロダクト・サービスは多数発生するものであり、「双方に対してのビジネス的な利害を果たせるようにソリューション提供方法や価値を作りこまないと成立しないのが留意するべきポイントとされます。

・ソリューション:「ビジネスプロブレムを解決し、顧客のニーズを満たす為に何を作るべきか?」という問いに対する解を記述します。ユーザーペイン・ゲイン・ワークフローにおける制約条件などを言語化・高い解像度を保つという方向に顧客接点や仮説検証を行うのが運用上のポイントとされます。

・仮説:「ユーザーが××な機能を使うことで○○のメリットを得られ△△のビジネス成果を得ることが出来る」という問いに対する解を記述します。「特定の顧客に深く刺さるからプロダクトとして成立する」とした時になぜそのセグメントに刺さるのかというペインや制約条件・価値観を深く理解することが大切になります。機能開発にばかり目をむけることなく、ユーザーの行動が○○に変容したといえる成功条件の定義・測定をするというコミュニケーションを保つことがプロダクトマネジメント・UXデザインプロセスにおける絶対感覚として推奨されます。

・学習項目:インパクト・リスクの大きいものからアジェンダ化して仮説検証していくことが鉄則とされ、「これって本当にいる?」という問いを巡らし、ユーザビリティやスケーラビリティ・技術制約等の軸で判断していくのが基本ステップとされます。

・MVPと実験計画:「次に重要なことを学習する為に必要な最小限の労力は何か?」という問いに対する解を記述します。LEAN UXキャンバスはリーン・スタートアップと異なり、学習することにフォーカスしているMVPであり、「何を学ぶのか?」・「その為にどんなリソースを割くのか?」ということを思考することがポイントです。プロダクト体験の骨格をなす価値や提供方法・プロセスを確かめる為に、「何を学習するか」・「仮説を確かめる為にどんな検証をするか」・「何が得られていると良しとするか」などを定義して実験・学習していくことがMVPの妙です。モックアップやペーパープロトタイプなどイメージが具体的にわくようなものを作り、プロダクト開発チーム内・顧客とコミュニケーションをとっていくのが重要な営みになります。

 

【所感】

・本書は「プロダクトマネジメント ビルドトラップ」のメリッサ・ぺリや「INSPIRED」のマーティ・ケーガン・「リーン・スタートアップ」のエリック・リースなどが本書推薦文を記述していることからも当該分野において、非常に重要な内容であることがわかります。・Why・Whatとなるコアを定めて共通認識がすりあい、プロダクト開発チームの各機能別に分業して一つの方向めがけて進んでいくという状態をデザイン・運用し続けられている状態が如何に大切で難しいかということを考えさせられました。

・顧客価値とビジネス収益にヒットするイシューを射抜けるように仮説検証・顧客接点をとり探索していくこと・フレームワークに忠実に検証することで漏れなくダブりなく効果的に共通認識をプロダクト開発チームで取り持つことが大切であるということを再認識させられる内容でした。

・本書の内容は主にプロダクト開発チームを想定して記述がなされていますが、事業開発・事業企画全般に通じる思考法や問いに溢れており考えさせられる内容でした。「一枚絵にして何かあった時に立ち返られるようにする」・「図示化・可視化・定量化することはバカにならない」・「テーマオーナーでありながら、上位戦略にヒットするようにアウトカムをデザインする」などの重要な嗅覚を再認識させられた次第です。うまく自分の役割に昇華させていきたいと思わせる内容でした。

 

以上となります!

■要約≪アート・オブ・プロジェクトマネジメント 前編≫

 

今回はScott Berkun氏の「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」を要約していきます。マイクロソフト社で多くのプロジェクトマネジメントを成功に導いてきた氏の経験に裏打ちされたプロジェクトマネジメントにおける急所を体系的にまとめた本です。本書は三部構成となっており、Ⅰ部はプロジェクトマネジメントにおける計画・Ⅱ部はプロジェクトマネジメントを行うに必要なスキル・Ⅲ部はマネジメントの技法を解説しております。今回はⅠ部の計画部分の要約を行います。

 

「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」

O'Reilly Japan - アート・オブ・プロジェクトマネジメント

■ジャンル:開発管理

■読破難易度:中(主にソフトウェア関連のプロジェクトワークを想定していますが、サービスや製品のプロジェクトマネジメントにおいても示唆に富んだ内容になっております。実践経験があると自分自身の実務の棚卸と合わせて学べてオススメです。)

■対象者:・プロジェクトマネジメントのベストプラクティスを理解したい方

     ・非定型業務に従事する方全般

     ・コトマネジメントにおける手順・思考法を体得したい方

 

≪参考文献≫

■エンジニアリング組織論への招待

■要約≪エンジニアリング組織論への招待≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■プロジェクトマネジメントの簡単な歴史

・プロジェクトマネジメントはソフトウェア開発は勿論、ハードウェア開発や建設などの分野で歴史的に多く実践されてきました。プロジェクトマネジメントはその複雑さと膨大な処理量故に、部分と全体を統合・最適化して付加価値を高めるというそれ専門の営みです。プロジェクト初期は「曖昧さを許容」しながら権限や指示命令系統を整理し、後半フェーズでは「実行の完全性にコミットする」というしなやかさが欠かせません。文書による要件や価値基準を明記したり、議論過程や意思決定プロセスを記録に残して承認を募っていくというのは大規模開発・利害関係者が複数のPJにおいては絶対感覚とされます。

 

■プロジェクト計画について

・プロジェクト計画は「何をする必要があるのか?」という問いに対する解の要求定義・「どうやって行うのか?」の問いに対する設計・仕様書作成・実際に行う実装の3パートに別れます。優れた要求書は理解しやすく、多義が及ばないように記述されるものです。「誰が何をいつまでに行うか」・「何をもって成功・失敗とするか」を明確に記述するというのはプロジェクトワークの基本動作です。その上で、「納期・予算などの制約条件下でスコープや目的・ビジョンを明確にし、上位組織や戦略に叶うようにアウトプットイメージを作りこむ」・「不確実性を解いていく優先順位付けをする」といった思考を回し、ステークホルダーと方向性や判断基準を揃えていくというのが一般的なステップです。

・プロジェクトワークは「何を明らかにするためなのか?」という問いや目的の設定・事前調査による構造化して筋の良い施策やテーマ設定することがワーク全体の生産性のカギを握ります。プロジェクト計画・定義などは顧客・ビジネス・テクノロジーの専門家数人を招いて少数精鋭で一気に作り上げるのが基本原則とされます。たとえアジャイル開発であったとしてもウォーターフォール形式のような「プロジェクト要求書やワークフローを可視化して論点やアジェンダを設定する」・「シニアステークホルダーと定期的にすり合わせをしておく」などがポイントになります。

 

■プロジェクト計画の羅針盤となるビジョンについて

・ビジョンはプロジェクト目的・判断基準を明文化することにあり、書き留めておき参照し続けることで意味を持ちます。ビジョンをドキュメンテーションする際はシンプル・意図重視(目標駆動)・統合・閃き・覚えやすいという5つの性質を有するべきとされます。「誰をどんな状態にする」・「何を○○にする」など明瞭であり、立ち返りやすいものにするのが基本の表現法の配慮すべきポイントです。具体的で測定可能・行動志向・現実的であるなど抑えておくべき性質も明確に決まっています。

・実践的なコツとして、プロジェクトが対峙する顧客やビジネスケースにおけるワークフロー・ユーザーストーリーなど全体を網羅的・構造的にビジュアライズできるフレームワークでまとめておくことが重要とされます。これは「ステークホルダーの共通理解を促進し、認知コストを最小化すること」で協力や助言を適切に仰ぐ為に面倒でもやっておくことがPMの絶対感覚として求められます。また、ビジョンやビジネス目標は一度明文化・作成して終わりではなく、運用し続けアップデートすることで最終的な成果測定できるようにすることはPMが強い意志をもって行うことが大事とされます。

 

■アイデアの取り扱いについて

・問題解決の生産性を高めるには要求を明確にすること設計を探究することの2つのアプローチがあるとされます。つまり、「何を果たすためのプロジェクトワークなのか?」・「何をしなくてよくて何を担保しないと成功といえないのか?」といった問いに対する解の解像度を高めれば解決策や設計は自ずと導き出されるということです。要求を定義する際には解決策に真っすぐ首を突っ込むのではなく、イシューを射抜く要求であるということを構造的に分析・調査して結論を出すというステップを踏むことが大切になります。その際には前提を疑う失われている要求条件を炙り出すという役割を率先して設計過程に反映させていくように関与するのがPMの望ましい振舞い方とされます。

・上記に加えて、各要求の因果関係・優先順位を明確にしてステークホルダーと認識をすり合わせる・曖昧な用語・情報の定義を揃えるというのもPMワークにおける大事なステップです。要求書には詳細な記述や前提条件を明記すると設計フェーズの制約条件が増えるので、「誰のどんな問題を解決して何を成しえたいのか?」というゴール・目的をシャープにするということに拘るのがポイントです。要求と設計は相互フィードバックして軌道修正していく、イメージをすり合わせるというのが健全な関わり方であり、これを開発に入れ込んだのがリーンスタートアップアジャイル開発です。

・アイデアが複数ある中で制約条件解くべきお題の方向性によって「どれが仕様書に規定されるソリューションになるか」というのは必ず取捨選択されるものです。ここでしっかり検討しつくされない・不備があり手戻りになるとプロジェクトの効率は悪化の道を辿っていくことになるので、どのようにマネジメントするかはPMとして腕の見せ所となるステップです。基本原則は判断軸を複数設けて、毅然とした態度で(時に政治的な交渉に打ち克ちながら)取捨選択していくで、具体的にはコスト・実現可能性・課題解決のインパクト・戦略整合性などの切り口で判定していくものとされます。

・上記のような資源管理・優先順位付け・スコープ定義などのプロセスはキーとなるプロジェクトメンバーで発散・収束を繰り返しながら行われるものであり、定期的に明文化・可視化して共通認識を揃え続けるPMの執着的な行動が成功のカギになるとされます。後工程の開発マネジメントでの手戻りにならないように、Why・Whatを明確にするための問いを立てて課題設定やゴールイメージをシャープにするということに拘りぬくことがプロジェクトの総生産性を大幅に高めることになります。このステップは非常に精神的に胆力が求められる工程であり、フレームワークを知っているか・場数をこなしているかなどが如実に出る領域とされます。

 

【所感】

・本書では明確な組織図にない指示命令系統を権限をもたずに遂行する責任不確実性がプロジェクトマネジメントの大変さの正体とされ、どちらも相応の思考や手順・精神的な胆力が必要とされる点が難しさを助長しているのだろうと感じました。プロジェクトワークを多数行う中で断片的に学んできた知識を再度理論に忠実に理解し直す為に学び直そうと思い、基本に立ち返る意味合いで本書を読みましたが非常に頭が整理されてよかったように思えます。具体的には「プロジェクトメンバーとPMでの守備範囲・関心毎の違い故に起きるコミュニケーションのズレ・断片的なソリューション先行状態をどうマネジメントするか」という判断基準・考え方や「ビジネス戦略・上位組織の目標や利害に叶うようにアウトプット・アウトカムをマネジメントする嗅覚」を忘れないなどが読みながら理解した急所です。

・また本書を読みながらプロジェクトワークはアジャイル開発・UXデザイン・プロダクトマネジメントの理論とフレームワークに通じる内容になっており、相互の関係性・必要性が増すに至った歴史的背景などの解像度が高まりました。この分野に関しては「知っているか」・「やったことがあるか」といった努力の投下が成果に比例する領域であると感じたので、引き続き探究・探索することと小さくとも実践していくことを欠かさないようにしたいと思った次第です。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語9≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。9は「ユリウス・カエサル ルビコン以前」の中巻です。ローマ帝国属州スペイン統治にて武功を挙げたカエサルはその勢いのまま第一回三頭政治を司り41歳で執政官に就任し、ガリア遠征を繰り広げる紀元前60~49年までを扱います。

 

ローマ人の物語9

ローマ人の物語9(著者:塩野七生 2021年96冊目) #読書 #歴史 #カエサル - zashii-1434

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語6~7(勝者の混迷)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語6≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語7≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

ローマ人の物語8(ユリウス・カエサル ルビコン以前)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語8≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■壮年前期:スペイン統治~執政官時代(紀元前60~49年)

カエサル南部スペインに赴き、属州統治の一環として税制改革を行いました。当初の租税はローマ市民であるか属州現地人であるかに関係なくいい加減な対象に1/10税負担を強いるといった具合でした。カエサルはこれを明確にし、「誰が・いつ・どの程度」といった尺度を法律にて明文化しました。加えて、現在のポルトガルにあたるスペイン西部の統治を推し進めて属領統治の任を終えました。

・この頃、スッラが構築した「共和政(寡頭政治)の維持こそがポイントである」とする元老院派(主勢力は小カトーとキケロ)と東方遠征にて大きな武功を挙げたポンペイウスは均衡関係にあり、利害が一致したポンペイウスカエサルクラッスス三者連合を隠密に形成し、カエサルが執政官就任に成功します。

カエサルは執政官就任以後、急進派というレッテルを覆す為に「元老院議会の議事録を翌日文書にて情報開示する」ということを進めました。ポンペイウスが獲得した東方領土の属国開発促進を推奨したり、元老院議員など国家公務員の規則を制定したりと次々に政治を実行しました。経済発展と元老院議員の特権や硬直的な体制を崩すための打ち手というのが狙いです。その流れでカエサルグラックス兄弟以来タブー視されていた農地法を成立させ、クラッススおよび騎士階級向けに属州統治に関わる租税を免除する法案成立・ポンペイウス向けにローマの友好国であるエジプトの王位を即位させ、それをポンペイウスの庇護下に置くという領土拡大のようなお膳立てをするなどして三頭政治を確固たるものにしました。カエサルが執政官就任以後は領土拡大とローマ帝国強化の目的を果たす為に、属州ガリア統治の権利を獲得しました。

 

■壮年前期:ガリア戦役(1年目~5年目)(紀元前60~49年)

ガリア戦役初年度のカエサルは基盤を構築する為、ローマ本国に三頭政治派の政治勢力を構築することを中心にリソースを割きながらガリア領の周辺民族平定を少しずつ推し進めました。ガリア戦役2年目はゲルマン人ガリア人・ローマ軍が三つ巴の構図の中で、カエサル現ベルギー・スイス一帯の地域のガリア領土内の民族を平定していく動きを進めました。ライン川以東には大量のゲルマン民族が睨みをきかせるという構図の中でカエサルはバランスを取りながらガリア領の攻略を進めていきます。

ガリア戦役3年目になるとローマ本国の三頭政治に綻びが出始め、元老院派と三頭政治のパワーバランスは逆転しつつある状態にありました。カエサルはその状態を不味いと判断し、ルビコン川北部のルッカという町でカエサルクラッススポンペイウス三者会談ルッカ会談を行い政治結託の再確認をしました。具体的な内容は会談では選挙を冬に延期した上で「クラッススポンペイウスの執政官再選を目指す」というもので、加えて「執政官退任後の属領統治の赴任地を事前に決める」ということも行い、ポンペイウスはスペインクラッススはシリアに赴任することで元老院に強い抑止力を働かせる構図を構築しました。ガリア戦役四年目になると執政官をポンペイウスクラッスス両名が務める盤石の構図となったので、カエサルガリア戦役に集中することを決めました。具体的にはガリア北東部(現フランス~ドイツの境目)の開拓を推し進め、カエサルは長年の悩みの種であるゲルマン民族の脅威に対処する為に、ライン川に橋をかけて直接攻撃を仕掛けられるような体制を作るという大胆な構想でゲルマン民族を直接叩きました。

ガリア戦役四年目終わり頃にカエサル率いるローマ軍はブリタニア(現イギリス)との接触を試み、ガリアと共にローマ帝国内部に組み込む構想を練るようになりました。ガリア戦役五年目はガリア北部(現フランス)~ブリタニア南部(現イギリス)への進軍リベンジに奔走する年となります。少しの均衡が崩れたことを境にガリア領土ではガリア軍による反乱が勃発し、弟キケロクラッスス息子率いるローマ軍がピンチに陥ります。カエサルが合流しローマ軍7000vsベルギー+ガリア反乱軍60000という圧倒的な兵力差を作戦の妙で切り返し、何とか平定に成功します。その後、カエサルガリア遠征のスコープをガリア最大勢力の平定およびゲルマン民族掃討に定め、ガリア戦役終盤へ向かっていくこととなります。

・一方、ローマ本土はポンペイウス+クラッスス三頭政治体制に綻びが出て執政官に元老院派が多数を占めるまで盛り返していました。元老院三頭政治カエサルを切り崩すためにポンペイウス元老院派に引き入れようとし、クラッススはパルティア遠征総大将の準備をしている状態です。こうした混沌とした局面でガリア戦役六年目が始まり、下巻(10)に向かいます。

 

【所感】

・後の西ローマ帝国フランク王国の基盤を作ることになるガリア領(フランス・オランダ・ベルギー・スイス)とゲルマン民族文明(ドイツ)・ブリタニア人(イギリス)が一気に登場してきて、ポンペイウスが東方遠征にてローマ領土を拡大していることと同じくらいの偉業を成していること、後のヨーロッパ世界の基礎が構築されたことなどがわかり地図を見返しながら読むのが非常に面白い巻でした。

・世界史を学んだ際には無味乾燥に映ったポンペイウスキケロクラッスス・小カトーなどにもスポットライトが当たっており、関心毎や政治的力関係などが浮き彫りになり面白く読むことが出来ました。また、カエサル著のガリア戦記は文章の美しさも相まって名著と名高いのでタイミングを見て読んでみたいと思う次第でした。ローマ人の物語は8~10が「ユリウス・カエサル ルビコン以前」で11~13が「ユリウス・カエサル ルビコン以後」といった具合で多くのリソースを共和制末期およびカエサルに割いていることがわかる著者の特別の思い入れが感じられるパートです。1~7に比べると非常にスローペースで叙述されますが、ヨーロッパ世界のコアが形成されたタイミングですので楽しみながら読み進めたい次第です。

 

以上となります!

■要約≪サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル≫

 

今回はティエン・ツォ氏の著作サブスクリプション 「顧客の成功」が新時代のビジネスモデル」を要約していきます。近年急拡大しているサブスクリプションのビジネスモデルおよびSaaSビジネスの急所について様々な業界での導入事例と各機能別組織のあり方についてまとめた本です。「全ての判断を顧客期待起点に」というのは近年のソフトウェアプロダクトの基本的な思想です。これはサブスクモデルの普及によるマーケティングマネジメント・UXデザイン・プロダクトマネジメントの必要性といった時代の潮流と切っても切り離せないテーマであり、様々な自分自身の関心毎や勉強テーマの統合という意味合いで本書を読みました。

 

サブスクリプション 「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル」

サブスクリプション―――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル | 漫画全巻ドットコム

■ジャンル:経営・開発管理・マーケティング

■読破難易度:低~中(様々な業界やSaaS企業の事例を基に記述されている為、読みやすいです。サブスクの概念そのものが馴染みのない人にとってはカタカナ・横文字が多く取っ付きづらさがあるかもしれません)

■対象者:・サブスクモデルについて理解を深めたい方全般

     ・ソフトウェアプロダクトのビジネスに従事する方全般

     ・マーケティングトレンドに明るくなりたい方

 

≪参考文献≫

■ザ・モデル(サブスクモデルの営業・マーケティング機能に特化して解説した本)

■要約≪ザ・モデル≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■INSPIRED(ソフトウェアプロダクトマネジメントの潮流)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■ユーザーストーリーマッピング(顧客期待を捉える・顧客期待を起点とした機能開発の要であるUXデザイン・エンジニアリングについて)

■要約≪ユーザーストーリーマッピング≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■サブスクモデル台頭による商慣習の変化

・モノで溢れる時代において、「モノの所有ではなく利用ベースの料金発生」という概念が成立し市場浸透するようになりました。サブスクリプションモデルは料金の簡素化によりユーザーのすそ野を広げ、安定収入というビジネス提供者へ果実をもたらしただけでなく、「ユーザー獲得・利用~定着・LTV向上」というそれ専門の営業・マーケティング機能、各ファネルの移行率を高めるUXデザイン(究極的には人を介さずプロダクト上で体験が完結する世界)の重要性が高まるというビジネストレンドをもたらしました。

・上記トレンドは必然的に顧客セグメントの細分化顧客期待に合わせたサービスメニュー・提供方法の開発という事業アジェンダを多くの企業にもたらしました。加えて、2010年代にクラウド技術など「デジタル起点のビジネスモデル・提供方法におけるイノベーション」が実現したことで、サブスクモデルは一気に市場へ浸透していくようになりました。顧客接点におけるカスタマーエクスペリエンスが最重要であり、「ユーザーストーリーや顧客を深く理解した前提にプロダクトやサービスを組み立てていく」という思想が浸透するきっかけを生み出しました。具体的には「プロダクトの体験価値・機能的価値の言語化」・「NPSや継続率・ARRなどを事業の重要指標とする」といった行動変容をもたらしました。

 

■サブスクモデルにおける事業運営の要諦

クラウド技術サブスクモデルの市場浸透により、ソフトウェアプロダクトでのSaaSなどが実現可能になり、UXデザインアジャイル開発など「顧客やユーザーストーリーを起点にMVP開発をベースに仮説検証・PDSサイクル回していくことに重心を置く」という現代のプロダクトマネジメント手法の体系化が進みました。大事なのは顧客のペイン・ゲイン・セグメントを中心に考えるということですが、「顧客が答えを知っているとは限らない」・「顧客に妄信すればいい訳ではない」ということです。サブスクモデルはLTVや継続利用率・CPA・ARRなどを注視して経営せざるを得なく、それは詰まる所「データや顧客インサイトを起点にUXデザインしていくことが事業運営のコアになる」ということを意味します。例えば、ネットフリックスはセグメント別の利用時間に寄与するようなコンテンツ開発に注力しましたし、セールスフォースは分業体制と見込み顧客生成をコアとしました。顧客を引き付ける体験やブランドを持っている企業は非常に強く、GAFAスターバックスなど強烈なビジョンやコアユーザーを持つ企業はプロダクトの世界で良く参照される企業であることも必然の流れです。

・こうした変化がマーケティング分野にもたらしたのはプライシングパッケージングの重要性です。「フリーミアムでライトユーザーを獲得し、課金形式で顧客体験を紡いでいき定着促進と単価を上げていく」というプロダクトマネジメントの基礎的な概念をもたらし、各ファネル別にセールス・マーケティング・UXデザイナーと共に打ち手を施していき、KPI・NSM・ARRにヒットするようなビジネスと顧客価値の両輪を回していくといった事業マネジメントの当たり前を導きだしました。「全ての起点は顧客期待から」という考えのもと、カスタマーインサイト・ジャーニーマップを全ての土台としてプロダクトデザイン・販売チャネルマネジメント・機能開発を徹底していくというサブスクモデル起点のソフトウェアプロダクトの王道的な思考法が市民権を得るに至りました。

・サブスクモデルを導入する企業においてはARR(年間定期収益)が重要な財務指標で、これは伝統的なPLではとらえきれない稼ぐ力や収益性を時間軸の概念から捉えようということです。つまり、解約率取引単価顧客獲得コストなどがビジネスドライバーになり、「それらにダイレクトにヒットする打ち手や当該部門へのマネジメント働きかけ」など専門で行うプロダクトマネジメント業務の必要性をもたらしました。その結果、「定期収入の向上」と「定期コストの削減」という2方向に対して打ち手を施し、プロダクト戦略とロードマップをアップデートしていくのがプロダクトマネージャーの役割となり、顧客インサイトの探索ユーザーストーリーの深い理解をベースとした体験価値・機能的価値の向上の両輪を回していくことが求められるロールが多くの企業で必要とされるようになりました。

 

【所感】

・サブスクモデルの市場浸透とSaaSおよびソフトウェアプロダクトマネジメントが拡大していうのは一つのつながった線であるということが深く理解できてとても面白かったです。ザ・モデルのような営業・マーケティング分野での組織イノベーションやUXデザインの重要性など断片的に理解していた付随テーマもなぜそれだけ重視されるかということがこれまで以上に良く理解できました。「製品のサービス化」というのが大トレンドですが、労働供給制約社会が到来する中で分業して大量の労働人材でサービスを提供していくというのもどこかで限界が来ます。「サービスのプロダクト化」のようなプロダクトで体験が完結できるようにテクノロジー活用やビジネスモデル・販売チャネルイノベーションを狙って志向していきながら思考していくことが必要なのかなと考えた次第です。

・自分自身は営業・マーケティング・組織マネジメントがキャリアの骨格を形成しているのですが、UXデザインやプロダクトマネジメントの重要性が叫ばれる中でVoCに明るいことや顧客起点で考える・仮説を巡らすといったデザイン思考に近しい物にはなじみがあると感じていて、「ビジネストレンドやテクノロジー技術を食わず嫌いせず取り込み、顧客価値向上や提供方法の探索をゼロベースで模索し続けることがバリューを出すうえで大切なのだろう」という自分の現在地と今後の頑張り方のベクトルを再考するに至った次第です。

 

以上となります!