今回はエド・キャットムル氏著の「ピクサー流創造するちから」を要約します。氏はピクサー・アニメーション・スタジオの共同創設者であり、ピクサー・アニメーションとディズニー・アニメーションの社長です。ピクサーの経営の歴史を紐解き、創造的な組織をどう作り維持するかを説いた内容となっております。ピクサーがルーカスフィルムから部門独立し、スティーブ・ジョブズが株式の過半数を所有し彼の庇護を受けながらトイ・ストーリーらの画期的な作品を連発していく経営の裏側を紐解いております。
「ピクサー流創造するちから」
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■ジャンル:組織マネジメント
■読破難易度:低(経営者の経営の歴史を独白する仕立てとなっており、非常に読みやすいです。身近な作品も取り扱うため読み物としても面白いです。)
■対象者:・創造的な組織づくりに興味関心のある方
・企業経営の歴史の理解を深めたい方
・人材育成や企業経営に従事する方
≪参考文献≫
■デザイン思考が世界を変える
■組織を変える5つの対話
■リーダーの作法 ささいなことをていねいに
■要約≪リーダーの作法 ささいなことをていねいに≫ - 雑感
【要約】
■ピクサー・アニメーションの経営要諦
・ピクサーは「トイ・ストーリー」・「モンスターズインク」・「レミーのおいしいレストラン」らを手掛けてきたグラフィックアニメーション会社であり、2006年にディズニー・アニメーションの傘下に入りながらも独自色を担保しながら創造性ある経営を続けてきました。ピクサーは創業当初から完全コンピューターでつくる映画という野心的なビジョンを掲げ、「トイ・ストーリー」シリーズを手がけました。結果的にディズニー・ピクサー双方のカルチャーや意思決定基準を尊重しながらシナジーを生むという複雑な経営を実現し、ディズニー・アニメーションのV字回復に貢献したとされます。ピクサーは率直なフィードバックや創造力・体験を重んじるカルチャーをいついかなる時も徹してきた経営ポリシーがありました。
・豊かな環境を整備し、創造性を刺激し、阻害要因に目を光らせるのがマネジメントの最大の仕事であると本書では記述されます。創造的な文化と経営哲学を言語化して如何に浸透させ続けるかということにピクサーの経営は魂を込めているとされます。不確実性や不安定さへの対処・率直さ・目に見えないものへの対峙などがもっとも経営として手を入れるべきテーマなのです。
・物語がきちんとしていれば美術的な技巧はその後になるということがピクサーの根底にある考え方です。ルーカスフィルムの業績が芳しくないタイミングでコンピューターグラフィック部門は売却を余儀なくされており、アップルのマッキントッシュ部門を解雇になったスティーブ・ジョブズが経営に乗り出そうと接触をしました。当時のスティーブはスパーリングのように問いかけをしながら論点を明確にするというコトに向き合うスタイルのコミュニケーションでした。1986年にスティーブ・ジョブズが株式の70%を保有する形で、ピクサー・アニメーションはルーカスフィルムから分離独立する形で誕生しました。
■ピクサーらしさ
・CGで映画を作るという新奇性とストーリーテリングが想像力をもたらすという強烈なコンセプトがピクサーの一貫したポリシーです。また、良いアイデアが全ての起点であり、その為に良い相互作用を設計する・偶発的な機会を作るということが経営におけるポリシーともされています。
・クリエイティブにはそれぞれのプライドやアイデンティティ・目に見えない力関係がある中で率直なフィードバックをするのは相当な心理的安全と目的意識が揃っていないと成しえないです。その一方、で集団浅慮に陥るのは最も回避しないといけない意思決定でもあり、コミュニケーション設計や風土形成はマネジメントが成果最大化観点で整える内容となります。提案や助言をしてストーリーテリングを吟味することはあっても、意思決定のラインと裁量は明確に線引きするというのが創造性と率直な文化の両立に欠かせず、この線引きの意思決定と保つ努力がポイントとされます。人ではなく、問題をみてアイデアをブラッシュアップするというグランドルールを徹することに尽き、その方針を狂気的にやりこむというのが創業以来のピクサーのカルチャーです。
・人の知覚は築いたメンタルモデルによりゆがめられ、正しく現実を直視することは多くの人には難しいという前提でマネジメントすることが大事と著者は主張します。複眼でフィードバックして市場や顧客の声を反映する意思決定が如何に大切で難しいかということです。模倣ではなく現地調査で掴んだ本物の感覚を創造に反映させることをピクサーは重んじます。短編映画を技術の表出や長編映画の作成経験の土台にすること、芸術性に投資をすることのメッセージとしてピクサーは活用しました。人間は反省や自己分析をするということを拒み、刹那的なことになりがちです。しっかりと振り返りの機会と対話を設けてメタ認知を促したり、基準や改善要望を示すということが必要になります。反省会という機会そのものが一定の組織学習のシグナルになるだけでなく、どのように振り返りをするかの示しや抽象化・応用かを促すということなのです。
【所感】
・アップルCEOティム・クック氏の伝記本で描かれたスティーブ・ジョブズ像とは違ったピクサー・アニメーションでのスティーブ・ジョブズの振る舞いやピクサーでの経験が彼にもたらした影響が生々しく描かれており非常に面白かったです。終章まるまる1章を割いてスティーブ・ジョブズについて触れるほど経営者のエド・キャットムル氏にとっても印象深かったことが伺えます。
・情熱や拘りにベットしたり、偶発的な交流・問いを基にした対話など細部の設計・運用と創造性に価値を信じる強いリーダーシップの発揮による弛まない努力の積み重ねの故に、創造的な組織文化やアウトプットはもたらされるということが改めてよく理解できました。物凄くエネルギーのかかることですし、日常の些細な様々な出来事の重力の中で中長期的に影響をもたらす文化や機会設計に魂を込めるというのは経営者やリーダーシップの強い腹決めが必要であると感じました。個人的には機会設計や人材育成などは打率が悪くても仕掛けを施し、期待し続ける事でしか実現できないと思っていますし、究極的には誰をバスに乗せるかや何にフォーカスするかの取捨選択の腹決めもある(全ての条件下で本書の取組をやっても意味があるとは限らない理由がある)とも感じました。ある種孤独でも未来を描き、ゴールから逆算しギリギリを攻めたり流れに抗い大事な信念やアウトプットを示していくということ、これが経営であるということも再認識・考えさせられる内容でした。
以上となります!







