雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪リエンジニアリング革命≫

 

今回はリエンジニアリング革命という本を要約していこうと思います。

約20年程前に書かれた本なので少し古いですが、今流行りの「DX」や大量生産方式・機能別組織の否定といったここ20年のトレンドの源流はこの本の概念にあると思ったのでこのタイミングで読んでまとめてみたいと思いました。

経営企画部門に従事されている方やコンサルティングファームに勤務されている方に取っては馴染み深い本・概念のようですね。

 

「リエンジニアリング革命」

リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新 (日経ビジネス ...

■ジャンル:経営学

■読破難易度:中

経営学の理論体系の歴史的変遷に明るいとかなり読みやすいと思います。自分が関与する業務全体を可視化・プロセス毎に検証した経験のある人も読みやすいかと。)

■対象者:業務改善プロセスについて興味関心のある方・経営学の歴史について興味関心のある方・事業部全体/会社全体に関与するプロジェクトに従事する方

≪選定理由≫

バズワード気味のDXの源流を理解して自分なりの見解を持ちたかった為

・スコープを広げて物事を考え、行動する為の基礎知識を整備したかった為

 

【要約】

・リエンジニアリングとは下記概念を指し、概念実践を実例ベースで記述しています。

「コスト・品質・サービス・スピードのような重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するためにビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」

・詰まる所、業務全体を洗い出して、現代の企業ニーズに合わせて根元から業務全体を組み立て直すということです。90年代くらいまでの企業の多くは「大量生産方式・機能別組織(アダムスミスが説いた分業モデル)が至高」という考えの基に成り立っていた既存の価値観を大きく否定したものと言えます。

・市場競争が拡大化して国際競争・ニーズの多様化の中で事業価値を高め、持続的な事業運営をする為に、事業部制組織やマトリックス組織等様々なモデルが採用・検証される中でこの、そもそもの根元を洗い出す「リエンジニアリング」が経営の主題に上がってきたということです。

※この過程の中で業務の自動化・統合が必要になり、リエンジニアリングの実行には第三者の意見・外部の視点が必要である為、「ビジネスコンサルとしてのコンサル需要&IT需要の拡大⇒ITコンサル・近年のDX需要」という流れになります。

 

■リエンジニアリングがなされた後の組織の共通項

・複数の仕事を一つにまとめる 「柔軟性・サービス品質・低コスト」という大量生産時代とは異なる企業へのニーズにこたえるための最適解として必然的にこのような形になります。

・従業員が意思決定を行う 現場での意思決定・遅れをおさえ管理費用を減らすという命題への解決策としてこのように行きつく(無形商材の営業などは顕著)

・チェックと管理を減らす

・調整は最小限に抑えられる 業務プロセスの統合の中で無駄な管理・二重になっている調整業務を統合するということ。垂直統合なども近しい意味合いを持つ。

・ケース・マネジャーが顧客との接点となる 今でいうプロダクトマネジャーが現場折衝・顧客折衝の際に大きな裁量をふるうということです。

 

■リエンジニアリング後の変化・効用

仕事の単位が職能別組織からプロジェクトチーム制へ

単純な業務から多次元に渡る業務へ 体系化したプロセス全体に対して個々人が責任を追うのがリエンジニアリング後の組織体系なので、本来求められたものよりも高い範囲・水準での職能が求められるようになるということです。

管理から権限移譲へ 必然的に。現場で業務プロセス全体に対して責任をもつ人が意思決定をする割合が増えます。

 

■プロセスデザインの際の留意事項

業務は「作業中心」ではなく「結果中心」に設計・優先付けされるべき

プロセスに関わる人は極力少ない人数にしたほうがいい(情報伝達コストの発生・多能工の優位性)

 

■リエンジニアリングに失敗する企業の共通傾向

・プロセスを変革せずに修正しようとする 既存のものを取っ払いゼロから作り直すのがリエンジニアリング、既存のものを切り貼りしてもうまく効果が出ないことがほとんどであると認識すべきようです。最悪なのは既存業務の一部だけ修正してかつそれをコンピューターにより自動化しようと意図するもの。

・人々の価値観や信念を無視する リエンジニアリングはややトップダウン気味にトップが掲げたビジョンを実現するためにプロセスを根元から変えていく行為であるものの、実際に運用するのは現場の末端の人間。現場の価値観や大事にしている信念を無視しては感情的な反発は避けられないとのこと。

・問題の定義とリエンジニアリングの範囲を限定してしまう 業務プロセスの見直しをする際に、聖域を作ってしまってはそこにボトルネックがあったときに解決にならない。内部任命のプロジェクトチームである場合どうしてもタブーや先入観で度外視する分野が発生してうまく機能しないことが多い、だからこそコンサルなどの外部の知見を入れることに大きな意味があるケースが多いようです。

・リエンジニアリングをボトムアップで起こることを期待する 一番自然ではあるが現場はその視点視界を持ち合わせていないことが多いから期待してはいけないということ。そして必然的にリエンジニアリングの課題解決は組織の垣根を超えた問題になることが多く、そうなった際の権限を現場は持ち合わせておらず途中で頓挫してしまう可能性がある。

・不幸になる人がいないようにリエンジニアリングを起こそうとする 必然的に業務改善をする中で割を食う人が出てくるのは避けられないです。

 

 

【所感】

・業務プロセスを分解して各プロセス毎に打ち手を検証することが急所であり、常日頃から行っている自分に取っては受け入れやすい概念でした。少し抽象的で定義なしに急に登場する造語に翻弄されることも有りましたが、全体感としてはわかりやすかったです。

・「顧客が何を求めるのか」というマーケットインの思考を経営の主軸に置くべき、という方針を恐らく最初に明確にまとめた現代の経営学の本だと思っていて近年の潮流を考えると先見の明には驚かされました。

・正直、自分がこうしたテーマに対して深く関与し意思決定を求められる場面に出くわさないとこの本の真価はまだまだ把握出来ないのだろうなと思いながら高度専門職が世の中のどのような需要を解決する形で重宝されているのかについて把握することが出来たのは純粋によかったなと思っています。

 

少し抽象的な要約・感想になりましたが以上です!

次回は久々にロジカルシンキング系の本を読んでいるので、要約してみたいなと思います。原典に立ち返ります!