今回も実務路線と少し離れた内容の本を要約していきたいと思います。
新規事業に関わる知人・管理部門で「鳥の目」的な仕事の筋肉を駆使している方々から管理職サイドの視点身に着けるうえで読んでもいいかもとおすすめされた本となります。日本がどのように知識を活用できる資源として機能させていたかということを題材に知識創造のプロセスについて述べている本です。
「知識創造企業」
■ジャンル:経営理論・新規事業系
■読破難易度:中(抽象的な内容ですが、具体例が非常に多いので大枠を掴むこと自体は容易です。)
■対象者:管理部門に従事する方・新規事業・新製品に関わる方・日本のビジネスの発展について知りたい方
※日本軍の敗戦理由をまとめた「失敗の本質」で有名な著者の本です。
【概要】
・日本企業独特の知識創造(新商品開発)のプロセスについて体系的に分析・なぜそれが功を奏しているのか等についてまとめた後に、今後知識主導の時代の中であるべき知識創造のモデルについて理論を展開している本となっています。学術的な内容になっており、実務応用するにはアナロジーを働かせないと難しいと思います。
・日本独特の知識創造理論が発達したことに「曖昧さ」を重んじる文化的な基盤がそもそもあるという所から論はスタートします。というのも欧米においてはデカルトに代表されるように二元論が主流であり、白か黒かという論展開を中心に物事がこれまで進んできたのであいまいさを残したままの議論進行などは是とされないし発展もしてこなかったということが記載されています。
※この曖昧さを甘受することが「形式知(体系化され顕在化している理論のような知見)⇔暗黙知(職人の腕に代表されるような俗人的で非言語化されている知見)の行き来を盛んにし日本独特のPDCAサイクル・知識創造につながったということが示されています。」
・同様の文脈でテイラーの科学的管理法はこの知識習得のプロセスを経営に応用して最適化を図ろうとした思想の先駆けといえるという指摘は印象深いものがありました。
即ち、科学的管理法は合理的ということもあり受け入れはされたものの、知識の取得・改善などの仕掛を施す主体者としては経営管理者しか認めなかったことが失敗ともいえる。(つまりメンバー個々人の創造性は無視してあくまで、メンバーは規定された仕事を黙々とやれ、変化のないようにしろという思想。)
本書最大の主張である形式知⇔暗黙知の4段階のプロセスをまとめます。
≪共同化≫知識を暗黙知から暗黙知へ拡大・発展させる組織学習のプロセス
・OJTやブレストのように暗黙の知見を現場で体験することで体系化して組織の定着を拡大していくプロセスを指す。組織としての知識の発展において拡大する器を作る意味で重要なプロセスとなる。
≪表出化≫知識を暗黙知から形式知へ変換させる組織学習のプロセス
・メタファーなどを用いて暗黙知になってたものを一つのコンテンツ・ビジョン・コンセプトとして打ち出す知識学習のプロセスを示す。帰納法・演繹法によりロジカルにこのプロセスは導き出されることが多く、このプロセスにより出てきた概念を共通言語として組織全体に新たな認知・概念の獲得を想起させるように働きかけることが多いという。
・中間管理職などが既存の知識を統合して成果を創出するために概念を連結する際に主に用いられるプロセス。
・形式知から暗黙知に落とし込むことにより創造的な体験を増やすということ。
・知識や経験の共有・体系化・分類を繰り返すことにこそあたらしい知識創造のプロセスを経る急所がある、その際に様々な職能を経験している社員が多くなるように設計されたジョブローテーションが日本ならではの強みを醸成している要因といえる。(様々な観点を持つからアナロジーを働かせることができる。)
⇒知識を創造するには暗黙知を結合して形式知にすることが不可欠、そのためには暗黙知を形成するためのメタファーや非公式な場も含めたコミュニケーションを取る場を設けることが急所といえる。このプロセスにおいて日本のチームワーク重視の風土やジョブローテーションといった終身雇用前提の制度は有効に機能する、だから日本の企業において発展したということになります。
【所感】
・正直、非常に抽象的であくまで「理想論」をまとめた本なのでこれを実行するのは困難であるし実務に役立つ感覚は薄かったです。しかしながらあくまで目指すべき方向として指標を理解する意味では意味があると思いますしあるべき姿を認識したうえで実現するためにはどこは学べるか?何が足りないか?を考えるという観点では有用だったように思えます。学術的な世界に従事する方はダイレクトに役立つかと思いますがそれ以外であれば、で、この知見をどう生かす?が肝の本に思えます。
・またプロダクトアウト主流の製造業主導の理論でもあるのかなとも正直読み進めながら常に思う所がありました。というのもインターネット主導・グローバル化の中で無形商材主流となり課題に対するニーズありきでプロダクトを開発する「マーケットイン」の思想がビジネスにおいて主流となりつつある中でこの本がまとめたあるべき姿が果たして時代に即しているものといえるのか?というのは若干の疑問として残りました。
僕が未熟なレイヤーなので正直どうのかはわかりません。レイヤーが変わったタイミングでもう一度読んで考えてみたいなと思います。
・組織からの要望と現場の意見を鑑みて両者を統合することこそ求められる現在の職務においては正直自分に足りないものは何でも取り入れていこうと思っているのでこうした新しい知見・普段触れない考え方・ジャンルというのは面白いし大事だなと思いました。
以上です!
今回は散文調でとりとめもない話となり恐縮です。。