雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪イノベーションのジレンマ≫

今回は、読むタイミングは今ではないと自分に言い聞かせて眠らせていた本を要約します。大学時代に経営学の企業論という授業で扱ったテーマなので、概念は理解していましたが、自分の法人営業の幅・ビジネスを見る目を広げる意味で原著に当たろうと思い立ち読んでみました。メーカーの技術者や大企業の経営企画・新規事業に関わる人等は物凄く面白く読めるんだろうなと思った本です。

自分自身の話で言うと、適切な知識・思考があるタイミングで読めたように思えたので、眠らせて正解だったと思います(笑)

 

イノベーションのジレンマ

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■ジャンル:経営学

■読破難易度:低~中(論文調なので慣れるまでは読みにくいかもしれませんが、主張はシンプルでかつ何度も繰り返されるので読みやすいかと。文中に出てくる事例が少し古く、製造業に関する基礎知識がないと少し読みにくいかもしれないです。)

■対象者:新規事業に興味関心のある方・事業推進・コンサルなどの職務に就かれている方・企業の盛衰に興味関心のある方

 

 

【要約】

・漸進的な「持続的イノベーションではなく、突然変異のように市場に登場して気が付いたら後塵を廃する結果を生み出す「破壊的イノベーションのメカニズム・それをなぜ大企業は取り込めないのか?という命題に対する論文調の本です。ハーバードビジネススクール監修でMBA等では議論がかなり白熱する講義で取り扱われるようです。

≪5つの基本原則≫

●原則1 企業は顧客と投資家に資源を依存している

優良経営の企業は得てして顧客要望に即してビジネスを進める、投資家も満足させないといけない。そうなると破壊的イノベーションではなく、既存技術を追い求める意思決定をするのは必然の流れ、新規産業は得てして利益率が低く黒字化にかなり苦労するから(財布が大きくない)。

●原則2 小規模な市場では大企業の成長ニーズを満たすことが出来ない

株式会社としては健全な事業成長が求められ、従業員の働き甲斐・仕事拡大をするのが債務、しかし新規産業は得てして市場が大きくなく大企業が入り込む旨味がない、だから合理的に市場を選択しないというケースが多い。

●原則3 存在しない市場は分析できない

事前の市場調査・顧客インタビューは意味をなさないことが大半

●原則4 組織の能力は無能力の決定的要因になる

「人は組織構造に従う、戦略は組織構造に紐づく」だから組織の有無により有能な人材もすぐにダメになる。経営者が侵すミスの多くは優秀な人材を新規事業のポジションにアサインする、アサインして終わり。それでは健全に人が組織で機能するわけなどない。新規事業・産業にはそれ相応のルール・マネジメントが存在し、既存事業と別軸で評価判断しないことにはスケールしない。

●原則5 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない

オーバースペック・不足するケース共に存在する、そして顧客も正しく商品の価値を定義・理解できないことが破壊的イノベーションの場合は多い。その為に「顧客要望に応えて満足度を最大化⇒取引を最大化して売上・収益性を伸ばす」というビジネスの基本王道が通用しない。

 

≪破壊的イノベーションへの対応の基本原則≫

●資源の依存、実質的に企業は顧客と投資家に支配されている

●小規模マーケットは大手企業の成長需要を満たさない

●破壊的技術の最終的な用途が最初はわからない(一見意味がないことなので成功のセオリーに反する行動となる)

●組織の能力はプロセスと価値基準に依存するがそれが破壊的イノベーションに即さないケースが多い

●技術の供給は市場の需要と一致しないことがある、水準・タイミング共に

 

⇒この問題に対処する為に大きな企業は新規産業に対峙する組織を適切な小さいサイズにし、小さな発見・成功に喜べる・経済合理性を見出せるようにデザインしないといけない。(大企業の新規事業部門を切り離して毛色の違う人で揃えるというのもこの原理から来ています。)

※競合ともうまく折り合いをつけて市場の成長率を上げて、産業全体のキャパシティーを押し上げるようなスタンスで対峙しないと収益性の罠に陥る

ということも示されています。このあたりの考え方は「リーンスタートアップ」やポーターの「競争の戦略」の「多数乱立業界の戦略・先端業界の戦略」の項目の考えを学んでいると想像が広がり、面白く読み解けます。

 

 

【所感】

「自分の対峙するビジネスをどうやって拡大していくのか?」という観点に置き換えて読み解いたのでとても考えさせられることが多かったです。

顧客要望に応えるマーケットインの感覚に囚われると足元を救われる、という示唆はプロダクトアウトの概念でガンガン新しい価値を推進していくことも必要である、というメッセージにも取れて自分の身の振る舞い方も柔軟にせねばと反省した次第です。

製造業の顧客や上場企業の顧客に対峙することも多い自分にとっては、顧客の状態を妄想して芯を食った提案をする為の引き出しを増やす意味でも大事な本だったなと思っています。(四年前にこの概念を学んだ時は活用方法も意味もしっくり来ていなかったので、遠い世界のように思えていましたが実際に活用イメージをもってインプットした今回はとても得るものが大きかったなと。)

ふとこの本を読みながら、「自分の出来る・想像できる範囲を広げること」とあまり現状に変に拘らず、(こうでなくてはならないという概念が強くなる傾向にあるので)自分がやるべきこと・出来ることに注視するして、頑張っていこうと思った次第です。

 

以上です!

次は自分の頭の整理も込めて「競争の戦略」を1年ぶりに再度まとめてみようかと思います。