雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪経営パワーの危機≫

2020年になりました。今年も精一杯頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

今回は三枝三部作の「経営パワーの危機」を要約していきたいと思います。

※三枝三部作(企業経営戦略の要諦を小説形式で学べる本)

■V字回復の経営

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■戦略プロフェッショナル

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「経営パワーの危機」 

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■ジャンル:経営戦略系

■読破難易度:低~中(理論体系のパートが少なく、小説形式で読み進み要所要所に解説が記載されているので読みやすいです。)

■対象者:経営者のリアルな葛藤を疑似体験したい方・経営人材を志す方・事業がどのように拡大するのかに関心がある方・ビジネスの構造について理解したい方

 

 

【内容】

・ある大手企業の投資対象となっている瀕死寸前のメーカーの子会社社長に任命された主人公が経営再建を果たしていき会社を作っていくプロセスを小説形式でまとめた本です。戦略プロフェッショナルで扱っているような企業フェーズよりはやや小さく、どのようにビジネスをなり立たせるか・軌道に乗せていくのかということについて主眼があります。

(僕が所属する事業部のフェーズにはこちらの本の内容が近しいので親近感をわいて読めました。※なお三枝三部作の棲み分けとして扱う事業フェーズは「経営パワーの危機※今回の要約」⇒「戦略プロフェッショナル」⇒「V字回復の経営」の順に大きくなります。)

 

・この本では随所にアメリカと日本の経営の歴史を対比しながら論が説かれています。アメリカでは30代半ばですでに経営の最前線にいて後半くらいから社長になり一仕事を終えることも多いですが、日本ではせいぜい課長がいい処、そうなると責任の範囲・経験の深さに大きな差が生まれる、この経営人材の質・量の差が圧倒的に日本と海外の差になっているということを主張しています。投資家が資本主義では一番儲かる、その紙本を確保するためのお金と資本を用いてお金を生み出す経営スキルを養うためにも早く上流工程を担えるような仕事をしていき市場価値を上げるべきということなのかと。

下記、読みながら気になった項目の抜粋です。

 

■機能別組織⇒事業部制組織へのトレンド推移

・日本の機能別組織は大量生産・市場ニーズの変化が緩やかな時代に発展した最適な経営手法、長期的に導入することで市場を見て仕事をする人材の低下・社内政治の横行・意思決定の遅延などが経営課題として発生して経営人材を育成するのに不向きなモデル、ゆえに事業部制組織が最適ということで90年代以降に導入されるようになる。組織のサイズを小さくして経営者と近くで仕事をするとか意見を求める経験を増やしていくことが経営経験を培うことになる。

 

■特注品・ニッチトップ中小が誕生する市場構造

特注品というのは個別対応になるから費用対効果に合わず大手企業が手を引くケースが多い、それ故にニッチメーカー産業が出来上がるわけだが一方で汎用製品の普及により単価が安い商品があることで個別仕様の製品も安くできないのか?という顧客からの声は出来上がることが増える

⇒競争優位性を磨いていったり参入障壁のある業界に対峙しないでビジネスをしていくと拡販競争の血みどろの戦いになる

※オーダーメイド対応の顧客ニーズにこたえる形式のモノ作りは量産化できないし、とにかくトラブル起こるしビジネスを面や量で拡大できないから、一定規模で成熟化してしまう。それにより組織は硬直化して優秀な人材が入ってこなくなる。大手がやらないところをやる=旨味がないとか手間がかかる

 

■万能に見える事業部制組織のデメリット

①うまくコントロールしないと事業部が経営との意思疎通を取らずに勝手な動きを始める

②本社の管理部門と事業部制の職務重複による非合理の発生

 

■日本とアメリカでの新産業創造の構造的差異

日本はこれまで大手企業の内部から新規産業を作ってきた、一方でアメリカは効率性重視でありスピンアウト・大学発の研究も多い為産業の担い手はベンチャー企業であった、優秀な人材が属するセグメントがそもそも産業の成り立ちから違うということ。アメリカにおいては大手企業は新しい技術をベンチャー企業を買収することで成立させることが多い

上記から産業の成り立ち・政治・社会システムやマネジメントにおける思想を学ぶ意味での哲学などいろんな筋肉を身に着けて洞察力をつけていかないことには意味がないこと個人的な危機意識となりました。

 

■事業を軌道に乗せていくために

・事業拡大の定石は①川下川上など事業ドメインの拡大(既存事業とのシナジー・顧客の親和性)②買収③市場開拓(国内のエリア展開/海外展開等)となる。このあたりの方針が明るいことで仮説検証を出来るようになることで会社を見る目や採用の提言は出来る幅が一気に広がる。

・事業拡大のスピードに合わせた経営陣の増強をしないことにはいずれ会社は破たんする、一人のカリスマが支える経営体制というのは持続可能性がなくマネジメントレイヤーや経営陣が潤沢にならなくなる

 

【所感】

・戦略なき多角化は日本の企業が1980年代に業績拡大を見据えて多くが取り組んだ、それは無駄の増発や組織の肥大化による大企業病を招いたということ。危機感を人為的に創出して課題の解決に真正面から現場社員が向き合う風土醸成というのは経営が関わるべき一つのメッセージです。

・目の前で起きている事象の意味・課題を把握することができるかどうかは経営リテラシー因果律に起因する、そして多くは失敗や挑戦経験から自分の中に内製されるもの。だが、自分の経験だけで獲得していては日が暮れてしまうので失敗や挑戦の疑似体験としてビジネス系の書籍などがあるということなんだと思います。

・1営業担当として目の前の顧客にみっちり向き合うことは勿論これまで通りやるべきであるし重要なのですが、これだけに満足していては「点を追いかけるビジネスマンの領域から脱することはないんだろうな」と危機意識というを抱きこれまでの行いの反省をしながら読み進めていました。

・現場の最前線で顧客に対峙しながらビジネスを作る立場として会社全体・事業全体としてどのように収益を生み出していくのか(コスト・利益率を加味しながら)自分がどんなバリューを出すべきか?というのは考えられないといけないし、そうした現場人材が増えることが経営サイドにとっては最も求められるんだろうなと感じました。もちろん現場での人材育成・自分の立場の後継者を育てていくことも今の立場で必須な責任なんだろうと。

以上となります!!ちょっと抽象的な内容になりわかりづらく恐縮です。