今回は前回に引き続き、競争優位の戦略の第二部を要約していきます。
第二部は収益性を担保するために、業界細分化(セグメンテーション)をどのように行い「自社の競争戦略に反映させていくか」・「どの路線で戦うかを規定する上で大事になる競合分析・ないしは代替品に関する戦略」に関してフォーカスしています。
この手の話は足元の財務形成の所で言うならば3C的な企業分析を精緻に行う上で役立ちます。それと同時に「事業をどのような文脈で磨いていくか」を思考する上でも役立つなーというのが最近の実感です。
ちなみに第一部の要約は下記です。
「競争優位の戦略」
■ジャンル:経営戦略系
■読破難易度:中~高(基礎的な経営学・ロジカルシンキングがないとかなり読むのが退屈になると思います。5フォースの概念だけも理解した上で読むことをおすすめされます。管理職や経営企画、事業開発等の仕事している人にとっては無茶苦茶面白い本だと思います)
■対象者:企業理解・事業部理解の知見を深めたい方・製品やサービスの拡大に関して強い関心のある方・古典的な経営学を学びたい方
※多角化した企業の事業部間連携などにも着目しており、投資などをする人も面白く読めるのかなーと思っていました。
≪選定理由≫
・個社深耕(主に上場企業・製造業)の幅を広げる為(会社理解を様々な側面から出来ないと筋の良い打ち手は広がらないと思っていて、もう少し裾野を広げたい、かつ自分自身が戦略に明るい人材でありたいという個人的関心です)
・会社全体における事業部の位置づけを自分なりに理解し、拡大の為に必要な打ち手を妄想出来るようになりたい(断片的には色々妄想出来るのですが、基礎的な理論の体得がないとさすがに限界が来るなという危機感から来ています)
【要約】
■業界細分化をなぜ行うか?
・業界内で競争優位を生み出すために特定セグメントに切り出して「打ち手を検証・マーケティングの精度を上げる営み」を指します。魅力的なセグメントがわかれば、特定セグメントに対して集中戦略を取ることが出来るようになる上に、魅力的でないセグメントがわかれるのでそこは競合に譲り自社の投資をさけることで高収益体質実現に繋がります。
■業界細分化をする上で留意する観点
・変数として代表的なものは■製品の品種■買い手のタイプ■チャネル■買い手の地理的立地の4つです。この特徴により業界は細分化することが出来ます。
※地域限定や直販代理販売等わかりやすい特徴で細分化するのはあるあるです。
・製品の品質は以下のような観点で細分化出来ます。
■物理的サイズ(クルマは小型・大型などで分類する代表例)
■価格水準
■特徴(技術水準・製造工程の違い・供給業者の違い)
■技術または設計
■使用している資材(例:プラスチックと金属等)
■パッケージング
■性能
■新品需要と販売後もしくは買替需要
■製品と補助サービスまたは設備
■一括販売と単体販売(移動障壁や価値連鎖等に関わる)
・生産財の場合、「技術志向型であるか?垂直統合志向か?」・「買手の戦略は集中・差別化・コストリーダーシップいずれか?・財務力はどれくらいか(価格弾力性に影響する)」等の要素が業界細分化の特徴構成に寄与します。
・消費財の場合、「グラフィック(年代・嗜好性・所得・性別等)やライフスタイル様式・言語・購入目的」などにより業界細分化することが出来ることが多いです。
・チャネルによる分類としては直販/流通業者経由・通信販売/小売り・系列ルート/非系列ルート(大手G等はこの系列の力を受ける)などが一例です。
・買手の地理的要因としては地域特性・気象圏・発展段階などを指し、自動車産業の名古屋集結・電子部品の大阪集結等がわかりやすい例です。
■新しいセグメントの発見
・新たな機能を付与する、ないしは価値連鎖機能の一部を減らしてコストカットするなど様々な方法により新しいセグメントを見出すことが可能です。持続性が高ければ高い程ニッチ産業で競争優位を生むことが出来ます。
⇒こうした観点を基に、一般的に企業は広域戦略ないしは集中戦略を取ります。
(実際は自社が有する強み・KSFと自社親和性・市場の魅力度などを総合的に加味します。)
■集中戦略および広ターゲット戦略の落とし穴とチャンス
・集中戦略を成功させるには競争相手の妥協コストを計算に入れる必要がある
⇒せっかくセグメントを切って集中投資して旨味を刈り取ろうとしたのに、すぐに後発されたりすると競合優位性は持続せず血みどろな戦いに発展します。他社が同じような行動をするのが億劫な要因が価値連鎖の中にあると効果的になります。(真似したいけどコスト観点で割に合わないという文脈)
・業界を細分化する新しい方法を見つけると大きなチャンスになる
⇒誰もこれまで着手していなかった観点で細分化出来るとそこにはブルーオーシャンが広がっていたり、規格を自社で規定することが出来るなどの経済合理性があることが多いです。
・幅広いターゲット戦略は必ずしも競争優位につながらない
⇒コストリーダーシップ戦略を取る面を支配する企業とバッティングする可能性はあるし、多角化する行為に似ているので工数分散してしまう可能性はぬぐえないです。
・広ターゲットの業者はあまりにも多くのターゲットを相手にし過ぎる
⇒魅力的でない顧客も取り扱う必要がありそれはコストを生むだけの場合があったりいろんな顧客の要望に応えようとするあまり何も言っていないに等しい戦略が出来上がることも有ります。
■代替品の見つけ方
・代替品を識別して早く打ち手を打つことは市場戦略として1企業がとるべき重要な行動です。どのように扱うかにより業界の方向性や寿命は規定されます。代替品は製品の形というより製品が顧客へ提供する価値に紐づいて識別するべきといわれます。
※この分析・言語化の秀逸さが市場戦略に大きく影響・同じ業界に属しているのに価値の磨きこみの方向が異なるのは代替品の定義なども影響します。
■切り替えコスト
・代替品が登場しても既存製品よりも上回るメリットを有していないと製品は浸透しません。そのコストを切り替えコストと指し、下記要素が構成します。
■使用量(同じ効用を得る為にかかる量)■輸送及び据付コスト■金融コスト
■価格又は入手可能性の相対的変動(どれだけ手に入れやすいか、価格の弾力性はどれくらいかということです。原材料の仕入れが困難である場合、優れていても安定しないので切り替えコストは高くなります。)■使用の直接コスト■使用上の間接コスト(使用することによる買手の価値連鎖活動全体にどれだけ影響を及ぼすか、コストがかかる負の影響を及ぼす場合切り替えコストがかさみ、なかなか市場浸透しません。)■買い手の実績■機能の数■補完製品のコストと性能■不確実性
■価値の認知(既存製品に比べて市場に理解してもらうのに時間がかかります。時間と共に効果を有するであるとか代替機能があるだとか買手の行動や使用パターンを大幅に変える必要がある場合、価値の認識に時間がかかります)
■代替品の脅威
・5つの観点で判断することが出来ます。
■相対価格の変化(規模の経済や習熟コストの優位性・技術の進化により同じ効果をもたらすための必要資源量が低下することなどにより、段階的にもたらされていきます。製品が市場浸透する過程で従来製品の価格の下げる圧力がかかり、業界全体として低収益体質になるリスクはいつでもありますので取り扱いには注意が必要です。)
■相対価値の変化
■買い手の価値認識の変化(市場浸透が進み時間がたつと、ユーザーが代替品の価値を正しく認識出来るようになってきます。そうなると価値認識が変わることにより、代替品の価値がこれまで以上に評価されるようになると脅威は増加の道をたどります。この壁を超える為に、後発参入企業は大量の広告・マーケティングを投下※BtoBなら営業して認知シェアを獲得するという企業行動を採る会社は多いです。)
■切り替えコストの変化(代替品の台頭により、代替品の価値を買手が認識できるようになると心理的ハードルは下がります。そして仕様・設計変更をするとより一段と切り替えコストは下がります。)
■代替性向の変化(代替品が成功したと市場に認識されると切り替えは起こりやすくなるります。)
【所感】
・このあたりの内容をうまく活用するとなるとPPM分析・3C・4Pといった既存の企業分析の方法を心得ていることが前提条件になると思います。なので、難易度は高いなーと思ながら読んでいました。「あらゆる角度から市場や競合・製品を分析・思考出来るようになることは幅が広がるのだろう」と同時に思っていて、頭の体操・整理としてとても参考になる場面が多かったです
・多角的に事業を運営する会社の場合、事業部毎の位置づけ・全社方針加味して各事業部の方針を予測・設定するということになると思うのでより難易度はあがるのだろうと思いました。少しでも実践活用して筋の良い仮説建て・アウトプットに繋げれるようにしたいと思った次第です。
・この本が著されたのは1980年代ということで、「グローバル化・IT化の波が本格的に到来する前だったのでビジネスの変数が今よりも少ないから出来た」と見て取ることも出来ます。一方で「この程度の内部・外部の変数を考慮して判断・意思決定するということが出来ないと実務応用なんて出来ないのだろうから、少しでも反映出来るように努めよう」と戒めた次第でした。
・個人的見解としてはこうした知見や思考方法は知って、活用繰り返して3か月~半年程度立ちようやくアウトプットに反映されてくる感覚有るので未来の自分の成果に期待して読み進めます笑
以上となります!
次回は第三部の企業戦略と競争優位をまとめます。