今回はクレイトン・M・クリステンセン氏の「ジョブ理論」を要約していきます。
「イノベーションのジレンマ」・「イノベーション・オブ・ライフ」などの著作で有名なクリステンセン氏が消費行動の分析を通じて明らかにした理論を展開していく内容となっております。「狙ってイノベーションを導き出すための効果的な捉え方」としてジョブ理論はマーケティングやプロダクト開発分野への実用を推奨しています。
■ジョブ理論
■ジャンル:経営・IT
■読破難易度:低
■対象者:・イノベーションのメカニズムについて興味関心のある方
・消費行動の因果関係について興味関心のある方
・マーケティング・プロダクト開発・事業開発関連業務に従事する方全般
【要約】
■ジョブ理論とは
・”顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは「片付けるべきジョブの為に商品Aを雇用する」ことである”左記考え方をジョブ理論と呼びます。マーケティングの大家レビットのドリルの穴理論(ドリルを買う人が欲しいのは穴である)に近しい考え方です。
■ジョブ理論のビジネスへの活用方法について
・これまでは顧客が言う顕在ニーズに着目し、ニーズを満たすための製品・サービスを提供していこうという考え方が支配的でした。ジョブ理論は「顧客が製品・サービスを雇用する理由には明確な欲求がある場合は勿論、気怠い問題(お金を払ってでも解決したい悩み)を解決する為という側面もある」点を明らかにしたことが優れているとされます。消費や行動をする場面とその理由に着目して制約条件(時期・場面)特有の行動とその背景にある感情の機微を捉えることで、潜在ニーズや競合(製品・サービスは勿論、無消費という意思決定も含む)を明らかにすることが出来る点が革新的とされます。
・上記思考プロセスは営業・マーケティング・プロダクト開発に大きなブレイクスルーをもたらしたとされ、UXの概念浸透やカスタマージャーニーなどの理論が重要視される現代ビジネスの潮流形成に寄与したとされます。
・顧客価値は機能面だけでなく、社会的感情的な価値もあるので、ジョブ理論のフレームで捉えることで「価値の優先順位付け」や「顧客セグメンテーション進化」などに応用させることが可能となります。
・「身近な生活に潜むペインやジョブを解決する為の顧客体験を提供する手段」としてのソフトウェアアプリを発着点としたサービスが21世紀に一気に台頭しました。これはインターネットという手段を用いて、広範囲にサービスを届けるプラットフォームとして適していた(拡販手段として)為プロダクト開発の中心にUXの概念が据え置かれ、ジョブ理論的なアプローチをすることが連続的にプロダクトの成功を実現する為に、不可避なステップとして定着するようになりました。
■ジョブを発見する効果的な思考方法
・ジョブを発見する為には「お金を払ってでも解決したい顧客の問題(社会的・心理的・物質的悩み)は何か?」・「何が顧客の進歩を促す要因か?」の問いに答えることが有効とされます。購入に至る意思決定プロセス・場面などをヒアリング・データ分析して、潜在顧客を特定するヒントをつかむステップは正に事業開発やマーケティングの思考方法そのものです。
■ジョブを中心とする組織の重要性
・片付けるジョブ起点ではなく、競合や市場成長率や投資家などばかりベンチマークする事業戦略の奔走に陥るとプロダクトの危機に直面します。片付けるジョブを起点にプロダクトビジョンを定義し、忠実にある為に意思決定の分散と資源配分の最適化(顧客価値棄損の起こらない最適な指示命令系統の構築)・従業員の動機付け(大義名分が生まれる)が重要とされます。
・「顧客を取り巻く環境・ジャーニーを可視化し、解決するペインや得たいゲインを明確にすることのステップを怠ってはいけない」ということが教訓的に本書では明示されています。「顧客は誰で価値の優先順位付けはどのようになるか?」という問いから逃げてはいけないのです。
【所感】
・プロダクト開発やマーケティングのヒントとして、顧客の無消費や間に合わせの行動が何かを推察する方法があり、けだるい業務を片付ける為に、第三者に金を払ってでも課題解決を試みるというのが重要な顧客インサイトである点が非常に印象的でした。
・近年、顧客満足度(NPS)やLTVなどの概念が事業/プロダクト開発において重要視されるようになったのは解くべきペインに真正面に向き合うこと(お金を払ってでも解決したい深刻な問題・今すぐ解決したい進歩に作用する問題)を徹底しないと市場から支持されなくなるということなのだなと気付かされました。
・また、本書を読み進める中で「人間の消費や行動・体験の流れを捉え続けてきた自分自身の顧客接点職・組織マネジメントの経験は様々な分野に応用できる知見なのだ」と気付くことが出来た点が面白かったです。
以上となります!