雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪チームトポロジー≫

 

今回はマシュー・スケルトン・マニュエル・パイス共著の「チームトポロジーを要約していきます。価値あるソフトウェアを素早く届けるための適応型組織設計に関する要諦をまとめた本であり、SpotifyNetflixGoogleAmazonなど様々なテック企業で実践されてきたパフォーマンスを引き出すための4つのチームタイプ3つのインタラクションモードで定義し効果的な組み合わせやあり方を論じています。

 

「チームトポロジー

チームトポロジー – 株式会社アトラクタ

■ジャンル:開発管理・組織マネジメント

■読破難易度:中(技術用語・カタカナが非常に多く、最初は面を食らうかもしれません。エンジニアリングやプロダクトマネジメント本を数冊読んでから読むことをオススメします。)

■対象者:・組織と成果物の関係性に関する理解を深めたい方

     ・開発生産性向上・コミュニケーション設計に興味関心のある方

     ・IT組織論のトレンドを抑えたい方

 

≪参考文献≫

プロダクトマネジメント

■要約≪プロダクトマネジメント≫ - 雑感 (hatenablog.com)

ユニコーン企業のひみつ

■要約≪ユニコーン企業のひみつ≫ - 雑感 (hatenablog.com)

アジャイルサムライ

■要約≪アジャイルサムライ≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■本書の問題提起

・システムは進化の過程で複雑性を高めていく性質があり、その中で適切な機能を果たし続けるためにはシステムの設計組織の設計の両輪を回すことが大切とされます。コミュニケーションの必要に応じた組織の設計を行うことが大切であり、システムの設計に準じる形で思考停止で組織を運用するのはまずいとされます。

・明確な責任と境界を持つチームを作ることで、肥大化したシステムが複雑性を前に機能しないといった事態を回避することを狙うことが推奨されています。本書はDevOps(ソフトウェア開発担当(Development)と導入・運用担当(Operation)が密接に協力する耐性)を推奨しており、詰まる所、デザイナー・エンジニア・プロダクトマネージャーなど様々な役割を持った人が集うプロダクト組織の適切なコラボレーションをするための組織体制はどうすれば良いか?という問いに対する解となる4つのチームタイプと3つのインタラクションモードを提唱している本となります。

 

コンウェイの法則・チームトポロジー

システムを設計する組織は、その構造をそっくりまねた構造の設計を生み出してしまうというのがコンウェイの法則ですコミュニケーション負荷や過剰・過少を回避することは開発組織の生産性に直結する問題であり、そのための組織構造の設計というのはバカにならないのです。

・出来る限り効果的なインタラクションをするには継続的な組織設計が必要であり、その営みをチームトポロジーと呼びます。場当たり的なチーム設計チームメンバーの入れ替えは典型的な組織設計のアンチパターンです。適当に組織を組成するのではなく、望ましいビジネスゴール・ソフトウェアアーキテクチャから逆算して狙って認知負荷とサイロ化回避・インタラクション促進をもたらすチーム設計が大事なのです。

 

■4つのチームタイプ

・開発組織における役割別のチームは4つに大別されます。ストリームアラインドチームイネイブリングチームコンプリケイテッド・サブシステムチームプラットフォームチームの4つです。

ストリームアラインドチームシステム開発の最も基本的な組織であり、何らかの文脈に即してユーザーストーリーを紡いでいく役割を担います。ストリームアラインドチームは組織のコア業務を担う役割であり、他の3チームは負荷を削減・補完するなどの役割になります。

イネイブリングチーム新しいスキル・技術の探索およびエコシステムに関する調査・情報提供・初期検証などを担い、ストリームアラインドチームの開発生産性底上げ・補完を役割とします。テクニカルコンサルティングの役割を担い、HRBPやインナーコミュニケーションなどと似たような類の貢献を組織全体に果たします。特定領域のビルド・デリバリー・テスト自動化などを担い、必要なスコープやフェーズに応じて都度組成・解散していくのがイネイブリングチームの是となります。

コンプリケイテッド・サブシステムチームはシステムの中でもスペシャリティの求められるパーツの開発・保守を担います。複雑なシステムに関するストリームアラインドチームの認知負荷を下げることが主な役目となります。不確実性の高い開発工程において密接なインタラクションを行い、安定稼働フェーズになるとコミュニケーション負荷を下げる為に距離をもつというのが一般的な考え方となります。

プラットフォームチームは主に社内向けのシステムや環境構築を通じてストリームアラインドチームの開発生産性を底上げする役割を果たします。セルフサーブ形式のAPI・マニュアル・ツール整備などをしていくことが主な仕事になります。アクセス管理のツール・セキュリティなどの定常業務を下支えする機能に責任を持つことが多いとされます。様々なテクノロジーを率先して試して効果が良さそうであればストリームアラインドチームに実装・生産性向上・認知負荷軽減を担うといった役割をしていくことが多いです。

 

■3つのインタラクションモード

・効果的にインタラクションするモード(コラボレーション・X-as-a-Service・ファシリテーション)は3つあり、それぞれの特徴や向いている組み合わせがあります。

コラボレーションモードイノベーションとすばやい探索の原動だが境界は曖昧という性質を持ち、チーム間が密接に連携して仮説検証・サービスデザインしていく際に有効になります。責任境界を曖昧にしてサービスデザイン・プロダクトマネジメントしていく時などに有効な在り方になります。典型的な使用法は「ストリームアラインドチームとコンプリケイテッド・サブシステムチーム(難易度の高い技術案件を専門に請け負う)」や「プラットフォームチームと共同作業するストリームアラインドチーム」などだ。コラボレーションモードが長期化する時にコミュニケーションが効果的になるかどうかは検討する必要があります。

X-as-a-Serviceモード最小限のコラボレーションで何かを提供受ける関係性を指し、ある程度のイメージがついており、不確実性や期間が短い時に活用する方法です。APIや開発者向けツール・サービスなどをストリームアラインドチームに提供するケースが基本のやり方であり、必要とするコンテキストが少なく済むという特徴を持ちます。このコラボレーションモードは要件やアウトプットイメージが明確であり、細かなやり取りを複数必要としないというものが相性が良いとされます。明確な責任境界のあるオーナーシップが作られ、その一方で1つのチームが複数のチームと同時並行でこの関係性を持つことが多く、柔軟な変更は出来ないケースが多いとされます。プラットフォームチームやコンプリケイテッド・サブシステムチームのアセットを活用して開発生産性やアウトプットに責任を持つストリームアラインドチームなどが典型的なケースです。

ファシリテーションモード能力のギャップを感知し縮小する役割を果たし、イネイブリングチームとストリームアラインドチームの関係性が最たる例です。障害を取り除き、フローを最大化するための支援機能がこうした形をとります。

・3つのモードそれぞれで役割と責任の明確な境界を設けることが開発生産性の観点では大事であり、コラボレーションモードでは豊富なインタラクションと相互の尊重が必要であり、サービスデザインやプロダクトマネジメントの視点を持ち合わせた人材が組織の要に必要になります。X-as-a-Serviceモードでのメンタリティは相手チームを顧客と見なして、UXを尊重するという価値観をもち連携するのが良いとされます。ファシリテーションモードでは助け合うという価値観が大切であり、イネイブリングチームは勿論、支援を受けられる側も相応のマインドセットを持ってインタラクションしないと狙い通りの組織連携にはなりません。何でも常に連結していればいいという訳ではなく、目的や期待役割・責任の境界などを明確に示して都度点検するということが大切なのです。

 

【所感】

プロダクトマネジメントを筆頭に、横断型組織での振る舞いや考え方についてこれまでたくさん勉強してきましたが、知識が一つの線に繋がる読書体験でした。組織設計により狙うべきアウトカムやインタラクションを作りきることの重要性や凄みを認識した次第です。人月の法則にもある通り、「コミュニケーション不全や人を投下したからといってアウトプットは純増する訳ではない」といった命題に対しての解であるように組織設計の奥深さを考えさせられる内容でした。

・リーンキャンバスやロードマップを用いて可視化し、ホリスティックな視点を組織にもたらし横断型組織をリードしていくという基本的な思考法に加えてそもそもの指示命令系統やチーム間のインタラクション・役割を整備するということがここまで大きな差をもたらすことやその影響度合いは製品成果物や生産性に幅広く影響するということが印象的でした。組織設計と戦略策定をセットで考えることが求められるようになってきた自分の役割を加味すると、非常にタイムリーで考えさせられる何度も読み返したい本でした。

 

以上となります!