雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪ブラック・スワン(上)≫

今回はこれまでのジャンルと少し異なり、「不確実性」を扱う理論の本を要約していきます。実証的懐疑主義という哲学や株式投資などに用いられる理論の本です。

翻訳特有の論調であり、非常に著者がシニカルな論調なので独特の読みづらさがありますが参考になります。

 

ブラック・スワン(上)」

 ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質』|感想・レビュー ...

 

■ジャンル:金融・哲学

■読破難易度:低~中 (何か特別な前知識を必要としないので読みやすいです。)

■対象者:・不確実性とリスクの関係性に興味関心のある方・心理学や哲学に関心のある方・株式投資に興味関心のある方・意思決定に関する理論に明るくなりたい方

 

「あり得ないということはあり得ない」これが本書のメインテーマです。不測の事態と呼ばれるような、偶発的な発生確率の小さい事象がどのように生まれるのか・人はどのように認知するのか?ということを取り扱います。

■人間の認知の枠組み

・後付けの論理や少ないサンプル数で帰納法的にこじつけることにより、起こりえない・想定しえない事象(黒い白鳥現象)が生まれるということが説かれます。

・その意味において過剰な知識取得や知識への過剰な期待をするという態度は愚かであると厳しく指摘しています。

■希望的観測

「未来永劫安泰であるという見解や未来は現在の前提が不変であるという基に論証することには何も意味を持たない」ということを著者は主張します。※未来予測や展望予想することはいいのですが、それに甘んじて思考停止に陥りがちで思考停止が黒い白鳥現象を生むという危険性を指摘しています。

■講釈の誤り

パターン認識は情報処理を簡素化・容易化することをもたらす優れた脳のメカニズムですが、それ故に特別変異のような事象を等閑にし想定しないという思考プロセスを助長するということを指摘します。

・一部の強烈な体験や感情を動かされるような一部分の事象にすべての印象や見解が持っていかれるという現象もこのような所から発生しており、愚かな世界の認識の枠組みであり黒い白鳥の温床となると指摘します。

■統計・データの過信

正規分布や回帰分析は優れた統計手法の知見ですが、そうした定量処理が異質なものの存在を等閑にし存在前提で思考や行動することを難しくすると記述されます。

・不確実性を軽く見積もり自分が知っている知見や予測範囲を過剰に重んじる為、計画を立てて実行することが出来ない人が多いという痛切な批判が展開されます。(不測の事態により前提が変わるということを想定した計画が立てられにくいが為に、実行可能性の低い計画が横行ないしは計画がされないということが存在するということです。

 

【所感】

・上下巻構成なので上巻パートはここで終了です。投資やクオンツ等の世界では必読とされるような本ということもあり、読めば読むほど引き込まれていく面白さがありました。論調が少し棘があり好き嫌いが分かれると思うので、そこだけクセがありましたが総じて自分の経験則的にも当てはまる内容ですっきりする内容でした。

「不確実性を認識した上で、ではどのように未来の計画や行動に反映していくかということにおいて知識に頼り過ぎたり思考停止になるなよ、常に謙虚に現実を直視せよ」という激励のようなものなのだろうなと思いました。本書の解釈を誤るとうさんくさい不動産投資などのような論調になるので一定のリテラシーが問われる本ではあるなと思いました。

 

以上となります!

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