雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪スターバックス再生物語≫

 

今回はハワード・シュルツ氏のスターバックス再生物語」を要約していきます。ハワード・シュルツ氏はスターバックス社の成長を牽引した偉大なCEOです。CEO退任後、スターバックス社の成長に陰りが見える中で、2008年頃にCEOに復帰しリーマンショックという大波乱の中で約2年掛りで会社の変革を次々に行い、成長曲線へ再興させていく過程を記述したのが本書です。尚、ちっぽけなコーヒーショップに過ぎなかったスターバックスを大規模企業にまで押し上げたCEO1回目の過程を記述した本にスターバックス成功物語」があります。

 

スターバックス再生物語」

【南場智子・藤田普・村上太一】失敗が学べる経営者の告白本50選

■ジャンル:経営

■読破難易度:低

■対象者:・偉大な会社・事業の変革プロセスを詳しく知りたい方

     ・体験価値に関して興味関心のある方

     ・熱狂的なビジョンを持つ組織作りに興味関心のある方

 

【要約】

■概要

スターバックスは1980年代に一気に拡大したコーヒーストアです。ハワード・シュルツ氏がイタリア半島で体験した「コーヒーを通じた体験価値」をコンセプトにしたブランドマネジメント重視の事業運営方針が特徴です。アルバイト社員にも健康保険とストックオプションを付与し、海外戦略により一気に拡大路線を牽引したのが全盛期の1990~2000年のスターバックスです。2000~2007年は外部環境が変化する中でコアを見失い、顧客価値の探究などもしない中で縮小均衡の危機に見舞われ、2008年に会長であったハワード・シュルツ氏が経営に復帰することで立て直しを図ることになります。

スターバックス社は創業当初から「利益を出しながら社会に支持される持続性を持った会社であること」、「コーヒーではなくそこに付随する購買体験を提供する究極のサービスカンパニーたる」といった方針が明確に定まっていました。ハワード・シュルツ氏には「自宅・職場の次に値するサードプレイスとしてコーヒーストアのポジションを確立する」という大義名分が存在しており、その原点に立ち返る所から変革は始まります。

・本書は5部構成になっており、1部は創業以来一貫してきたサービスポリシー(「モノではなく、体験を売る」・「我々は究極のサービスカンパニーである」etc)に関して、2部は再建をするにあたり「何を続けて(残して)、何を変えるのか?」という問いに対して向き合い葛藤するプロセスに関して、3部は店舗閉鎖・フード販売縮小など痛みを伴う経営意思決定をしながらデジタル戦略・リワードプログラムの構築など変革の先駆けとなる方針を打ち出す過程、4部はリーマンショックの動乱期の中にコミュニティマネジメント・ブランドマネジメントなどの方針を貫いてきたことが芽を咲かせ、リーン制度など次の変革の種になるような変革が生まれるまでの過程、5部はヴィアというブランド名でインスタントコーヒー市場を開拓する様、コーヒー農家とのパートナーシップ、変革成功までの過程をまとめています。

※詳しい内容は本書のダイナミックな記述ぶりを直接読んでいただくほうが面白いと思うので割愛します。プロセスと結論のサマリーが知りたい場合はWikiなどをチェック頂ければわかるので。

 

【所感】

「モノではなく体験を売るのである」・「サードプレイスの重要性が叫ばれる時代が来る」など創業時から先見性があり、変革をする中でも創業から一貫した考え方・方針を一部残しながらデジタル戦略や設備投資を徹底するなどの研ぎ澄まされた意思決定の連続は読んでいて圧巻です。CEOを長らくやってきたからこそのプロダクト(事業)愛強烈なリーダーシップも感じられますが、それでもプロダクト(事業)責任者にも求められるようなビジョンメイキング・コミットメントなのだろうと考えさせられました。

ハワード・シュルツ氏自身がコーヒーをこよなく愛しており、生い立ち故の従業員やコーヒー農家などのステークホルダーを最大限尊重する経営方針の迫力が感じられました。当たり前ですが、「事業は顧客を創造し、雇用を生み出し世の中に影響を与え続けるものである・その影響度の大きさと意味を肝に銘じて日々意思決定せよ」ということのように感じました。

 

以上となります!