今回はJames Kalbah著の「マッピングエクスペリエンス」を要約していきます。ダイアグラムと呼ばれる可視化ツールの効用と代表的なマップの特徴(サービスブループリント・カスタマージャーニーマップなど)を網羅的にまとめた本です。横断型組織をリードする人やホリスティックな視点を持ち意思決定する必要がある人・サービスデザイン・UXデザインに従事する方などは必ず考慮しないといけない観点について事例も交えながら体系化・解説を試みた内容となっています。
■ジャンル:開発管理・デザイン
■読破難易度:低~中(カタカナ用語が多く、最初は読みづらさがあるかもしれませんがサービス企画・デザインに関わったことがある方にとっては非常に馴染み深い内容となります。読み進めると同じエッセンスを繰り返し主張しているだけなのでサクサク読めます。)
■対象者:・サービスデザインに従事する方全般
・横断型組織を率いる方・ホリスティックな視点を組織に宿したい方
・ダイアグラムの成立経緯・特徴・狙いについて理解を深めたい方
≪参考文献≫
■ユーザーストーリーマッピング
■要約≪ユーザーストーリーマッピング≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■サービスデザインの実践
■要約≪サービスデザインの実践 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪サービスデザインの実践 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■バリュー・プロポジション・デザイン
■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫ - 雑感 (hatenablog.com)
【要約】
■アラインメントダイアグラムの重要性
・製品・サービスと顧客が併存する場であるというシステムエコロジーと顧客体験を可視化するというのは専門職能の知見を結集してコラボレーション・対話していく・コトマネジメントしていくための必須のプロセスであり、そのツールの効用や狙いを体系的に学ぶことはプロダクトマネジメントの生産性を大きく引き上げるとされます。部分最適・アウトプット中心ではなく、顧客の視点・顧客中心主義を判断の中心に据えるための御作法として欠かせないです。エクスペリエンスマップは顧客中心主義を徹底することとサービス・プロダクトと顧客接点の対話・デザインに重きをむける効用があります。
・アラインメントダイアグラムは作成プロセスを通じてホリスティックな視点や顧客の世界に共感する・部分最適を未然に防ぐなどのコミュニケーション上の秩序を構築する効用があるとされます。焦点を定めて優先順位付けや組織のビジョン・ミッションを炙り出すといった副次的な作用もあります。アラインメント(連携)の原則は全体主義・多様性・インタラクション・可視化・自明・該当性・正当性などの要素があるべきとされます。継続的な改善・適切な焦点を組織全体に促進するので、面倒でも作成し運用し続けることが戦略と同じくらい効果的なコミュニケーションツールになります。
■マッピングのプロセス
・開始→調査→マップの制作→活用という4つのステップを経てエクスペリエンスマッピングがなされます。デザイン思考同様、マッピングプロセスは顧客の解像度を高め、共感し仮説を探索するものであり、そのプロセスそのものに意味があるとされます。コラボレーションや共通の方向を導き、優先順位付けとアウトカム・ビジョン重視の文化を根付かせることが大切になります。
・マッピングのプロセスにおいてはユーザーの動態・制約条件・価値基準に関する「なぜ」・「どのように」の解像度を高めることが重要度の高い開発テーマやビジョンを炙り出す為に欠かせないです。面倒に見えても網羅的に記述・推察することが最短ルートになり、手を抜いてはならないステップとされます。また、アラインメントダイアグラムの要諦はビジュアルデザインではなく、ヒアリング・洞察したことを言語化・ストーリーにまとめることであるとされます。ダイアグラムの代表的な型は時系列・階層・ネットワークなどの切り口があるとされ、頻出はワークフロー・時間軸のラインで洗い出し、感情や行動・課題・事実を列挙するプロセスを踏むことが多いとされます。
・作成したダイアグラムは既存の顧客体験⇔理想の顧客体験を比較・図示化して、開発上の論点やアジェンダを精査・ロードマップの形で優先順位付け・効果測定・施策検討するためのKPIツリーという形の業務に連動していきます。ペルソナやストーリーボードを用いて、どんな方向に顧客体験やサービスデザインをシフトすると良いか?という問いに対する共通認識を揃える・会話することが大切です。どんなストーリー展開かという時間軸の視点を持って行動・感情・思考を描いていくということを横断型組織に宿すのもマッピングプロセスにおける価値となります。
■主要ダイアグラムについて
・顧客体験は満足度・利用率・LTVにじわじわヒットするものであり、デザインを意識されてこなかったのが20世紀のビジネスです。デジタルプロダクトの発展と共に、顧客とプロダクトのタッチポイントのデザインは顧客体験に大きく寄与するようになりました。そんな中で最初に発明されたのがサービスブループリントです。サービスブループリントはサービス提供の流れを図示化・ユーザーの行動が時系列に記載されており、それを提供する事業サイド側の各部門の具体的に行う行動・果たす役割・部門間の関係性を図示化するというものであり、価値交換が行われるタッチポイント(接点)がどこであるかを明確にする効果があります。サービスブループリントは表舞台のインタラクション・裏舞台のインタラクションを明確に分けている点が良いとされます。
・カスタマージャーニーマップは顧客の利用体験を時系列の変遷で記載し、そこに伴う心理や行動・制約条件・事業サイド側の打ち手の方向性を洗い出すというものであり、サービスデザイン・UXデザインの標準的なツールです。顧客セグメントや顧客との接点手法・販売チャネルなどを明らかにしていくことは開発アジェンダの優先順位付けなどにヒットしてくるとされます。
・エクスペリエンスマップ・メンタルモデルダイアグラムはカスタマージャーニーマップの応用系で、どんな顧客セグメントのどのような価値観にフォーカスするかということを意識して図示化しているものであり、プロダクトマーケティングやプロダクトマネジメントではよく行う技法です。空間マップは人の経験を空間的に表したダイアグラムであり、顧客への共感に重きを置いています。
・アラインメントダイアグラムは作成プロセスを通じてホリスティックな視点や顧客の世界に共感する・部分最適を未然に防ぐなどのコミュニケーション上の秩序を構築する効用があるとされます。焦点を定めて優先順位付けや組織のビジョン・ミッションを炙り出すといった副次的な作用もあります。アラインメント(連携)の原則は全体主義・多様性・インタラクション・可視化・自明・該当性・正当性などの要素があるべきとされます。継続的な改善・適切な焦点を組織全体に促進するので、面倒でも作成し運用し続けることが戦略と同じくらい効果的なコミュニケーションツールになります。
【所感】
・サービスブループリントがダイアグラムの根幹をなし、エッセンスが詰まっているということを再認識させられました。カスタマージャーニーマップは日々業務でも頻用しているのですが、ワークフローの可視化・標準フローの設定などを考慮する上ではサービスブループリントは非常に有用であるなと感じその奥深さを考えさせられました。
・ホリスティックな視点と顧客への共感を横断型組織に宿し続けるただその一点のためにアラインメントを作成・日々のコミュニケーションの中心に据えるということが如何に大切かを再認識しました。ロードマップ・KPIツリーも然り、プロダクトの世界におけるコミュニケーションとコトマネジメントを効果的に進めていくための標準的なお作法が如何に有用かということを感じ、これを日々の業務で実践していかない手はないよなと考えさせられました。
・本書は実践をする中で定期的に読み返していく類の本と認識しており、参考文献記載の「サービスデザインの実践」・「バリュー・プロポジション・デザイン」同様、定期的に読み返し思考を整理するための格好の教材であると認識しました。実践あるのみです。
以上となります!