今回は半年に1度まとめている「読んで面白かった本シリーズ」です。
2023年下半期に続き、主にプロダクトマネジメントとUXデザインを軸足に勉強しながらエンジニアリングやマーケティングにも手を出した半年でした。古典は社会科学全般(経済学・哲学・法学)を満遍なく勉強しました。幸いなことに横断型組織でホリスティックな視点を必要とされる場面が仕事において多かったことがあり、直近半年に勉強した土地勘を活かしてコトマネジメントとヒトマネジメントのバランスをとる場面も多く良い勉強サイクルが出来たなと感じました。
※参考※2023年下期まとめは下記
≪下期総集編≫2023年度に読んで面白かった本8冊 - 雑感 (hatenablog.com)
≪目次≫
・LEAN UX
・LEAN Analytics
・LOVED
・誰のためのデザイン?
・アジャイルサムライ
・アート・オブ・プロジェクトマネジメント
・リーダーの作法
・ペルシア人の手紙
・賃労働と資本/賃銀・価格および利潤
・経済学史 学説ならびに方法の諸段階
「LEAN UX」
≪要約≫
■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・Eric Riesシリーズエディタの1冊であり、LEAN UXキャンバスと呼ばれるプロダクト開発におけるフレームワークを用いた効果的な開発手法・コミュニケーションマネジメントについて体系的にまとめた本です。サービスデザインやデザイン思考などについても勉強しましたが、突き詰めると実務応用性が最も高いのは本書のフレームワークと価値基準だなというのが現時点の結論です。
・プロダクト開発・UXデザイン過程において「何かあった時に立ち返る重要な問いに対する解を記述して一枚絵にしたもの」がLEAN UXキャンバスとなります。具体的にはビジネスプロブレム・ビジネスの成果・ユーザー・ユーザーの成果とメリット・ソリューション・仮説・学習項目・MVPと実験計画の8つのボックスです。一部の箇所を端折り、プロダクトの価値定義・仮説検証をするなど文書化・図示化プロセスでよく参照したプロセスだったなと思います。横断型組織でプロジェクトワークをする人全般におすすめしたい観点が盛り込まれています。
「LEAN ANALYTICS」
≪要約≫
■要約≪LEAN ANALYTICS前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪LEAN ANALYTICS後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・EricRiesシリーズエディタの1冊であり、構築・計測・学習における「計測」にフォーカスした内容となっております。本書はソフトウェアプロダクトの代表的な6つのビジネスモデルを例に挙げながら、「プロダクトグロースを志向していく中でいつ・どんな指標を測定・活用すればいいか」の理論枠組みおよび具体的なプロダクトマネジメントの方法にまで言及します。
・社内向けプロダクト開発~オンボーディング~グロースを一気通貫でリードする役割を担った際に非常に参照した本であり、プロダクト開発は勿論、事業企画やマーケティング担当者にもお勧めしたいといえる観点が豊富に盛り込まれている本です。
「LOVED」
≪要約≫
■要約≪LOVED 市場を形作り製品を定着に導くプロダクトマーケティング≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・日本では珍しいプロダクトマーケティングに特化した本です。製品を市場に投下し、PMF・グロースしていくGTM戦略における要諦やステークホルダー(デザイナー・ビジネス・エンジニアなど)との関わり方について体系的にまとめられています。
・プロダクトフェーズ毎に、プロダクトの価値をどのように定義するか・どのチャネルを用いて顧客・市場と対話するかの考え方を体系的にまとめている本で、テクノロジー業界のマーケティングのバイブル的存在である「キャズム」・「トルネード」と合わせて読むと非常に勉強になると思います。
■キャズムver2
■要約≪キャズムver2≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■トルネード
■要約≪トルネード≫ - 雑感 (hatenablog.com)
「誰のためのデザイン?」
≪要約≫
■要約≪誰のためのデザイン?前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪誰のためのデザイン?後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・認知科学者によるデザイン原論をまとめたデザイン分野の古典です。本書を起点としてプロダクトデザイン/インダストリアルデザイン・デザイン思考などが大きく発展したとされており、サービス・ソフトウェアプロダクト主流の21世紀のビジネス潮流を捉えるには不可欠の概念が散りばめられています。特に後半の「ビジネスにおけるデザイン原理」・「デザイン思考」のパートが大変勉強になりました。
・デザインは行動経済学・心理学・人間工学など様々な学問領域の知見を融合する営みであり、プロダクト分野の必須概念として名高いです。しかし、本書を読んだ所感としては営業やマーケティングの経験をもってすれば比較的理解しやすいなと改めて考えさせらました。
「アジャイルサムライ」
≪要約≫
■要約≪アジャイルサムライ≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・アジャイル開発の古典と名高く、エンジニアリングは勿論、プロダクトマネジメント・UXデザインを学ぶ上でも重要視される内容です。エンジニア向けですが、ほとんどの項目はコーディングが出来なくても読むことのできる内容になっています。
・顧客中心主義・継続的に仮説検証を行うなどプロダクトの世界特有の感覚が細部に散りばめられた内容になっており、デザインやプロダクトマネジメントの理論やフレームワークに関する解像度も深まる非常に読み応えのある内容でした。顧客に価値あるものを届けながらビジネス目標を見たすような課題解決・ソリューション開発を心掛けるというバランス感覚・優先順位付けが何より大切であるということを考えさせられる内容であり、改めて様々なこれまでに行ってきたプロジェクトワーク・サービスデザインプロセスに関して顧みる格好の機会となるような内容でした。
「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」
≪要約≫
■要約≪アート・オブ・プロジェクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪アート・オブ・プロジェクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・マイクロソフトで様々なプロジェクトをリードしてきた著者があらゆるプロジェクトマネジメントに通じる要諦をまとめた本です。プロジェクトマネジメントの計画・スキル・マネジメントの技法と広範囲な内容を盛り込んでおり、歯ごたえ抜群ですがプロジェクトマネジメントの基本を抑えるには格好の一冊と言えます。
・様々なプロジェクトワークをする中で自身を顧みるように本書を読んだことで国際規範を学べると共に自分のプロジェクトワークのスタイルやこれまでの経験の特異性なども浮き彫りになり、よかったです。
「リーダーの作法」
≪要約≫
■要約≪リーダーの作法 ささいなことをていねいに≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・Netscapeでマネージャー・Appleでディレクター・Slackでエグゼクティブなど様々なテック企業で長年マネジメントに従事、リーダーシップを発揮してきた著者が各階層別に自分が大事であると考えてきた哲学・仕事の進め方を30のエッセイにわけて記述した本です。ピープルマネジメント・コトマネジメントバランスよく記述があり、オライリー・ジャパンシリーズの本ですが非テック企業の人にも非常に参考になる事例が豊富に記述されています。
・マネジメント分野の本は様々読んできましたが、実践知をベースに記述してあるものや追体験を促す仕立ての本は定期的に読み返して血肉になるので良いよなと再認識させられました。
「ペルシア人の手紙」
≪要約≫
■要約≪ペルシア人の手紙(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪ペルシア人の手紙(下)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・法哲学で有名なモンテスキュー三部作の一つです。「ペルシア貴族が中東~ヨーロッパを旅しながら見た出来事・感じたことを知人・友人宛に書簡にしたためて言語化するという体を通じて、中東社会・ヨーロッパ社会を評論・風刺する」という内容です。
・「ローマ人盛衰原因論」・「法の精神」にも通じるモンテスキューの一貫した主張・理念が手を変え品を変え展開されており、他作品の理解も深めながら読める非常に楽しい内容でした。法による支配・公正公平さを社会全体で担保することの大切さなどが主題であろうということが理解できました。
※個人的にはイェーリングの「権利のための闘争」と本書を合わせて読むと非常に考えさせられるのでオススメです。
■要約≪権利のための闘争≫ - 雑感 (hatenablog.com)
「賃労働と資本/賃銀・価格および利潤」
≪要約≫
■要約≪賃労働と資本≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪賃銀・価格および利潤≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・マルクス経済学のエッセンスを平易な言葉で論じた本です。2冊とも主著「資本論」への最良の入門書として名高く、マルクスが19世紀にマルクス経済学の原理原則を労働者向けにわかりやすくパンフレットに記載した内容をまとめた本です。資本主義経済を批判的に分析・考察する意味においてはマルクス経済学・社会主義/共産主義思想は避けて通ることが出来ず、考えさせられる内容です。
・非常に極端な思想の代表例とされるマルクス経済学や社会主義思想ですが、その主張の根源や是とする価値観を理解することは柔軟な思考を巡らせる上で不可欠と考えており、的を射ている内容もあるなと感心させられた内容でした。前知識不要で読めるかつ賃金労働者であれば多かれ少なかれ考えたことのある概念に関する問題提起や論証もあるので面白く読めるかと。
「経済学史 学説ならびに方法の諸段階」
≪要約≫
■要約≪経済学史 学説ならびに方法の諸段階≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・景気循環論を提唱したことで有名なシュンペーターがマックス・ウェーバーと共に社会科学全般を体系化する過程で、経済分野の学説の歴史・発展段階をまとめた本です。
・経済学の発達経緯や他学問との関係性・そもそも経済学は科学たりえるか?といった論証から始まり、古典派経済学・ドイツ歴史学派・限界効用理論(ミクロ経済学)の3分野の潮流をまとめた構成となっております。これにマルクス経済学・ケインズ経済学(マクロ経済学)を組み合わせると大まかな経済学説の歴史を捉えることができるといった具合の超大作です。元経済学部生の自分としては非常に読み応え抜群・過去の学びを思い返すような内容となっており、歴史と学問の偉大さに感嘆する次第でした。
まとめは以上となります。
約1年近くプロダクト分野の名著を読み進めてきたことで土地勘がつき、関連概念や理論を体系立てて理解、実践できるフェーズに進化したことは非常によかったなと感じております。期待役割が変化していく中で自分をアップデートしていく必要に迫られており、これからも異質なものを取り込んで実践し変革を牽引できるような人材に成長していきたいと考えた次第です。