雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪TRACTION トラクション≫

 

今回はガブリエル・ワインバーグジャスティン・メアーズ共著の「TRACTION トラクション スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル」を要約します。オライリーシリーズの1冊で、ラクションと呼ばれるビジネス・プロダクトグロースに欠かせない集客経路を代表的な19のチャネルからどのように見出だすか?という観点で考察した本です。スタートアップがGTM戦略を描き、PMF実現・キャズム超えを果たしていく中で連続的に顧客・市場開発をしていく必要がありますが、その為に避けて通れない顧客開発・マーケティングマネジメントにフォーカスした珍しい本です。

 

「TRACTION トラクション」

O'Reilly Japan - トラクション

■ジャンル:開発管理・マーケティング

■読破難易度:低~中(様々なプロダクトの事例を基に各チャネル具体的な業務や抑えるべき観点をわかりやすく記載しており、読みやすいです。マーケティングorプロダクトマネジメントの理論に明るいと非常に学びになります。)

■対象者:・顧客開発・マーケティングマネジメントに従事する方

     ・代表的なチャネルの性質について理解を深めたい方

     ・仮説検証の切り口・事例に興味関心のある方

 

≪参考文献≫

■LOVED 市場を形作り製品を定着に導くプロダクトマーケティング

■要約≪LOVED 市場を形作り製品を定着に導くプロダクトマーケティング≫ - 雑感

■リーン顧客開発

■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感

キャズム

■要約≪キャズムver2≫ - 雑感

 

【要約】

■トラクションとは

・本書のミッションはスタートアップ創業者40名のインタビューを通じて、ビジネスを急拡大させるための要素、トラクションを19のチャネルから掴んでいるという法則を論じることです。トラクションとはビジネスを物凄い勢いでスケールさせるための要素、KSFに近しいものです。複数のチャネルをコストリスク持たずに試して、並列で評価してベストなチャネルを選定するプロセスを経るのが成功するスタートアップの傾向とされます。尚、19のトラクションチャネルはエンタープライズ・コンシューマーいずれのビジネスでも有効とされます。

 

■トラクション獲得計画

・スタートアップ企業はプロダクトがPSF(Problem Solution Fit)して終わりではなく、ビジネスとして成立し、継続的に拡大路線にならないとプロダクトマネジメントする上では失敗になります。その為、顧客を定義してチャネルを選定するなどのGTM戦略はプロダクトコンセプトを構築するのと同じくらい大事になります。チャネル選定は複数洗い出し、テストして優先順位付け(費用対効果・マーケットポテンシャルなどを推定)していくという手順を面倒がらずにやることがトラクションを抑える上では避けて通れないプロセスとされます。

・リーンキャンバスを用いて、ロードマップでアジェンダを優先順位付け・進捗モニタリングするはよくあるプロダクトマネジメントの手法ですが、製品開発とトラクション獲得を並行しないというのがよくあるスタートアップの失敗とされます。

それくらい顧客を見つけて、収益が継続的に上がる仕組みを抑えることはビジネスとして成立するのが急務なスタートアップフェーズにおいては重要なのです。ファネル分析をしてどこの歩留まり、量を上げることが現実的か見込みがある仮説検証テーマはどこかなどを探索していくのが有効になる。これはマーケットポテンシャルや投資獲得を仰ぐ際の確からしさにヒットしてくるものであり、顧客開発は製品開発と同じくらい優先度の高いテーマであるということを忘れてはならないのです。製品に対する本気のエンゲージメントが存在するかどうかを見極めることがスタートアップの初期に果たすべき最大の検証観点とされます。

 

■トラクション獲得テスト

・チャネルは時間経過と共に必ず陳腐化して凡庸なCVRやポテンシャルに辿り着く運命にあります。その意味において、複数のトラクションを継続的にテストしてプロダクトライフサイクルやマーケット構造に即して変容・移行し続けることがビジネスとして成立・拡張(≒投資獲得を受け続けられる)ことに寄与するのです。コストリスクだけ最小限におさえて、学習し結論を出していくというエフェクチュアルな態度がトラクション獲得テストには求められます。

コホート分析ファネル分析でスモール検証をし、ある程度確からしい仮説が見えてきたところで、重要仮説を確かめるためにABテストを行い、トラクションを捉える・チャネルの絞り込みをするというのがよくあるやり方になります。最後に複数のチャネルをLTVCPA(顧客獲得単価)を基に比較検討して、トラクションを見定めるのが一般的な流れです。

 

■19のトラクションチャネル

・本書で言及されるトラクションチャネルは下記19となります。

バイラルマーケティング・PR・規格外PR・SEM・ソーシャルディスプレイ広告・オフライン広告・SEO・コンテンツマーケティング・メールマーケティング・エンジニアリングの活用・ブログ広告・ビジネス開発(パートナーシップ構築)・営業・アフィリエイトプログラム・Webサイト/アプリストア/SNS・展示会・オフラインイベント・講演・コミュニティ構築

・ビジネスモデル×ライフサイクル別に適切なトラクションチャネルは異なるものであり、低予算で複数のチャネルを検証するという態度が欠かせないとされます。また、顧客は誰でどんなジョブを解決するプロダクトか?という根本的な問いに立ち返り続けることもトラクション獲得の為には大切な視点とされます。チャネルマネジメントを効果的に描く戦略がGTM戦略に直結します。

 

【所感】

・顧客開発・マーケティングチャネルに特化した珍しい本でしたが、これまでに学んできたプロダクトマネジメント・テックマーケティングなどの知識が有機的に結びつくような発見が多い内容でした。様々な関連分野の書籍を読み理論を抑えた上で読むと非常に考えさせられ、学びが深くなること間違いなしです。

・プロダクト作りやソリューション・デザイン開発に視点が偏りがちですが、顧客を捉えプロダクトがビジネスとして継続的に成長していく道筋を描くということが基本にして最大であるということを気づかされるはっとした内容でした。マーケットポテンシャルやEBITDA・キャッシュフローの確保があって、ロマンやプロダクトビジョン・ロードマップがあるという当たり前を痛感することが多い自分にとって非常にタイムリーなテーマ感の本でした。

 

以上となります!