雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪リーン顧客開発≫

 

今回はエリック・リースシリーズの「リーン顧客開発」を要約していきます。リーンスタートアップで有名なシリーズの一冊であり、お金を払ってでもプロダクトを雇用して課題解決を試みる顧客を捉える為の見込み顧客へのインタビュー・仮説検証~MVP開発~ロードマップへと展開していくステップにおける方法論を体系化した本です。プロダクト開発は勿論、営業戦略やマーケティング分野にも通じる内容となっております。

 

「リーン顧客開発」

■ジャンル:開発管理・マーケティング・IT

■読破難易度:低

■対象者:・ヒアリングスキル・ユーザーインタビュースキルに興味関心のある方

     ・見込み顧客の解像度を高めるための方法論を学びたい方

     ・マーケティング・プロダクト開発に従事する方全般

 

≪参考文献≫

■ジョブ理論

■要約≪ジョブ理論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

プロダクトマネジメントのすべて

■要約≪プロダクトマネジメントのすべて 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪プロダクトマネジメントのすべて(後編)≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■エンジニアリング組織論への招待

■要約≪エンジニアリング組織論への招待≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■なぜ顧客開発が必要なのか

・製品やサービスが優秀であろうと、そこにお金を払ってでも問題を解決したい・欲望をえたいというニーズを抱える顧客が存在し、効果的に接点を持てる方法が科学されていないと製品・サービスはビジネスとして成立しません。顧客開発の視点はプロダクト開発は勿論、マーケティングやセールスにも通じる視点です。

・顧客開発と製品開発は似て非なるもので、顧客開発製品・サービスのコアとなる顧客とその顧客価値を定義する為に行われます。「購買してくれる顧客がどこにいて、その顧客の為にはどの価値を優先的に開発するべきか」を明示的にすることが顧客開発であるとされ、事業開発の主な仕事内容に含まれることになります。

・人間は仮説の決めつけ・思い込みを強めようと情報収集する癖があり、それを確証バイアスと言います。顧客インサイトを捉える時は勿論、仮説を設定・検証する際にも認識しないといけない視点です。一見遠回りに見えますが、顧客のワークフローやジャーニーを捉えて、様々な知見に触れるのが芯を食った問題解決の為に避けて通れない手順とされます。顧客開発は市場選定価値の優先順位付けなど初期の構想段階で重要であり、その意味においてプロダクトマネジャーの職務に含まれます。

 

■顧客開発を行う上での重要ポイント

・顧客に関する課題仮説を立てて、どこから解くかというのは事業/企業がどの成長フェーズにいるかにより異なります。即ち、イノベーターアーリーアダプターアーリーマジョリティーレイトマジョリティラガードプロダクトライフサイクルにより、想定顧客の属性・ボリュームゾーンが異なる訳で「誰のどんな課題」を解くかはビジネスとして成立するかどうかに大きく寄与します。

・初期仮説を立てた後は見込み顧客へのインタビューを通じて仮説検証を行います。インタビューは課題に深刻に悩んでおり、自身で解決策を試みている人(エバンジェリストユーザー)へお願いするのが有効とされます。「他者を助けたい」・「他者から賢く見られたい」・「問題を解決して進展させたい」という3つの人間の社会的な動機を刺激するという意味でユーザーインタビューは効果的とされます。

・一般的に、顧客は自分が何に困っているのか・何を求めているのかを正確に把握していることはほぼないというのが事業開発で抑えておくべき大原則です。顧客は何等かの制約条件があり、その環境下でやり繰りをしておりそれが顧客の課題やニーズのヒントになるケースが多いです。だからこそ、顧客の場面行動心理の変化を抑えることが有効とされます。インタビューする際に抑えなくてはいけないのは「顧客は過去の失敗体験や試行錯誤の過程を披露しない・「顧客は自分自身の認知スキルやキャパシティを自ら披露はしないという点です。これらを行動や心理の変化などの因果関係から見出すということが事業開発・プロダクト開発においては重要になります。

 

【所感】

・「顧客が述べる課題は深刻で解決したいのか・ただの願望ではないか?」と批判的に検証を進めていくことが有効であるという節が非常に印象的でした。営業職に従事していた自分にとっては感覚的に理解していた内容を理論立てて説明されておりすっきりしました。本書記述内容について、全体感は方法論や具体的な進め方に関する記述が多く、プロダクト開発における具体的なチームでの検証ステップや抑えるべき観点などが明瞭に記述されておりイメージがわきやすかったです。

・「顧客がプロダクトやサービスを利用するのはどのような制約条件で、その時の心理や行動はどのようなものか」・「何を解決する為にプロダクトを雇用するという意思決定をしているのか」を仮説検証することはプロダクト開発は勿論、マーケティング営業戦略における要諦であると改めて感じた次第です。

・直近半年の自分は事業開発・プロダクト開発に関して全く土地勘がなく困っていましたが、クリティカルシンキングステークホルダーマネジメントなどのベースのお作法を固めることやこれまでに従事してきた業務内容や知見の応用、専門領域の知識を集中インストールして土地勘をつけるという3つの形式で克服していこうという明確な道筋が本書を読んで見えてきた感覚を持ちました。しばらく事業開発/プロダクト開発領域に関する本を集中的に読み込み、勝手を得たいと思います。

 

以上となります!