今回は会計に関わる本を要約していきます。
経済学部出身なので大学時代に基本的な理論体系は学んでいたのですが、当時の僕には「これがどのように使うのか・意味があるのか」を想像する力がなかったのでしっくりこなかったのを覚えています。今となっては物凄く無駄な時間の過ごし方をしたな、と反省して昨年暮れくらいから会計について学びなおしていました。。
「MBA アカウンティング」
■ジャンル:会計
■読破難易度:中(一部間接部門向けに目標・命題設定のプロセスを延々と記載しているパートがあるので少々読みづらい所があるかもしれません。法人営業に従事する方でしたら自分のクライアントの決算諸表を片手に読み込むとかなりイメージがわきやすいかと。)
■対象者:会計に関して体系的な理解をしたい方・数字に強くなりたい方・法人営業・間接部門としての仕事の幅を広げたい方・経営に関わる考えに明るくなりたい方
毎度お馴染みのグロービスシリーズです。
グロービスのテキストは題材を議論することに真の意味があると思うのですが、読み物としても体系的に理論がまとめられていて便利です。財務会計・管理会計の2部門で構成されており、ありがちな仕訳方法などを延々と記載しているというよりも会計をどのようにビジネスの現場で活用するのか?にかなり意識をして記述されているので活用イメージがわきやすいです。
※財務諸表の読み方について簡単な入門書を読み、上場企業の決算書を10社程読み込めばこの本が言いたいことの根底の思想は掴めると思います。読む前にやることを推奨します!!
【要約】
■財務会計の基本
ストック(貸借対照表)・フロー(損益計算書)・フローの内訳(キャッシュフロー計算書)の3指標を読み解くのが財務会計の基本原則
※元々消費者・顧客要望ニーズは市場の高まりとともに近年更に上昇しており利益率は低下しているのが市場全体。いかに美しい市場選定・ビジネスモデル・収益構造を作るのかは精神論抜きに必要
■国際会計と日本の会計制度の思想的な違い
①投資家重視の情報開示のスタンス(市場から資金を調達することをメインにしている、一番責任を取らない投資家が一番資金調達源であるから投資家に優しくあれということ)
②ストック重視(日本ではフロー重視であった、投資信託的な考え方に近い、単年で収益を出せると限らないし近視眼的なのはよくないという思想。)
③純利益重視(投資家への還元を大事にしているから。とはいえわかりやすい成果を出せているかを見ている気概の現れ)
■経営の実態を見抜く
費用の内訳をみることでどこに費用を投じているか(広告・研究開発・販売代理等)がわかり会社の方針・同じ業界でもどこで収益を作っている・強みがあるか(つまり研究開発に強みがあるのか販売促進がうまいのか・利率が優れているのか等の経営のテコがわかる)がわかるようになる
ROA=経常利益/総資産(BS・PLの掛け合わせで導き出す)・ROE=当期純利益/自己資本(BS・PLの掛合わせ)
⇒この指標により経営が持続的に効率的になされているかを比較検討するようになったのが近年の潮流。
ROAを上げるためには売上利益率を上げるか資本の回転率(薄利多売戦略)のいずれかを取る必要がありトレードオフにある。
※企業の戦略により注力指標(ROI・自己資本比率など何を大事にするか?)が異なる。
ROEを上げるには売上高当期純利益率を上げる・総資産回転率・財務レバレッジを向上させる必要がある(近年成熟した日本で重要視されてきた指標)
※日本の上場企業の平均ROEは9%・即ち10%を超えていると有意に付加価値を生み出せているといえる
■どの立場から会社を見るかにより大事なポイントは異なる
<経営者が着目するポイント>
・収益性・利益率・現金を生み出す力等事業フェーズによるが大まかには稼ぐ力全般
<従業員が着目するポイント>
・待遇・組織風土などの定性面
<株主が着目するポイント>
・ROEに代表される投資対効果・メリットがないと投資判断の材料にされない。
<取引先が着目するポイント>
・現金を回収できるか、即ち事業の安定性・資産・負債のバランスなどを見る
■管理会計の基本
固定費がかかるビジネスは経済活動が止まった瞬間に費用が重くのしかかる、常に回転率を高めていかなくてはいけなく販売・流通などに一定費用をかける必要が出てくる。一方で変動費とは生産量や販売量に比例して金額が変化するものを指す。
※人材紹介のビジネスモデルやリクルートのリボン図が秀逸なのは固定費のような在庫を持たないことにより黒字化をすることが非常に容易なビジネスモデルを形成出来ている所にあると思います。
■ABC(活動基準原価計算)
活動基準原価計算とは従来の大雑把な原価計算では対応できないビジネス環境を鑑みて生み出されたもの。複数の製品を有し、市場は国内海外問わない、ハードウェアからソフトウェアへ産業の主軸はシフトしている等の影響が強い。
即ち「製品ごとの収益構造を見る為にビジネスプロセス別にかかる費用を分析・可視化することで損益分岐点を見に行ったり収益構造の変革を図ること」を指す。
※ABCはコストダウンの分析に有効であるとともに業績評価をすることを容易にする、これによりKSFがわかりそこに対しての重要アクションが決まるので、査定項目等に設定することが出来るようになる。そして成熟期の製品ほどこのABC分析を行うべきである。というのは顧客の目が肥えて取引も横ばい、その中で勝ち筋を生み出したり競争優位性を維持するためにはどこに手をつけるのか?というのは絶えず行うべき事象
⇒このあたりの思想はポーターの競争戦略に近しいです。
■短期的意思決定
定量的分析(コスト観点)・定性的分析(競争優位性等①コストリーダーシップ戦略②差別化戦略③集中戦略)の2面で会社は意思決定を行っていく。
※補助ツールとしてポーターが提唱したバリューチェーンモデルがある。主活動の「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」と支援活動の「調達」「技術開発」「人事労務管理」「全般管理」の二軸で分析する
■予算管理とコントロール
予算とは経営が描くビジョンを具現化したもの、予算方針にはトップダウンとボトムアップがある。トップダウンは適切な目標設定がされるものの現場がノルマのように認識をして内発的動機付けを阻害する、逆にボトムアップはボトムアップで現場が負荷を感じないような甘めのものを設定したり経営の意向を誤る可能性がある。
この折衷案として大まかな枠組みはトップが決めて詳細は部門間の連携踏まえて現場で設定・突合するというのが一般的な企業の予算策定のプロセス。
※アメリカは非常に予算管理が厳しく月次での設定・日本やイギリスは四半期単位の設定が多いという。
★総合予算=経常予算(売上や収益構造等足元の資金繰りに着目する)+資本予算(投資や設備がどの程度効率的に機能しているかに着目)の2軸で構成される。
【所感】
自分の法人営業としての幅に限界を感じて、昨年末くらいから着手したのが財務会計でしたが非常に効果的であったと振り返ります。上場している企業には社外向けに公開している情報があり、その背景にある思想・理論を読み解くことで一段高いアウトプットを営業として提供できるようになったなという実感もあるので、自分と同じように自分の仕事に天井を感じられた時に読み込んでもらうとオススメです。
加えて、管理職・会社がどのようなことを念頭において意思決定しているのか?という点に関して昔よりもいろんな視点から理解することが出来るようになったのは大きいかもしれません。
只々、目先の売上や目標だけ追求さえしていればいいみたいなスタンスで仕事していてはノンバリューだ、というのは最近朧気ながら自覚してきていた所なのでとても役に立つ知識がまとまった本だったなーという印象です。
どうやって事業の収益性を担保するか・軌道に乗せるかの一助を担えるか?みたいなこと考えて実際の成果にも反映できるようになったらもう少し面白いというか価値のある仕事出来るんだろうなと読んで内省をした次第でした。。。
シンプルに会計の知識を身に着けることで色んな会社の意思決定・会社概要を深く把握できるようになるので食わず嫌いはせず学んでみることをオススメします!
以上となります!