雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪管理会計・入門≫

 

今回は有斐間アルマシリーズの管理会計・入門」を要約していきます。

経営管理定量的な側面を支える分野として発達してきた歴史があり、どこかで体系立てて学びたいなと思っていたのでこのタイミングでチョイスしました。本社スタッフ及び本社経営陣が何を気にして意思決定するのかの解像度をあげたかった為です。

※個人的には有斐間アルマシリーズやグロービスシリーズは基礎を体系的に学ぶのに、最適なシリーズだと思います。

財務会計「社外向け」にBS・PL・CFの財務三表を作成・活用することで会社経営を支えるミッションを持つ学問ですが、管理会計「社内向け」にあらゆる行為を定量化して比較検討・意思決定できるようにすることで会社経営を支えるミッションを持ちます。

 

管理会計・入門」

管理会計・入門 -- 戦略経営のためのマネジリアル・アカウンティング ...

■ジャンル:会計

■読破難易度:低~中(指標の数式などをしっかり理解しようとするとファイナンスや簿記の基礎知識が必要になりますが、何の為のものかを把握する程度であれば簡単に読める内容です)

■対象者:・経営と会計の関係性・関連性を体系立てて学びたい方

     ・製造業の世界に関わりのある方

     ・経営管理の仕事の概観を掴みたい方

【要約】

・大学の教科書向けに作成されているので、アカデミックと実務を橋渡しするような形の構成になっております。原価計算ABC分析等の管理会計で活用する基本概念の説明に始まり、全社計画に管理会計をどの様に活用していくか・業績評価に管理会計をどの様に活用していくか・各バリューチェーン毎の実務に管理会計をどのように活用していくかという4部の内容にて構成されております。

 

管理会計の歴史

管理会計は株式市場が活発なアメリカで発達し、19世紀以降の製造業の発展へ大きく牽引した学問です。費用を定量化して、意思決定の妥当性を担保することを目的に原価計算から発展を遂げていきました。管理会計は株主と経営が分離した現代のコーポレート・ガバナンスを支える、ファイナンス財務会計などと並ぶくらい重要な学問領域です。その裾野は製造業に留まらず全社の事業活動を管理する為のツールとしても役割を遂げるようになりました。

 

原価計算

原価計算とは企業が製品やサービスを生産し販売するのにかかった費用を算出する行為で、各職能や特定の行為の経済合理性を図ることを可能にするツールです。製造業ではこれなしには事業操業は出来ないと言われるほど、浸透しており管理会計の基本のキと言えます。

原価計算「何を生むために行われたか」という用途別に計算する方法や固定費変動費という区分、管理可能費・管理不能費という区分で行うなど、どんな示唆を得たいかにより区分方法が異なるのが一般的です。

 

損益分岐点分析

損益分岐点分析は短期利益計画の設定に際して、必要な売上高目標とする利益率などを算出するのに役立ちます。短期利益計画に基づいて、事業部の計画や予算立案がなされ、それがうまく行ったかどうかで本社は事業部をマネジメント・投資資源の配分を決めるというのが実務の流れです。

・固定費・変動費で費用を区分することで、「事業間の魅力度の比較や何をいじると利益に繋がるのか」等の示唆を出してくれるのが主な役割です。※これは事業の現場にいる身としても内訳を知っておくことは重要であるという感覚があります。

 

■活動基準原価計算

・製品毎の採算性・収益性を正しく見る為に、各活動別に費用を分解して、製品コストに反映するという分析手法です。これを応用することでバリューチェーン毎に打ち手をうちコスト削減や生産性向上などを行う実務に繋がり、リエンジニアリングと呼ばれる業務改善・プロセスの再設計などにもつながっていきます。

 

■BSC

・財務観点だけではない3つの指標(顧客社内ビジネスプロセス)の観点から戦略を検証することでステークホルダーにとって納得度の高いものになるという管理会計フレームワークです。上場企業にとっては社会への責任も問われるので、株主対策として昔で言うCSR観点、今でいうESG投資をスコープに検証もされるようになってきました。

・BSCの観点で中期経営計画及び利益計画を作成することは経営管理が陥りがちな会計情報偏重を是正することになります。即ち、非会計的な視点も戦略に盛り込むことでトップダウンのような感覚がうすれ、組織のロイヤルティなど人材へのメンテナンスに防波堤を貼れるようになることも効用として挙げられます。

 

■分権制を支援する管理会計

・コーポレート・ガバナンスで経営の執行と監視を分離するように、事業部と総合本社に分離することで、「現場最適化」と「戦略策定」の役割を分けることは組織論として有効であるとされてきました。事業部と本社の橋渡し及び本社が適切に事業間を評価する指標としてABC・損益分岐点・ROI等の管理会計の指標は発達し、浸透しました。

・こうした観点を学び、それぞれの立場でどのように運用し、日々の業務に影響を与えるかを想像し、間を保つような問いを立てたり、行動することが非常に価値の高い行為と言えるでしょう。

 

■機能別組織を支援する管理会計

・製造・販売・研究開発・生産等の各機能別の妥当性・採算を図る指標としても管理会計の概念は有効であり、指標を設定して推進することで経営管理という横串機能が作用すると言えます。

・「原価を価格にどのように反映するか」・「研究費・開発費の会計区分」・「原価管理・原価改善」などが代表例となる管理会計が関与する機能別組織へのアプローチです。※詳細は本書にプロセスと共にありますが、割愛。

 

【所感】

・実務で管理会計をするとなると、もう少し財務会計の知識+プロセスを学ばないといけないと感じましたが、管理会計という学問がビジネスにどのように寄与するのか」・「何を責任範囲と置くのか」という当初知りたい問いに対しての答えは得ることが出来たので、まさに入門としては最適の本と感じました。

・事業部の視点と本社(経営管理)の視点を両方持ち、共通言語・視座視界で物を見るという経験は物事を円滑に進めたり、仕事の解像度が上がるので、一見遠回りのように見えて面白いなというのが最近の感覚です。※人事周りや組織論は元々一定の体系だった知識を学びましたが、あまり関係ないと思っていたファイナンスや会計も学んで損はないなと感じています。

・個人的な見解としては管理会計という領域は専門性の特質から、いきなり従事しても業務を遂行することはできるが、ビジネスリテラシーを一定得た上で行うと更に面白味が増す領域なんだろうなと感じました。スタッフクラスでは専門的な指標や数字に則り運用・管理していく所が主だった業務範囲かと思いますが、一定の範囲の意思決定に責任を持てるようになると急激に仕事の幅が広がってとても奥深く面白いと感じるのだろうと感じました。※だからかこのような領域に従事している方は腰を据えてキャリア形成をすることが好む印象があったので、スッキリしました。

財務会計についてもう一段学びを得た上で読み返してみると更に違う視点で見えてくるなと思いました。

 

以上となります!