雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪WORK RULES!≫

今回は久しぶりに採用関連の書物を要約しようと思います。

初めに読んだのは大学4年生・社会人1年目・そして今と3回読んだ本です。

新入社員研修で人事配属の同期が課題図書で渡されていたなーというのを思い出しながら読み返しました。グーグルの採用ってすごいですねということが詰め込まれている本です。

 

 

「WORK RULES!」

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■ジャンル:人事系

■読破難易度:低~中(採用・マネジメント関連の書物を数冊読んだことがあれば前提の思想にはかなり慣れ親しんだものを感じると思います。※個人的にはビジョナリーカンパニー2を読んでいるとかなり面白く読めるのでは?と感じました。)

■対象者:採用・育成・評価などの人事業務全般を把握したい方・グーグルの組織作りに興味関心のある方・性善説に基づいた組織つくりに興味関心のある方・トレンドの人事施策に興味関心のある方

 

【要約】

グーグルのHR部門の責任者が著したグーグルの採用・育成・評価・組織周りなどの人事施策全般の打ち手とその背景を体系的にまとめた本です。500ページ超えの分厚い冊子ですが、比喩・具体例が多いだけなので翻訳調の文体に抵抗がなければ読むのはかなり容易いかと思います。

 

■組織目的の浸透

「なぜこの仕事をするのか?」という問いは常に社員に投げかけなければならない、内発的動機付けを促進することでしか素晴らしい仕事ぶりは実現しない。その為には個々人の内省に依存することなく、組織としての目的などを常に記憶に刷り込むようにメッセージングすることが急所。言語化する過程で発信者は学習が促進され、組織としての一枚岩も強まる。

 

■採用に妥協をしないことの効用

・乗せるべきでない人をバスに乗せてしまうと、乗った人は不幸であり周りに負の相互作用を生み出す。素晴らしい仕事ぶりを追求する人はその環境を求め、大事にして働く。一人の誤った人がバスに乗ってしまったことによりオペレーション工数がかかり素晴らしい仕事ぶりをする人の内発的動機付けを阻害するリスクはあまりにも大きい。

⇒労働集約型のビジネスモデルにおいての実現難易度は非常に高いと思います、構造を変える為に収益性のあるビジネス体制とマネジメントというのは二輪の仕組なのかと。

 

■直感を信じてはいけない

・再現性のない採用プロセスはどこかで負を生む、採用は取るべき人を取るというよりも取ってはいけない人を排除するという思想のほうがあるべきというのがグーグルのスタイル。構造化面接(状況把握・仮説思考を検証)は一つの普遍的な解とグーグルは設定している。(※詳しくはコンピテンシー面接マニュアル」という本にまとまっています。おすすめです。)

・常に設問をブラッシュアップする必要があるし実行しきるのが非常に難しい面接形式。(リクルートは確か構造化面接を2次選考で設定していたはずですね。)

★グーグルはリファラル採用に重点を置いており(CVRが高いみたい)面接の顧客体験(CX)に拘るということに主眼を置いている、C向け企業はここに尚更注意を払わないといけないですね。

 

■マネジメントという肩書・役割の切れ味

・マネジメント側が思うよりも自身の発言・肩書が持つ力というのは大きい、変な方向に舵を切るとそれだけ組織全体に影響を及ぼすリスクがあることには慎重にならなくてはいけない。マイクロマネジメントは組織のやる気を阻害するがマネジメント側の心理的な安全はかなり高まる、深層心理にはメンバーの成果や能力に対する信頼の欠如に起因する。

 

■業績管理

・評価のプロセス・結果に透明であれ、透明であること自体に権威が備わる。内発的動機付けと外的動機付け(金銭的報酬・肩書等)のバランスは適切にしないと本来よりも生産性が下がるリスクがある。マネジメントは諸刃の剣的な側面がある権威を認識するべき。

 

■2本のテール

・多くの人は人材や成果の分布は正規分布に従うと直感的に認識するが実際はべき分布に従う。

平均的な人が連携して大きな成果を出すものと感覚的には人間は思いがちだが大体はそうではない、一部の優秀な人の集団が大きな成果を発揮していることが多く、その優秀な人を適切に扱い仕事に配置しないと組織のパフォーマンスはひどく下がる。⇒パレートの法則ですね。

 

■学習する組織

・ひとにより習熟度のスピード・人生における仕事の割合・位置づけは異なる、しかしながら変化がない所に成長は生まれないということは肝に銘じるべき。常に新しいストレッチをする適切な学習(計画・実践・内省・改善等)を施すことでしか人は成長していかない。そしてこの経験・機会の価値の高さは実務での成果や姿勢に大きく左右されるという事実を認識しないといけない。

※パフォーマンスが優れていない人の中には、組織から期待されずしかるべき経験・チャンスを与えられておらず経験値不足という側面が強いことを認識しなくてはいけない。

・現場のハイパフォーマーに自分の学びを言語化・横展開するような講師の役割を果たすことはコストがかからず大きな成果を生む。講師側は教える過程で再現性を発見できるし教わる側も具体的な実務に即した教えを乞うことが出来るので実務に反映しやすいという側面がある。

⇒このあたりはリクルートではよく行われている仕組みだなと、内発的動機付けとか承認欲求の促進という副次的効果もあるので重要性は常々認識しています。

 

 

【所感】

たまたま3年前に読んだ読書メモを読み返したのですが興味関心の持つ範囲・内容に大きく変化が感じられて時の流れを感じました。。理想的な組織像としてのグーグルの人材マネジメントを認識しながら実務に近づけてどこは真似できるか?どこは難しいか?を見極めて情報を編集しないといけないですねというのが読み終えた時の感想でした。2本のテール・パレートの法則のようなものは最近おぼろげに実務の中で感じる場面が増えてきたので、しっくりくる側面が強かったです。

全体的に性善説に則って、非常に頭脳明晰な人や内発的動機付けの優れた人を前提とした採用・組織マネジメントの理論が多かったので現実に落とし込むのは読者の力量にかなり委ねられている本だなと読み返しておもいました。

収益性・競争優位性の追求・どうやって事業を軌道に乗せていくべきなのか?みたいな数字や論に閉ざしたことばかり最近考えていたので、理想論を追い求めるような人事周りの本もたまにはいいなと思い返した次第です。

 

まとまりのない感想ですが以上です!

IT系の会社全般は取り入れている側面の多い人事周りの本なので多くの人にお勧めできる本です!