雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法≫

 

今回はファシリテーションに纏わる本を要約していきます。

国際協力(途上国支援)に関わる方が現地で支援をする中で確率したコミュニケーションの技法をベースにメタファシリテーションメタ認知を促すことで自立支援をする)について体系化した本です。

「スキルや意思・前提などが異なるステークホルダーとうまく折り合いをつけて、マネジメントしていく上での汎用スキル」と置き換えることの出来る内容だと思って読みました。

 

「途上国の人々との話し方」

途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法 | 信明 ...

■ジャンル:ファシリテーション・途上国支援

■読破難易度:低(具体的な対話の流れなどを記述されているので読み物として面白く負荷なく読める内容です。)

■対象者:国際協力に従事する方・ファシリテーションスキルに関心のある方・メタ認知に関心のある方・様々なバックグラウンドの方と協業する必要性のある方

 

【要約】

途上国支援の中で著者が確立したメタファシリテーションの理論体系及び、現地での具体的なやり取りについてまとめられている本です。

 

■「なぜ?」と聞かない対人援助コミュニケーション

・「なぜ?」という質問はビジネスの場では定石ですが、途上国支援という文脈になると、事実を述べるというよりは支援者が好みそうな回答を作り上げて事実を隠蔽する性質があるのでむしろ望ましくないとされます。

※事実ではなく、支援をする側の幻影に支援される側も寄せに行くような構図になり問題は解決されないことが多いからです。

 

■事実と解釈と感情を切り分けることの重要性

・何かを解決しようとすると「事実を浮き彫りにすること」「当事者の抱く感情」

をもれなく把握して両者を下敷きにして、あるべき姿・仕掛を客観的な枠組みで思考~実行することが必要とされます。

・このあたりの基本構えは途上国支援に閉じた話ではなく、感情が先行するような場面で議論をファシリテートしたり未成熟な組織をマネジメントする上での基本的な定石とも言えるのではないかと思えます。

 

■メタファシリテーションをする上での重要事項

・対等関係にあるようにコミュニケーションを振舞うこと

⇒どうしても支援する人・支援される人という構図が出てしまう中で、とても意識的に気をつけて同じ目線に立つような振る舞いをしないと支援される側は相手が望むであろう偽りの回答を作り出して事実を隠蔽したり、受け身な姿勢が解消されず本質的な解決がもたらされないということになります。(得てして施されることに慣れ過ぎているということも起きるようです。)

・解釈ではなく事実を炙り出す質問を心がける

⇒とてもドライに言うと支援する側・される側の解釈が早期段階で入ることは何もメリットがありません。とにかく現状認識を促す及び、支援する側が適切な打ち手をする為の現状把握として感情を廃して事実を問う質問を重ねることに意味があります。

⇒この過程を通じて言語化・内省を促すことで「自立支援をすること」・「感情の世界ではなく問題解決にベクトルが向くように仕立てること」が主な効果と本書では示されています。

 

■自立支援に向けた取り組み

「正しく現状を双方が認識すること」・「内発的動機付けを促すための適切なプロセスを踏むこと」の重要性が説かれています。途上国支援という文脈なので、自立的かつ持続的ということが本質的な意味を成すという文脈ですがこれはビジネスや日常の世界における仕組み化⇒永続化と同じ構造をとっているように思えます。

・その為には一定のスキル成熟期間を設け、課題の解決を急がない姿勢や支援はするものの施し・施されるの関係にならないように組織化や現状把握を当事者に言語化させるスタンスで支援するということ等が急所として言及されています。

(個人的には組織化を急がない、組織化を急ぐと組織の維持が目的になり本質的な解決に至らずHOWばかりの議論が横行するというインサイトが秀逸でした。)

 

 

【所感】

・ソーシャルビジネスや自立支援といったテーマ感に学生時代から関心を持っていた自分に取ってはメタファシリテーションは勿論、本書のメインとなる途上国支援のプロセス自体がとても面白く勉強になりました。

・途上国支援の具体的なプロセスや対話場面の記述が多い本なので、そのあたりのことは今回割愛して要約しました。市場に面を広げて対峙するビジネスに従事する手前、このような文脈で物事を考えることは日常的に関心がありますし、社内においても多様なバックグランドの方がいる中で如何に組織としての水準・成果を高いレベル感で保つかということは関心があります。長期的に自らが思考する介在価値のよりどころになるので避けて通れない話だなと思っていました。

・「信頼はするけど期待はしない」というスタンスが求められるという一文がこの本の中で一番印象的でした。自分でどうにかコントロールできうる変数に注力し、それ以外は仕掛けを打つことしかできない、ある意味諦めや割り切りを持つという姿勢も改めて認識するきっかけになる素敵な本でした。

 

以上となります!