雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪実践 セールス・イネーブルメント≫

 

今回は山下貴宏氏の「実践 セールス・イネーブルメント」を要約していきます。営業を科学するがトレンドになり久しい昨今ですが、「ザ・モデル」と並んでこの分野の代表格と呼ばれる本です。営業管理システム(SFAの導入・分業制の導入(インサイドセールス/フィールドセールス/カスタマーサクセスetc)など「俗人化を脱して拡張性のある営業組織をどのように構築していくか」がビジネスとプロダクトのアウトカムを最大化する為の重要事項と注目されるようになってきました。

本書はその営業を担う人材の育成を体系化することで拡張性とLT短縮化を狙い、如何にプロダクトのLTVを最大化出来るかについて専門的に責任を負うネーブルメント職の必要性と役割について体系的に論じた本です。尚、同著者の「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」はセールス・イネーブルメントの概念や狙いに深くフォーカスした内容となっており、本書は「実際にセールス・イネーブルメント組織を構築し実践していく際に有効となる実務」にフォーカスした内容となっています。

 

「実践 セールス・イネーブルメント」

500人のハイパフォーマー分析から紐解く営業のあるべき姿 | Enablement App

■ジャンル:営業・マーケティング・マネジメント

■読破難易度:低(ザ・モデルやセールス・イネーブルメントを読んでいなくてもわかるような構成になっています。CCC・セールスフォース・凸版印刷・ユーザーベースの導入事例も記載あるのでイメージつきやすいです。)

■対象者:・営業組織運営に関わる人全般

     ・営業を科学することに興味関心のある方

     ・営業部門で自身の経験が活かせるスタッフ業務に興味関心のある方

 

≪参考文献≫

■ザ・モデル(営業組織の作り方について)

■要約≪ザ・モデル≫ - 雑感 (hatenablog.com)

コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント(顧客期待の変遷)

■要約≪コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント PART7≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■組織デザイン(分業・標準化の効用について)

■要約≪組織デザイン≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■セールス・イネーブルメントとは

セールス・イネーブルメント属人性一貫性有効性という3つの壁を突破して営業組織強化の問題解決を目指す手法、「トップセールス頼り」・「現場マネジメントOJT頼り育成」・「育成コンテンツやりっぱなし問題」解決を目指すものとして主に外資企業の営業組織で発達した技法です。

・イネーブルメント職は営業スタイル変革(分業制・SMB/エンタープライズセールス)とオンボーディングの必要性から重要視されるようになってきました。SaaSなどを筆頭に、プロダクトとビジネスを伸ばす為に、大量の営業人材の顧客接点を通じて早期かつ高速でスケールさせていくことを志向する中で「早期戦力化」と「育成のばらつき防止」は欠かせません。

 

■セールス・イネーブルメントの実務

・セールス・イネーブルメントが担わないといけない役割はレーニング・コーチング・ツール・ナレッジ・システム(データによる共有化・可視化)の4つとなります。その為、具体的な実働としては入社/異動直後の初期研修および実働支援パッケージの提供・KPIの設定/推進・現場育成支援(OJTへのコーチング)などが中心となります。営業人材の早期立ち上げをした先には営業戦略の実現がある為、部全体の営業戦略・顧客資産・課題/特徴を把握し、出来る限り噛み合うように育成の優先順位付けをしていくというのがセールス・イネーブルメントの基本になります。

各工程におけるキーアクションの把握⇒キーアクションを実現する為に満たさないといけないスキル・経験・知識の把握⇒トレーニングとツール・ナレッジメニューのポートフォリオを組んで提供⇒実働の所が順調に推移するかの確認意味合いでコーチングとシステムでの支援とステップを踏むのが具体的な実務になります。ハイパフォーマーとローパフォーマーの行動を可視化し、共通項目に関する時間のかけ方・優先順位付けをして、差は何で、それがどのように財務ヒットするのかを測定していくことが有効な打ち手となります。

 

■イネーブルメントチームの立上げ

・イネーブルメントチームは部門内部に置くケースと特定事業部の企画部門に置くケースの2種類があります。どちらにせよ、現場部門のマネジャーと早期にすり合わせを行い営業戦略の実現を最終目的として、「いつ・具体的にどのような成果を得たいのか」という観点からブレイクダウンして、育成のスコープ現場/イネーブルメント部門の役割分担を定義していくのが実践的なステップとなります。

・実際には定期的に営業マネジャーとイネーブルメント部門がコミュニケーションを取り、KPI・ビジョンなどを共通言語として、現状及び未来のあるべき営業組織の在り方・営業戦略を対話しながらレビュー・表出化・軌道修正していくことが求められる役割となります。

 

■イネーブルメント人材の確保と育成方法

・イネーブルメント人材は「人の成長」と「営業成果最大化」という2つの側面に責任を持つ人材である必要があり、現場リーダーや企画などの経験が必要になります。物事を構造的に見立てて、「やれる時にやれたらいいよね」というレベルになりかねない育成に対して強いビジョンを打ち立てて推進していく当事者意識も欠かせなくなります。

自己流タイプあるべき論を押し付ける人材は介在悪になる可能性が高く、「ハイパフォーマーで悩みポイントを理解出来ない」・「個別編集できない」というのは典型的な向いていない人材の例とされます。イネーブルメント人材というのは転職市場にプールしてこないので、あまり現地調達はお勧めできません。その為、内部からのスライド・キャリアパス一例としてセールス・イネーブルメントを表出することが望ましく、最適なのはハイパフォーマーなセールス人材(特にチームリーダークラス)が良いとされます。これは営業マネジャーとしての登竜門としての人材育成ルートにして人材を確保するという方法で、望ましいとされる。簡単に活躍人材を調達出来てハブを作ることが出来、人材育成機能にも役立てることが出来るからです。

 

【所感】

・急遽後任から引継く形でセールス・イネーブルメント部門を立ち上げることになり、時期別の必要なスキルを要件定義・トレーニングやアセスメントなどを構築・運用していくことになった自分の直近半年の仕事を振り替える良い機会になりました。結果として理論に忠実に要所を抑えて運営していたことがわかりよかったです。

・本書は営業組織の拡張性において標準化育成LTの短縮化は欠かせなく、競争の激しい市場においてはプロダクトのLTVを最大化するには如何に「営業組織が顧客ニーズを掴み深耕していくか」がポイントと考える自身の課題意識にも近しい内容でした。

 

以上となります!