雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪孫子≫

今回は「孫子」13篇を要約していこうと思います。孫子に学ぶ●●~などのような本は多いですが、これは原著です。180ページほどのあっさりとした本ですが、3年前に読んだ時は何を言わんとしているのか読み解くことが出来ず全然印象に残らなかった本です。

 

孫子

新訂 孫子 (岩波文庫) | 治, 金谷 |本 | 通販 | Amazon

 

■ジャンル:歴史・兵法・マネジメント系

■読破難易度:中(読むこと自体はとても容易ですが、何を言わんとしているのかを理解するには一定の経験値が必要に感じました。)

■対象者:戦いの原則について関心のある方・中国古典について関心のある方・勝負事が好きな方

 

【要約】

・13篇から構成された現実的な戦術と思想を凝縮した内容となります。印象に残った部分を抜粋していきます。

「戦わずして成果を得ることが最も良い」これが孫子全体の思想の根幹をなすものです。兵法でありながら、戦いはあくまで手段であり人や資源を傷つけるものなので、手段を目的化するなという徹底した姿勢が見られます。

 

■戦いの基本原則

「相手には自らを弱く見せて、相手が強い時には戦わない」というものです。ほころびが出ている時にだけ確実にそのすきを突くことで、手堅くポイントを稼ぐことが重要であり、勝てる戦いを確実に勝利していくことが最重要とされています。

・戦いは事前準備が大変であり、長引くことで軍需産業を除いてあらゆるものを衰退・荒廃していくので避けるべきとされています。

※華々しい施策だけに目をむけず、実利からあらゆる施策・行動をやるかやらないかを判断することの重要性を説いているように感じました。

 

■戦いの在り方

・戦いがうまい人は適切な勢いに乗るのがうまい人であり、優れた人に依存することを指すのではないとします。

・特定の資源に依存するような進め方しかできない将軍は多様性に欠け、安定性に欠けるということを強く主張しており、これはマネジメントにおいても言えることですね。※組織ケイパビリティに依存するような推進や施策はマネジメントサイドの自己満足であり、本質的に資源≒メンバーを疲弊するので避けるべきということかと。

・すべての戦いで勝利しようと資源を分散させると狙った成果は出せず、狙った成果を出すための行動の絞り込みや計画、これこそが戦略だと説きます。

 

■同盟・利害関係の取り扱い

何かをなすとは利益と害がつきもの。両者の存在を認識、配慮してあるべき姿目指すのが優れたマネジメント」と説きます。

・故に害を強調して他人を屈服し、利益を強調して他人の賛同を得るものだとされます。

・同盟を成しえようとするには「相手が何を大事にするのか」、「何に心を動かされるのか」を深いレベルで知りに行くことからしか始まらず、目先や小手先の合意は外部環境の変化と共に崩壊する不安定さを占めており、本質的ではないとされます。

 

【所感】

・戦いの原則はビジネス・マネジメントの世界に借用できる、ということから古典的な政治や兵法関連の書物がビジネスの名著とされることが多いのだろうと思いました。 

孫子の内容自体にはそこまで目新しさはなくて、むしろ自分の経験を孫子が言わんとしていることを理解する為に棚卸していくことで整理・内省が進むということにこの本の価値はあると思いました。数年前に読んでしっくり来なかったのは、この内省する材料が不足していた(スキル/経験両面)ということでしょう。

・「戦わずして成果を得ることが最も良い」という思想は正にその通りと感じました。華々しい行動や施策は一見よさそうに見えますが、それには手間やリスクがつきまとうもので本来であれば華々しいかどうかはどうでもよくて成果が出る行動をしているかどうかで可否は判断されるものです。こうした本質的に大事なものは何か?を問うきっかけになるような内容が多く勉強になりました。

「やることや命題設定(≒イシュー)をクリアにすることで多様性のあるマネジメントを目指す⇒スキルや経験に依存せず計画を遂行できる戦略や組織運営を可能にする」というのは個人的な最近のテーマ感として思っていて、そうした課題感にも参考になるようなパートが多かった本でした。

 

以上となります!

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