雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪種の起源(下)≫

 

今回は進化論で有名なダーウィン種の起源要約下巻編です。

下巻は進化論への代表的な反証に対する氏の見解と進化論が地質学・地理的側面から自明であることを論証する内容が中心となっております。

※上巻の要約は下記。

■要約≪種の起源(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

種の起源

『種の起原 上』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター

■ジャンル:生物学

■読破難易度:低(事例を基に積み上げ式で論じていくので非常に読みやすいです。生物学の知識は不要で動植物への関心の方が重要です。)

■対象者:・進化論のエッセンス興味関心のある方

     ・生物学の古典に興味関心のある方

     ・自然淘汰・環境適応のメカニズムについて理解を深めたい方

 

【要約】

■雑種形成

・雑種の不稔性は類縁関係の違いや同質性などの種の区分による秩序が生態系に存在するという何よりの示唆とされます。特別変異が自然淘汰・環境適応の中で優性遺伝子になることはあっても、非関連の種同士の勾配はうまく作用しないということはダーウィンが進化論を提唱した時代でも自明と見なしていました。(後に遺伝のメカニズムが解明され、その確からしさと背景が解明されます。)

 

■進化論を是とした際に、移行期の中間体が世の中に少ない理由

・移行期にある中間的な生物が少ないのは「その因果関係を証明するファクトを持つ生態系が極めて少ないこと」に由来します。そして、移行期間はかなりの年月を経るので、地層からしかその関係性を見出すことはできないということが事態の難しさに拍車をかけているとされます。

※生活条件の都合が特定地域の種の生息数を決めるのは揺るぎない事実です。外来種と天然種のバトルは一定期間発生し必ず特定種が進化し、ある種は絶滅の道を辿るように収束するのが自然の浄化作用とされます。

 

■進化論の確からしさとその影響度合い

・「動植物の飼育栽培による品種改良」というのは遺伝進化論の日常的な現象・活用事例です。「種は共通の起源を辿り、グループわけすることができ選別する過程で内包される」というメカニズムこそが創造説を否定し進化論を肯定する何よりの事象であるとダーウィンは繰り返し主張します。

・生物学の世界においても地理的・気候的な影響が因果関係に大きく作用することは自明であると言え、本書ではヨーロッパとオーストラリア大陸・東南アジア・南北アメリカ大陸の動植物の生息に関する対比で指摘しています。一方で、進化の力学に最も作用する要素は「生物間の関係」であるとされます。なぜなら、生物間の関係が環境を大きく規定し、自然淘汰や進化の必要性を促すからです。

・メンデル遺伝学自然淘汰の原理が噛み合うことが証明され、ダーウィンが提唱した進化論が再注目されるようになったのは1930年代のことです。加えて、遺伝学の解明が1970~80年代に更に進んだことでダーウィンの進化論の考察は新たに見直されるようになりました。遺伝子は「特定の特徴を有するスイッチ」のような機能になっており、それ故に、異なる種が共通の行動形式を採用するというからくりが示されるようになりました。

・「人間は神に祝福された存在である」という宗教観の前提に個別創造説が主流であった生物学の世界において、「全ての種は共通の起源を辿り、自然淘汰と環境適応により分岐・アップデートし続けて現在に至る」という進化論を問題提起したダーウィンは当時もその後も大きな示唆をもたらしたことが伺えます。

 

【要約】

・生物学の世界は具体の世界であり、帰納法的なアプローチで解像度を高めていくという独特の世界観を改めて感じました。進化論も遺伝メカニズムも過去200年程度で一気に解明された近代的な知的財産であるということが印象的でした。また、生物学は観測対象の動植物が常に環境変化・相互関係をアップデートし続ける動的な構造を持つというユニークさを再認識した次第です。生物学の「地質学・歴史学・化学などの知見・アプローチ方法も借用しながら意味を見いだしていくダイナミックさと奥深さ」は学生の時代には感じなかった魅力に思えました。

・世界には共通の性質を持ちながら地理的・気候的な兼ね合いから特別変異・自然淘汰の度合いが違ったことで、地域毎に様々な生態系があることを再認する次第でした。本書のダーウィンの考察は道具としての自然科学の側面や様々な学問知識を応用・類推していくことで仮説や理解に深みが出る学問らしさを示すもので、学問の面白さがわかる内容でした。

 

以上となります!