雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪ザ・モデル≫

 

今回は「ザ・モデル」という本を要約します。セールスフォースマネジメントについて海外の事例をベースに、どのように導入・運営していくべきかについて体系立てて論じられた本です。SaaSを筆頭とした分業モデルに示唆を与える内容となっており、かつ極めて実践的な内容になっているので営業組織の実務に従事する方・最新のビジネスモデル・オペレーションに関心がある方などにオススメ出来る内容となっています。

 

「ザ・モデル」

【MAツール導入前に読む本!】『THE MODEL(ザ・モデル)』の要約まとめ | たく@米国株×テンバガーブログ

■ジャンル:マーケティング

■読破難易度:低(主に営業及びマーケティングに従事されているマネジメントを想定されているからか極めて平易かつ実践的な記述が目立つので読みやすいです。)

■対象者:・SaaSのビジネスモデルの解像度を高めたい方

     ・営業・マーケティングを科学することへ興味関心のある方

     ・組織マネジメント・人材要件についてのヒントを得たい方

 

【要約】

■営業・マーケティングの分業体制について

・海外では「主流のプロセス毎に専門特化・分業することで顧客体験・売上(収益)最大化を目指す」というモデルが主流となっており、本書では分業モデルの狙いと価値についてフォーカスされています。野球のメジャーリーグが「先発」・「リリーフ」・「抑え」と役割分担をするように、各ビジネスプロセスにおいて求められるケイパビリティが異なるので専門特化して提供することで総価値を最大化しようという算段です。

・具体的には職能としてのマーケティングインサイドセールス(内勤営業)フィールドセールス(営業)カスタマーサクセスといった具合の分業体制・顧客セグメントとしてのSMB(主に中小企業)エンタープライズ(大企業)が挙げられます。マーケティングリードを生み出しインサイドセールスがリードから案件化しそうな見込み顧客を抽出・パスし、フィールドセールスが案件化・カスタマーサクセスによる案件からの収益最大化(アップセル・クロスセル志向)・リピート率最大化といった具合の役割分担をします。

 

■顧客接点を科学する有用性

・ザ・モデルと呼ばれる分業体制の目的は顧客接点最大化LTV(顧客生涯価値)最大化にあるとされます。これまでの全ての業務プロセスを一人の営業が担うという形式では「現在はニーズがないが今後案件化する可能性がある」見込顧客の接点機会ロス注力することで深耕可能な顧客への相対的な価値棄損などが起こらざるを得ない構造でした。加えてそれぞれのコアバリューやケイパビリティが異なる為、営業組織において戦力化に極めて長期間のリードタイムが必要であり、慢性的な現場疲弊感が避けられずリテンション(離職)エンゲージメント(従業員満足を気にしないといけないといった具合でした。これらを組織の仕組みの力で解決してサービス提供することで「顧客価値を最大化し売上生産性も上げようぜ」というダイナミックな野望を持っているのがザ・モデルと呼ばれる分業体制です。

 

マーケティング/インサイドセールス

・「オンラインツールを用いた商機の追求」・「マーケティングオートメーションの発達」により分業モデルが可能になったとされます。SFAと呼ばれる営業管理システムにより、問い合わせ顧客・問い合わせ経路の可視化・蓄積が可能となりました。SFAを用いて、「属性や行動形式により顧客をスコアリングし、ニーズが発生しそうな顧客へ狙ってアプローチすること」が可能となりインサイドセールスが意味を持つようになりました。運営上大切なのは自社製品・サービスに合致しやすい顧客の傾向を企業規模や役職者・行動歴・時期などの軸でラベリングできるような切り口を見出し、その精度を高めていくことです。

 

■カスタマーサクセス

・カスタマーサクセスは主に、活用支援(伴走)契約更新の2つの機能に分類されます。それぞれに求められるケイパビリティが異なる為、「どの機能を重視するか」・「採用・育成においてどの項目を求める・開発していくのか(どの優先度で)」といった観点を自社内で統一し運営することが大切とされます。

・また顧客セグメントがSMB(中小企業)エンタープライズ(大企業)どちらになるかにより、顧客接点手法や提供プロセスにおけるキーアクションも異なる為、「それぞれを担う人材要件の定義」・「運営オペレーション・営業戦略」は企業手腕が大きく出るとされます。

 

【所感】

・久しぶりに極めて実務的な内容を扱った本を読みました。自身の専門分野を顧みて俯瞰するという観点ではこうした本の読み方も面白いなと感じた次第です。主にSaaSを念頭に営業組織の分業体制やオペレーションを言及していますが、「顧客セグメントやプロセス毎にケイパビリティが違うので担う人・対峙方法を変化させる」というのは成果報酬型を筆頭に様々なビジネスモデルの商材に応用できるのではないかと感じた次第です。

顧客期待に応じた提供価値の優先順位付け・提供方法の科学をしている自身の職務に非常にタイムリーな内容であり勉強になりました。セグメンテーションやコアバリューの定義がセンスの妙であると感じ、かつマネジメントシステムを構築し運営していく中で成果が出るまでにかなりのリードタイムがかかるものであるということも理解できたのは大きな自信と納得になりました。

 

以上となります!