雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪問いのデザイン≫

 

今回は「問いのデザイン」を要約していきます。大学教授である著者が創造的対話のファシリテーションを行う為の技法を活用事例と合わせて体系的に論じています。

 

 

「問いのデザイン」

問いのデザイン 安斎 勇樹(著/文) - 学芸出版社 | 版元ドットコム

■ジャンル:思考法・組織マネジメント

■読破難易度:低

■対象者:・ファシリテーションについて興味関心のある方

     ・不確実性の高いテーマを推進する必要のある方

     ・組織活性化に責任を持つ方

 

≪参考文献≫

■論点思考

■要約≪論点思考≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

 

【要約】

■問いをデザインする重要性

・人間は認識の固定化関係性の固定化を自然と行います。それは取引費用を減らし、定型化することで楽に情報処理したいという生来の欲求に忠実な生き物であるからです。上記性質を解消し、効果的な問題解決を組織で行う為には適切な問いを立てる議論設計が不可欠であり、それはファシリテーションスキルの中に包含されます。

・解くべきお題となる適切な問いの設計方法創造的な対話を生み出すファシリテーションスキルの2つに注視して本書は方法論を述べられています。「問い」という言葉には質問・問題・設問などの意味が含まれ、どれにしても答えることがセットになっています。「適切な問いを設定すること」は問題解決の品質や方向性にクリティカルにヒットするものであり、その設計や合意形成プロセスはセンスやスキルが如実に表れます。

 

■問いの7つの基本性質

1)問いの設定により導かれる答えは変わりうる

2)問いは思考と感情を刺激する

3)問いは集団のコミュニケーション誘発する

4)対話を通じて問いに向き合う過程で個人の認識は内省される

5)対話を通じて問いに向き合う過程で集団の関係性は再構築される

6)問いは創造的対話のトリガーになる

7)問いは創造的対話を通じて新たな問いを生み出す

 

■効果的な問題解決をする為に遵守しないといけない手順

・クリティカルな問題を解くためには論点思考のように、依頼主の目的やゴール(得たい果実)を把握しその背景にある因果関係を整理することで、「従来の依頼が本当のゴールになるのか」という所から整理することが必要となります。問いを立てる力は勿論、構造化スキル優先順位付けをする価値基準を示す力などがファシリテーションスキルと並行して必要になります。

・上記要件定義をする為には初期にシニアステークホルダーと十分な対話・すり合わせをしておくことが欠かせません。優先順位付けの判断軸は課題の根深さ課題を解いた時のインパク課題を解いた後の発展性実現可能性などの変数で総合的に取捨選択されるものです。

 

ファシリテーションの難しさ

ファシリテーションの活用場面は企業内人材育成と商品開発が主に多いとされ、具体的にはデザインディレクターやプロダクトマネジメントステークホルダーと共通目標について対話する際の議論設計のスキルとして活用されます。ファシリテーションの難しさの正体は効果的にアイスブレークして創造的な対話をする場面設計・場の目的や趣旨を適切に伝えるスキル・対話の合意形成/適切な介入頻度や内容がわからない・参加者の関心毎や認知能力が動的に捉えることが出来ない・不足の事態への対応スキル・オンスケでない場面の調整方法などが正体とされます。

ファシリテーターのコアスキルは下記6つとされます。説明力場の観察力即興力情報編集力フレーミング場のホールド力です。場の目的や狙い・背景を背景知識がない人でもわかるように適切に説明するスキルというのがファシリテーションには欠かせません。

 

【所感】

・論点設定・議論設計を行い、合意形成をしながら物事を進めていく必要に迫られる環境が続いた中で、理論理解を深めたいと考えて本書を手に取りました。改めて学ぶと、ファシリテーションは非常に奥が深い分野であると再認識しました。

・不確実性の高いテーマに対して創造的な対話を行い適切なステップを踏んで検証・合意形成をしていく為には特有のお作法を遵守したファシリテーション技術が必要であり、具体例と共に豊富に説明しているのが本書です。上記テーマについて悩みが尽きないこの頃でしたが、お作法がありお作法通りに場数をこなしていくことで身に着けることは可能でありそうというイメージを持つことが出来ただけでも非常に良かったと思いました。本書末尾にある豊富な活用事例はぜひ手にとって読んでいただきたい所です。ファシリテーション技術(問いを立てる)はこのような場面で活用できるのかという仕立ての秀逸さと展開範囲の広さに驚きました。

 

以上となります!