雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪プロダクトマネジメントの教科書 前編≫

 

今回はゲイル・マクダウェルとジャッキー・バヴァロ共著のプロダクトマネジメントの教科書」を要約していきます。「世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本」の続編でプロダクトマネジメントのキャリア・スキル・ノウハウなどを体系的にまとめた本です。タイトルの通り教科書のように網羅的に膨大な記述がなされており、本書は2回に分けて要約します。前編の今回はプロダクトマネージャーの役割・プロダクトスキル・実行スキル・戦略的スキルの記述内容にフォーカスします。

 

プロダクトマネジメントの教科書」

Amazon.co.jp: プロダクトマネジメントの教科書 PMの仕事を極める ― スキル、フレームワーク、プラクティス (Compass ...

■ジャンル:開発管理・IT・経営

■読破難易度:中(プロダクトマネジメントに関する全てを取り扱い、非常に緻密な記述がなされているので読むのに時間がかかります。既にPM業務に理解がある人が整理を深める為に読むことを目的とされています。)

■対象者:・プロダクトマネージャー・事業責任者を志す方全般

     ・プロダクトマネジメントの理論の歴史・要点を抑えたい方

     ・プロダクトマネジメントのキャリアやスキルの個別論点に興味がある方

 

≪参考文献≫

■プロダクトマネージャーのしごと

■要約≪プロダクトマネージャーのしごと≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■バリュー・プロポジション・デザイン

■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■プロダクトマネージャーの役割

・本書ではプロダクトマネージャーとして必要なスキルをプロダクトスキル実行スキル戦略的スキルリーダーシップスキルピープルマネジメントスキルの5分野に区分しております。プロダクトスキルはユーザーインサイト・データインサイト・分析的問題解決力・技術的なスキル・プロダクトセンスとデザインセンス、実行スキルはプロジェクトマネジメント・MVP・スコープ定義とインクリメンタル開発・プロダクトローンチ・タイムマネジメント・物事を成し遂げる力、戦略的スキルは戦略・ビジョン・ロードマップ・ビジネスモデル・目標設定・OKR、リーダーシップスキルはコミュニケーション・コラボレーション・パーソナルマインドセット・メンタリング、ピープルマネジメントスキルは「本当にマネージャーになりたいですか?」・マネージャーになるには・リクルーティング・コーチング・パフォーマンス評価・プロダクトプロセス・チーム編成の各論となります。

・プロダクトマネージャーは役割が複雑で多面的であり、企業ごとに担う範囲が違うが為に、人により解釈がずれる宿命を持つようです。リサーチャー・データサイエンティスト・UXデザイナーなどプロダクトチームで不在な役割を兼務するということもよくあり、総合格闘技性が強い為に定義はあいまいになりますし、体系だった方法や育成方法も定まらないです。

・プロダクトマネージャーが牽引する一般的なプロダクトライフサイクルのステップはディスカバリー定義デザイン開発デリバリー考察です。プロダクトマネジメントスキルは経験により習熟する側面が強いとされており、それを補う為には世の中に存在するフレームワークやベストプラクティスを使い倒すことがポイントとされます。プロダクトマネジメントは不確実性やトレードオフという特有の感覚になれていくことで習熟していくものとされ、うまく軌道に乗る頃には次のロールを期待されていることが一般的です。

 

■プロダクトスキル

・ユーザーのペインを解き、ゲインをもたらすことがプロダクト開発の役目なので、ユーザーストーリーに対する深い理解と共感を得る為に、プロダクトマネージャーは実顧客にヒアリングし続けることをいつでも徹底しないといけないとされます。これを怠り、「誰も使わない機能開発」や「致命的な機能改悪をする」ということにならないように進めるのがポイントとされます。アンケートやリサーチではなく、実顧客に実際にリアルで会いヒアリングして、「ユーザーストーリー・メンタルモデルの解像度を高めていくということをあらゆるフェーズで徹底し続けること」プロダクトマネジメントスキルを磨き続ける為の不可欠な導線とされます。「片付けようとしているジョブを明かにするという視点で思考を巡らせること」や「既存の解決策の効果がどれほどか」・「なぜ既存の解決策では問題が解決されないのか」ということに問いを巡らせていくことがユーザーストーリーの解像度を高める上で不可欠です。

曖昧な問題を特定し、解くべき問いを明かにする・構造化するというのはプロダクトマネージャーの重要なスキルセットであり、これをうまくやれないとエンジニアやデザイナーシニアステークホルダーとうまく協業していく第一歩をくじくこととなります。「プロダクトの成功・成長を構成する重要なファネルを理解することや歩留まりを上げる為に検討しないといけないテーマや打ち手候補がライトに浮かぶレベルまで問題を構造化することをしているか?」というのはプロダクトマネージャーとしての手腕を問われるよくある問いです。

プロダクトデザインは直感的な理解と導線が接続していることが大切です。UIだけでなくユーザビリティなどもしっかり整合性がないと「使ってもらう」・「使い続けてもらう」というプロダクトの成功可否を左右する歩留まりで大きく打撃を受けるということが発生してしまいます。機能開発や仮説検証を進める際は常に何を明らかにする検証なのか?・この開発により何が得られどのような世界に近づくのか?・具体的にヒットするビジネス指標はどのようなものか?・プロダクトビジョンやロードマップにどのようにヒットするか?という問いに対して解を出せるようにプロダクトマネージャーはプロダクトチームをマネジメントしていきながら進めるバランス感覚が求められます。

・プロダクトマネージャーの技術的なスキルはエンジニアとのコミュニケーションの生産性を構築する上では重要な要素であり、技術の背景にあるテクノロジーへの造詣・簡単なコードの作成ができるようになっておくことは重要なステップとされます。「プロダクト思考過程のシェア」や「ブレインストーミングにエンジニアを巻き込む」などは意外に見えて有効なやり方とされます。技術制約を理解しておくこと・最悪自分で手を動かしてそれらしいアウトプットの方向を示すことができるようになっておくこと工数見積もりやリアリティのあるプロダクトマネジメントの可能性を広げるので、プロダクトマネージャーは自発的に学び経験を作ることで備えておくことが推奨されます。

・プロダクトマネージャーはPRDを筆頭に多数のドキュメンテーションスキルが必要とされます。ドキュメンテーションにおいては「MECEであること」・「要点を簡潔におさえること」・「文書が独り歩きすることを想定して作成すること」など様々な観点を留意しないといけなく、場数がモノを言います。模範的なフレームワーク問題・ゴール・ユースケース・タイムライン・具体案・重要なトレードオフと意思決定といった具合の見出しで構成することです。

 

■実行スキル

プロダクトマネジメントには水面下で多数のプロジェクトマネジメントを行うことやアジェンダを設定するためのスコープ設定・実行支援のデリバリースキルなど複合的な技法が付いて回るものです。プロダクト開発におけるプロジェクトマネジメントでは優先順位付け・チェックポイント・納期・マイルストーン設定という形でプロダクト開発チームをリードする役割がプロダクトマネージャーには求められ、定期的に示唆や進捗・今後の展望についてドキュメンテーションする必要が発生することが一般的です。

・プロダクト開発にはトレードオフになるような意思決定を都度していくことがつきものであり、その為には上位組織や戦略を考慮したスコープ定義・そのロジック設定が欠かせません。これらのグランドルールはプロダクト開発・プロジェクト組成初期にステークホルダーですり合わせておくこと・明文化しておくことがポイントとされます。

・プロダクトローンチ直前はエンジニアやデザイナーだけでなくビジネス部門やシニアステークホルダーとの密接な連携も多くなります。プロダクトが市場にてPMFして収益を生み出しながら持続的に成長していく必要があり、それ故にサービスオンボーディングの為の重要論点の設定GTM(Go To Markrt)の策定などがプロダクトローンチ後の後続テーマとして発生します。この際にプレスリリースを書くかのように「誰のどんな問題を解くか?」・「既存プロダクト・解決策と異なり○○が優れている」・「市場全体では××のポジショニングを取る」などの概念をドキュメンテーション化しておくことが大切とされます。

 

■戦略的スキル

・チームの方向性を決めるビジョンや戦略等はプロダクトマネージャーが担う重要な役割であり、具体的にはロードマップ作成優先順位付けなどの業務にて発揮することとなります。プロダクト戦略にはプロダクトビジョン戦略フレームワークロードマップの3つが重要であるとされ、プロダクトチームが共通の理解をして語れる粒感にそぎ落とされ浸透していかないといけないものです。逆に、常に立ち返る道しるべとして使い倒し続けることをリーダーがしないとそのプロダクト戦略はまともな白物とは言えません。

ゴールやビジョンを示すことと同じくらい大事なのが重要ポイントの把握・実現手段・手順の明示によるプロダクト開発チームのリードです。これを具体的なワークに落とすと、「ロードマップ作成」と「優先順位付け」・「論点だし」になります。資源制約を考慮してより重要な問いを明らかにするための仮説検証プロセスを推し進める・それをステークホルダーと合意形成するなどが具体的なスキルセットとして求められます。まずは作業の優先順位付け・納期・誰が責任をもつかを明らかにすることが第一ステップです。これは信頼残高を起点に、「職位や土地勘を遣わずにコトとして合意形成・推進していく能力」が必要になり、相応のロジカル・クリティカルシンキングと経験値が求められるスキルとなります。

・ロードマップ作成と優先順位付けにおいて考慮する点ユースケースのカバー範囲ビジネスインパク実現可能性ユーザーメリットの大きさなどがあげられ、原案をプロダクトマネージャーが洗い出し、プロダクト開発チームのコアメンバーで精査・合意するというのがよくあるプロジェクト初期の手順です。プロダクトマネージャーは意思決定の連続です。ロードマップや優先順位付けをしながら、シニアステークホルダーから持ち込まれる相談を時にNOをつきつけながら刷新・遂行していく強い精神的なタフさが求められるワークです。

 

【所感】

・本書は約500ページに渡り膨大な記述がなされており、その約200ページ程度を前半ということで取り扱いました。こうして整理するとスキル・スタンス・ノウハウを漏れなく濃密にまとめている本であることがよくわかります。一定数のプロジェクトマネジメントや企画関連業務をこなし、プロダクトマネジメントに関する書籍で理論の輪郭を掴んでいるからこそおさらいという感覚で読み進めることが出来てとても面白かったです。記述のスタイルや抑えている観点は「プロダクトマネージャーのしごと」に近く、生々しい避けられない問題をどのように取り扱い対処していくかなどの膨大なユースケースを抑えている点が流石であると感じました。

プロダクトマネジメント分野においてはベストプラクティスとされる理論・書籍・事例などがある程度パターン化しており、個別事例の掘り下げなどをして理解を深めていくことが今後の成長において必要なのだろうと再認識した次第でした。

 

以上となります!